
仕事のストレスが溜まった時に大切なのは、ただ我慢するのではなく、自分の状態に合った方法をいくつか持っておくことです。
この記事では、ストレスコーピングやコラム法、マインドフルネスなど、今日から試せるストレス解消の方法に加え、デスクワーク、営業・接客、看護・介護、企画職など職種別の対処法も紹介します。
目次
仕事のストレスを解消する方法
ストレスへの対処法は一つではありません。
気分転換が合う場面もあれば、考えを書き出した方がよい場面、いったん仕事から意識を離した方がよい場面もあります。厚生労働省の「こころの耳」でも、自分の状態に気づき、リラクセーションや運動など自分に合ったセルフケアを取り入れることが案内されています。
まずは全部を実践しようとせず、「これなら今日できそう」と思える方法を一つ試してみてください。
参考:厚生労働省「こころの耳」/手軽にできるこころのセルフケア
自分専用のストレスコーピングリストを作る
ストレスを感じてから「どうしよう」と考えるより、あらかじめ自分なりの対処法をいくつも用意しておくと、その日の状態に合わせてストレスへの対処法をスムーズに選ぶことができます。
たとえば、「10分歩く」「好きな音楽を1曲聴く」「同僚に話す」「紙に不満を書く」「温かい飲み物を飲む」「仕事用のチャットを閉じる」など、実際にできる行動をできるだけ具体的に書き出しておきます。「旅行に行く」のように時間や費用が必要なものだけでなく、1~5分でできるものも入れておくのがポイントです。
さらに、「気分を変えたいとき」「頭が疲れているとき」「怒っているとき」など、状況別に分類しておくとスムーズに選ぶことができます。実際に試した後に「少し楽になった」「これは合わなかった」と記録し、リストを更新していきましょう。他人に効いた方法ではなく、自分に効く方法を集めていくことが大切です。
参考:厚生労働省/こころと体のセルフケア
コラム法(思考記録)で頭の中を整理する
嫌な出来事が頭から離れないときは、コラム法(思考記録)を試してみましょう。
コラム法は認知行動療法で用いられる方法の一つで、出来事と、そのとき浮かんだ考えや感情を分けて整理します。
たとえば、上司から資料の修正を求められて「自分は仕事ができない」と落ち込んだ場合、「資料の修正を指示された」が出来事、「自分は仕事ができない」が頭に浮かんだ考えです。この二つを分けるだけでも、自分が何に反応しているのかが見えてきます。
厚生労働省の認知療法・認知行動療法資料では、状況、気分、自動思考、根拠、反証、バランスのよい考え、心の変化などを書き出す「7つのコラム」が紹介されています。最初からすべて埋める必要はありません。「何があったか」「どう感じたか」「その瞬間、何を考えたか」の3項目だけでも構いません。頭の中だけで考え続けるのではなく、文字にして外へ出すところから始めてみましょう。
参考:厚生労働省/うつ病の認知療法・認知行動療法 患者さんのための資料
ストレスを強める考え方を見直す
同じ出来事でも、それをどう受け止めるかによって気持ちは変わります。
たとえば、仕事で一つミスをしたときに、「修正すればいい」と考える場合と、「こんなミスをする自分はダメだ」と考える場合では、後者の方が自分を強く追い込んでしまいます。
ここで重要なのは、無理にポジティブ思考へ変えることではありません。「本当にそこまで言い切れるのか」と、別の見方がないか確認することです。
「プレゼンで質問に答えられなかった。もう信用を失った」と思ったなら、「信用を失ったと言える事実はあるか」「答えられた質問もあったのではないか」「同僚が同じ失敗をしたら、自分は何と言うか」と問い直してみます。
「失敗した」を「大成功した」に変える必要はありません。「一つ答えられなかったが、次回確認して回答すればよい」程度でも、現実に即した見方になります。
認知行動療法は、こうした認知への働きかけを通じて気分や行動の変化を目指す方法です。自分を責める考えが浮かんだときほど、その考えを事実そのものとして扱わないことが大切です。
参考:厚生労働省「こころの耳」/認知行動療法
マインドフルネス瞑想で「考え続ける時間」を減らす
仕事が終わっているのに、「明日の会議はどうしよう」「あのメールの書き方はまずかったかもしれない」と頭の中だけ勤務が続いてしまうということはないでしょうか。
そんなときに試せるのがマインドフルネス瞑想です。マインドフルネスでは、過去の失敗や未来への不安を追いかけるのではなく、今この瞬間の呼吸や身体感覚などに注意を向けます。考えを無理に消す必要はありません。「また仕事のことを考えていた」と気づいたら、再び呼吸へ注意を戻します。
最初は1~3分でも構いません。椅子に座り、目を閉じるか視線を落とし、息を吸ったときと吐いたときの感覚に意識を向けます。仕事の考えが浮かんでも、「考えてはいけない」と抵抗せず、その存在に気づいてから呼吸へ戻ります。
厚生労働省eJIMでは、マインドフルネスを「判断することなく今この瞬間に注意を向け続ける」実践技法として紹介しています。
なお、マインドフルネスは万能なストレス解消法ではありません。合わないと感じる場合は無理に続けず、散歩や会話、運動など別の方法を選びましょう。
参考:厚生労働省eJIM/瞑想
デスクワーク・ITエンジニア向け|仕事のストレス解消法
デスクワークやITエンジニアの仕事では、画面の注視、同じ姿勢、複数の通知、納期へのプレッシャーなどが重なります。仕事のストレス解消法を休日だけに求めるのではなく、業務中の小休止、終業時の切り替え、軽い運動を一日の中に配置することが大切です。
厚生労働省のガイドラインでも、情報機器を使う作業では、連続作業の途中に小休止を設け、作業後には画面から目を離す、遠くを見る、ストレッチをするといった対応が示されています。まずは「疲れ切ってから休む」のをやめ、カレンダーやタイマーに休止時間を先に入れてみましょう。
ただし、過大な業務量、長時間労働、ハラスメントなどが原因の場合、セルフケアだけでは解決できません。上司や人事、産業医などへの相談も必要です。
参考:厚生労働省/情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて
仕事から意識を切り離す時間をつくる
退勤後もメールやチャットを確認し、未完了の仕事について考え続けていると、職場を離れても休息時間が仕事の延長になってしまいます。
仕事以外の時間に、物理的にも心理的にも仕事から距離を取ることを「心理的ディタッチメント」といいます。労働安全衛生総合研究所は、日本の労働者を対象とした追跡研究をもとに、心理的ディタッチメントが、仕事のストレス要因によって生じる将来の抑うつ症状を和らげる可能性を示しています。
実践する際は、終業前の5分間で「今日終わらなかったこと」「明日最初に取りかかること」を書き出し、業務用アプリを閉じて通知を切ります。在宅勤務なら、パソコンを棚やバッグへ片づける、仕事着から着替える、短い散歩に出るなど、終業を体で認識できる行動を一つ決めてください。仕事のことが浮かんだときは、無理に考えないようにするのではなく、必要な内容だけメモに残して、入浴、料理、音楽、読書など別の行動へ意識を戻します。「考えない」と頑張るより、「明日対応できる状態にして今日は閉じる」と考えるほうが楽に実践できます。
参考:労働安全衛生総合研究所/心理的ディタッチメント:仕事以外の時間に仕事から心理的に距離をとること
軽い運動によるアクティブリカバリーを取り入れる
疲れたときに座ったまま休むだけでなく、散歩やストレッチなどで軽く体を動かす方法を、「アクティブリカバリー」と呼びます。
まずは50~60分作業したら立ち上がり、1~2分間、肩を回す、胸を開く、ふくらはぎを伸ばす、水を取りに行くといった動きを入れてみましょう。昼休みに10分歩く、エレベーターの代わりに一部だけ階段を使う、退勤後に遠回りして帰る方法もあります。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人に対して、個人差を踏まえて強度や量を調整し、今より少しでも多く体を動かすこと、座りっぱなしの時間を長くしないことを推奨しています。継続の目安は、運動量よりも「翌日も繰り返せるか」です。実施前後の肩の重さや気分を10段階で記録すると、自分に合う動きも見つけられます。
ただし、強い疲労、めまい、動悸、痛みがある場合は運動を中止し、医療機関へ相談してください。
参考:厚生労働省 健康日本21アクション支援システム/「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」推奨シート:成人版
営業・接客業向け|仕事のストレス解消法
営業や接客では、商品やサービスの知識だけでなく、相手の感情に合わせて自分の表情や言葉、態度を調整する場面があります。理不尽なクレームを受けても冷静に対応する、商談がうまくいかなくても次の顧客には気持ちを切り替えて接するなど、感情をコントロールすること自体が仕事の一部として重要なケースもあります。
嫌な出来事をなかったことにするのではなく、仕事の外まで必要以上に持ち出さないための区切りをつくってみましょう。
参考:PubMed/Emotional Labor and Burnout: A Review of the Literature
エクスプレッシブ・ライティングで感情を書き出す
顧客から強い言葉をぶつけられた、提案を厳しく否定された、納得できない理由で謝罪を求められた。そんな出来事があった日は、帰宅してからも会話を何度も思い返してしまうことがあります。そのような時に試したい方法の一つが、感じたことや考えたことを文章にする「エクスプレッシブ・ライティング」です。
きれいな文章を書く必要はありません。「今日、一番嫌だったことは何か」「そのとき何を感じたか」「本当は何と言いたかったか」などを、15~20分程度他人に見せない前提で書いてみます。「腹が立った」「悔しかった」「怖かった」といった感情も、そのまま書いて構いません。ポイントは、出来事だけではなく、自分の考えや感情も言葉にすることです。
職場で経験した不公正な出来事を対象にした研究では、感情と考えの両方を書いたグループでは、心理的ウェルビーイングや出来事への解決感が高まり、報復意図が低下しました。また、感情だけを書いたグループと比べて、怒りも低い結果となりました。
一方、エクスプレッシブ・ライティングの効果は研究によって異なり、全員に同じ効果が出るわけではありません。書くことでつらさや不安が強まる場合は、無理に続ける必要はありません。「頭の中に置き続けるより、一度紙の上に出してみる」くらいの感覚で試してみましょう。
参考:PubMed/Healing the wounds of organizational injustice: examining the benefits of expressive writing
仕事と自分を分ける「心理的な境界線」をつくる
「今日の仕事がうまくいかなかったこと」と「自分という人間の価値」は別の問題です。クレームについても、「顧客が怒っている」という事実と、「自分自身が否定された」という解釈を分けて考える必要があります。
そこで意識したいのが、仕事と自分の間に心理的な境界線をつくることです。退勤時に「今日の仕事はここまで」と声に出す、仕事用のスマートフォンやチャットを決めた時間以降は確認しない、帰宅途中に服を着替える、散歩や入浴など毎日の切り替え行動を決めるといった方法があります。
仕事から心理的に離れる「心理的ディタッチメント」は、仕事後の回復を考えるうえで研究されている概念です。2021年のメタ解析では、心理的ディタッチメントを高めるための介入に、小さいながらも有意な効果が確認されています。顧客に誠実に対応することと、顧客の感情まで一日中背負い続けることは同じではありません。仕事が終わったら、自分の日常へ戻るための境界線を意識してみましょう。
参考:PubMed/Interventions for improving psychological detachment from work: A meta-analysis
看護・介護・福祉職向け|仕事のストレス解消法
看護・介護・福祉の仕事では、人の痛み、不安、生活上の困難などに日常的に接します。
しかし、人を支える仕事だからこそ、自分自身の疲労や感情を後回しにし続けないことも重要です。医療従事者を対象とした研究では、マインドフルネスやコンパッション、セルフ・コンパッションなどを取り入れた介入と、ストレスやバーンアウトなどとの関係が研究されています。ただし、個人のセルフケアだけで人員不足や過重労働といった職場の問題を解決できるわけではありません。「自分のケア」と「職場環境の改善」は分けて考えながら、勤務中にも小さな回復の時間をつくっていきましょう。
参考:PubMed Central/Mindfulness, Compassion, and Self-Compassion Among Health Care Professionals: What’s New? A Systematic Review
セルフ・コンパッションで自分への責めを減らす
「もっと早く気づくべきだった」「十分なケアができなかった」「利用者にきつい態度を取ってしまった」。忙しい現場でこうした考えが浮かんだとき、自分への批判を重ねても、起きた出来事そのものは変わりません。
そこで取り入れられる考え方が、セルフ・コンパッションです。
セルフ・コンパッションとは、失敗や苦しさを感じたときに、自分を厳しく責め続けるのではなく、自分にも思いやりを向ける考え方です。
たとえば、「今日の対応は完璧ではなかった。でも、あの状況でできることはした」「疲れて余裕がなくなっている。まずその事実を認めよう」と言葉にしてみます。自分を甘やかして責任から逃げることではありません。改善すべきことは振り返りながら、人格まで否定しないことがポイントです。
医療従事者を対象にセルフ・コンパッション介入を調べた系統的レビューでは、二次的トラウマティックストレスなどについて有望な結果が報告されています。ただし、対象となった研究は少なく、研究の質にも課題があるため、「セルフ・コンパッションを実践すればバーンアウトを防ぐことができる」と断定することはできません。まずは、自分が同僚にかける言葉を、自分自身にも向けてみるところから始めてみましょう。
参考:PubMed/Self-Compassion Interventions to Target Secondary Traumatic Stress in Healthcare Workers: A Systematic Review
短い休息を意識的に挟み、緊張状態をリセットする
忙しい日に「まとまった休憩が取れないから、休めない」と考えてしまうことがあります。しかし、30分や1時間の休憩だけを「休息」と考える必要はありません。勤務の状況が許す範囲で、数十秒から数分でも作業から離れる時間を意識してみましょう。
たとえば、記録を一つ終えたら立って肩を動かす、水を飲む、窓の外を見る、深く呼吸する、トイレへ行くタイミングで少し歩くなどです。スマートフォンでSNSを見るより、仕事とは別の刺激に切り替える方が、頭を休める時間として有効活用できます。「疲れ切ってから休む」のではなく、業務の区切りごとに短い休息を挟むイメージです。
仕事中の短い休憩、いわゆる「マイクロブレイク」を扱ったメタ解析では、活力の向上と疲労の低下について、小さいながらも統計的に有意な効果が報告されています。一方、全体的な仕事のパフォーマンス向上については有意な効果が確認されませんでした。そのため、「数分休めば仕事の効率が必ず上がる」と考えるのではなく、疲労をため込み続けないための小さな回復時間として取り入れるのが現実的です。
参考:PLOS ONE/”Give me a break!” A systematic review and meta-analysis on the efficacy of micro-breaks for increasing well-being and performance
企画・クリエイティブ職向け|仕事のストレス解消法
企画、デザイン、編集、マーケティングなどの仕事では、「考えること」そのものが業務になります。参考資料を調べ、競合を見る、SNSを確認する、ニュースを追う、アイデアを比較するという作業を続けていると、仕事をしていない時間まで情報を取り込み続ける状態になることがあります。
デジタル化が進んだ職場では、情報過多についても研究が蓄積されています。情報が多ければ必ず良い企画が生まれるわけではありません。むしろ「もう少し調べてから」とインプットを増やし続けることで、着手が遅れることもあります。そんなときは、情報をさらに足すのではなく、あえて入力を止める時間をつくること、そして完成形を一気に目指さず、行動を極端に小さく分解することを試してみましょう。
参考:PubMed/Dealing with information overload: a comprehensive review
情報のインプットを意図的に止める
企画がまとまらないと、「もっと参考資料を読めば答えが見つかる」と考え、検索を続けてしまうことがあります。しかし、Web記事、SNS、ニュース、チャット、メールを次々と確認しているだけで時間が過ぎ、肝心のアウトプットに入れないなら、一度インプットを止める選択も必要です。
たとえば、「競合調査は30分まで」「参考記事は5本まで」と上限を決める、企画を書く1時間はメールやチャットの通知を切る、昼休みには仕事関連の記事を読まない、といったルールをつくります。完全にスマートフォンやPCを断つ必要はありません。仕事に必要な情報まで遮断するのではなく、「今この情報は必要なのか」と選別することが目的です。
情報過多に関する系統的レビューでは、情報のフィルタリングや優先順位付け、ICTの使い方、組織側の情報設計など、さまざまな対策が検討されています。ただし、介入ごとのエビデンスの強さにはばらつきがあります。そのため、「デジタルデトックスをすればストレスが解消する」と単純化するのではなく、必要以上の情報入力を減らし、考える時間と作る時間を確保する方法として取り入れるのがおすすめです。
参考:PubMed Central/Dealing with information overload: a comprehensive review
ベビーステップで「最初の一歩」を極端に小さくする
企画書を作らなければならないのに、ファイルすら開けない。記事を書かなければならないのに、タイトルを考えるだけで時間が過ぎる。そんなときに「集中しよう」「やる気を出そう」と自分を叱っても、作業が進むとは限りません。
そこで試したいのが、大きな仕事を小さな行動まで分解するベビーステップです。
「企画書を完成させる」ではなく、「ファイルを開く」「仮タイトルを書く」「参考資料を3つ並べる」「箇条書きで3項目だけ書く」と分解します。記事なら、「導入を書く」ではなく「最初の1文だけ書く」でも構いません。最初から質を求めず、作業を始めるためのハードルを下げます。
厚生労働省「こころの耳」では、認知行動変容アプローチの一つとして「行動活性化」を紹介し、大がかりな行動ではなく、日常的な行動を積み重ねる考え方を示しています。また、厚生労働省の認知行動療法資料でも、目標を具体的で小さな目標へ落とし込む方法が示されています。ベビーステップは治療そのものではありませんが、「やる気が出るまで待つ」のではなく、今できる最小単位まで仕事を小さくする考え方は、仕事の停滞をほどく方法として応用できます。
参考:厚生労働省「こころの耳」/15分でわかる認知行動変容アプローチ1
ストレス解消法だけでは解決できない仕事のストレスもある
散歩をする、趣味の時間をつくる、考え方を整理するなど、セルフケアは仕事のストレスと付き合うために役立ちます。しかし、ストレスの原因が長時間労働、過大な仕事量、ハラスメント、人手不足などにある場合、自分の気持ちを整えるだけでは根本的な問題は残ります。
厚生労働省のメンタルヘルス指針でも、労働者自身による「セルフケア」だけでなく、管理監督者による相談対応や職場環境の改善、産業保健スタッフなどによる支援を組み合わせることが示されています。
「自分のストレス耐性が低いからつらい」と決めつける必要はありません。自分で変えられる部分と、会社や職場で見直すべき部分を分けて考えることも、仕事のストレス対策の一つです。
参考:厚生労働省「こころの耳」/メンタルヘルス対策(心の健康確保対策)に関する施策の概要
長時間労働や過重な業務量は環境そのものを見直す
毎日遅くまで働いている、休憩を十分に取れない、担当業務が増え続けている。こうした状態で「休日にリフレッシュしよう」と考えても、翌日から同じ働き方が続けば、ストレスの原因そのものは変わりません。
まず、「忙しい」という感覚だけで終わらせず、残業時間、担当案件数、休日の仕事、休憩の取得状況などを書き出してみましょう。そのうえで、上司への相談、業務の優先順位の変更、担当業務の分担、期限の調整、人員配置の見直しなど、仕事の設計そのものを変えられないか検討します。
厚生労働省のメンタルヘルス指針では、職場環境として労働時間、仕事の量と質、人間関係、組織・人事労務管理体制などを挙げ、管理監督者が個々の労働者に過度な長時間労働、過重な疲労、心理的負荷などが生じないよう配慮することの重要性を示しています。
ストレス解消法を増やすことと、過重な働き方を受け入れ続けることは別です。「休み方を工夫する」だけでは追いつかないと感じたら、仕事量や働き方を見直す方向にも目を向けてみましょう。
参考:厚生労働省「こころの耳」/メンタルヘルス対策(心の健康確保対策)に関する施策の概要
ハラスメントや人間関係の問題は一人で抱え込まない
上司から繰り返し人格を否定される、同僚から無視される、顧客から度を越した暴言を受けるなど、人との関係そのものがストレス源になっている場合があります。このような状況まで、「自分の受け止め方を変えればいい」と処理する必要はありません。
まず、日時、場所、相手の発言や行動、その場にいた人などを、できる範囲で記録しておきましょう。そのうえで、直属の上司に相談できない場合は、別の管理職、人事・労務部門、社内のハラスメント相談窓口、労働組合など、相談先を変える方法があります。
社内では相談できない場合、厚生労働省の総合労働相談コーナーでは、いじめ・嫌がらせやパワーハラスメントを含む幅広い労働問題について、無料で相談を受け付けています。
「相談するほどのことではない」と一人で判断する必要もありません。人間関係で消耗しているときこそ、自分だけで解決しようとせず、第三者を入れて状況を整理することも選択肢です。
参考:厚生労働省/総合労働相談コーナーのご案内
心身に不調が出ている場合は「頑張って解消する」段階ではない
仕事のストレスがたまると、疲労感やイライラ、眠りの変化などが現れることがあります。ただし、「眠れない日が続く」「食欲が大きく変わった」「朝から強い疲労感がある」「好きだったことにも興味がわかない」「仕事で考えがまとまらない」といった変化が続いている場合は、気分転換だけで乗り切ろうとしないことが大切です。
厚生労働省「こころの耳」でも、睡眠、食欲・体重、疲労感、気分、意欲などの変化を、心の不調に気づくためのポイントとして挙げています。ただし、これらの症状だけで特定の病気だと自己判断することはできません。
「週末まで我慢すれば大丈夫」「もっと運動すれば治る」と無理を重ねるのではなく、産業医や保健師、社内外の相談窓口、医療機関などに相談することも検討してください。セルフケアは、自分だけで何とかするためのものではありません。休息や専門家への相談が必要な状態に気づくことも、大切なセルフケアです。
参考:厚生労働省「こころの耳」/うつ病を防ぐ
仕事のストレスを把握するためにストレスチェックを活用する
仕事に追われていると、「最近はみんな忙しいから」「この程度は普通だ」と、自分がどの程度ストレスを抱えているのか分からなくなることがあります。そこで、自分の状態を客観的に振り返る機会として活用できるのがストレスチェックです。
ストレスチェックは、質問票への回答を通して自分のストレス状態を確認し、セルフケアや医師による面接指導、職場環境の改善などにつなげ、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした制度です。
改正労働安全衛生法により、2028年4月1日からは50人未満の事業場にも実施義務が広がります。結果をただ受け取って終わりにせず、「今の働き方のどこに負担があるのか」を考える材料として使ってみましょう。
参考:厚生労働省/ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策
ストレスチェックは「我慢できるか」を測るテストではない
ストレスチェックで高い数値が出ることを、「精神的に弱いと判定された」「仕事に向いていないと思われる」と捉える必要はありません。ストレスチェックは、根性や忍耐力、性格、仕事への適性を評価するためのテストではないからです。
厚生労働省は、ストレスチェックについて、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べ、自分自身でストレスへの対処を行ったり、高ストレスの状態では医師による面接指導や職場改善につなげたりすることで、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための仕組みと説明しています。また、厚生労働省の検討資料でも、ストレスチェックは性格検査や適性検査を目的とするものではないと整理されています。
そのため、結果を見るときは「良い・悪い」で判断するより、「最近の自分にはどんな負担がかかっているのか」を確認する材料として使うのがおすすめです。高ストレスという結果も、病気の診断そのものではありません。自分の状態に気づき、必要な対策を考えるためのサインとして受け止めましょう。
参考:厚生労働省/ストレスチェックQ&A集
結果から自分のストレス要因と反応を確認する
ストレスチェックの結果を受け取ったら、「高ストレスかどうか」だけを見るのではなく、どの項目に負担が表れているのか確認してみましょう。
厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」では、仕事のストレス要因、心身のストレス反応、周囲のサポートなどに関する項目が設けられています。たとえば、仕事量や仕事のコントロール、人間関係に負担があるのか、疲労感や不安感などの反応が強く出ているのか、上司や同僚からの支援を得られているのか、といった視点から結果を確認することができます。
「最近イライラする」という感覚だけでは原因が分からなくても、「仕事量が多い」「裁量が少ない」「周囲に相談できない」と分解すると、次に取る行動も考えやすくなります。
結果を見たら、前回の結果があれば比べてみるのも一つの方法です。数値だけに一喜一憂するのではなく、「何が以前と変わったのか」「今、自分に必要なのは休息なのか、相談なのか、仕事の調整なのか」を考える材料として活用してみましょう。
参考:厚生労働省/ストレスチェック関連情報・職業性ストレス簡易調査票
高ストレスの場合は面接指導や相談窓口の利用も検討する
ストレスチェックで高ストレス者として選定され、実施者から医師による面接指導が必要と判断された場合は、「まだ仕事はできているから」とそのままにせず、面接指導の利用を検討してみましょう。
法令に基づくストレスチェック制度では、面接指導が必要とされた労働者から申出があった場合、事業者は医師による面接指導を行います。厚生労働省は、申出について結果通知からおおむね1か月以内、面接指導について申出後おおむね1か月以内を目安としています。面接後は医師の意見を踏まえ、必要に応じて労働時間の短縮や業務上の配慮などを検討する仕組みです。
また、面接指導を申し出たことを理由とした不利益な取扱いは法律で禁止されています。高ストレスと判定されなかった場合でも、つらさを感じているなら相談してはいけないという意味ではありません。産業医、保健師、社内外の相談窓口、医療機関など、自分が利用できる窓口につながる方法があります。
ストレスチェックの目的は「高ストレスではなかったから安心」と判定して終わることではありません。結果と自分の実感の両方を見ながら、必要なときに休息や相談、仕事の調整につなげることが大切です。
参考:厚生労働省「こころの耳」/15分でわかる法に基づくストレスチェック制度
まとめ
仕事のストレス解消法については、ストレスコーピングや思考記録、マインドフルネス、短い休息など、自分の状態や職種に合った方法をいくつか持っておくことが大切です。
必要に応じて上司や相談窓口、医療機関などを頼りましょう。自分では気づきにくいストレスの状態を振り返るには、ストレスチェックの結果も役立ちます。数値だけを見るのではなく、仕事の負担や心身の変化を見直すきっかけとして活用してみてください。
ストレスチェックとは、従業員のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした制度です。現在は従業員50人以上の事業場で義務化されていますが、2028年4月1日からは、50人未満の企業にも対象が拡大されます。
ストレスチェックを活用すれば、部署ごとの負荷や心理的な傾向を可視化でき、早めの相談体制づくりや業務改善につなげられます。失敗を責めるのではなく、学びながら前に進む職場づくりにも役立ちます。
ストレスチェッカーは、官公庁・上場企業・医療機関などで採用されている国内最大級のストレスチェックツールです。自動リマインド、面接指導者管理、進捗確認機能を標準搭載し、2025年5月からは無料プランでも「プレゼンティーイズム(生産性低下)」の測定に対応しております。
導入方法や実施方法など、お気軽にお問合せください。

