ワーク・ファミリー・コンフリクトとは?原因と対策

ワーク・ファミリー・コンフリクトとは、仕事と家庭で求められる役割が両立せず、どちらか一方がもう一方に影響している状態を指します。たとえば、残業が続いて家族と過ごす時間が減る、育児や介護のために仕事の予定を変更するといったケースです。仕事が家庭生活に影響する「WIF」と、家庭生活が仕事に影響する「FIW」の2方向があるとされています。
この記事では、ワーク・ファミリー・コンフリクトの意味や原因、仕事や家庭への影響、企業が取り組める対策について解説します。

ワーク・ファミリー・コンフリクトとは

ワーク・ファミリー・コンフリクト(Work-Family Conflict:WFC)とは、仕事と家庭の両方で求められる役割がぶつかり、両立が難しくなっている状態を指します。
ワーク・ファミリー・コンフリクトは、仕事と家庭のどちらから影響が及ぶかによって、2つに分けられます。
仕事が家庭生活に影響する「WIF」と、家庭生活が仕事に影響する「FIW」です。

仕事が家庭生活に影響する「WIF」

WIF(Work Interference with Family)とは、仕事のために家庭で過ごす時間が減ったり、仕事の疲れやストレスが家庭生活に影響したりする状態を指します。

たとえば、残業が続いて家族と過ごす時間が減る、休日にも仕事の対応が入り予定を変更する、仕事で疲れて家事や育児まで手が回らない、といったケースです。

国内の中小企業で働く人を対象とした研究では、WIFは労働時間や休暇の取り方、ストレスなどと関連することが確認されています。特に労働時間が長くなると、家庭で使える時間が減るため、仕事と家庭の両立に負担がかかります。
なお、WIFには、仕事を終えて帰宅しても疲れや緊張が残り、家族との会話を楽しめない、家事や育児に十分に関われないといった状態も含まれます。

家庭生活が仕事に影響する「FIW」

FIW(Family Interference with Work)とは、育児や介護、家事など家庭での負担が、仕事に影響している状態を指します。
たとえば、子どもの急病で仕事を休む、家族の介護のために勤務時間を変更する、家事や育児で睡眠時間が短くなり、仕事中に疲れを感じるといったケースです。

FIWは、子育て中の人だけに起こるものではなく、親や配偶者の介護、家族の療養、日々の家事などに時間を取られることで、仕事の予定を変更したり、勤務時間を調整したりする際にも生じることもあります。

国内でも、仕事と育児、介護を同時に担う人を対象に、家庭での負担が仕事に与える影響について研究されています。育児や介護などの負担が大きい場合は、本人だけで対応するのではなく、休暇制度や勤務時間の調整など、職場側の支援も必要です。
参考:日本公衆衛生学会/中小企業雇用者におけるワーク・ファミリー・コンフリクトに関連する要因
参考:日本看護科学学会/就労介護者の仕事と家庭役割間の葛藤とケアマネジャーによる就労継続支援の判断,就労介護者の特性との関連

ワーク・ファミリー・コンフリクトが起こる原因

ワーク・ファミリー・コンフリクトは、仕事と家庭の両方で時間や役割を求められ、その調整が難しくなったときに起こります。長時間労働や休日出勤が続けば、家族と過ごす時間や家事・育児に使える時間が減ります。一方で、育児や介護、家事の負担が大きいと、仕事を休んだり、勤務時間を変更したりする必要が生じます。

また、職場の環境も大きく関係します。家庭の事情を上司に相談できない、休暇や勤務時間の変更を申し出ても理解を得られないといった職場では、仕事と家庭の両立にかかる負担が本人に集中します。

長時間労働で家庭に使える時間が減る

長時間労働が続くと、家庭で過ごせる時間が減り、家事や育児、家族との時間に影響が出ます。

帰宅が遅い日が続けば、家族と夕食を取る、子どもの世話をする、家事を分担するといったことが難しくなります。休日出勤が増えれば、家族との予定を変更しなければならないこともあります。
仕事と家庭の両立を支える制度が整っていても、残業や休日出勤が続けば、家庭で過ごす時間そのものを確保できません。長時間労働を減らし、休暇を取れる働き方にすることが、仕事による家庭生活への影響を抑えるうえで重要です。

育児や介護、家事の負担が大きい

育児や介護、家事に多くの時間が必要になると、仕事との両立が難しくなることがあります。
子どもの送迎や急な発熱への対応、家族の通院への付き添い、介護サービスとの連絡などで、仕事を休んだり、勤務時間を変更したりすることがあります。
家事や育児、介護の負担が家族の一人に偏っている場合、その人が仕事との調整も多く担うことになります。
家庭で担うことが多くなるほど、仕事に使える時間や休息の時間にも影響します。特に負担が一人に集中している場合は、仕事と家庭の両立にかかる負担も大きくなります。

上司の支援や職場の理解が足りない

育児や介護と仕事を両立するには、休暇制度や時短勤務などの制度だけでなく、上司や周囲の理解も必要です。

子どもの急病や家族の通院で休みたいときに上司へ相談できない、勤務時間を変更すると周囲に迷惑をかけると感じる、両立支援制度を利用すると評価に影響するのではないかと不安を感じる職場では、制度があっても利用を控える人が出てきてしまいます。

共働き世帯を対象とした国内研究では、家庭との両立に否定的な職場風土が、ワーク・ファミリー・コンフリクトや仕事上の抑うつと関係していました。また、国内外の研究をまとめた文献レビューでも、上司や組織からの支援を高める取り組みが、ワーク・ファミリー・コンフリクトの軽減につながることが報告されています。
参考:産業・組織心理学会/仕事領域におけるワーク・ファミリー・コンフリクト対処プロセスの検討

ワーク・ファミリー・コンフリクトが続くとどうなる?

ワーク・ファミリー・コンフリクトが続くと、仕事と家庭のどちらにも十分に時間や気持ちを向けることができなくなってしまいます。
国内研究でも、ワーク・ファミリー・コンフリクトはメンタルヘルスや夫婦関係、職務満足度などと関連することが報告されています。本人のストレスだけでなく、家庭生活や仕事にも影響が及ぶ可能性があるため、負担が続いている場合は早めに働き方や家庭での役割分担を見直すことが大切です。

ストレスや心理的な負担が大きくなる

仕事と家庭の両方に対応し続けると、「仕事も家庭も十分にできていない」と感じてしまうことがあります。
仕事をしているときは家庭が気になり、家に帰ると仕事が気になる状態が続けば、気持ちを休める時間も減ってしまいます。

共働き夫婦を対象とした国内研究では、ワーク・ファミリー・コンフリクトとメンタルヘルスとの関係が検討されています。また、別の研究でも、家庭との両立に否定的な職場風土がワーク・ファミリー・コンフリクトと仕事上の抑うつに関係することが示されています。
一時的に忙しいだけであれば大きな問題にならない場合もありますが、仕事と家庭の板挟みが長く続いているときは、本人だけで抱え込まず、仕事量や勤務時間、家庭での分担を見直す必要があります。

家族との関係や家庭生活に影響する

仕事の負担が大きくなると、家族と過ごす時間が減ったり、家事や育児を分担できなくなったりすることがあります。

たとえば、残業で帰宅が遅い日が続けば、家族と食事をする時間や会話する時間が減ります。休日にも仕事の対応が続けば、家族との予定を変更しなければならないこともあります。また、仕事の疲れやストレスを抱えたまま帰宅すると、家族との会話や家事、育児まで負担に感じる場合があります。

こうした状態が続くと、家事や育児の負担が配偶者に偏り、夫婦関係にも影響する可能性があります。共働き夫婦187組を対象とした国内研究では、ワーク・ファミリー・コンフリクトや夫婦関係の満足度が、夫婦の間で互いに関係することが確認されました。

仕事への集中や働き続ける意欲に影響する

子どもの体調が気になる、家族の介護で急な呼び出しに備えなければならない、家事や育児で十分に眠れないなど、家庭のことで気がかりなことが続くと、仕事中もそのことが頭から離れず、目の前の業務に集中できないことがあります。
子育て中の女性看護職554人を対象とした国内研究では、仕事から家庭への葛藤や家庭から仕事への葛藤の一部が、職務満足度の低下と関係していました。
また、家族を介護しながら働く696人を対象とした研究では、ワーク・ファミリー・コンフリクトが高い人ほど、退職や転職、就業形態の変更を考える割合が高いことが確認されています。
参考:産業・組織心理学会/共働き夫婦におけるワーク・ファミリー・コンフリクト―「クロスオーバー効果」と「対処行動の媒介・緩衝効果」の吟味―
参考:日本看護医療学会/子育て中の女性看護職のワーク・ファミリー・コンフリクトと職務満足度との関係

企業がワーク・ファミリー・コンフリクトを減らすには

ワーク・ファミリー・コンフリクトを減らすには、育児休業や介護休業などの制度を用意するだけでなく、日常の働き方まで見直す必要があります。残業が続いている、休暇を取りづらい、家庭の事情を上司に相談できないといった状態では、制度があっても十分に活用されません。

まずは、部署ごとの残業時間や休暇の取得状況を確認し、家庭との両立を妨げている働き方がないかを調べます。そのうえで、仕事量や勤務時間を調整し、上司が家庭の事情について相談を受けられる体制を整えます。ストレスチェックの集団分析の結果も加えると、負担の大きい部署をさらに詳しく確認できます。

長時間労働を減らし、休暇を取れる環境を整える

まず、直近3か月程度の勤怠データを部署ごとに確認し、残業や休日出勤が多い部署を洗い出します。あわせて、有給休暇の取得日数や、特定の従業員だけに残業が集中していないかも確認します。

残業が多い部署が分かったら、「なぜ遅くまで働いているのか」を仕事ごとに確認します。
そのうえで、仕事を「減らせるもの」「ほかの人に分けられるもの」「実施する時間を変えられるもの」に分けます。月末に一人へ仕事が集中しているなら担当を複数人に分け、夕方以降の定例会議は時間を早めます。担当者しか分からない仕事は、手順書を作り、副担当を決めておきます。

休暇についても、休んだ人の仕事を誰が引き継ぐのかを事前に決め、急な育児や介護でも休める体制を整えます。担当者が休んだときに業務が止まる仕事は、複数人で対応できるようにしておきます。

対策を始めたら、1~3か月後に残業時間や休日出勤、有給休暇の取得状況をもう一度確認します。数字が変わっていない場合は、仕事量そのものが多すぎないか、人員配置まで含めて見直します。

上司が仕事と家庭の両立を支援する

育児や介護との両立を支えるには、制度を用意するだけでなく、相談を受けた上司が仕事を調整できるようにしておく必要があります。

まず企業側で、管理職が調整できる項目を決めておきます。たとえば、「始業・終業時刻の変更」「会議時間の変更」「締め切りの調整」「担当業務の分担」「社内制度の範囲での在宅勤務」などです。上司の判断で対応できる範囲と、人事への相談が必要なケースを分けておくと、相談を受けてから対応まで時間がかかりません。

従業員から相談を受けたときは、家庭の事情を細かく聞くことよりも、「現在の働き方で何に困っているのか」を確認します。
たとえば、子どもの送迎で18時までに退勤する必要がある場合は、夕方の業務をほかの時間帯へ移すといった方法を検討します。家族の介護で急な休みが発生する場合は、副担当を決めておきます。
職場介入に関する研究レビューでも、上司や組織による両立支援を高め、従業員が勤務スケジュールを調整できる範囲を広げる取り組みで、ワーク・ファミリー・コンフリクトの低減が確認されています。

ストレスチェックの集団分析と勤務データを確認する

ストレスチェックを実施すれば、集団分析を使って、部署ごとの仕事の負担や上司・同僚からの支援の状況を確認することができます。
仕事と家庭の両立に関する問題を探るには、集団分析の結果に、残業時間や休日出勤、有給休暇の取得状況などの勤務データを組み合わせます。

まず、部署ごとに「仕事の量的負担」「仕事のコントロール」「上司の支援」「同僚の支援」を確認し、月平均の残業時間、休日出勤の回数、有給休暇の取得状況、育児・介護に関する制度の利用状況などを比較します。

たとえば、「仕事の量的負担」が高く、残業時間も長い部署では、仕事量や人員配置を確認します。「上司の支援」が低い部署では、家庭の事情を相談できているか、休暇や勤務時間の変更を申し出たときに上司が対応できているかを確認します。

対策を行ったあとは、次回の集団分析や勤怠データで変化を確認します。残業時間が減ったか、休暇を取れるようになったか、仕事の量的負担や上司の支援の数値が変わったかを比べれば、実施した対策が職場の改善につながったかを確認することができます。

このように、ストレスチェックの集団分析と勤務データを組み合わせると、仕事と家庭の両立を妨げている職場側の問題を具体的に探り、改善策を決める材料として活用できます。

 

ストレスチェッカーとは

「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しています。
また、無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下である「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場でも実施義務化が進むため、早めの準備が大切です。
導入や運用については、ぜひお気軽にご相談ください。

ストレスチェック導入のご相談はこちら

 

まとめ

ワーク・ファミリー・コンフリクトとは、仕事と家庭で求められる役割がぶつかり、どちらか一方がもう一方に影響している状態を指します。
こうした状態が続くと、本人のストレスが大きくなるだけでなく、家族との関係や仕事への集中、今の働き方を続ける意欲にも影響する可能性があります。
企業が対策を進めるときは、残業や休日出勤を減らす、急な休みでも仕事を引き継げる体制をつくる、家庭の事情を上司へ相談できるようにするなど、日常の働き方まで見直すことが重要です。
ストレスチェックの集団分析も、職場改善の材料として活用することができます。仕事の量的負担や上司・同僚からの支援の状況を確認し、残業時間や休暇取得状況などの勤務データとあわせて見ることで、負担が集中している部署や、見直すべき働き方を探る手がかりになります。

ストレスチェッカーは、官公庁・上場企業・医療機関などで採用されている国内最大級のストレスチェックツールです。自動リマインド、面接指導者管理、進捗確認機能を標準搭載し、2025年5月からは無料プランでも「プレゼンティーイズム(生産性低下)」の測定に対応しています。
ストレスチェックの導入方法や実施方法について、ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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