働く世代のセルフネグレクトとは?

セルフネグレクト(自己放任)とは、食事や入浴、掃除、受診など、自分の健康や生活を保つために必要なことを行わず、心身の安全や健康が脅かされる状態を指します。
国内では高齢者を対象とした研究が中心ですが、若い世代を対象とする研究も進んでいます。
この記事では、セルフネグレクトの主な状態や働く世代で考えられる背景、放置した場合の影響、本人や周囲ができる対応について解説します。

セルフネグレクトとは

セルフネグレクトとは、自分の生活や健康を保つために必要な行動を行わず、心身の安全や健康が損なわれている状態を指します。日本語では「自己放任」とも呼ばれます。
具体的には、入浴や着替えをしない、十分な食事を取らない、病気やけががあっても受診しない、部屋にごみをためるといった状態です。人との関わりを避け、必要な支援を断るケースもあります。

一時的に部屋が散らかったり、忙しくて食事を抜いたりしただけでは、セルフネグレクトとは言えません。判断の目安は、生活のさまざまな面で自分を守る行動ができなくなり、健康や安全に影響が出ているかどうかです。
本人が望んでその状態を選んでいるとは限らず、心身の不調で生活を続けられなくなっているケースもあります。

入浴や着替えなど身の回りのことをしなくなる

セルフネグレクトでは、何日も入浴しない、同じ服を着続ける、洗濯をしない、歯磨きをしないといった状態が続くことがあります。本人が汚れに気づいていても、入浴や着替えまで行動に移せないこともあります。
厚生労働省の資料でも、身体や衣類の清潔が保たれていない状態や、極端に汚れた衣類を着ている状態が、セルフネグレクトの具体例として挙げられています。

数日入浴しなかった、服装が乱れていたというだけでセルフネグレクトと判断されるわけではなく、以前はできていた入浴や着替え、洗濯などが長くできなくなっているか、その変化が続いているかを見ることが重要です。

食事や健康管理を後回しにする

セルフネグレクトでは、食事を十分に取らない、薬を飲まない、体調が悪くても受診しないなど、健康を保つために必要な行動が後回しになることがあります。
国内研究では、セルフネグレクトを構成する要素の一つとして、受診や服薬などが適切に行われない「不適切な保健医療行動」が挙げられています。厚生労働省の資料でも、治療が必要な病気やけががあっても受診や治療を受けない状態が具体例として示されています。
食事や健康管理の乱れは、忙しい時期に一時的に起こることもあります。注意したいのは、必要な食事や服薬、受診を長く続けて行わず、自分の健康を保てない状態になっている場合です。

部屋の片づけや掃除をしなくなる

セルフネグレクトでは、片づけや掃除をしなくなり、ごみや不要な物が室内にたまることがあります。
国内研究では、「不衛生な生活環境」や「不衛生な家屋環境」が、セルフネグレクトを構成する要素として挙げられています。厚生労働省の資料でも、室内や家の周囲にごみが散乱している状態が具体例として示されています。

なお、部屋が散らかっているだけで、セルフネグレクトだとは言えません。大切なのは、片づけやごみ出しが長いあいだできず、安全で清潔な住まいを保てなくなっているかどうかです。

人との関わりを避け、支援を断ることがある

セルフネグレクトでは、家族や友人などとの連絡が減り、周囲からの支援を断ることがあります。
以前は連絡を取っていた人からの電話に出なくなる、訪問を断る、生活を心配されても「大丈夫」と答えて支援を受け入れないといった状態です。
国内研究では、セルフネグレクトを構成する要素の一つとして「希薄な対人関係」が挙げられています。厚生労働省の資料でも、必要な福祉サービスなどの利用を拒否する状態が具体例として示されています。

働く世代がセルフネグレクトに陥る背景

セルフネグレクトに関する国内の調査では、精神疾患や身体の病気、経済的な困窮、人間関係の問題、社会的な孤立など、複数の要因が関係すると考えられています。

ただし、日本のセルフネグレクト研究は高齢者を対象としたものが中心で、働く世代について十分な実態が明らかになっているわけではありません。現役世代では、心身の不調や仕事による強い疲労、失業や離別による生活の変化、周囲との関係の希薄化などが重なることで、食事や入浴、掃除、受診といった日常生活を維持できなくなることがあります。

心身の不調で日常生活まで手が回らなくなる

セルフネグレクトの背景には、精神疾患や身体の病気など、心身の不調が関係することがあります。
厚生労働省のセルフネグレクトに関する調査でも、精神疾患や身体疾患は、セルフネグレクトに至る要因の一つとして挙げられています。

心身の不調が続くと、仕事を終えたあとに食事を用意する、入浴する、掃除をするといった日常生活に使える気力や体力が減ります。その状態が長く続けば、身の回りのことを後回しにする生活につながることがあります。

長時間労働や仕事の負担が続いている

長時間労働や責任の重い仕事が続くと、休息や睡眠に使える時間が減り、仕事以外の生活に使える時間も少なくなります。
厚生労働省の「こころの耳」では、仕事による負担が大きい状態では、帰宅後に夕食や入浴もできないほど疲れる、休日の多くを寝て過ごすといった変化が、過労の徴候として示されています。
長時間労働や仕事量の多い状態が続くと、睡眠や休息、家事に使える時間が減り、疲労も蓄積します。その結果、食事や入浴、掃除など、自分の生活を保つための行動まで後回しになることがあります。
仕事の負担だけでセルフネグレクトに至るとは言えませんが、生活を維持するための時間や体力が失われることは、その背景の一つとして考えられます。

失業や離別など生活が大きく変わる

失業や離別などによって生活環境が大きく変わると、それまで保たれていた生活のリズムや家計、人との関係も変化します。
失業によって収入が減れば、食費や医療費などを切り詰めざるを得ない場合があります。離別によって一人暮らしになれば、家事や金銭管理を一人で担うことになります。こうした変化が重なり、生活そのものを立て直せない状態に陥ることも考えられます。

厚生労働省が紹介する自治体調査では、高齢者のセルフネグレクトの原因として、経済的困窮や家族・親族とのトラブル、人間関係の問題が多く挙げられています。働く世代にその結果をそのまま当てはめることはできませんが、収入や家族関係など生活の土台が崩れることは、セルフネグレクトを考えるうえで無視できない要素です。

周囲との関係が薄れ、一人で問題を抱える

家族や友人、同僚などとの関係が薄くなると、生活に問題が起きても周囲に相談する機会が減ります。体調を崩したり、家事ができなくなったりしても、誰にも話さないまま一人で抱える状態が続くことも考えられます。

セルフネグレクトに関する国内研究では、「希薄な対人関係」がセルフネグレクトを構成する要素の一つとして示されています。厚生労働白書でも、セルフネグレクトでは社会的な孤立が関係し、家族や近隣住民との人間関係の問題も背景として挙げられています。

一人暮らしや人付き合いが少ないこと自体が問題なのではありません。困ったときに相談できる相手がおらず、生活の状態が悪化しても周囲が気づかない状況が続くと、必要な支援につながる機会も失われます。

周囲がセルフネグレクトに気づいたらどう対応する?

同僚や家族にセルフネグレクトが疑われる変化があったら、まずは本人の話を聞き、食事や衛生、体調など、以前と比べて何が変わったのかを確認します。そのうえで、心身の不調が続いていれば医療機関への相談を勧め、仕事や生活上の問題を一人で抱えている場合は、産業医や社内外の相談窓口、自治体の支援につなげます。
セルフネグレクトへの支援では、本人が支援を断ることも考えられます。無理に生活を変えさせようとせず、本人の意思を尊重しながら関係を切らないことが重要です。

本人を責めずに話を聞く

セルフネグレクトが疑われても、「もっときちんとした方がいい」と責めるのは避けます。本人が批判されたと感じると、周囲との関わりを避け、支援から遠ざかる可能性があるからです。

まずは「最近、困っていることはないか」「何か手伝えることはないか」と声をかけ、本人の話を聞きます。この段階で生活を変えるよう求めるのではなく、本人が何に困っているのかを知ることが大切です。
国内の研究でも、セルフネグレクトへの支援では、本人との接触を続け、困りごとを把握しながら信頼関係を築く対応が報告されています。話を聞ける関係をつくることが、その後の支援につなぐ第一歩です。

食事や衛生、受診など生活の変化を確認する

本人と話せるようになったら、以前と比べて生活にどのような変化が出ているかを確認します。

食事の回数が減っていないか、入浴や着替えができているか、必要な薬を飲んでいるか、体調が悪くても受診せずに過ごしていないかなどを見ます。ごみを捨てられない、家賃や公共料金の支払いが滞っているといった変化も確認します。
以前はできていたことができなくなり、複数の問題が同時に起きている場合は、生活全体を見ながら必要な支援を考えることが重要です。

心身の不調がある場合は医療機関の受診を勧める

強い疲労や不眠、食欲の低下、体調不良などが続いている場合は、医療機関への受診を勧めます。セルフネグレクトの背景には、身体の病気や精神的な不調が関係していることもあるからです。

周囲の人が病気かどうかを判断する必要はありません。「最近かなり疲れているようだから、一度診てもらった方がいいのでは」など、本人の状態を心配していることを伝えます。
本人が受診を断った場合も、そのまま関係を切らず、体調の変化を見ながら声をかけます。意識障害や自傷のおそれなど、生命や身体に差し迫った危険がある場合は、救急要請を含めて速やかな対応が必要です。

産業医や相談窓口、自治体の支援につなぐ

セルフネグレクトでは、仕事や収入、住まい、人間関係など、複数の問題が重なっていることがあります。周囲だけで抱え込まず、本人が困っている内容に合った相談先につなぐことが大切です。

職場の問題や心身の負担が関係している場合は、本人の意向を確認したうえで、産業医や保健師、社内の相談窓口などを案内します。社内で相談先が分からない場合は、厚生労働省の「こころの耳」でも相談窓口を探すことができます。

収入の減少や家賃・公共料金の滞納、住まいの問題などがある場合は、自治体の自立相談支援機関も相談先になります。生活困窮者自立支援制度では、相談内容に応じて、仕事や住まい、家計などの支援につなげています。

本人が抱えている問題を整理し、それぞれに合った相談先を案内することが、生活を立て直すきっかけになります。

 

ストレスチェッカーとは

「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しています。
また、無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下である「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場でも実施義務化が進むため、早めの準備が大切です。
導入や運用については、ぜひお気軽にご相談ください。

ストレスチェック導入のご相談はこちら

 

まとめ

セルフネグレクトは、入浴や食事、掃除、受診など、自分の生活や健康を保つために必要なことができなくなっている状態です。背景には、心身の不調や生活環境の変化、経済的な問題、孤立など、複数の要因が関係することがあります。
職場では、身だしなみが大きく変わった、強い疲労が続いている、周囲との連絡を避けるようになったなど、以前との変化に気づくことが大切です。本人を責めるのではなく話を聞き、必要に応じて医療機関や産業医、相談窓口、自治体の支援につなげます。
ストレスチェックはセルフネグレクトを判断するものではありませんが、従業員が自分のストレス状態に気づく機会になります。企業側も、集団分析を通じて仕事の負担や職場の支援状況を確認し、強いストレスを抱えたまま働き続ける人を生まない職場づくりに役立てることが重要です。

ストレスチェッカーは、官公庁・上場企業・医療機関などで採用されている国内最大級のストレスチェックツールです。自動リマインド、面接指導者管理、進捗確認機能を標準搭載し、2025年5月からは無料プランでも「プレゼンティーイズム(生産性低下)」の測定に対応しています。
ストレスチェックの導入方法や実施方法について、ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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