職場のマキャベリストとは?策略家への対処法

マキャベリストとは、一般に、自分の目的を達成するために相手を巧みに動かしたり、状況に応じて言動を使い分けたりする傾向が強い人を指します。心理学では、このような傾向は「マキャベリアニズム」と呼ばれ、他者を操作しようとする姿勢や、自己利益を優先する考え方、他者への不信などと関連するパーソナリティ特性として研究されています。
なお、「マキャベリスト」は医学的な診断名ではなく、マキャベリアニズム傾向が高い人を説明する際に使われる表現です。心理学では、マキャベリアニズムは自己愛傾向、サイコパシー傾向とともに「ダーク トライアド」の一つとして扱われることがあります。
この記事では、マキャベリストの考え方や職場での言動、見抜きにくい理由、巻き込まれないための対処法を紹介します。

マキャベリストとは

マキャベリストとは、自分の目的を達成するために、相手の考えや立場を読みながら、人間関係を戦略的に動かそうとする傾向が強い人を指します。必要に応じて相手への態度を変えたり、ときには他人を利用したりすることもあります。

心理学では、「マキャベリアニズム」と呼ばれるパーソナリティ特性の一つとして研究されています。他者を簡単には信用しない見方、自己利益を優先する姿勢、相手を自分の目的に沿って動かそうとする対人操作などと関連づけられています。
なお、「マキャベリスト」という医学的な診断名があるわけではありません。

職場では、上司には従順でも部下には冷淡に接する、自分に有利な情報だけを周囲に伝える、他人の成果を自分の実績として見せるなどの形で表れることがあります。
また、マキャベリズム傾向の高い人が、必ずしも分かりやすく周囲と衝突するとは限りません。相手や状況をよく見て振る舞いを変えるため、社内調整や交渉が巧みで、「立ち回りがうまい人」「仕事ができる人」と受け取られる場合もあります。

利己的で冷徹な「策略家」

マキャベリストを分かりやすく表すなら、「自分の目的や利益のために、人間関係を戦略的に利用する傾向が強い人」といえます。

心理学におけるマキャベリアニズムは、一つの性質だけを指す言葉ではありません。研究や尺度によって整理の仕方には違いがありますが、他者への不信、自己利益を優先した対人操作、他人をコントロールしようとする姿勢、地位への欲求などが関連する要素として研究されています。別の研究では、冷笑的な人間観、実利を重視する考え方、感情に左右されない態度、長期的な計画、他者を操作する行動などを含む多面的な概念として整理されています。

ここでいう「冷徹」は、いつも怒っている、周囲に暴言を吐くといった意味ではありません。むしろ、人間関係を感情だけで捉えず、「誰と関係を築けば自分に有利か」「どの情報を誰に伝えるか」といった損得や目的を考えて行動する傾向を指します。ただし、こうした行動が見られたからといって、その人を直ちに「マキャベリスト」と決めつけることはできない点には、注意が必要です。

日本では、マキャベリアニズムを測定する「Mach IV」の日本語版も作成されています。大学生だけでなく、短期大学生や専門学校生を含む調査によって、内的一貫性や再検査信頼性、他の心理尺度との関連から妥当性が検討されました。
したがって、マキャベリアニズムは単に「感じの悪い人」や「ずるい人」を表す俗語ではなく、心理学で長く研究されてきたパーソナリティ特性の一つです。
参考:日本パーソナリティ心理学会/マキャベリアニズム尺度日本語版の作成とその信頼性・妥当性の検討

「目的のためなら手段を選ばない」は本当か

マキャベリストは、「目的のためなら手段を選ばない人」と表現されることがあります。ただし、これはマキャベリアニズムを分かりやすく言い換えたものです。また、「成功するためなら何でもする人」と理解するのも、極端です。

マキャベリアニズムの研究では、他者を冷めた目で見る傾向、道徳的な原則よりも実利を重視する考え方、自分の利益につながる目標に向けた長期的な計画、他者を操作する行動などが関連する要素として挙げられています。つまり、単にルールを破ったり、思いつきで人を傷つけたりすることよりも、「自分にとって有利な結果を得るために、人や状況を戦略的に利用する人」と捉えるのが適切です。

職場でいえば、自分に有利な情報だけを選んで伝える、相手によって説明の仕方を変える、意思決定に影響力を持つ人との関係を築いてから自分の提案を通そうとする、といった行動が例として考えられます。

もう一つ押さえておきたいのが、マキャベリアニズムでは「計算して動く」という側面が重視されていることです。先の利益まで考えて計画を立て、相手との関係や行動を起こすタイミングを選ぶ傾向が研究されていて、その意味では、衝動的にルールを破る人というより、「どう動けば自分に有利な結果になるかを考えて行動する人」と捉えたほうが、マキャベリアニズムの概念に近いでしょう。

なお、マキャベリアニズム傾向が高ければ、職場で必ず対人操作をするという意味ではありません。確かに職場研究では、マキャベリアニズムと知識の隠蔽や感情的な操作との関連が報告されてはいますが、倫理的なリーダーシップが高い環境では同じ関連が確認されなかった研究もあり、実際の行動には職場環境も関係するとされています。

参考:Social Behavior and Personality/Proposing a multidimensional Machiavellianism conceptualization

サイコパスやナルシストとは何が違う?

マキャベリアニズムは、サイコパシー傾向、自己愛傾向とともに、心理学で「ダーク・トライアド」と呼ばれています。3つには、他者への冷淡さや自己中心的な考え方など共通する部分がありますが、それぞれ重視される傾向は異なります。2002年にPaulhusとWilliamsが提唱した研究でも、3特性には相関がある一方、それぞれ異なる概念であることが示されました。

大まかに整理すると、マキャベリアニズムでは「自分の目的のために、相手を戦略的に動かそうとする傾向」が重視されます。日本の研究でも、マキャベリアニズムはダーク・トライアドの中で、とくに他者操作との関係が強い特性として扱われています。

一方、自己愛傾向は、自分を特別な存在として捉えることや、周囲から高く評価されたいという意識などと関連します。サイコパシー傾向では、他者への冷淡さや罪悪感の乏しさなどに加え、衝動性を含む側面も研究されています。

そのため、マキャベリアニズムは「衝動的に行動する」というより、相手や状況を見ながら、自分に有利な結果になるよう計算して動くという説明のほうが概念に近いといえます。ただし、ここまでを「マキャベリストは冷静、サイコパスは衝動的」と単純に二分するのも正確ではありません。使う尺度によって測定される内容が異なり、両者にはかなり重なる部分があります。

ただし、マキャベリアニズム、サイコパシー、ナルシシズムは、きれいに3つへ分けられるわけではありません。とくにマキャベリアニズムとサイコパシーは共通する部分が多く、研究でも両者の違いをどう捉えるかが議論されています。そのため、「この人はマキャベリスト」「この人はサイコパス」と人を単純に分類するより、いくつかの性格傾向が重なって表れるものとして考えるほうが適切です。
参考:PubMed/Does Machiavellianism meaningfully differ from psychopathy? It depends
参考:日本パーソナリティ心理学会/日本語版Dark Triad Dirty Dozen(DTDD-J)作成の試み

職場のマキャベリストにありがちな行動

職場でマキャベリアニズム傾向の高い人は、必ずしも高圧的だったり、露骨に周囲を攻撃したりするわけではありません。相手によって態度を変えたり、状況を見ながら自分に有利な立場をつくろうとしたりします。

心理学の研究では、マキャベリアニズムは、相手を自分の意図に沿って動かそうとする「他者操作」と関連しています。操作といっても、強く命令するだけではありません。相手を持ち上げる、自分を弱く見せる、感情に訴えるなど、方法はさまざまです。
そのため、周囲からは協調的で、人付き合いがうまい人物に見えることもあります。
ここでは、マキャベリアニズム傾向が職場で表れた場合に、どのような言動として現れるのかを具体的に見ていきます。
参考:日本パーソナリティ心理学会/Dark Triadと他者操作方略との関連

上司と部下で態度を使い分ける

マキャベリアニズム傾向の高い人は、自分にとって相手がどのような立場にいるかを見ながら、接し方を変える場合があります。たとえば、評価や昇進に影響する上司には協力的に振る舞う一方、部下や後輩には冷淡に接するといったケースです。

ただし、上司と部下への態度が違うだけで、マキャベリストと判断することはできません。ポイントは、自分に有利な評価や立場を得るために、相手との関係や見せ方を意識的に変えているかという点です。

たとえば、評価に影響する上司の前では協力的な姿勢を強く見せたり、自分の実績や貢献が伝わるように振る舞ったりすることがあります。こうした「相手に自分をどう見せるか」を調整する行動は、心理学では「印象管理」と呼ばれ、マキャベリアニズムとの関連も研究されています。

相手に好印象を与えようとする行動は、必ずしも露骨なお世辞として表れるわけではありません。職場での「取り入り」を調べた研究では、周囲の状況を読み、相手に合わせて振る舞う力が高い人ほど、上司から「自分に取り入ろうとしている」と受け取られにくい傾向が示されています。つまり、相手の意見に自然に同調したり、相手の実績をさりげなく評価したりするなど、取り入りだと気づかれない形で好印象を与える場合もあるということです。

つまり、相手の意見に自然に同調する、関心を示す、相手の実績をさりげなく評価するなど、普段のやり取りの中で好印象を与えようとする場合もあります。

「二枚舌」で人間関係を動かす

相手によって話す内容を変えること自体は、職場ではそれほど珍しいことではありません。問題になるのは、自分に有利な状況をつくるために、相手ごとに違う情報を伝え、人間関係まで動かそうとする場合です。

たとえば、Aさんには「あなたの意見に賛成です」と伝えながら、Bさんには「実は私もAさんのやり方には困っています」と話すようなケースです。このような場合で、それぞれに違う情報を伝え、自分に都合のよい方向へ相手の判断や人間関係を動かそうとしているなら、マキャベリアニズムに見られる他者操作の傾向と重なります。

日本の研究でも、マキャベリアニズム傾向の高い人は、相手を強く押すだけでなく、自分を弱く見せたり、相手の感情に訴えたりするなど、状況に応じて働きかけ方を変える傾向が示されています。つまり、いつも強引に人を動かすのではなく、相手に合わせて接し方や伝え方を変えることもあるということです。
職場を対象とした2024年の研究でも、マキャベリアニズムは、相手の感情に働きかけて行動を変えようとする「感情的操作」と関連し、さらに反生産的職務行動との関連も報告されています。

そのため、「マキャベリスト=嘘をつく人」と単純に考えるより、自分の目的に合わせて、誰に何を伝え、どのように働きかけるかを変える傾向として捉えたほうが、研究上のマキャベリアニズムに近いでしょう。
参考:日本パーソナリティ心理学会/Dark Triadと他者操作方略との関連
参考:Personality and Individual Differences/Emotional manipulation in the workplace

他人の成果を自分の手柄にする

マキャベリアニズム傾向の高い人は、自分の評価や立場を高めるために、他人の成果や人間関係を利用することがあります。職場では、その一例として、他人の貢献を自分の実績のように見せる行動が考えられます。

たとえば、チームで作った企画を「自分が考えた」と上司に報告したり、同僚が出したアイデアを自分の提案のように会議で話したりするケースです。こうした行動は、職場研究では、他人の貢献を自分のものとして扱ったり、自分の役割を実際以上に大きく見せたりする「credit claiming」として扱われています。

他人の成果を自分の実績のように見せる行動は、マキャベリアニズムに見られる自己利益を優先した振る舞いの一例です。とくに、こうした行動を繰り返し、周囲の貢献を利用して自分の評価や立場を高めようとする場合には、その傾向が表れていると考えられます。

自分のミスを別の人になすりつける

マキャベリアニズム傾向の高い人は、自分の評価を守るために、ミスの責任を別の人へ向けようとすることがあります。たとえば、自分も判断に関わっていたのに「上司に言われた通りにしただけです」「担当者からそう聞いていました」と説明し、自分の責任を小さく見せるようなケースです。
さらに、問題が起きた後になって説明を変えたり、「最初から反対していた」と後付けで主張したりして、失敗との距離を取ろうとする場合もあります。

ポイントは、単に言い訳をすることではなく、自分が責任を負わない形になるよう、周囲の発言や判断を利用することです。

責任転嫁そのものは、マキャベリアニズムだけに見られる行動ではありませんが、ミスが起きるたびに誰かの判断だったことにしたり、自分の関与だけを小さく説明したりする行動が続く場合には、自己利益を優先し、周囲を利用して自分への不利益を避けようとするマキャベリアニズムの傾向と重なります。

情報を抱え込み交渉材料にする

職場では、特定の情報や知識を持っている人に仕事が集まったり、判断を頼られたりすることがあります。マキャベリアニズム傾向の高い人は、こうした情報を周囲と共有するよりも、自分の立場や利益のために利用する場合があります。

たとえば、同僚から必要な情報を聞かれても一部しか伝えない、詳しい内容を知っているのに「よく分からない」と答える、すぐに共有できる情報をあえて伏せるといった行動です。心理学では、このように求められた知識や情報を意図的に隠す行動を「知識隠蔽(knowledge hiding)」と呼びます。知識隠蔽には、知らないふりをする、質問とは違う情報を伝える、理由をつけて共有を断るといった行動も含まれます。

実際、マキャベリアニズムと知識隠蔽との関連は複数の研究で報告されています。2018年の職場研究では、倫理的リーダーシップが低い環境において、マキャベリアニズム傾向の高さと知識隠蔽の増加との関連が確認されました。また、2021年のレビューでも、マキャベリアニズムを含むダーク・トライアドと知識隠蔽との関連を扱った研究が整理されています。
に保ち、それを自分の立場を有利にするために利用しているかが、このテーマで見るポイントです。
参考:Frontiers in Psychology/Angels and Demons: The Effect of Ethical Leadership on Machiavellian Employees’ Work Behaviors
参考:Frontiers in Psychology/Knowledge Hiding: Current Research Status and Future Research Directions

なぜマキャベリストは職場で見抜かれにくいのか

マキャベリストというと、冷たい態度で周囲を利用する、分かりやすく警戒すべき人物を想像するかもしれません。しかし、職場では必ずしもそのように見えるとは限りません。

マキャベリアニズム傾向の高い人の中には、相手の立場や職場の人間関係をよく見ながら、「誰にどのように接すれば自分にとって有利か」を考えます。上司には協力的に接する、影響力のある人と関係を築く、相手に合わせて話し方を変えるなど、露骨に人を動かすのではなく、普段の人間関係の中で自分に好意的な印象を持ってもらおうとするわけです。

さらに、職場での対人関係をうまく調整する「政治的スキル」が高い場合、マキャベリアニズム傾向が高くても、同僚から仕事上の評価を高く受けるケースが見られます。

つまり、マキャベリストが見抜かれにくい理由の一つは、いつも強引に人を利用するわけではなく、相手や状況に合わせて自然に振る舞い、ときには周囲から高く評価されることもある点にあります。

一見「仕事ができる人」に見えることがある

マキャベリアニズム傾向の高い人でも、「政治的スキル」の高さによって、周囲からの評価が変わることが研究で示されています。
ここでいう政治的スキルとは、単に「社内政治がうまい」という意味ではありません。相手の考えや職場の状況を読み、人間関係を築きながら、自分の働きかけを自然に受け入れてもらう対人能力を指します。

2020年の研究では、政治的スキルが高い人は、マキャベリアニズム傾向が高くても、同僚からキャリア上の役割遂行を高く評価されていました。
ただし、これは「マキャベリストほど仕事ができる」という意味ではありません。実際の能力と、周囲からどう評価されるかは別の問題です。相手や状況に合わせた振る舞いが上手ければ、周囲からは協調的で仕事のできる人に見えることがあります。その結果、自己利益を優先する傾向が周囲から見えにくくなる場合もあるということです。

参考:Journal of Vocational Behavior/Political skill camouflages Machiavellianism: Career role performance and organizational misbehavior at short and long tenure

相手によって態度や距離感を巧みに変える

マキャベリアニズム傾向の高い人は、相手との関係が自分にどのような利益をもたらすかを考えながら、接し方を変えることがあります。たとえば、これまであまり接点のなかった役員でも、昇進や重要なプロジェクトに関わると分かれば積極的に話しかける。一方、自分の評価や仕事に影響しなくなった相手とは、以前ほど関わらなくなるといった行動です。

研究でも、マキャベリアニズムは、自分を相手にどう見せるかを調整する「印象管理」の動機と関連しています。また、周囲の状況を読み取る力や、仕事上の人脈を築く力が、その関係にかかわることも報告されています。つまり、誰に対しても同じ態度を取るのではなく、相手の立場や自分との関係を見ながら、接し方を調整することがあるということです。

そのため、同じ人物でも、接する相手によって印象が大きく異なる場合があります。上司には協力的で礼儀正しく、同僚とは親しく付き合い、部下には別の態度を見せるといったケースです。
相手や状況に合わせて振る舞いが違っても、それがごく自然であれば、周囲には単に「人付き合いがうまい人」と映ります。

参考:Personality and Individual Differences/How Machiavellianism engenders impression management motives: The role of social astuteness and networking ability
参考:Journal of Vocational Behavior/Political skill camouflages Machiavellianism: Career role performance and organizational misbehavior at short and long tenure

犯罪行動との関連を調べた研究もある

マキャベリアニズムと犯罪行動との関係を調べた研究もあります。

2024年に公表された研究では、セルビアの受刑者471人を対象に、マキャベリアニズム、サイコパシー、ナルシシズム、サディズムからなる「ダーク・テトラッド」と犯罪歴との関係が調べられました。その結果、マキャベリアニズムは、再度の服役、有罪判決数、将来の再犯リスクなど、複数の犯罪関連指標と関連していました。ほかの3特性も含めて分析した場合にも、マキャベリアニズムは複数の指標との関連が残っています。

一方で、この研究では、マキャベリアニズムを含む4つの特性のいずれも、暴力犯罪との有意な関連は確認されませんでした。対象も一般の会社員ではなく、すでに服役している人たちです。そのため、この結果を職場の人に当てはめて、「マキャベリストは犯罪者になる」と解釈するのは適切ではありません。

殺人で服役している人を調べた別の研究でも、同様に単純ではない結果が出ています。セルビアの男性受刑者247人を比較したところ、殺人で服役している人は、その他の暴力犯罪や非暴力犯罪で服役している人よりマキャベリアニズムが高いという結果にはなりませんでした。研究者も、殺人という犯罪そのものとダークな性格特性を一律に結びつけることには慎重な見方を示しています。

つまり、マキャベリアニズムと一部の犯罪歴との関連を示す研究はありますが、「冷静に人を操る人=暴力的で危険な人物」というイメージとは分けて考える必要があります。
参考:Current Psychology/Machiavellianism as a crucial Dark Tetrad trait for the prediction of life-course criminal behavior

職場のマキャベリストへの対処法

マキャベリアニズム傾向のある相手に対して、こちらも駆け引きや情報操作で対抗するのは、避けましょう。相手との「読み合い」に勝とうとするより、個人の裁量だけで状況を動かせないよう、仕事の進め方を整えるほうが現実的です。

たとえば、重要な指示や合意事項はメールやチャットに残す、必要な情報はチームで共有する、担当者と責任範囲を明確にする、重要な判断を一人だけに任せないといった方法があります。こうして経緯を確認できる状態にしておけば、「言った・言わない」「聞いていない」といった問題にも対応できます。
人物を評価するのではなく、問題となる行動を具体的に確認し、それを繰り返せない仕事の進め方を考えます。

マキャベリアニズム傾向があっても、職場のルールや上司の対応によって、実際の行動への表れ方は変わります。研究でも、公正さやルールを重視する上司のもとでは、知識隠蔽や感情的な操作との関連が弱まることが示されています。
参考:Frontiers in Psychology/Angels and Demons: The Effect of Ethical Leadership on Machiavellian Employees’ Work Behaviors

口約束を避けて記録を残す

マキャベリストとのやり取りでは、「言った・言わない」の勝負に持ち込まれないことが重要です。業務上の指示や役割分担、納期、変更事項などは、可能な範囲でメールやチャット、議事録に残しておきましょう。

たとえば、口頭で指示を受けた後に「先ほどのお話について、〇日までにAを対応するという認識で進めます」と送っておくだけでも、後から話が変わった際に経緯を確認することができます。これは相手を疑って証拠集めをするという話ではありません。普通の業務管理として記録を残すことが、自分を守ることにもつながります。

「そんなことは言っていない」「あなたが勝手に判断した」と話を変えられたとき、記憶だけで対抗するのは難しいものです。「言った・言わない」は、策略を使う人にとって都合のよい舞台です。その舞台そのものを用意しないことが、一つの対策になります。

情報と権限を一人に集中させない

重要な情報や判断権限が特定の人に集まっている職場では、その人を通さなければ仕事が進まない状態が生まれます。たとえば、顧客とのやり取りを一人しか把握していない、重要なファイルを特定の担当者しか確認できない、上司への報告が一人を経由しなければ届かないといったケースです。

これまでご紹介してきたとおり、マキャベリアニズムとの関連が研究されている行動の一つに「知識隠蔽」があります。必要な情報を意図的に伝えない、知らないふりをするなどの行動です。情報を持つ人が限られているほど、何を誰に伝えるかを一人の判断で決められる範囲も広がります。

対策としては、重要な情報を共有フォルダや業務システムに残す、案件の経緯を複数人で確認できるようにする、承認や判断の権限を特定の人だけに集中させないといった方法があります。個人でも、重要なやり取りはメールやチャットに残し、必要な関係者と進捗を共有しておけば、「その人しか知らない」という状態を減らすことができます。
ポイントは、相手がマキャベリストかどうかを見抜くことではありません。誰かが情報を抱え込んでも、それだけで仕事や判断を左右できない仕組みにしておくことです。

人格ではなく「実際の行動」を問題にする

職場で問題が起きたときは、「あの人はマキャベリストだ」「性格が腹黒い」と人物そのものを評価するのではなく、実際に何が起きたのかを整理しましょう。
そもそも、マキャベリアニズムは心理学で研究されているパーソナリティ特性であり、簡単に判定できるものではありません。

上司や人事に相談する場合も、「会議ではAと説明していたのに、翌日のメールではBと書いていた」「担当者が作成した資料を、自分だけの成果として上司に報告した」「必要な資料を共有せず、業務が止まった」など、確認できる事実を具体的に伝えます。
日時、場所、発言、メールやチャットの内容、その結果として仕事にどのような影響が出たのかまで整理しておけば、問題の所在も明確になります。「8月20日の会議でこう発言し、翌日のメールでは違う説明をしている」であれば、記録をもとに事実関係を確認することができます。

つまり、「どんな人なのか」ではなく、「何をしたのか」を問題にすることがポイントです。相手の性格をめぐる議論にせず、情報隠蔽、責任転嫁、成果の横取りなど、業務上の具体的な行動に焦点を当てることで、職場として対応すべき問題も整理することができます。
参考:日本パーソナリティ心理学会/マキャベリアニズム尺度日本語版の作成とその信頼性・妥当性の検討

一人で対抗せず上司や人事と情報を共有する

マキャベリアニズム傾向のある相手と、一対一で駆け引きを続ける必要はありません。「今度こそ矛盾を指摘しよう」「相手のやり方を見抜いて対抗しよう」と考えていると、本来の仕事よりも相手の言動に意識を取られてしまいます。

情報を隠された、責任を押しつけられた、事実と異なる説明をされたなど、業務に影響する問題が続いている場合は、日時や具体的なやり取りを記録したうえで、上司や人事、社内の相談窓口に共有します。「いつ、何があり、仕事にどのような支障が出たのか」を伝えることがポイントです。

また、こうした人間関係によって不安や疲労が続いたり、仕事への意欲が落ちたりしている場合は、自分自身のストレス状態にも目を向けましょう。ストレスチェックは、相手の性格を判定するための制度ではなく、労働者自身がストレスの状態に気づき、メンタルヘルス不調の予防につなげることを主な目的としています。高ストレス者として選定され、面接指導が必要と判断された場合には、本人の申出によって医師の面接指導を受けることもできます。

企業側では、ストレスチェックの集団分析を職場環境の改善に活用することができます。これは「問題のある社員」を探すためのものではありません。部署や職場単位で結果を確認し、仕事の量や質、周囲からの支援、人間関係などに負担が集中していないかを検討するためのものです。個人対個人の対立だけで終わらせず、仕事の進め方や情報共有、相談体制に問題がないかまで確認することで、組織として対応できる範囲が広がります。
参考:厚生労働省/ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策

 

ストレスチェッカーとは

「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しています。
また、無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下である「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場でも実施義務化が進むため、早めの準備が大切です。
導入や運用については、ぜひお気軽にご相談ください。

ストレスチェック導入のご相談はこちら

 

まとめ

マキャベリストとは、自分の利益や目的を優先し、人間関係や情報を戦略的に扱う傾向が強い人を指します。職場では、上司と部下で態度を変える、相手によって発言を使い分ける、情報を抱え込むといったタイプです。
マキャベリストが厄介なのは、政治スキルが高い場合、「仕事ができる人」と評価されながら、その計算高さが周囲から見えにくくなることです。対処する際は、相手を論破しようとせず、記録を残す、情報や権限を一人に集中させない、具体的な行動を上司や人事と共有するといった方法が現実的です。

こうした人間関係が続くと、相手への対処に気を取られ、自分自身の疲労や不安、仕事への意欲低下を見過ごしてしまうこともあります。そこで、自身のストレス状態を確認する機会の一つとなるのがストレスチェックです。

ストレスチェックは、労働者が自分のストレス状態に気づき、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことなどを目的とした制度です。現在は労働者50人以上の事業場に実施が義務付けられており、2028年4月1日からは50人未満の事業場にも義務化されます。人間関係に「勝つ」ことだけを考えるのではなく、自分がどれほど消耗しているのかにも目を向けることが大切です。

ストレスチェックを活用すれば、部署ごとの負荷や心理的な傾向を可視化でき、早めの相談体制づくりや業務改善につなげられます。失敗を責めるのではなく、学びながら前に進む職場づくりにも役立ちます。
ストレスチェッカーは、官公庁・上場企業・医療機関などで採用されている国内最大級のストレスチェックツールです。自動リマインド、面接指導者管理、進捗確認機能を標準搭載し、2025年5月からは無料プランでも「プレゼンティーイズム(生産性低下)」の測定に対応しております。
導入方法や実施方法など、お気軽にお問合せください。

    あわせて読みたい

    >ストレスチェックサービスおすすめ22選

    >ジョハリの窓とは?分かりやすく解説

    >マイクロアグレッションとは?

    >メンタルタフネスとは?高める方法は?

    >アクティブレストとは?効果は?

    >ソーシャル・ジェットラグとは?

    >マインドワンダリングとは?産業医監修

    >自己承認力とは?高める方法は?

    >リアリティショックとは?対策は?

    >ジョブ・クラフティングとは?産業医 監修

    >どうにでもなれ効果とは?ストレスとの関係は?

    >リバースメンターとは?世代間ギャップ対策

    >役割葛藤とは?対処法は?

    >隠れ疲労とは?症状とメカニズムを解説

    >職場における「心のブレーキ」対策

    >気分が落ち込む原因と対処法

    >インポスター症候群とは?公認心理師 監修

    >入社後ギャップとは?原因と対処法を解説

    >職場の人間関係に疲れたら読むコラム

    >ポモドーロ・テクニックとは?効果は?

    >職場の人間関係がギスギスしている時の対処法

    >WOOPの法則とは?実践例を解説

    >仕事のストレス解消法とは?職種別の対処法も紹介

    >ハイブリッドワークとは?メリットと導入法を解説

    >アクティブリカバリーとは?

    >透明性の錯覚とは?職場でどう対応すべき?

    >計算高い人にストレスを感じた時の対処法

    >鈍感力とは?改めて注目される理由とは?

    >人間関係リセット症候群とは?公認心理師監修

    >つながらない権利とは?今すべき対応は?

    >対人恐怖とは?原因と対策を解説

    >コーヒーナップとは?方法と注意点を解説

    >職場の孤立|原因・対処法と会社の対策

    >エイジハラスメントとは?職場を壊す年齢いじり

    >グッドハートの法則とは?分かりやすく事例で解説