セルフ・アウェアネスとは?

セルフ・アウェアネスとは、自分の感情や考え方、価値観、強み・弱み、行動の傾向を理解することです。また、自分の言動が周囲の人や仕事にどのような影響を与えているかを知ることも含まれます。
この記事では、セルフ・アウェアネスの意味やメリット、高める方法、取り組む際の注意点について、仕事での具体的な場面を交えながら解説します。

セルフ・アウェアネスとは

セルフ・アウェアネス(自己認識)とは、自分の感情や考え方、価値観、強み・弱み、行動の傾向などを理解することです。自分の内面を知るだけでなく、自分の言動が周囲にどのような影響を与えているかを把握することも含まれます。

仕事でどのような場面にストレスを感じるのか、意見が対立したときにどう反応するのかなど、自分の感情や行動の傾向に気づくことも、セルフ・アウェアネスです。

自己分析と共通する部分もありますが、一般的な自己分析は、過去の経験や能力を振り返り、就職・転職やキャリア形成に生かすことを目的として行われます。
一方、セルフ・アウェアネスは、日々の仕事や人間関係の中で自分の感情や行動を把握し、周囲から自分がどう見られているかについても理解を深める考え方です。

内面的自己認識と外面的自己認識

組織心理学者のターシャ・ユーリック氏は、セルフ・アウェアネスには「内面的自己認識」と「外面的自己認識」の2つの側面があると説明しています。

内面的自己認識とは、自分の価値観や目標、強み・弱み、感情や行動の傾向などを理解することです。自分が何を大切にしているのか、どのような状況で不安や怒りを感じるのかを把握することも含まれます。

一方、外面的自己認識とは、周囲の人が自分をどのように見ているかを理解することです。

自分では部下にていねいに説明しているつもりでも、部下は「一方的に話を進められている」と感じているかもしれません。このような自分の認識と周囲の受け止め方の違いに気づくことが、外面的自己認識につながります。

ユーリック氏の研究では、内面的自己認識と外面的自己認識は必ずしも一致しないことが示されています。自分の性格や感情をよく理解していても、周囲からどう見られているかまで正しく把握できているとは限りません。

そのため、自分の言動を振り返るだけでなく、上司や同僚、部下から意見を聞き、自分の認識と照らし合わせることも大切です。

セルフ・アウェアネスを高めるメリット

セルフ・アウェアネスを高めると、自分の感情や考え方、行動の傾向を理解し、状況に応じて対応を考える際に役立ちます。

仕事では、意見が対立したり、予定どおりに業務が進まなかったりして、感情的になる場面もあるでしょう。自分がどのような状況で怒りや不安を感じるのかを知っていれば、感情に任せて発言する前に、自分の考えを整理することができます。

また、自分の強みや弱み、周囲からの評価を把握することは、仕事の進め方や人間関係を見直すきっかけにもなります。

コミュニケーションが円滑になる

セルフ・アウェアネスを高めると、自分の話し方や行動の癖に気づき、相手に合わせて伝え方を見直すことができます。

仕事では、自分では普通に話しているつもりでも、相手に威圧的な印象を与えていたり、説明が不足していたりする場合も考えられます。
自分の話し方を振り返り、周囲からも意見を聞くことで、こうした問題に気づくきっかけになります。部下から「質問する前に話を遮られる」と指摘された場合は、相手の話を最後まで聞いてから答えるなど、具体的な改善につなげることができます。
また、自分がどのような場面で感情的になるのかを理解しておくことも大切です。忙しいときに口調が強くなる傾向があると分かれば、部下に指示を出す際に言葉遣いを意識できます。

このように、自分の言動を客観的に捉え、必要に応じて改善することが、職場での円滑なコミュニケーションにつながります。

ストレスへの気づきと対処に役立つ

セルフ・アウェアネスを高めることは、自分のストレス反応に早めに気づき、適切な対処方法を考えるうえでも役立ちます。

ストレスを感じたときの反応は人によって異なり、イライラや気分の落ち込み、疲労感、睡眠や集中力の変化などが現れます。
自分の普段の状態を把握していれば、「最近、些細なことで腹が立つ」「仕事が終わっても気持ちが落ち着かない」など、いつもと違う変化に気づくきっかけになります。

また、どのような場面で負担を感じるのかを振り返ることも重要です。仕事量が多いときに焦りを感じるのであれば、業務の優先順位を整理したり、上司に仕事の分担を相談したりする方法を検討することができます。

ただし、自分の感情を理解するだけで、ストレスの原因が解消されるわけではありません。心身の不調が続く場合は、無理をせず、産業医や医療機関などに相談することも大切です。

自己実現やリーダーシップにつながる

セルフ・アウェアネスを高めると、自分が仕事で何を大切にしているのか、どのような仕事にやりがいを感じるのかが明確になり、今後のキャリアを考える際に役立ちます。

自分の強みや価値観を理解することで、目指したい仕事や役割を具体的に考えることができるようになります。人を管理する仕事よりも専門知識を生かす仕事にやりがいを感じると分かれば、専門性を高めるために必要な経験や資格を調べ、今後の目標を立てることができます。

また、管理職にとっても、セルフ・アウェアネスは重要です。自分の判断や行動の傾向を理解することで、部下への仕事の任せ方や、チームの運営方法を見直すきっかけになります。
自分では部下に仕事を任せているつもりでも、実際には細かな判断まで指示している場合も考えられます。こうした傾向に気づけば、部下が自分で判断する範囲を広げるなど、具体的な改善を検討することができます。

自分自身を理解するだけでなく、周囲からの意見も取り入れることで、キャリアの目標を明確にし、管理職としての行動を見直すことにつながります。

セルフ・アウェアネスを高める方法

セルフ・アウェアネスを高めるには、自分の感情や考え方、行動の傾向を知り、日々の仕事や人間関係を振り返ることが大切です。

自分のことは自分が一番よく知っていると思っていても、感情的になる場面や、無意識に繰り返している行動には気づいていないかもしれません。また、自分が思っている性格や強みと、周囲からの評価が異なる場合も考えられます。

自分への理解を深める方法には、ジャーナリングやマインドフルネス、価値観の整理、周囲からのフィードバックなどがあります。仕事のストレスや心身の反応を確認するには、ストレスチェックの結果も参考になります。

ジャーナリングで感情や行動を振り返る

ジャーナリングとは、日々の出来事や、そのときに感じたこと、考えたことを文章にして記録する方法です。
セルフ・アウェアネスを高めるには、出来事を記録するだけでなく、自分が何を感じ、どう行動したのかを整理することが大切です。

まずは仕事が終わった後などに5分程度の時間を設け、次の4つを書き出してみましょう。
1. 出来事:何が起きたのか
2. 感情:そのとき何を感じたのか
3. 行動:自分はどのように対応したのか
4. 振り返り:次に同じ状況になったらどう対応するか

会議中に同僚と意見が対立した場合は、「同僚から反対意見が出た」「腹が立った」「相手の説明が終わる前に反論した」「次回は最後まで話を聞く」というように整理します。
こうした記録を続けると、自分が怒りや不安を感じる状況や、繰り返している行動を把握する手がかりになります。

文章を長く書く必要はありません。ノートやスマートフォンなどを使い、まずは週に数回から始めてもよいでしょう。

なお、振り返ることでつらい気持ちが強まる場合は、無理に続ける必要はありません。自分を責めるのではなく、出来事と自分の反応を整理することが目的です。

マインドフルネスで現在の状態に気づく

マインドフルネスとは、今この瞬間の自分の感情や思考、身体の感覚などに、良い・悪いという判断を加えずに注意を向けることです。

仕事中は、目の前の業務に集中するあまり、自分の疲れや緊張に気づかない場合も考えられます。マインドフルネスは、こうした自分の状態に意識を向ける練習として取り入れることができます。

初めて取り組む場合は、次の手順で呼吸に注意を向けてみましょう。
1. 椅子に座り、楽な姿勢を取る
2. 自然な呼吸を続け、息を吸ったり吐いたりする感覚に注意を向ける
3. 仕事や予定について考えていることに気づいたら、再び呼吸に注意を戻す
4. 1~3分程度を目安に、自分の状態を観察する
大切なのは、余計なことを考えないようにするのではなく、考えが浮かんだこと自体に気づくことです。
また、呼吸だけでなく、歩いているときの足の感覚や、食事中の味や香りに注意を向ける方法もあります。

日常の中で自分の状態を観察する習慣をつけることで、緊張して肩に力が入っている、気持ちが焦っているなど、心身の変化に気づく練習になります。

ただし、マインドフルネスの効果には個人差があり、実践中に不快感や不安が強まる人もいます。無理をせず、自分の状態に合わせて取り組みましょう。

自分の価値観や判断基準を整理する

自分が仕事で何を大切にしているのかを理解することも、セルフ・アウェアネスを高める方法の一つです。

価値観は、仕事の目標を決めたり、複数の選択肢から一つを選んだりする際の判断に関係します。しかし、普段から自分の価値観を意識している人ばかりではないでしょう。

まずは、これまでの仕事を振り返り、やりがいを感じた場面と、不満を感じた場面を書き出してみましょう。

チームで協力して目標を達成したときに充実感を得たのであれば、協力や達成感を大切にしているのかもしれません。反対に、仕事の進め方を細かく指示されることに強い不満を感じるのであれば、自分で判断できることを重視していると考えられます。

次に、成長、安定、挑戦、協力、公平性、専門性などの中から、自分が特に大切にしたい価値観を3つ程度選びます。
選んだ後は、「なぜ大切なのか」「現在の仕事で大切にできているか」を考えましょう。

価値観を整理する目的は、自分の性格を決めつけることではありません。今の自分が何を重視しているのかを理解し、今後の仕事やキャリアを考える材料にすることが大切です。

周囲からフィードバックを受ける

自分の言動が周囲にどのような影響を与えているかを知るには、上司や同僚、部下からフィードバックを受ける方法が有効です。

自分では説明が得意だと思っていても、相手には話が長いと感じられているかもしれません。反対に、自分では気づいていなかった強みを、周囲から教えてもらう場合も考えられます。

フィードバックを求める際は、質問の内容を具体的にすることが大切です。

「私の仕事ぶりをどう思いますか」と漠然と尋ねるのではなく、次のように質問してみましょう。

・今日の説明で、分かりにくかった部分はありましたか
・会議の進め方で、改善したほうがよい点はありますか
・私が担当した仕事で、良かった点と改善すべき点を教えてください

また、管理職であれば、上司だけでなく、同僚や部下から意見を聞くことも重要です。複数の立場から評価を受ける方法として、360度フィードバックを活用する企業もあります。
ただし、他者からの評価がすべて正しいとは限りません。相手の立場や経験によって、受け止め方も異なるからです。
フィードバックを受けたら、すぐに反論したり、すべてを受け入れたりするのではなく、具体的な事実を確認しましょう。複数の人から同じ指摘を受けている場合は、自分の行動を見直す材料になります。

ストレスチェックの結果を振り返る

ストレスチェックの結果を確認することも、自分の心身の状態や、仕事で負担を感じている部分を知るきっかけになります。

ストレスチェックは、労働者自身がストレスの状態に気づき、セルフケアにつなげることなどを目的とした制度です。病気の診断や性格の判定を行うものではありません。

一般的なストレスチェックでは、主に次の3つの領域を確認します。

・仕事のストレス要因:仕事の量や裁量の程度、対人関係など
・心身のストレス反応:疲労感、イライラ、不安感、気分の落ち込みなど
・周囲のサポート:上司や同僚などから受けられる支援

結果を振り返る際は、ストレスの程度だけでなく、どの項目に負担を感じているかを確認しましょう。
仕事量の負担が大きい場合は、残業時間や担当業務を振り返り、業務の分担や優先順位を見直す必要がないか考えます。また、上司や同僚からの支援が少ないと感じている場合は、仕事の相談先についても確認しましょう。

なお、ストレスチェックの結果だけで、セルフ・アウェアネスの高さを判断することはできません。結果は自分の状態を知るための情報の一つとして捉えることが重要です。
心身の不調が続く場合は、セルフケアだけで対応しようとせず、産業医や医療機関などへの相談も検討しましょう。

セルフ・アウェアネスを高める際の注意点

セルフ・アウェアネスを高めるには、自分の感情や行動を振り返ることが大切ですが、振り返り方によっては、かえって自分を責めてしまう場合も考えられます。

また、自分の性格や能力に対する評価が、周囲からの評価と一致しているとは限りません。自分を正しく理解するには、自分自身の考えだけでなく、他者からの意見や実際の行動にも目を向ける必要があります。

さらに、仕事のストレスや人間関係の問題には、業務量や職場の管理体制などが関係している場合もあります。自分の考え方を変えるだけで、すべての問題を解決できるわけではありません。

セルフ・アウェアネスに取り組む際は、次の3つの点に注意しましょう。

自分を責めるための振り返りにしない

自分の感情や行動を振り返る際は、失敗した理由を考えるだけでなく、次にどう対応するかを考えることが大切です。

仕事でミスをしたとき、「自分は仕事ができない」「何をやっても失敗する」と考えてしまうと、具体的な原因や改善策を整理することができません。

振り返る際は、まず事実と自分の評価を分けましょう。

「会議で感情的になってしまった」と考えるだけでなく、「同僚の発言を誤解して腹が立ち、話を遮ってしまった」と整理すれば、自分の行動を具体的に確認できます。

そのうえで、「次は相手の説明を最後まで聞く」「分からない点は質問して確認する」など、改善する行動を決めます。

また、失敗した出来事を何度も思い返し、否定的な考えを繰り返すことを「反すう」といいます。反すうは、気分の落ち込みなどと関連することが心理学の研究で指摘されています。

セルフ・アウェアネスの目的は、自分の欠点を探すことではありません。自分の反応や行動の傾向を知り、今後の行動に生かすことが大切です。

自己評価だけで判断しない

自分の性格や能力を理解する際は、自己評価だけで判断しないことも重要です。

自分では仕事を正確に進めていると思っていても、上司からは確認不足を指摘されるかもしれません。反対に、自分では特別な能力だと思っていなかったことが、周囲から高く評価されている場合も考えられます。
こうした認識の違いを知るには、自己評価と他者からの評価を比べることが有効です。

ただし、一人からの評価だけで自分の能力や性格を決めつけないようにしましょう。仕事の役割や一緒に働く時間、相手との関係によっても評価は変わります。
複数の人から意見を聞き、実際の仕事の成果や行動と照らし合わせることが大切です。
また、他者からの指摘を受けても、すぐに自分の性格を変えようとする必要はありません。まずは何を指摘されたのかを確認し、自分の行動に改善できる部分があるかを考えましょう。

職場の問題を個人の努力だけで解決しない

セルフ・アウェアネスを高めることは、自分のストレス反応や行動の傾向を知るうえで役立ちます。しかし、職場の問題をすべて個人の努力で解決できるわけではありません。

長時間労働や過大な業務量、人員不足、ハラスメントなどは、従業員の考え方や行動を見直すだけでは解決できない問題です。

世界保健機関(WHO)も、職場のメンタルヘルス対策では、個人への支援に加えて、仕事の量や勤務体制、職場の人間関係などを改善する組織的な取り組みを推奨しています。

業務量が多く、毎日のように残業している場合は、自分の仕事の進め方を振り返るだけでなく、上司に業務の分担や納期の調整を相談することも必要です。

また、上司との関係で強いストレスを感じている場合は、自分の言動に問題がなかったかを振り返ると同時に、相手の言動や職場の管理体制にも問題がないか確認しましょう。

セルフ・アウェアネスを高めることは、何でも自分で解決できるようになることではありません。自分で対応できる問題と、周囲の協力や職場の改善が必要な問題を分けて考えることも大切です。

参考:Annual Review of Organizational Psychology and Organizational Behavior/Developing Self-Awareness: Learning Processes for Self- and Interpersonal Growth

 

ストレスチェッカーとは

「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しています。
また、無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下である「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場でも実施義務化が進むため、早めの準備が大切です。
導入や運用については、ぜひお気軽にご相談ください。

ストレスチェック導入のご相談はこちら

 

まとめ

セルフ・アウェアネスとは、自分の感情や思考、価値観、行動の傾向を把握し、それらが仕事や周囲の人にどのような影響を与えているかを理解することです。

ストレスチェックの結果を振り返ると、仕事の負担、心身の反応、上司や同僚からの支援などを客観的に確認できます。自覚していなかった疲労やストレスの兆候に気づき、休息や業務の見直し、相談などの対応を考えるきっかけになります。
ストレスチェックとは、従業員のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした制度です。現在は従業員50人以上の事業場で義務化されていますが、2028年4月1日からは、50人未満の企業にも対象が拡大されます。
ストレスチェックを活用すれば、部署ごとの負荷や心理的な傾向を可視化でき、早めの相談体制づくりや業務改善につなげられます。失敗を責めるのではなく、学びながら前に進む職場づくりにも役立ちます。

ストレスチェッカーは、官公庁・上場企業・医療機関などで採用されている国内最大級のストレスチェックツールです。自動リマインド、面接指導者管理、進捗確認機能を標準搭載し、2025年5月からは無料プランでも「プレゼンティーイズム(生産性低下)」の測定に対応しております。
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