
職場の人間関係がギスギスしていると、ちょっとした会話にも気を使い、仕事そのものより人との距離感に気を使い過ぎて疲れてしまいます。
原因は個人個人の性格だけではなく、仕事量の偏り、評価への不満、上司のマネジメント不足、情報共有の欠如など、職場の仕組みが人間関係を悪化させている場合もあります。
この記事では、職場がギスギスする原因と対処法を、個人と組織の両面から整理します。
目次
職場の人間関係がギスギスする原因
職場の人間関係がギスギスすると、「性格の合わない人が多いから」「コミュニケーションが足りないから」と個人の問題にされがちです。しかし、毎日のように険悪な空気が続いているなら、原因は人間同士の相性だけとは限りません。人手が足りず全員が余裕を失っている、仕事量と評価が釣り合っていない、攻撃的な言動をする社員を会社が放置しているなど、職場の仕組みそのものが対立を生んでいる場合もあります。
人員不足と多忙で、他人に構う余裕がなくなる
「これ、確認してもらえますか」と声をかけただけなのに、「今?」「それくらい自分で判断して」と返される。以前なら普通に答えてくれた同僚まで、最近はいつもイライラしている。そんな職場では、人間関係以前に仕事量を確認した方がよいかもしれません。
人員不足の状態で一人ひとりが大量の仕事を抱えると、質問への対応や後輩へのフォローまで「自分の仕事を止めるもの」と感じるようになります。誰かが休めば残った社員に仕事が回り、急な案件が入れば別の仕事が後ろ倒しになる。こうした状態が続けば、ちょっとした確認やミスにも強い言葉が飛び交うようになります。
もちろん、多忙だから相手にきつく当たってよいわけではありません。しかし、全員が余裕を失っている職場で「もっとコミュニケーションを取りましょう」と呼びかけるだけでは根本的な解決にはなりません。
評価や役割分担への不公平感が対立を生む
「また自分にこの仕事が回ってきた」「あの人はいつも定時で帰るのに、評価はほとんど変わらない」。こうした不満が積み重なると、それまで普通に付き合っていた同僚まで敵に見えてくることがあります。
仕事を早く終える人や頼みやすい人に業務が集中し、断る人には仕事が回らない。トラブル対応や新人教育など数字に表れない仕事を引き受けても、評価ではほとんど考慮されない一方で、上司との関係が良い社員や目立つ成果を出した社員だけが高く評価されるような状態では、「協力した方が損をする」という感覚が職場に広がります。
すると、「手伝おう」という気持ちは薄れ、誰かから仕事を頼まれるたびに警戒するようになります。本来なら同じ目標に向かうはずの同僚同士が、「誰がどれだけ仕事をしているか」を監視し合う状態にもなりかねません。
攻撃的・否定的な言動が放置されている
会議で意見を出せば「それ、本気で言ってる?」、ミスをすれば「普通は間違えないよね」と人前で言われる。本人は冗談のつもりでも、周囲が笑って受け流し、上司も注意しない。こうした場面が繰り返される職場では、一人の攻撃的な社員だけでなく、その言動を放置している組織側にも問題があります。
否定や嫌味が日常になると、社員は「何を言われるか分からない」と考え、自分から発言することを控えるようになります。会議で意見を出さなくなり、分からないことがあっても質問を避け、ミスに気づいても報告せずに済ませようとすることがあります。
表面的には揉め事が減ったように見えても、実際には職場の空気を読んで、余計な発言を避けているだけというケースもあります。
さらに厄介なのは、「あの人は昔からああいう人だから」「悪気はないから」と、周囲が問題のある言動に慣れてしまうことです。個性として片づければ、負担を受ける側だけが我慢を求められます。職場の人間関係がギスギスしているときは、「誰か一人の性格が悪い」で終わらせず、その言動に対して上司や組織がどのように対応しているのかを見る必要があります。注意も改善もせず放置する姿勢そのものが、職場の空気を悪くする一因になるからです。
こんな職場、ありませんか?人間関係がギスギスした5つのケース
職場の人間関係がギスギスしているといっても、その表れ方はさまざまです。怒鳴り声や露骨な対立がなくても、「質問すると嫌な顔をされる」「なぜか自分だけ仕事が増える」「一部の人だけで話が決まっている」といった小さな違和感が積み重なり、職場全体に緊張感が広がることがあります。しかも、毎日その環境にいると「会社なんてこんなもの」と慣れてしまい、自分が強いストレスを受けていることに気づかない場合もあります。
ここでは、職場で起こりがちな5つのケースを見ていきましょう。※以下の事例は、職場で起こり得る状況をもとに構成した架空のケースです。
Aさんの場合|「今それ聞く?」と質問するだけで嫌な顔
分からないことを確認したいだけなのに、質問するたびに相手の機嫌をうかがわなければならないというケースです。Aさんの場合、部署の人員が減ってから先輩社員に質問すること自体が負担になりました。
Aさんのような状況では、「質問の仕方が悪かった」と本人だけの問題にするのは適切ではありません。質問に答える余裕がないほど業務が逼迫しているなら、背景には人員配置や仕事量の問題があります。質問する側が遠慮を続ければ、確認すべき事項まで共有されなくなり、ミスやトラブルにもつながります。職場で「そんなことも分からないの?」「自分で考えて」といった言葉が頻繁に聞かれるなら、単なる相性ではなく、質問や相談ができない環境になっていないかを見る必要があります。
Bさんの場合|できる人にばかり仕事が集まり、不満が爆発
仕事を断らない人、処理が速い人に業務が集中し、「頑張るほど仕事が増える」というケースです。Bさんの場合、周囲から頼られることに最初は抵抗がありませんでしたが、仕事の偏りが続くうちに同僚への見方まで変わっていきました。
ある日、同僚から「これもお願いしていい?」と言われた瞬間、「どうしてまた私なの?」と強い口調で返してしまいました。
仕事を頼んできた同僚だけを責めても、根本的な問題は解決しません。業務配分を管理する立場の人が「できる人に任せる」を繰り返せば、仕事のできる社員ほど負担が増えます。その状態で評価まで変わらなければ、「協力するほど損をする」という不公平感が生まれます。すると、本来は助け合う相手である同僚まで競争相手に見えてきます。Bさんのように急に怒りが出るようになったときは、自分の性格が変わったと考える前に、担当業務の量や残業時間、仕事の分担が偏っていないかを確認することも必要です。
Cさんの場合|嫌味や否定を繰り返す社員を上司が放置
一人の社員が攻撃的な言動を繰り返しているのに、上司や周囲が「いつものこと」として何も対応しないというケースです。Cさんの場合、嫌味を言う本人より、それを笑って流す周囲の反応に強い疲れを感じるようになりました。
ここで問題なのは、嫌味を言う社員の言動だけではありません。周囲が止めず、管理職まで「そういう人だから」と扱えば、職場としてその言動を事実上認めることになります。Cさんが発言を控えれば、表面的には衝突が減ったように見えるかもしれません。
しかし、それは人間関係が改善したのではなく、一方が黙ることで成立している状態です。否定的な言葉や人前での侮辱が繰り返されているなら、日時、場所、発言内容、その場にいた人などを記録し、必要に応じて上司以外の相談窓口や人事へ伝えることも検討しましょう。
Dさんの場合|一部の人だけで情報が共有される職場の派閥
表立った喧嘩はないものの、一部の社員だけで重要な情報が共有され、知らない人が仕事上の不利益を受けるというケースです。Dさんの場合、「その話、聞いていない」が何度も続き、自分だけ職場から外されているように感じるようになりました。
職場の人間関係では、露骨な悪口よりも「自分だけ知らされない」という状況の方が精神的な負担になることがあります。ただし、すぐに「自分が仲間外れにされている」と決めつけるのではなく、業務上必要な情報がどのルートで共有される仕組みになっているのかを確認することが大切です。
重要事項が雑談や個人的なチャットだけで決まる職場では、派閥に入っているかどうかで情報量に差が生まれます。対策としては、「今後この種の変更はメールや共有ツールでも知らせてもらえますか」と、個人的な人間関係ではなく業務上の情報共有の問題として伝える方法があります。
Eさんの場合|上司の機嫌ひとつで職場の空気が変わる
上司の機嫌が悪い日は誰も話しかけず、その緊張が部署全体に伝わっていくというケースです。Eさんの場合、出社するとまず上司の表情を確認し、その日の振る舞いを決めることが習慣になっていました。
上司も人間なので、常に機嫌よく振る舞えるわけではありません。しかし、管理職の感情によって部下が報告や相談のタイミングを変えなければならない状態が続けば、仕事にも影響します。必要な報告が遅れたり、部下同士が上司の顔色について情報交換したりするようになれば、職場の中心が「仕事」ではなく「上司の機嫌」になってしまいます。
Eさんのように相手の表情や声色を確認することに多くの神経を使っているなら、報告方法をメールやチャットに切り替える、別の管理職に相談するなど、直接的な接触に依存しない方法を検討するのも一つです。上司の感情を整えることまで、部下が引き受ける必要はありません。
ギスギスした職場で自分を守るための対処法
職場の人間関係がギスギスしていると、「自分がもっと気を遣えば丸く収まる」「コミュニケーションを増やせば変わる」と考えてしまうことがあります。しかし、職場の空気を一人で立て直す必要はありません。人員不足や仕事の偏り、攻撃的な言動、管理職の対応などが原因なら、個人の努力だけでは解決できない問題もあります。大切なのは、無理に周囲へ合わせることではなく、自分が消耗し続けない働き方を考えることです。関わる範囲を整理する、問題となる言動を記録する、いざというときに別の環境へ移れる準備をするなど、自分でコントロールできる部分から対処していきましょう。
職場の全員と仲良くしようとしない
職場の人間関係がギスギスしていると、「もっと雑談した方がいいのかな」「嫌われないように合わせた方がいいのかな」と考えることがあります。しかし、仕事をするために、職場の全員と親しくなる必要はありません。むしろ、人間関係に疲れているときまで無理に輪の中へ入ろうとすると、それ自体が新しいストレスになります。
たとえば、昼休みのグループに毎回付き合う、苦手な同僚の愚痴に相づちを打つ、飲み会に断れず参加する、といった行動を続けているなら、一度「これは本当に仕事に必要なのか」と考えてみてもよいでしょう。挨拶、報告、連絡、相談、業務上必要な確認を丁寧に行えていれば、一定の距離を取ることはできます。
特に、悪口や派閥争いがある職場では、「どちらの味方なの?」という空気に巻き込まれないことも大切です。誰かの悪口を聞いても評価に同調せず、「そうなんですね」と話を広げない。個人的な対立には深入りせず、自分の仕事に必要なやり取りへ戻す。職場は友人を作る場所である必要はありません。「仲良くする」ことよりも、「仕事が成立する関係を保つ」ことを基準にすると、人間関係に使うエネルギーを抑えられます。
「嫌だった」で終わらせず、言動やトラブルを記録する
嫌味を言われた、みんなの前で強く叱責された、自分だけ必要な情報を知らされなかった――。その場では腹が立っても、数日たつと日時や具体的な言葉は曖昧になります。職場の人間関係について上司や人事へ相談する可能性があるなら、「嫌だった」という感覚だけで終わらせず、起きた事実を記録しておくことが大切です。
記録するのは、日時、場所、相手、具体的な発言や行動、その場にいた人、業務への影響などです。たとえば、「上司の態度が怖い」だけではなく、「8月20日の営業会議で、提出した資料について『こんなこともできないの?』と他の社員5人の前で言われた」と残しておけば、第三者にも状況が伝わります。メールや業務チャットなどが残っている場合も、必要に応じて確認できるよう整理しておきましょう。
記録の目的は、相手をやり込めることではありません。自分自身が「何に負担を感じているのか」を整理する意味もあります。何となく会社へ行くのが嫌だった状態から、「特定の会議の前に強い緊張を感じる」「特定の社員とのやり取りで負担が増えている」と分かれば、相談するときにも具体的な対策を考えられます。上司への相談で変化がなければ、人事や社内相談窓口など、別のルートを検討する材料にもなります。
異動・転職を含めて「逃げ道」を作っておく
ギスギスした職場にいると、「この環境でどううまくやるか」ばかり考えてしまうことがあります。しかし、すべての職場に適応する必要はありません。何度相談しても状況が変わらない、攻撃的な言動が繰り返される、出勤前から職場の人間関係を考えて気が重くなるような状態なら、「ここから離れる」という選択肢も持っておきましょう。
すぐに退職届を出すという意味ではありません。まずは社内の異動制度を確認する、別部署の募集を調べる、転職サイトを眺める、自分の経験やスキルを書き出すといった準備からでも構いません。転職するかどうかを今すぐ決めなくても、「ここに居続ける以外の選択肢がある」と分かるだけで、職場との距離の取り方は変わります。
特に避けたいのは、「自分がもっと我慢すれば、そのうち状況はよくなる」と期限を決めずに耐え続けることです。人員配置や管理職、評価制度、職場風土などは、一社員が努力しただけでは変わらない場合があります。人間関係を改善することだけをゴールにせず、異動や転職も含め、自分が働く環境を選び直すことも対処法の一つです。「逃げ道」を持つことは逃げではなく、職場に自分の働き方をすべて委ねないための準備です。
職場のストレスチェックを活用する
職場の人間関係がギスギスしている状態が長く続くと、最初は気になっていた緊張やイライラにも慣れ、「これくらい普通」「仕事だから仕方ない」と考えるようになることがあります。そんなとき、自分や職場の状態を少し離れたところから見る材料になるのがストレスチェックです。
ストレスチェックは、単に「ストレスがある・ない」を判定するためのものではなく、労働者自身がストレスの状態に気づき、必要なセルフケアにつなげることを目的としています。また、個人の結果だけでなく、部署など一定の集団ごとに結果を分析すれば、個人間の相性に見えていた問題を職場環境の問題として捉える手がかりにもなります。
ストレスチェックを「気づき」にする
ストレスチェックを受けたとき、「高ストレスじゃなかったから大丈夫」と結果だけを見て終わらせるのは少しもったいない使い方です。ストレスチェックには、自分が感じているストレスだけでなく、仕事の負担、周囲からの支援、心身の状態などを振り返る項目があります。普段は「別に平気」と思っていても、改めて回答することで、自分が思っていた以上に職場で神経を使っていたことに気づく場合があります。
たとえば、「上司の機嫌を毎日確認している」「質問する前に何度もタイミングを考える」「同僚から仕事を頼まれるだけで腹が立つ」といった状態が当たり前になっているなら、それは単なる職場の“あるある”として片づけず、自分の負担を振り返るきっかけにしてもよいでしょう。
ストレスチェックは、職場への不満を数値で証明するための制度ではありません。一方で、「まだ働けているから問題ない」と我慢を続けるためのものでもありません。結果をきっかけに、自分の睡眠や疲労、気分、仕事への向き合い方などを振り返り、必要であれば相談窓口や医師による面接指導などにつなげることが大切です。職場の空気に慣れすぎて自分の消耗を見失わないための、一つの「気づき」として活用できます。
ストレスチェックの集団分析を活用する
人間関係がギスギスした職場では、「AさんとBさんの仲が悪い」「あの上司の性格に問題がある」と、原因を特定の社員に求めがちです。しかし、同じ部署の多くの社員が強い負担を感じているなら、個人同士の相性だけでなく、仕事量、人員配置、裁量、上司や同僚からの支援など、職場環境そのものを見る必要があります。その手がかりになるのが、ストレスチェックの集団分析です。
集団分析では、個人の結果を見るのではなく、部署や課など一定の集団について結果を集計・分析します。たとえば、ある部署で仕事の負担に関する数値が高く、周囲からの支援に関する数値が低いのであれば、「社員同士でもっと仲良くしてください」で終わらせず、業務量や人員配置、管理職のマネジメント、相談体制などを見直す材料にできます。
重要なのは、分析して終わらせないことです。「この部署はストレスが高いらしい」と社員側に努力を求めるだけでは、環境は変わりません。人員不足が背景にあるなら業務配分を見直す、上司への相談が少ないなら管理職の関わり方を検討するなど、結果を具体的な職場環境の改善につなげる必要があります。職場の人間関係のギスギスを「誰かの性格」の問題だけにしないためにも、集団分析は組織側が原因を考える材料として活用したいところです。
まとめ
職場の人間関係がギスギスする背景には、単なる性格の不一致だけでなく、人員不足、仕事の偏り、不透明な評価、攻撃的な言動を放置する職場風土などがあります。質問するだけで嫌な顔をされる、できる人に仕事が集中する、上司の機嫌で空気が変わるといった状況が続くなら、「自分がもっと頑張れば何とかなる」と抱え込まないことが大切です。
ストレスチェックとは、従業員のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした制度です。現在は従業員50人以上の事業場で義務化されていますが、2028年4月1日からは、50人未満の企業にも対象が拡大されます。
ストレスチェックを活用すれば、部署ごとの負荷や心理的な傾向を可視化でき、早めの相談体制づくりや業務改善につなげられます。失敗を責めるのではなく、学びながら前に進む職場づくりにも役立ちます。
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