ウェルビーイングとは?企業事例と進め方

ウェルビーイングとは、身体や心の健康だけに限らず、人とのつながり、生活環境、仕事、経済状況なども含めて、その人が全体として良好な状態にあることを指します。

近年は個人の生活にとどまらず、企業経営や人材マネジメントの分野でもウェルビーイングへの関心が高まっています。従業員がどのような環境で働き、仕事や周囲との関係をどう感じているかが、企業にとっても重要なテーマになってきました。

この記事では、ウェルビーイングの意味や代表的な考え方、注目される背景、企業の取り組み事例、ウェルビーイング経営を進める方法まで分かりやすく解説します。

ウェルビーイングとは

ウェルビーイング(Well-being)とは、身体や心の健康だけでなく、人との関係や生活、仕事なども含めて、その人が良好な状態にあることを幅広く捉える考え方です。日本語では「幸福」「幸福度」「良好な状態」などと訳されますが、単に「楽しい」「うれしい」といった一時的な感情だけを指す言葉ではありません。
たとえば、健康上の問題がなくても、職場で孤立していたり、仕事に意味を感じられなかったりすれば、生活全体が良好な状態にあるとは限りません。反対に、仕事だけが順調であっても、心身の健康や生活が大きく損なわれている状態をウェルビーイングが高いと評価することはできません。

ウェルビーイングは「良好な状態」を幅広く捉える考え方

ウェルビーイングは、単純に「幸せか、不幸せか」という二択で捉えるものでなく、健康、人間関係、仕事、生活環境、経済状況、人生に対する満足感など、さまざまな要素が関係する幅広い概念です。

内閣府では「満足度・生活の質に関する調査」を実施し、健康状態や社会とのつながり、生活の楽しさ、仕事、住宅、家計など、複数の観点から人々の生活の状況を調べています。つまり、ウェルビーイングを考える際には、特定の指標だけで判断するのではなく、生活を構成するさまざまな側面を総合的に捉えることが大切です。

企業においても、給与や福利厚生を充実させるだけで、従業員のウェルビーイングが向上するとは限りません。仕事内容や職場環境、周囲との関係、成長を実感できる機会、仕事と生活のバランスなど、従業員がどのような状態で働いているのかを幅広い視点から考える必要があります。
参考:内閣府/満足度・生活の質に関する調査

WHOが示す「身体・精神・社会」の視点

ウェルビーイングを理解するうえで、よく引用されるのが世界保健機関(WHO)憲章の健康に関する定義です。

WHO憲章では、健康を「病気や虚弱でないというだけではなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態」と定義しています。WHO憲章は1946年に採択され、1948年に発効しました。この健康の定義は、現在のWHO憲章にも掲載されています。

ここで重要なのは、健康を「病気かどうか」だけで捉えていない点です。身体の状態だけでなく、精神面や社会的な側面まで含めて健康を考えています。
「社会的(social)」について、WHO憲章そのものには詳しい説明はありません。一方、WHOは「健康の社会的決定要因」として、人が生まれ、育ち、働き、生活する環境や、教育、住宅、労働条件などが健康に影響するとしています。そのため、社会的な側面を考える際には、人間関係だけでなく、家庭や職場、地域、生活環境などを含めて捉えることができます。

たとえば職場では、身体に大きな問題がなくても、強い心理的負担が続いていたり、職場で孤立していたりする場合があります。反対に、人間関係が良好でも、長時間労働などによって身体への負担が続いていれば、心身ともに良好な状態とはいえません。

WHOの定義そのものは、「ウェルビーイングには身体・精神・社会という3つの要素がある」と定めたモデルではありませんが、健康を身体面だけでなく、精神面や社会的な側面まで含めて捉える考え方は、ウェルビーイングを理解するうえでも重要な基礎となっています。
参考:World Health Organization/Constitution of the World Health Organization

ウェルビーイングを捉える代表的なモデル

ウェルビーイングは幅広い概念であるため、「何が良好な状態を構成するのか」を整理するためのさまざまなモデルが提唱されています。代表的なものの一つが、ポジティブ心理学の研究者マーティン・セリグマンが示した「PERMA(ペルマ)モデル」です。

セリグマンは、ウェルビーイングを構成する5つの要素として、Positive Emotion、Engagement、Relationships、Meaning、Accomplishmentを挙げています。それぞれの頭文字を取ったものが「PERMA」です。

P:Positive Emotion(ポジティブ感情)
喜びや感謝、希望など、ポジティブな感情を経験することです。
E:Engagement(没頭)
自分の能力や強みを使いながら、仕事や活動などに深く集中して取り組むことです。
R:Relationships(良好な人間関係)
家族や友人、同僚など、周囲の人とのつながりや支え合える関係を持つことです。
M:Meaning(意味・意義)
自分自身を超えたものとのつながりを持ち、人生や仕事などに意味や目的を感じることです。
A:Accomplishment(達成)
目標に向かって取り組み、達成や成長、能力の向上を目指すことです。

セリグマンは2011年の著書『Flourish』で、これらをウェルビーイングを構成する5つの測定可能な要素として提示しました。その後、Julie ButlerとMargaret L. Kernによって、PERMAの5領域を測定する「PERMA-Profiler」も開発されています。

参考:University of Pennsylvania Positive Psychology Center/PERMA Profiler

日本では、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司氏らによる「幸せの4つの因子」も知られています。
前野氏らは、幸福に関わる心的特性について29項目・87個の質問を設定し、日本人1,500人を対象にWeb調査を行いました。その回答を因子分析した結果、幸福に関わる心的特性を4つの因子に整理しています。

「やってみよう!」因子(自己実現と成長)
自分の能力を生かし、学びや成長を重ねながら、自分が目指す姿に近づいていくことに関する因子です。
「ありがとう!」因子(つながりと感謝)
人とのつながりや愛情、周囲への感謝、他者への親切などに関する因子です。
「なんとかなる!」因子(前向きと楽観)
物事を楽観的に捉えたり、失敗や不安な気持ちを引きずらずに切り替えたりすることに関する因子です。
「あなたらしく!」因子(独立とマイペース)
他人と過度に比較せず、周囲に左右されすぎることなく、自分自身の考えを保つことに関する因子です。

PERMAと「幸せの4つの因子」は、同じ理論を別の言葉で表したものではありません。それぞれ異なる研究や考え方から生まれたモデルです。一方で、人との関係や成長、達成、自分らしい生き方など、ウェルビーイングを考えるうえで重なる視点も見られます。
企業が従業員のウェルビーイングを考える場合も、一つの数値だけを見るのではなく、心身の状態、人間関係、仕事への意味や目的、成長や達成の実感など、複数の観点から状態を把握することが大切です。
参考:慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 ヒューマンシステムデザイン研究室/幸福度の推奨アンケート

ウェルビーイングが注目される背景

ウェルビーイングへの関心が高まっている背景には、働き方や生活に対する価値観の変化があります。
近年は、仕事だけでなく、家庭生活や健康、人とのつながりなども含めて、より良い状態で暮らし、働くことを重視する考え方が広がっています。

企業を取り巻く環境も変化しています。人手不足が続くなか、人材を確保するだけでなく、従業員が健康を保ちながら能力を発揮し、働き続けられる職場をつくることが重要になっています。
また、人的資本経営の広がりにより、人材を企業価値の向上につながる資本として捉える考え方も重視されるようになりました。さらに、孤独・孤立の問題や人とのつながりにも社会的な関心が集まっています。

こうした変化を背景に、心身の健康だけでなく、仕事や生活、人間関係などを含めて働く人の状態を捉えるウェルビーイングが、企業にとっても重要なテーマとなっています。

働き方や働く価値観の多様化

ウェルビーイングが注目される背景の一つに、働き方や仕事に求めるものの多様化があります。
給与や待遇だけでなく、仕事と家庭生活を両立できること、自分に合った働き方を選べること、納得して仕事に取り組めることなども、働くうえで重視されるようになっています。
制度面でも、こうした変化への対応が進んでいます。2025年10月からは改正育児・介護休業法により、3歳から小学校就学前の子どもを育てる労働者に対して、企業は始業時刻の変更、テレワーク、休暇、短時間勤務などの中から複数の措置を用意することが義務付けられました。

働く人の事情や価値観がそれぞれ異なるなかでは、給与や労働時間だけで職場の良し悪しを判断することはできません。心身の健康、仕事への納得感、人間関係、家庭生活との両立なども含めて、従業員が良好な状態で働けているかを考える必要があります。こうした流れから、働く人の状態を幅広く捉えるウェルビーイングへの関心が高まっています。
参考:厚生労働省/柔軟な働き方を実現するための措置

「物の豊かさ」から「心の豊かさ」へ

ウェルビーイングが注目される背景の一つに、生活の豊かさを「物」だけでなく、「心の充実」や「ゆとり」まで含めて考える人が多いことがあります。

内閣府の「国民生活に関する世論調査」では、「これからは心の豊かさやゆとりのある生活に重きをおきたい」と考える人と、「まだまだ物質的な面で生活を豊かにすることに重きをおきたい」と考える人の割合を継続的に調べています。
2025年8月の調査では、「心の豊かさ」を重視する人が52.2%、「物の豊かさ」を重視する人が46.6%でした。2024年の調査でも、「心の豊かさ」を重視する人は53.0%と半数を超えています。
こうした結果からも、豊かさを経済的な条件だけで捉えるのではなく、心の充実や生活のゆとりも重視する考え方が広く共有されていることが分かります。身体や心の健康、人とのつながり、仕事や生活への満足感などを含めて「良好な状態」を考えるウェルビーイングが注目されている背景の一つといえます。
参考:内閣府/国民生活に関する世論調査(令和7年8月調査)

人手不足と人的資本経営の広がり

人材の確保や定着が重要な経営課題となっていることも、ウェルビーイングが注目される背景の一つです。

中小企業庁の「2025年版 中小企業白書」では、2023年、2024年ともに人材を「不足」と回答した企業の割合が高く、人材不足感が高止まりしていることが示されています。また、人材が不足している企業では、直近3年間に採用した従業員の定着率が低い傾向も確認されており、白書では採用した人材の定着率を高める取り組みが重要だとしています。
人手不足が続くなかでは、新たな人材を採用するだけでなく、従業員が健康を保ちながら能力を発揮し、働き続けられる環境を整えることも重要です。仕事の負担や職場の人間関係、成長の機会、仕事と生活の両立などを含めて働く環境を考える必要があり、こうした点はウェルビーイングとも深く関わります。

あわせて、企業経営では「人的資本経営」への関心も高まっています。経済産業省は人的資本経営を、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値の向上につなげる経営のあり方としています。
日本では、2023年1月に施行された改正開示府令により、有価証券報告書に「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が新設されました。人的資本についても、人材育成方針や社内環境整備方針、その方針に関する指標や目標、実績などの開示が求められています。

ウェルビーイングと人的資本経営は同じものではありませんが、人材が健康を保ち、能力を発揮できる環境を整えるという点では共通する部分があります。
参考:中小企業庁/2025年版 中小企業白書 第2部第1章第4節 人材戦略
参考:経済産業省/人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~

孤独・孤立と人とのつながりへの関心

孤独や孤立が社会的な課題として注目されるようになったことも、ウェルビーイングへの関心が高まる背景の一つです。
なぜなら、心身の健康だけでなく、人とのつながりや周囲から得られる支えも、その人が良好な状態で生活するうえで重要だと考えられるからです。

内閣府は2021年から、孤独・孤立の実態を把握するための全国調査を毎年実施しています。2025年の調査では、孤独感が「しばしばある・常にある」「時々ある」「たまにある」と回答した人を合わせると、約4割に上りました。また、同居していない家族や友人と直接会って話すことが「全くない」と回答した人も一定数います。

孤独は、単に一人で過ごしている状態を指すものではありません。周囲に人がいても、気軽に相談できる相手がいなかったり、困ったときに必要な支援を受けられなかったりすることで、孤独を感じる場合があります。また、職場や地域などに所属していても、周囲とのつながりを感じられず、自分だけが取り残されているように感じることもあります。

このように、孤独・孤立への関心が高まるなかで、人とのつながりまで含めて良好な状態を考えるウェルビーイングにも注目が集まっています。
参考:内閣府/孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和7年実施)

SDGsでも重視されるウェルビーイング

ウェルビーイングへの関心が高まる背景には、健康や幸福を社会全体の目標として捉える国際的な流れもあります。その代表的なものが、国連のSDGs(持続可能な開発目標)です。

2015年に国連で採択されたSDGsでは、17の目標の一つとして、目標3「すべての人に健康と福祉を」が掲げられています。英語では「Good Health and Well-being」と表記され、「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、ウェルビーイングを促進する」ことを目標としています。
目標3が対象としているのは、病気の予防や治療だけではありません。妊産婦や乳幼児の健康、感染症、非感染性疾患などに加えて、精神的な健康も含まれています。ターゲット3.4では、2030年までに非感染性疾患による早期死亡を減らすこととともに、精神保健とウェルビーイングを促進することが掲げられています。

このようにSDGsでも、健康を単に「病気ではない状態」として捉えるのではなく、心の健康やより良い生活まで含めて考える方向性が示されています。ウェルビーイングが、個人や企業だけのテーマではなく、社会全体で考える課題として注目されていることが分かります。
なお、SDGsの目標3と企業が取り組む「ウェルビーイング経営」は同じものではありません。SDGsは世界全体の健康や福祉を対象とした国際目標ですが、人がより良い状態で生活できることを重視するという点では、共通する考え方があります。
参考:United Nations/Goal 3: Good Health and Well-being
参考:外務省/2025年版開発協力白書 保健・医療

企業のウェルビーイング施策事例

ウェルビーイングに取り組む企業は、それぞれ自社の理念や事業内容に合わせて施策を進めています。心身の健康を支えるだけでなく、働きがいや成長、人とのつながり、仕事と生活の両立など、幅広い観点から従業員の良好な状態を支える取り組みが行われています。
また、健康診断や運動支援といった健康施策にとどまらず、職場環境の改善やコミュニケーションの促進、従業員の状態を把握するための調査など、企業によって取り組み方はさまざまです。
ここでは、企業によってウェルビーイングの捉え方や施策がどのように異なるのか、トヨタ自動車、楽天グループ、味の素、アシックスの4社の事例を紹介します。

トヨタ自動車:「幸せの量産」を掲げる

トヨタ自動車は、2020年に策定した「トヨタフィロソフィー」で、「幸せの量産」をミッションに掲げています。より良いクルマやモビリティを提供することに加え、顧客や従業員、取引先、地域社会など、事業に関わる人々の幸せに貢献することを目指しています。

従業員については、安全と健康を企業活動の基盤と位置付け、心身の健康づくりに取り組んでいます。運動を促す施策や食生活の改善を支援する取り組みなどを進めており、2026年には「健康経営優良法人(ホワイト500)」に9年連続で認定されました。
また、トヨタでは2021年から、社内外の研究者が参加する「Emotional Well-Being研究会」を開催しています。2025年に公表された第4回の研究会では、製造現場で働く従業員のWell-beingをテーマに、日本、米国、欧州の製造現場のマネージャーや人事担当者、研究者などが議論しました。
研究会では、心身の健康だけでなく、仕事に意味を感じられるか、互いの価値観を尊重できるか、職場でどのような関係を築けるかといった点も取り上げています。
トヨタの事例からは、ウェルビーイングを健康施策だけに限定せず、企業理念や職場づくりと結び付けて考えていることが分かります。
参考:トヨタ自動車/幸せの量産をミッションに掲げる私たち従業員のWell-beingを見つめる
参考:トヨタ自動車/サステナビリティ

楽天グループ:「Well-being First」と三間+余白

楽天グループは、楽天健康宣言として「Well-being First」を掲げています。
目指しているのは、従業員の身体、心、社会とのつながりという3つの側面からウェルビーイングを高めることです。
具体的には、従業員を対象としたウェルビーイングサーベイを実施し、身体、心、社会とのつながりについて状態を把握しています。また、長時間労働への対応、メンタルヘルス支援、健康診断、運動プログラム、睡眠や女性の健康に関するセミナーなど、さまざまな取り組みを行っています。

一方、楽天グループの研究機関「楽天ピープル&カルチャー研究所」では、個人だけでなくチーム全体の良好な状態を考える「コレクティブ・ウェルビーイング」を提唱しています。
その考え方を整理したものが「三間(さんま)と余白」です。「三間」とは、「仲間」「時間」「空間」の3つを指します。従業員同士のつながりをつくる「仲間」、仕事に区切りを設ける「時間」、仕事をする環境を整える「空間」を考え、それぞれに「余白」を持たせるという考え方です。
楽天の事例では、従業員個人の健康を支える取り組みと、チームや働き方そのものを考える取り組みの両方からウェルビーイングを捉えている点がポイントです。
参考:楽天グループ/健康・安全・ウェルネス
参考:楽天グループ/ニューノーマル時代の持続的なチームのあり方を企業・個人向けに提言

味の素:「4つのWell-being」を推進

味の素グループは、「アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingに貢献する」をパーパスとして掲げています。そのうえで、社員のWell-beingを人財資産の強化を支える基盤と位置付けています。

社員のWell-beingについては、次の4つに整理しています。

「挑戦・成長」
仕事を通じた挑戦や成長に関わるWell-beingです。

「社会・文化」
組織や社会とのつながりなどに関わるWell-beingです。

「報酬・資産」
報酬や経済的な基盤に関わるWell-beingです。

「健康」
心と身体の健康に関わるWell-beingです。

つまり、味の素グループではウェルビーイングを心身の健康だけに限定せず、成長、社会との関係、経済面まで含めて捉えています。
健康の分野では、「味の素グループで働いていると、自然に健康になる」を目指す姿として掲げ、従業員やその家族の心身の健康を支援しています。健康増進最高責任者を置き、健康保険組合、産業保健スタッフ、人事部門、労働組合などが連携して健康経営を進める体制も整えています。
4つの領域に分けて考えることで、「健康施策を増やすこと=ウェルビーイング」とするのではなく、社員が働くうえで必要となる複数の側面を対象としている点が、味の素グループの取り組みのポイントです。
参考:味の素グループ/健康経営
参考:味の素グループ/Our Philosophy

アシックス:運動と健康を軸にした取り組み

アシックスは、創業哲学である「健全な身体に健全な精神があれかし(Sound Mind, Sound Body)」を軸に、従業員のウェルビーイングに取り組んでいます。
「ASICS健康経営宣言」では、従業員とその家族が身体的・精神的・社会的に良好な状態になることを目指すとしています。また、「従業員一人ひとりのヘルスリテラシーの向上と定着」を方針として、健康管理・増進体制、ヘルスリテラシー、生活習慣、メンタルヘルス、多様な人材が活躍できる職場環境という5つの領域で施策を進めています。

スポーツ用品を手がける企業らしく、運動を取り入れた施策も行っています。これまでに、ウォーキングイベントや社内スポーツイベントなどを実施し、従業員の運動習慣づくりを支援してきました。
取り組みの結果についても数値で確認しています。2025年度の社内調査では、週1回以上運動する「運動習慣者」の割合は78.8%でした。2023年度の51.9%、2024年度の76.6%から推移を継続して公表しています。このほか、プレゼンティーイズムや高ストレス者の割合、ヘルスリテラシーなども指標として設定しています。

アシックスの事例は、自社の事業や創業理念とウェルビーイングを結び付けながら、施策を実施するだけでなく、その結果を数値で確認している点が参考になります。
参考:アシックス/アシックスの健康経営
参考:アシックス/「アシックス健康白書2026」を公開

ウェルビーイング経営を実践するには

ウェルビーイング経営を進める際は、福利厚生を増やしたり、健康イベントを実施したりするだけで終わらせないことが重要です。まず、自社がウェルビーイングに取り組む目的を明確にし、従業員がどのような状態にあるのかを把握したうえで、課題に合った施策を考える必要があります。
施策を実施した後も、そこで終わりにするのではなく、従業員の状態や職場環境に変化があったかを確認し、必要に応じて内容を見直します。経済産業省の「人材版伊藤レポート2.0」でも、企業ごとに健康課題や人材の状況が異なるため、自社に合った施策を検討し、試行錯誤を重ねることが重要だとされています。

目的と方針を明確にする

ウェルビーイング経営を進める際は、まず「何のために取り組むのか」を明確にすることが大切です。目的が曖昧なままでは、健康セミナーや社内イベントを実施しても、自社のどの課題に対応する施策なのか判断できなくなってしまうからです。

たとえば、従業員の心身の健康を守ること、離職を減らすこと、仕事と生活を両立できる環境を整えること、従業員が能力を発揮できる職場をつくることなど、企業によって重視する目的は異なります。
経済産業省の「人材版伊藤レポート2.0」でも、Well-beingは幅広い意味を持つ概念であり、従業員一人ひとりの価値観や働く目的によって、その捉え方が異なるとされています。

そのため、他社で成果が出ている施策をそのまま取り入れるのではなく、自社がどのような状態を目指すのかを明確にし、その目的に沿って施策を考えることが重要です。あわせて、経営方針や人材戦略とのつながりを整理しておくと、ウェルビーイングを一時的な取り組みではなく、継続的な経営課題として進めることができるようになります。
参考:経済産業省/人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~

従業員の状態や課題を把握する

ウェルビーイング経営の目的を明確にしたら、次に従業員や職場の現状を把握します。
経営側の判断だけで施策を決めてしまうと、実際に従業員が感じている課題と、会社が実施する取り組みが一致しない場合があるからです。

確認する内容は、心身の健康状態だけではなく、労働時間や仕事量、仕事内容、職場の人間関係、上司や同僚から受けられる支援、休暇の取得状況、仕事と生活の両立、成長の機会など、働く環境を幅広く確認する必要があります。

現状を把握する方法としては、従業員アンケートや面談のほか、勤怠データ、休職者数、離職率などの確認が挙げられます。すでに従業員意識調査やエンゲージメント調査などを実施している場合は、それらの結果も活用することができます。複数の情報を組み合わせることで、「どの部署で、どのような課題が生じているのか」を具体的に確認していきます。

厚生労働省も、職場環境を改善する際には、労働時間、仕事の量と質、人間関係、組織や人事労務管理、職場の文化や風土などを対象とし、労働者からの意見や各種調査の結果をもとに、職場の問題点を把握することを示しています。
参考:厚生労働省 こころの耳/メンタルヘルス対策(心の健康確保対策)に関する施策の概要

課題に合った施策を考える

従業員や職場の現状を把握したら、明らかになった課題に応じて、具体的な施策を検討します。

ウェルビーイング施策というと、運動イベントや健康セミナーなどを思い浮かべることもありますが、必要な取り組みは企業や職場が抱える課題によって異なります。
たとえば、長時間労働が課題となっている場合は、業務量や人員配置、仕事の進め方を見直す必要があります。上司や同僚との関係に課題がある場合は、管理職向けの研修や相談体制の整備、職場内のコミュニケーション方法の見直しなどが考えられます。育児や介護との両立が課題であれば、勤務時間や休暇制度、テレワークなど、働き方に関する制度を検討する必要があります。

大切なのは、最初に「どの施策を導入するか」を決めるのではなく、把握した課題をもとに、どのような対応が必要なのかを考えることです。他社で成果が出ている施策であっても、自社の課題と合っていなければ、期待する効果は得られません。
経済産業省も、業種や従業員構成などによって健康課題は異なるため、自社の状況を踏まえて施策を検討し、実行することが重要だとしています。
参考:経済産業省/人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~

制度や職場環境を整える

施策の内容を決めたら、従業員が実際に利用できる制度や職場環境を整えます。制度を設けるだけではなく、必要な人が利用できる運用になっているかまで確認することが重要です。

たとえば、休暇制度があっても、業務量が多く代替要員もいないために休暇を取得できないのであれば、制度だけでは課題を解決することはできません。相談窓口についても、相談内容の取り扱いやプライバシー保護の方法が従業員に十分伝わっていなければ、利用につながらない場合があります。
そのため、制度の整備とあわせて、業務量や人員配置、仕事の分担、上司のマネジメント、職場内のコミュニケーション、休暇取得時の引き継ぎなども見直す必要があります。

職場の課題を把握する方法の一つとして、ストレスチェックの集団分析を活用する方法もあります。
集団分析では、仕事の量や裁量、上司・同僚からの支援などを部署や職場単位で確認することができます。

ウェルビーイング経営では、従業員個人に健康管理を求めるだけではなく、会社側が働く環境を整えることも欠かせません。制度と実際の職場環境の両方を確認し、従業員が抱える負担の原因そのものを見直していくことが重要です。
参考:厚生労働省 こころの耳/ストレスチェック集団分析結果等を活かした職場環境改善

効果を確認しながら改善する

ウェルビーイング施策を実施した後は、当初設定した目的に対して、どの程度の効果が得られたのかを確認する必要があります。施策を導入しただけでは、従業員の状態や職場環境が改善されたかどうかは判断することができません。実施前後のデータや従業員の意見などを比較し、どのような変化があったのかを確認したうえで、次の施策や改善につなげることが重要です。

確認する指標は、取り組みの目的に合わせて設定します。
たとえば、心身の健康を重視する場合は健康に関する指標、働き続けられる環境づくりを目的とする場合は離職率や休職者数、仕事と生活の両立を重視する場合は休暇の取得状況や各種制度の利用状況などが考えられます。従業員アンケートを実施し、仕事への満足度や職場で受けられる支援、人間関係などの変化を確認する方法もあります。

期待した効果が得られていない場合は、施策の内容が課題に合っていたか、対象となる従業員に十分届いていたか、実施方法に問題がなかったかを見直します。その結果をもとに施策を修正し、再び効果を確認することで、取り組みの内容を改善していきます。

2026年3月に改訂された「人的資本可視化指針」でも、経営戦略や人材戦略に沿って指標と目標を設定し、現状との差を明らかにしたうえで、取り組みの進捗を継続的に確認することの重要性が示されています。
ウェルビーイング経営も、一度施策を導入すれば完成するものではありません。目的に沿って効果を確認し、結果をもとに改善を重ねることで、自社の課題に合った取り組みへと整えていく必要があります。
参考:内閣官房/人的資本可視化指針(改訂版)

 

ストレスチェッカーとは

「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しています。
また、無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下である「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場でも実施義務化が進むため、早めの準備が大切です。
導入や運用については、ぜひお気軽にご相談ください。

ストレスチェック導入のご相談はこちら

 

まとめ

ウェルビーイングとは、身体や心の健康だけでなく、人とのつながりや仕事、生活環境なども含めて、その人が良好な状態にあることを幅広く捉える考え方です。
近年は、働き方や価値観の変化、人手不足、人的資本経営の広がり、孤独・孤立への関心の高まりなどを背景に、企業でもウェルビーイングが重視されるようになっています。
実際に、トヨタ自動車や楽天グループ、味の素、アシックスなどでは、自社の理念や事業内容に合わせて、健康、働きがい、人とのつながり、成長、職場環境などを対象とした取り組みが進められています。

ウェルビーイング経営を実践する際は、他社の施策をそのまま取り入れるのではなく、まず自社の目的や課題を明確にすることが重要です。そのうえで、従業員の状態を把握し、課題に合った施策や職場環境を整え、実施後の効果を確認しながら改善を続けていく必要があります。
ウェルビーイングは、特定の制度や施策を導入すれば実現できるものではありません。従業員がどのような状態で働いているのかを継続的に確認し、自社に合った働く環境を整えていくことが大切です。

ストレスチェッカーは、官公庁・上場企業・医療機関などで採用されている国内最大級のストレスチェックツールです。自動リマインド、面接指導者管理、進捗確認機能を標準搭載し、2025年5月からは無料プランでも「プレゼンティーイズム(生産性低下)」の測定に対応しております。
導入方法や実施方法など、お気軽にお問い合わせください。

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