
人疲れが続くと、人と話すことを負担に感じる、仕事が終わると誰とも会いたくなくなる、疲労感やイライラが強くなるといった変化があらわれることもあります。
この記事では、人疲れが起こる背景や主なサイン、職場で負担が重なる原因、疲れたときの対処法について解説します。
目次
人疲れとは
人疲れとは、人と話す、相手に気を配る、その場に合った振る舞いをするといった人との関わりが続くことで、心身に疲れを感じている状態を表す言葉です。
人との関わりで気を張る状態が続くと、次第に疲労やイライラがたまり、人と話すこと自体を負担に感じるようになってしまうことがあります。
人との関わりが続き、心身が疲れている状態
人疲れは、人と接する場面が続き、気を張った状態から十分に離れられないことで、心身に疲れがたまっている状態を指します。
仕事をするうえでは、相手の話を理解し、自分の言葉を選びながら、表情や反応にも気を配ります。自分の感情を抑え、その場に合った態度を保たなければならない場面もあり、人と話すこと自体を負担に感じてしまうことがあります。
このような状況が続けば、一時的に人と距離を置きたいと感じることは珍しくありません。しかし、人と関わるたびに強く疲れる状態が続くケースは注意が必要です。
人疲れで現れる主なサイン
人との関わりで緊張や気遣いが続くと、疲労感やイライラ、不安、気分の落ち込みなどが表れることがあります。以前より人と話すことを負担に感じたり、一人で過ごしたいと思う時間が増えたりすることもあります。
厚生労働省では、職場の対人関係をストレス要因の一つとして挙げています。また、ストレスが続いたときの心理的な反応として、活気の低下、イライラ、不安、抑うつなどを示しています。
ただし、こうした変化は、人疲れだけに現れるものではありません。睡眠不足や仕事量の増加、心身の不調でも起こります。普段と比べて疲れや気分の変化が続いているか、休んでも回復しない状態になっていないかを確認することが大切です。
仕事や日常生活への影響
人間関係による負担が続くと、仕事だけでなく、日常生活にも影響が及ぶ可能性があります。
国内の労働者923人を対象とした研究では、仕事上の対人関係が改善した人ほど、疲労感やイライラ、不安、抑うつなどのストレス反応が低く、活気や仕事満足度、生活満足度が高い傾向が確認されました。
人疲れが続けば、仕事への意欲が落ちたり、帰宅後や休日まで人との関わりを負担に感じたりすることも考えられます。仕事だけでなく、休息や私生活にも影響が広がっている場合は、人間関係や働き方にどのような負担があるのかを確認することが大切です。
参考:産業・組織心理学会/急激な在宅勤務の開始に伴う仕事と私生活変化の経験と様々な心理指標との関連
人疲れしたときの対処法
人疲れを感じたときは、まずは、一人で落ち着いて過ごす時間をつくり、人との予定や連絡の頻度を見直します。仕事上の連絡も、すぐに返す必要があるものと翌日以降でよいものを分けて、常に人に反応し続ける状態を減らします。
それでも強い疲労や不安、気分の落ち込みなどが続き、仕事や日常生活に影響している場合は、自分だけで対処しようとせず、産業医や医療機関、相談窓口などを利用します。
意識的に一人で過ごす時間をつくる
人との会話や気遣いが続いて疲れたときは、誰かに合わせなくてもよい時間をつくります。昼休みを一人で過ごす、帰宅後は予定を入れない、休日の一部を静かに過ごすなど、自分が落ち着ける状況をつくります。
英国と米国の35歳以上178人を対象とした21日間の日記調査では、一人で過ごす時間が多い日はストレスが低く、自分の意思で行動できている感覚が高い傾向が確認されました。一方で、孤独感が強くなり、その日の満足度が低くなる傾向も示されています。
そのため、人疲れへの対処として一人で過ごす場合も、長時間人との関係を断つ必要はありません。人とのやり取りから一時的に離れ、自分の意思で落ち着いて過ごせる時間を確保することが大切です。
人との関わり方や連絡の頻度を見直す
人からの連絡にその都度対応していると、仕事や人間関係から離れて休む時間が減ります。人疲れを感じたときは、誰とどの程度関わっているのか、連絡にどのくらい時間を使っているのかを見直します。
仕事では、勤務時間外のメールやチャットをすぐに確認する必要があるのかを整理します。労働安全衛生総合研究所の研究では、勤務時間外の仕事メールが多い人ほど、仕事から心理的に離れられず、疲労が残る傾向が確認されています。
私生活でも、疲れているときにすべての誘いや連絡へ応じる必要はありません。予定を詰め込みすぎない、返信する時間を決めるなど、自分が休める時間を確保します。
参考:労働安全衛生総合研究所/心理的ディタッチメント:仕事以外の時間に仕事から心理的に距離をとること
疲労や心身の不調が続く場合は専門家に相談する
休んでも疲れが取れない、眠れない、不安や気分の落ち込みが続くなど、心身の不調が続いている場合は、人疲れだけが原因と考えず、専門家に相談します。
職場に産業医や保健師、相談窓口がある場合は、仕事量や人間関係など、現在感じている負担について相談できます。体調や気分の変化が続いている場合は、医療機関への相談も検討します。
相談先が分からない場合は、厚生労働省の「こころの耳」を利用できます。働く人や家族を対象に、仕事や人間関係、心身の不調などについて、電話・SNS・メールで相談を受け付けています。
参考:厚生労働省「こころの耳」/こころの耳の相談窓口
人疲れを防ぐために企業ができること
人疲れを個人の性格やコミュニケーション能力だけの問題として考えると、職場側の負担を見落としてしまいます。会議や顧客対応が一日に集中している、クレーム対応で感情を抑える場面が多い、人間関係の問題を相談する場所がないといった職場環境も、従業員の負担に関係します。
企業では、まず対人業務が特定の時間や従業員に集中していないかを確認します。そのうえで、会議や顧客対応の組み方を見直す、クレーム対応を一人に任せない、相談先を明確にするといった対策を進めます。
会議や対人業務を詰め込みすぎない
会議、面談、商談、顧客対応などが続くと、その都度、相手や話題、求められる役割に合わせて意識を切り替える必要があります。人疲れを防ぐには、従業員個人の対処に任せるのではなく、企業側が予定の組み方を見直すことも大切です。
まず、部署ごとに会議や面談の回数、所要時間、時間帯を確認します。午前から夕方まで会議が続いている、顧客対応の合間に資料作成や事務処理を行っているといった場合は、対人業務の間に一人で仕事を進める時間を確保します。
会議の参加者を必要な人に絞ります。情報共有だけで済む内容は、文書やチャットで共有すれば、会議そのものを開く必要がありません。会議が続く日は、次の予定までに間隔を空け、すぐに別の相手とのやり取りが始まらないスケジュールにします。
オンライン会議後の回復時間を調べた研究でも、会議から次の仕事へ移るまでの時間を確保するという考え方が示されています。
単に会議の数を減らすのではなく、対人業務が何時間も続かないように予定を組み、一人で集中する仕事とのバランスを取ることがポイントです。従業員が勤務時間中に気持ちや注意を切り替えられる余白を設けることで、対人業務による負担が集中するのを防ぐことができます。
参考:PubMed/Why Am I So Exhausted?: Exploring Meeting-to-Work Transition Time and Recovery From Virtual Meeting Fatigue
感情労働の負担を減らす仕組みをつくる
接客、営業、電話対応、医療・介護など、人と接する仕事では、自分の感情とは別に、仕事上求められる態度や表情を保たなければなりません。相手に不満や怒りを感じていても、冷静に対応する必要がある仕事もその一つです。このように、仕事に合わせて感情を調整する働き方は「感情労働」と呼ばれます。
2015年に発表された研究では、関東圏の総合病院に勤務する女性病棟看護師306人を対象に、感情労働とストレス反応などの関係が調べられました。その結果、感情労働のうち、内面の感情を仕事上求められる感情に合わせようとする「深層適応」と、心理的・身体的ストレス反応との間に正の関連が確認されています。
感情労働の負担を従業員だけに背負わせないためには、企業側の対応も必要です。まず、クレーム対応や難しい顧客対応など、精神的な負担が大きい業務を確認します。そのうえで、「この段階で上司に報告する」「一定の言動があれば担当者を交代する」など、対応を引き継ぐ基準を決めておきます。
対応後に上司や同僚へ相談できる時間を設けることも大切です。担当者が一人で対応を続けるのではなく、必要に応じて別の担当者や管理職が引き継げる体制を整えます。
従業員に接客や応対の技術だけを求めるのではなく、本人が対応する範囲と、組織が引き受ける範囲を明確にすることが重要です。
参考:日本行動医学会「病棟看護師における感情労働とワーク・エンゲイジメントおよびストレス反応との関連」
人間関係の問題を相談できる体制を整える
上司との関係、同僚との対立、ハラスメントなどの問題が続いても、相談先が分からなければ本人が抱え込むことになります。企業は、問題が深刻になる前に相談できる窓口を明確にしておく必要があります。
社内では、直属の上司だけでなく、人事・労務担当者、産業医、保健師など、複数の相談先を設けます。上司本人との関係に悩んでいる場合もあるため、「まず上司に相談する」という一本化は避けた方がよいでしょう。外部の相談窓口やEAPを導入している企業では、その利用方法も従業員へ周知します。
また、ストレスチェックを実施するだけで終わらせず、実施時期や目的、結果の扱いを従業員に周知し、受検を呼びかけます。従業員自身がストレスの状態に気づく機会になるほか、必要に応じて面接指導や相談につなげることもできます。
さらに、ストレスチェックの結果を部署や職場などの単位で集計・分析すると、個人を特定せずに職場全体の傾向を確認できます。厚生労働省も、集団分析の結果を職場環境の改善に活用することを示しています。
人間関係に関する項目で負担が高い部署があれば、管理職への聞き取りや従業員への意見聴取を行い、原因を確認します。そのうえで、業務分担、コミュニケーションの方法、管理職の対応など、改善が必要な部分を見直します。
人疲れを従業員一人の問題として扱うのではなく、相談内容や集団分析から職場側の課題を確認し、働く環境の改善につなげることが重要です。
まとめ
人付き合いによる疲れを放置すると、気分の落ち込みや不安、うつ状態につながることもあります。行動面では集中力や仕事の効率が下がり、孤立して引きこもったり、人間関係を過度に避けたりしがちです。
企業側は、会議や対人業務を詰め込みすぎないこと、感情労働を個人任せにしないこと、人間関係の問題を相談できる体制を整えることが求められます。従業員本人だけでなく、職場環境にも目を向けることが重要です。
自分では疲れやストレスの程度を判断しづらいと感じる場合は、ストレスチェックを状態を振り返るきっかけとして活用することができます。企業も、ストレスチェックの結果や集団分析を職場環境の見直しに生かすことで、従業員が人間関係の負担を抱え込みにくい職場づくりにつなげることができます。
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