
情報過多(情報オーバーロード)とは、受け取る情報の量や複雑さが多すぎて、必要な情報を十分に整理・処理できなくなっている状態を指します。研究でも、情報過多は仕事のパフォーマンス低下やストレス、疲労などと関連することが報告されています。
この記事では、情報過多が仕事に与える影響や職場で起こる原因、個人と企業ができる対策について解説します。
目次
情報過多(情報オーバーロード)とは
情報過多(情報オーバーロード)とは、受け取る情報が多すぎたり、内容が複雑だったりすることで、必要な情報を整理して仕事に使うことが難しくなっている状態を指します。
情報が多いこと自体は悪いことではありませんが、確認や整理に多くの時間を取られるようになると、本来の仕事に集中できなくなります。さらに、「どの情報を優先するか」「何を基準に判断するか」を決める負担も増えます。
研究では、情報オーバーロードは仕事のパフォーマンスや意思決定の質の低下、ストレスなどと関連することが報告されています。
集中力が落ち、作業に時間がかかる
メールやチャット、社内ツールなどから次々と情報が入ると、目の前の仕事を中断する回数が増えます。
たとえば、資料を作っている途中でメールを読み、そのままチャットに返信すると、作業へ戻ったときに「どこまで進めていたか」「次に何をする予定だったか」を思い出す必要があり、その分だけ作業にかかる時間も増えます。
仕事の中断に関する研究レビューでも、中断することによって作業を再開するまでに時間がかかったり、仕事の正確さに影響したりすることが報告されています。
また、国内で30人を対象に行われた実験では、あらかじめ整理された情報を提示された人は、検索エンジンの検索結果から情報を探した人と比べて、ページを見ているときの集中状態が高く、精神的な負担も低い結果となりました。
判断に迷い、決断までに時間がかかる
情報が多すぎると、比較する項目や確認する内容が増え、判断までに時間がかかります。
職場の情報過多に関する調査でも、同じ内容の情報を複数受け取ることや、情報に一貫性がないことが、従業員の負担になるとして報告されています。
また、情報オーバーロードに関する研究では、意思決定者が自分で効率よく処理できる量を超えた情報を扱うと、判断の質が低下するとされています。情報が多いこと自体ではなく、必要な情報を選び、整理しなければ判断できない状態が、意思決定の負担を大きくします。
疲労感やストレスが強くなる
大量の情報を読み、選び、理解する作業が続くと、注意力や判断力を使い続けることになり、疲れやストレスがたまります。扱う情報が多いほど、頭を使う時間も長くなるからです。
資料や報告書、お知らせ、顧客情報などを一日中確認しても、新しい情報が次々と入ってくれば、「まだ見ていない情報がある」という状態は終わりません。仕事に加えて、情報を把握し続けること自体も負担になります。
情報オーバーロードに関するメタ分析では、情報過多はストレスや疲労、バーンアウトと関連することが確認されています。また、日本産業ストレス学会の論文でも、デジタル化による情報過多が職場の新たなストレス要因として挙げられています。
参考:Frontiers in Psychology/Dealing with information overload: a comprehensive review
参考:国立情報学研究所 CiNii Research/キュレーションされた情報の利用に関する研究:脳波解析に基づいて
職場で情報過多が起こる原因
職場で情報過多が起こる背景には、単純に情報量が多いことだけでなく、情報が届く場所やタイミング、共有方法も関係しています。情報過多を防ぐには、情報の量だけでなく、「どこから届くか」「いつ届くか」「誰に何を共有するか」という情報の流れを見ることが重要です。
メールやチャットなど複数の場所から情報が届く
仕事の情報がメールやチャット、社内システムなど複数の場所に分かれていると、必要な情報を確認するために、いくつものツールを開くことになります。
たとえば、一つの案件について、取引先からの連絡はメール、社内で決まった内容はチャット、進捗状況はプロジェクト管理ツールに記録されている場合です。案件の状況を把握するには、それぞれのツールを確認して情報を集めなければなりません。
利用するツールが増えるほど、「必要な情報がどこにあるのか」を探す作業も増えます。
国内の有職者800人を対象とした調査でも、ITツールの利用によって、欲しい情報を探すのに手間がかかると感じている人が32.0%いました。
情報オーバーロードに関する包括的レビューでも、複数の情報経路を使うことは情報過多と関係する問題として取り上げられています。
通知や問い合わせで仕事が何度も中断される
メールやチャットの通知、社内からの問い合わせが頻繁に入ると、そのたびに進めていた仕事を止めて、新しく届いた情報を確認することになります。
たとえば、企画書を作成している途中でチャットに返信すると、作業へ戻ったときに、どこまで考えていたのかを確認し直さなければなりません。さらに別の通知が届けば、同じことを繰り返すことになります。
こうした中断が増えると、目の前の仕事と新しく届いた情報を何度も切り替えることになり、処理する情報も増えていきます。
情報オーバーロードに関する包括的レビューでも、情報過多は仕事の中断や割り込みと関連することが指摘されており、また、通知による中断を減らした実験では、仕事のパフォーマンスが改善したことが報告されています。
必要な情報と不要な情報が整理されていない
仕事に必要な情報と、それ以外の情報が分けられていないと、受け取った側が一つずつ内容を確認して選別しなければなりません。
たとえば、共有フォルダに最新版と古い資料が一緒に保存されていたり、自分には関係のない資料まで同じ場所に置かれていたりするケースです。目的の資料を使う前に、「どれが最新か」「自分の仕事に必要か」を確認する作業が発生します。
同じ内容の資料が複数保存されている場合も、どれを使えばよいのか確認が必要です。必要のない情報や重複した情報が増えるほど、本来必要な情報を選び出すための手間も増えます。
情報オーバーロードに関する研究では、情報の量だけでなく、情報の質や関連性、曖昧さ、整理のされ方も負担に関係すると指摘されています。
参考:Dropbox Japan/国内企業における創造性とITツール利用に関する実態調査
情報過多を減らすには
情報過多を減らすためには、情報の受け取り方や共有方法を見直す必要があります。メールやチャットを確認する時間、連絡手段の使い分け、情報の保管場所、返信を求めるまでの時間など、会社側で情報の流れを整理します。
まず、どのツールから、どの程度の情報が届いているのかを確認します。そのうえで、緊急性の高い連絡と通常の連絡を分け、確認する時間や返信期限を決めます。
一度にすべてを変更する必要はありません。部署やチーム単位でルールを決め、一定期間試したうえで、通知の回数や情報を探す時間が減ったかを確認します。結果を見ながら、必要な部分を見直していきます。
情報を確認する時間と優先順位を決める
メールやチャットが届くたびに確認していると、仕事を中断する回数が増えてしまいます。まずは、情報を確認するタイミングと、すぐに対応する情報の基準を決めます。
具体的には、次の手順で進めます。
1. メールやチャットを確認する時間帯を決める
2. それ以外の時間は、緊急連絡を除いて通知を切る
3. 「今日中」「今週中」など、対応期限ごとに情報を分ける
4. 本当に急ぎの連絡だけ、別の手段で知らせる
5. 1~2週間試し、仕事の中断回数や対応漏れが増えていないか確認する
たとえば、メールを「出社時・昼前・夕方」にまとめて確認し、緊急連絡だけ電話や指定したチャットで受ける方法です。全員が同じ時間に確認する必要はありません。仕事の内容に合わせて、集中する時間と情報を確認する時間を分けます。
情報オーバーロードに関する包括的レビューでも、メールを確認する時間を管理することや、作業を中断しない時間を設けることが対策として挙げられています。
メールやチャットの使い方をルール化する
送る側のルールが決まっていないと、同じ内容が複数のツールから届いたり、関係のない人までCCに入ったりして、受け取る情報が増えてしまいます。そこで、メールやチャットを「何に使うか」から決めます。
導入する場合は、まず現在使っている連絡手段を書き出します。そのうえで、用途を次のように分けます。
・正式な依頼や社外との連絡はメール
・短い確認やチーム内の相談はチャット
・緊急連絡は電話や指定した緊急用チャンネル
・決定事項は議事録やプロジェクト管理ツールに残す
さらに、メールでは件名だけで用件が分かるようにし、本文の冒頭に「確認のみ」「返信が必要」「○日までに回答」と記載します。CCは、内容を確認する必要がある人だけに絞ります。
包括的レビューでも、必要のないCCや一斉送信を減らすこと、用件や対応の必要性を明確にすること、同じ内容を何度も送らないことなどが対策として整理されています。
ツールと情報の保管場所を整理する
同じ資料が複数の場所に保存されていると、どれが最新版なのかを確認する作業が発生します。そこで、情報の種類ごとに「正式な保管場所」を一つ決めます。
まず、部署で使っている共有フォルダ、チャット、クラウドストレージ、プロジェクト管理ツールなどを一覧にします。次に、「契約書はここ」「会議資料はここ」「進捗状況はここ」というように、情報ごとの保管場所を決めます。
その後、次の順番で整理します。
1. 同じ資料が複数ある場合は最新版を残す
2. 古い資料は「旧版」フォルダへ移す
3. ファイル名に日付や版数を付ける
4. 正式な保存場所をチーム内で共有する
5. 新しいツールを導入するときは、既存ツールとの役割が重複しないか確認する
チャットで資料を送った場合も、チャット上だけに残さず、正式な保管場所に保存します。「どこを探せばよいか」を決めておくことで、情報を探し回る時間を減らすことができるようになります。
すぐに返信を求めない働き方に変える
メールやチャットに即時返信を求める職場では、従業員が常に受信状況を確認することになります。このような状況を変えるには、返信までの目安を会社やチームで決めておくことが有効です。
まず、連絡を「緊急」「当日中」「数日以内」のように分け、それぞれの対応時間を設定します。たとえば、通常のチャットは当日中、メールは翌営業日まで、緊急時だけ電話を使うといったルールです。
次に、送信する側にも「すぐ返信が来ることを前提にしない」と周知します。勤務時間外に送信する必要がある場合は、「翌営業日の確認で問題ありません」と明記する方法もあります。
導入後は、「返信が遅い」という理由だけで、評価を下げないことも重要です。上司が即時返信を求め続ければ、ルールを作っても従業員は通知を確認し続けてしまいます。
情報オーバーロードに関する包括的レビューでも、メールを常に確認することを求めないことや、勤務時間外の返信を期待しないことが対策として挙げられています。
ストレスチェックの集団分析で職場の負担を確認する
ストレスチェックの集団分析は、仕事の負担が大きい部署や、仕事の進め方を見直す必要がある部署を探る材料になります。
厚生労働省が示す「仕事のストレス判定図」では、「仕事の量的負担」「仕事のコントロール」「上司の支援」「同僚の支援」などを部署ごとに確認できます。
情報過多との関係を調べる場合は、次の手順で進めます。
1. 部署ごとの集団分析結果を確認する
2. 「仕事の量的負担」などが高い部署を確認する
3. 残業時間や業務量などの勤務データを確認する
4. 「使っているツールの数」「通知で仕事を中断する回数」「情報を探すのにかかる時間」などを社内アンケートで確認する
5. 複数のデータを照らし合わせ、情報共有の方法に問題がないか確認する
6. 対策後に同じ項目を確認し、変化を見る
たとえば、量的負担が高い部署で「必要な資料を探す時間が長い」という回答が多ければ、単純に人員不足と判断するのではなく、情報の保管方法や共有方法も確認します。
また、ストレスチェックだけで結論を出さず、勤務データや社内アンケートと組み合わせて原因を確認することが重要です。
参考:Journal of Occupational and Organizational Psychology/Getting on top of work-email: A systematic review of 25 years of research to understand effective work-email activity
まとめ
情報過多(情報オーバーロード)は、単に情報量が多いだけでなく、複数のツールに情報が分散している、通知で仕事が何度も中断される、必要な情報と不要な情報が整理されていないといった職場環境でも起こります。
ストレスチェックの集団分析は、情報過多そのものを測定するわけではありませんが、仕事の量的負担や仕事のコントロール、上司・同僚の支援などを部署ごとに確認することができます。負担が高い部署では、勤務データや社内アンケートもあわせて確認し、情報の量や共有方法が従業員の負担になっていないかを調べることが、職場環境の改善につながります。
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