
勤務間インターバルとは、1日の勤務を終えてから次の勤務を始めるまでに、一定の休息時間を確保する制度です。2019年4月から、企業には勤務間インターバル制度を導入する努力義務が課されています。
この記事では、勤務間インターバルが必要とされる理由や導入手順、始業時刻を繰り下げる場合の考え方、制度を形だけで終わらせないための運用方法まで、具体例を交えて解説します。
目次
勤務間インターバル制度とは
勤務間インターバル制度とは、1日の仕事を終えてから翌日の仕事を始めるまでに、一定の休息時間を確保する制度です。たとえば、11時間のインターバルを設けている会社で23時まで働いた場合、翌日の始業は10時以降とするなど、勤務と勤務の間に休む時間を確保します。
日本では2019年4月から、勤務間インターバル制度の導入が事業主の努力義務となっています。何時間にするかは、睡眠時間や通勤時間、勤務形態などを踏まえて会社が制度を設計します。
厚生労働省の2025年「就労条件総合調査」によると、勤務間インターバル制度を導入している企業は6.9%でした。「導入を予定または検討している」は13.8%で、「導入予定はなく、検討もしていない」は78.7%となっています。企業規模別では、従業員1,000人以上の企業で20.1%が導入しているのに対し、30~99人の企業では6.1%となっており、企業規模による差も確認できます。
現在、勤務間インターバル制度は労働時間等設定改善法に基づく事業主の努力義務です。ただし、2026年10月の労働政策審議会では、制度をさらに普及させるため、法的な位置づけをどうするかが検討されています。労働者側からは原則11時間のインターバルを義務化する意見が出る一方、使用者側からは、業種や企業ごとに働き方が異なるため、一律の11時間規制ではなく柔軟な制度を求める意見が示されています。
フレックスタイムやシフト勤務でも導入できる?
勤務間インターバル制度は、フレックスタイム制やシフト勤務でも導入することができます。
フレックスタイム制では、従業員が一定の範囲内で始業・終業時刻を決めます。
たとえば、11時間のインターバルを設けている会社で、前日の勤務を23時に終えた場合、翌日は10時以降に勤務を始めます。通常は9時ごろから働いている人でも、前日の終業時刻によっては翌日の始業を遅らせる必要があります。コアタイムを設けている場合は、インターバルの終了時刻と重ならないよう、社内ルールもあわせて整える必要があります。
シフト勤務では、勤務表を作る段階からインターバルを考慮します。たとえば、23時までの遅番の翌日に7時からの早番を入れると、勤務と勤務の間は8時間です。11時間のインターバルを設けるのであれば、翌日の勤務は10時以降にするなど、シフトを調整します。
導入しないと罰則はある?
2026年10月時点では、勤務間インターバル制度は、労働時間等設定改善法に基づく「努力義務」です。事業主には、労働者の健康や生活時間を確保するため、終業から次の始業までに一定の休息時間を設けるよう努めることが求められていますが、インターバルの時間数や対象者は法律で一律に定められていません。
また、勤務間インターバル制度については、現在、法的な位置づけを見直す議論が進んでいます。厚生労働省の研究会では、導入をさらに広げるため、義務化も視野に入れて法規制を強化する必要があると整理されました。2026年10月の労働政策審議会でも、勤務間インターバル制度の今後のあり方が検討されています。
そのため、今後の制度改正にも注意しておく必要があります。
参考:厚生労働省/令和7(2025)年就労条件総合調査の概況
参考:厚生労働省/第212回労働政策審議会労働条件分科会 資料
勤務間インターバルが必要とされる理由
勤務間インターバルが必要とされる大きな理由は、仕事を終えてから次の勤務までに、睡眠や食事、入浴などに使える時間を確保するためです。
十分に休めない状態が続けば、疲労やストレスを翌日に持ち越し、仕事中の集中力や判断力にも影響します。国内の研究でも、勤務間インターバルと睡眠時間の両方が短い人では、精神的不調や仕事のパフォーマンス低下との関連が示されています。
睡眠や休息の時間を確保する
勤務間インターバルを設けることで、終業後から翌日の始業までに、睡眠や生活に使える時間を確保することができます。
たとえば、23時に仕事を終えて翌朝7時に始業する場合、勤務間インターバルは8時間です。ここから通勤、食事、入浴、家事などの時間を差し引くと、実際に眠れる時間はさらに短くなってしまいます。
一方、11時間のインターバルを確保して翌日の始業を10時にすれば、生活に必要な時間を取ったうえで、睡眠に充てられる時間も増やすことができます。
疲労やストレスの蓄積を防ぐ
仕事でたまった疲労を翌日に持ち越さないためには、勤務と勤務の間に十分な休息を取る必要があります。
特に、勤務時間外までメールやチャットに対応していると、時間としては仕事を終えていても、気持ちは仕事から離れません。国内のIT企業で働く人を対象とした研究では、勤務間インターバルが長くても、その時間帯に仕事のメールが多い人では、仕事から心理的に離れられず、翌朝まで疲労が残る傾向が報告されています。
ストレスとの関係についても、国内の日勤労働者1万3,000人以上を対象とした調査で、勤務間インターバルが11時間未満の人では、十分なインターバルと睡眠時間を確保している人と比べて、高ストレス判定との関連が示されました。
仕事のパフォーマンス低下を防ぐ
睡眠不足や疲労が続くと、仕事中の集中力や判断力にも影響します。資料を読んでも内容が頭に入らない、確認に時間がかかる、普段なら気づくミスを見落とすといった状態につながります。
労働安全衛生総合研究所のレビューでも、短い睡眠時間は健康だけでなく、安全や生産性にも悪影響を及ぼすと整理されています。また、勤務間インターバルが短い交替制勤務を減らした海外の介入研究では、不眠や日中の眠気が改善したと報告されています。
国内の日勤労働者を対象とした研究でも、勤務間インターバルと睡眠時間の両方が短い人では、精神的不調に加えて、出勤していても十分なパフォーマンスを発揮できない「プレゼンティーズム」との関連が強く示されました。
参考:労働安全衛生総合研究所/勤務間インターバル制度の利点と課題―労働者の睡眠と健康の観点から―
参考:過労死等防止調査研究センター/勤務後の仕事メールとオフの長さがサイコロジカル・ディタッチメント、活動量計による睡眠、唾液コルチゾールに及ぼす影響
参考:労働安全衛生総合研究所/勤務間インターバルと睡眠時間の組み合わせと職業性ストレス簡易調査票による高ストレス判定及び病気欠勤の関連
参考:International Journal of Environmental Research and Public Health/The Joint Association of Daily Rest Periods and Sleep Duration with Worker Health and Productivity
参考:Sleep/Effects of a work schedule with abated quick returns on insomnia, sleepiness, and work-related fatigue
勤務間インターバル制度を導入する手順
勤務間インターバル制度を導入するときは、「何時間空けるか」だけを決めるのではなく、現在の働き方を確認したうえで、自社で実際に運用できるルールを組み立てます。
まず、終業時刻と翌日の始業時刻、残業が集中している部署や時期、交替勤務の有無、通勤時間などを確認して、その結果をもとに、インターバル時間、対象者、翌日の始業時刻の扱い、例外となるケースを決めます。
制度の内容が固まったら、就業規則などに反映し、管理職と従業員へ周知します。
現在の勤務実態を確認する
まず、従業員が実際にどのくらいの勤務間インターバルを取れているのかを確認します。
具体的には、直近1~3か月程度の勤怠データから、「実際の終業時刻」と「翌日の実際の始業時刻」を確認します。終業から次の始業までの時間を計算し、短くなっている従業員や部署を洗い出します。
次に、インターバルが短くなる理由を整理します。「恒常的な残業」「月末や決算期の繁忙」「夜間の顧客対応」「海外とのオンライン会議」「交替勤務」「突発的なトラブル」など、理由によって必要な対策は変わります。
ここまで確認しておくと、「11時間にしたいが、どの部署で運用上の問題が出るのか」「始業を遅らせれば対応できるのか」「そもそも残業を減らす必要があるのか」を具体的に検討することができます。
インターバル時間と対象者を決める
勤務実態を把握したら、次にインターバル時間と対象者を決めます。
たとえば11時間とする場合、22時に退勤した人は翌朝9時以降、23時に退勤した人は翌朝10時以降の始業とします。
日本では、一般の労働者について「必ず○時間にしなければならない」と一律の時間数が法律で決められているわけではありません。厚生労働省は、睡眠時間、生活時間、通勤時間、交替勤務などの勤務形態を踏まえて、実際に休息を取れる時間を設定するよう求めています。
対象者については、正社員だけなのか、契約社員やパートタイマーも含めるのか、交替勤務者やフレックスタイム制の従業員をどう扱うのかを整理します。
対象を限定する場合は、「なぜその人たちを対象外にするのか」まで明確にしておきます。単に管理が面倒だから除外するのではなく、勤務形態や業務内容を確認したうえで判断します。
始業時刻を繰り下げる場合のルールを決める
次に決めるのが、残業などでインターバルの終了時刻が翌日の所定始業時刻を超えた場合の扱いです。
厚生労働省の導入例では、インターバルの終了時刻が通常の始業時刻を過ぎる場合について、複数の運用方法が示されています。
一つは、単純に始業時刻を9時から10時へ繰り下げる方法です。もう一つは、実際の勤務開始は10時としたうえで、9時から10時までの1時間を勤務したものとして扱う方法です。この場合、従業員は9時から働く必要はなく、遅刻扱いや賃金控除もしません。
どちらの方法を採用する場合も、始業時刻の変更方法や勤怠の記録、給与計算の扱いまで事前に決めておくことが大切です。
どちらの方法にするかは、会社側であらかじめ決めておきます。あわせて、「誰が始業時刻の変更を承認するのか」「本人から申請が必要か」「勤怠システムにはどう入力するか」まで決めておくと、実際の運用で迷いません。
例外となるケースを決める
勤務間インターバルは原則として毎回確保できる制度にする必要がありますが、突発的なトラブルなどで確保できないケースも想定されます。その場合に備えて、例外となる条件を事前に決めておきます。
「繁忙期だから」「仕事が多かったから」と広く例外を認めると、制度そのものが機能しなくなります。例外は、通常の業務調整では対応できないケースに絞ることが重要です。
厚生労働省は、例として、重大なクレームへの対応、設備トラブル、納期の逼迫、予算・決算業務、海外との電話会議、災害などを挙げています。
例外を設ける場合は、「どの業務を対象とするか」だけでなく、「誰が例外と判断するか」「何回まで認めるか」「申請は事前か事後か」まで決めます。
さらに、インターバルを確保できなかった翌日は、始業を遅らせる、業務量を減らすなど、休息を補う方法もあわせて決めておきます。例外を認めることだけをルール化せず、その後の健康確保までセットで考えます。
就業規則に反映して従業員へ周知する
インターバル時間、対象者、翌日の始業時刻、例外の扱いまで決まったら、就業規則などに制度を反映します。
就業規則には、少なくとも「終業から次の始業まで何時間の休息を確保するのか」「インターバル終了時刻が所定始業時刻を超えた場合にどうするのか」を明記します。例外を設ける場合は、その条件も記載します。
始業時刻を繰り下げる制度を採用する場合は、勤怠管理や給与計算との整合も確認します。現場では始業が10時なのに、勤怠システムでは9時から遅刻扱いになる、といった状態を避けるためです。
規則を変更したら、メールを送るだけで終わらせず、具体例を使って説明します。たとえば、「11時間のインターバルを設けた場合、23時退勤なら翌日は10時始業」「始業を遅らせるときは上司へ○時までに連絡する」といった形です。
本格導入前に1~3か月程度の試行期間を設ける方法もあります。試行中に「申請が複雑」「シフトが組めない」「特定部署だけ例外が多い」といった問題が出たら、その原因を確認してルールを修正します。
勤務間インターバル制度は、就業規則に書くだけでは機能しません。誰が、いつ、どのように始業時刻を変更するのかまで決め、管理職と従業員が同じルールで運用できる状態にしてから本格導入することが大切です。
参考:厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」/勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル
勤務間インターバルを形だけの制度にしないために
勤務間インターバル制度を導入しても、帰宅後にメールやチャットへの対応が続けば、仕事から離れて休むことができません。また、特定の部署だけインターバルを確保できない状態が続く場合は、本人の働き方だけでなく、仕事量や人員配置にも目を向ける必要があります。
導入後は、勤務時間外の連絡を減らす、インターバルを確保できなかった理由を記録する、仕事量や人員配置を見直すといった対応を続けます。さらに、残業時間や疲労、ストレスの変化も確認し、制度を導入する前より働き方が改善しているかを検証します。
勤務時間外のメールやチャットを減らす
勤務間インターバルを確保していても、その時間に仕事の連絡が続けば、十分に休息を取ることができません。
日本のIT企業で働く日勤労働者58人を1か月間追跡した研究では、勤務間インターバルが長い場合でも、勤務時間外の仕事メールが多い人では、疲労や仕事から心理的に離れている感覚が悪化する傾向が確認されました。
労働安全衛生総合研究所のレビューでも、勤務間インターバルは時間の長さだけでなく、その時間に仕事から離れられるかどうかも重要だと整理されています。
そのため、インターバルを設けるときは、勤務時間外の連絡方法も一緒に決めます。通常の連絡は翌営業日に送る、夜間に作成したメールは予約送信を使う、業務チャットの通知は勤務後に切る、といったルールです。
緊急連絡が必要な会社では、「夜間に連絡してよいケース」をあらかじめ決めておきます。システム障害、事故、重大な顧客トラブルなどに限定し、翌営業日でも対応できる確認や依頼には使わないようにします。
インターバルを確保できない原因を調べる
勤務間インターバルを確保できなかった人については、「なぜ確保できなかったのか」まで確認します。
まず、直近1~3か月程度について、所定のインターバルを確保できなかった日を一覧にします。記録するのは、従業員または部署、終業時刻、翌日の始業時刻、確保できなかった時間、理由です。
理由は、「通常業務の残業」「繁忙期」「顧客対応」「夜間会議」「システム障害」「遅番から早番へのシフト」などに分けます。分類しておくと、どの仕事や勤務パターンでインターバルが不足しているのかを確認できます。
厚生労働省の勤務間インターバル制度導入・運用資料でも、制度導入後にインターバルの確保状況を確認し、問題があれば原因を洗い出して制度や運用方法を見直す流れが示されています。
仕事量や人員配置を見直す
同じ部署や従業員でインターバルを確保できない状態が続く場合は、仕事量や人員配置を見直します。
最初に、終業が遅くなる原因となっている仕事を洗い出します。そのうえで、「減らせる仕事」「ほかの人に分けられる仕事」「実施する時間を変えられる仕事」に分けます。
毎晩遅い時間に定例会議を開いているなら、開催時間を早めます。特定の担当者しか処理できない仕事が多い場合は、手順書を作り、副担当を決めておきます。
業務を整理しても残業が減らない場合は、人員が足りているかも確認します。恒常的に仕事量が多い部署では、応援要員を入れる、配置人数を増やす、他部署へ業務を移すといった対応も検討します。
残業時間やストレスの変化を確認する
制度を導入したら、実際に働き方が変わったかを確認します。
まず、導入前と導入後で、勤務間インターバルを確保できた割合、深夜まで働いた回数、月間の残業時間などを比較します。導入前の3か月と導入後の3か月を比べると、特定の部署だけ改善していないといった傾向も確認することができます。
あわせて、「朝に疲れが残っていないか」「十分に眠れているか」「仕事が終わったあとも緊張が続いていないか」など、従業員の実感も確認します。短いアンケートや面談を定期的に行う方法でも構いません。
ストレスチェックの集団分析も、参考にします。仕事の量的負担、仕事のコントロール、上司・同僚からの支援などと、残業時間などのデータを組み合わせて職場の傾向を確認することができます。
さらに、残業時間、休息時間、睡眠、従業員の声など複数の情報を組み合わせて、制度導入前より負担が減ったかを確認します。
参考:過労死等防止調査研究センター/勤務後の仕事メールとオフの長さがサイコロジカル・ディタッチメント、活動量計による睡眠、唾液コルチゾールに及ぼす影響:IT労働者を対象とした1か月間の観察調査
参考:労働安全衛生総合研究所/勤務間インターバル制度の利点と課題―労働者の睡眠と健康の観点から―
参考:厚生労働省/職場環境改善に向けた分析ツール活用例
まとめ
勤務間インターバル制度は、仕事を終えてから次の勤務を始めるまでに休息時間を確保し、睡眠不足や疲労の蓄積を防ぐための制度です。
ストレスチェックの集団分析も、あわせて活用することができます。たとえば、勤務間インターバルを確保できていない部署で、仕事の量的負担も高い場合は、業務量や人員配置を優先して見直します。上司や同僚からの支援が低い場合は、業務分担や相談体制に問題がないかを確認します。
勤務間インターバルの取得状況、残業時間、ストレスチェックの集団分析などをあわせて見ることで、「どの部署に負担が集中しているのか」「何を改善すべきか」を具体的に検討することができます。
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