その言葉もエイジズム?職場の年齢差別

エイジズムとは、年齢を理由に、相手や自分を決めつけたり、偏見を持ったり、不利益な扱いをしたりすることです。高齢者に向けられるものと思われがちですが、若い世代も対象になります。
こうした年齢による決めつけは、本人の能力や経験を正しく評価する妨げとなるだけでなく、仕事への意欲や職場の人間関係にも影響を及ぼします。
この記事では、職場で起こるエイジズムの具体例や影響、防ぐための対策を分かりやすく解説します。

エイジズムとは?

エイジズムとは、年齢を理由に相手を判断したり、「この年代ならこうだ」と決めつけたりすることです。WHO(世界保健機関)は、エイジズムを年齢に基づく「固定観念」「偏見」「差別」と定義しています。
エイジズムの対象は高齢者だけではありません。若い世代に対して、「まだ経験が足りない」「責任ある仕事は任せられない」と年齢だけで判断することも、エイジズムに含まれます。
また、「もうこの年齢だから新しいことは無理だ」と、自分自身の可能性を年齢で決めてしまうこともエイジズムの一つです。

「若いから無理」「もう年だから」もエイジズム

エイジズムは、高齢者だけを対象としたものではなく、若い人に対する年齢による決めつけや偏見も含まれます。
「若い人は我慢が足りない」と、年齢だけで判断することもエイジズムですし、反対に、「年齢が高い人は新しい技術を覚えられない」と一律に決めつけることもエイジズムです。

そもそも人は、年齢だけで能力や経験、考え方まで判断することはできません。同じ年代でも、知識や経験、得意なことは一人ひとり異なります。

褒め言葉や気遣いのつもりでもエイジズムになる

エイジズムは、相手を否定する言動だけでなく、褒めたり気遣ったりする場面にも表れることがあります。
たとえば、「その年齢には見えないほど若々しい」「若いのにしっかりしている」「年齢の割にパソコンに詳しいですね」といった言葉です。

本人は褒めているつもりでも、「年齢を重ねると若々しさが失われる」「若い人は落ち着きがない」「年齢が高い人はデジタル機器が苦手」といった固定観念が前提になっている場合があるからです。

気遣いのつもりで年齢を基準に判断してしまうケースにも、注意が必要です。
たとえば、「もう大変でしょうから、この仕事は若い人に任せましょう」「出張は若い人にお願いしたほうがいいでしょう」「新しいシステムの研修は若手を中心にしましょう」といった言葉には、本人の希望や能力よりも年齢を優先して判断する考え方が表れています。

もちろん、年齢に触れた言葉がすべてエイジズムになるわけではありません。大切なのは、「この年代ならこうだろう」と年齢だけで相手を判断していないかを考えることです。

採用・配置・昇進にも表れる職場のエイジズム

職場のエイジズムは、普段の会話だけでなく、採用や配置、昇進などの人事にも影響することがあります。

たとえば採用の場面で、「若い人のほうが職場になじめるだろう」「この年齢では長く働けないだろう」といった理由から、応募者の年齢を重視して採否を決めることがあります。そもそも日本では、一定の例外を除き、募集や採用で年齢制限を設けることは禁止されています。求人票に年齢制限を記載しないだけでなく、書類選考や面接でも、年齢を理由に採否を決めることは認められていません。

昇進についても同じです。「まだ若すぎる」「この年齢から管理職にする必要はない」といった理由だけで候補から外してしまえば、実績や能力ではなく、年齢を基準に判断していることになってしまいます。
参考:World Health Organization/Ageing: Ageism
参考:厚生労働省/募集・採用における年齢制限禁止について

エイジズムが職場に与える影響

職場で年齢を理由に人を判断することが続くと、採用や配置、昇進、教育など、さまざまな場面に影響が及びます。本人の能力や実績よりも「若いから」「もう年だから」といったイメージが優先されれば、本来は活躍できる人が採用や昇進の候補から外れたり、新しい仕事に挑戦する機会を失ったりすることになりかねません。
また、年齢で評価されていると感じれば、仕事への意欲や働きがいが損なわれる可能性もあります。

採用や人材登用の選択肢が狭まる

採用や人材登用で年齢を重視すると、本人の能力や経験を十分に評価しないで、適任者を候補から外してしまう可能性があります。

たとえば、若い社員に対して「管理職を任せるにはまだ早い」と考えたり、年齢が高い社員に対して「新しい技術への対応は難しいだろう」と判断したりするケースです。実際には、若くても十分な経験や実績を持つ人もいれば、年齢を重ねてから新しい知識や技術を身につける人もたくさんいます。

OECDも、若い労働者はリーダーシップ能力が不足している、高齢の労働者は適応力が低く、スキルが古いといった固定観念が職場に存在すると指摘しています。

仕事への意欲や働きがいが低下する

年齢を理由に評価されたり、仕事の機会を制限されたりすると、本人の意欲や働きがいにも影響します。

たとえば、成果を上げても「まだ若いから」と十分に評価されなかったり、新しい仕事に挑戦したいと伝えても「その年齢では難しい」と断られたりするケースです。こうした経験が続けば、「努力しても年齢で判断される」と感じ、仕事に前向きに取り組む気持ちが薄れてしまいます。
研究でも、職場で年齢差別を受けていると感じることは、仕事への満足度やワーク・エンゲージメントの低下と関連すると報告されています。

世代間のコミュニケーションが減る

「若い人とは考え方が合わない」「ベテランは新しいやり方を受け入れない」といった先入観があると、世代を超えたコミュニケーションが減る原因になります。

「若い人には説明しても伝わらないだろう」「年上の人に提案しても受け入れてもらえないだろう」と考えれば、相談や意見交換を避けるようになることが考えられます。そして、こうした状態が続けば、仕事に必要な情報が十分に共有されず、お互いの知識や経験を生かす機会も減ってしまいます。

ストレスや孤立を招くおそれがある

エイジズムは、働く人の精神的な負担にもつながります。年齢を話題にした何気ない言葉や扱いが繰り返されることで、職場で居心地の悪さを感じることがあるからです。

たとえば、会議で新しい提案をした際に「若い人は考えることが違うね」と年齢でひとまとめにされたり、パソコンの操作に少し戸惑っただけで「やっぱりこの世代には難しいよね」と言われたりするような場面です。本人の考えや能力ではなく、何をしても年齢と結びつけて受け取られる状況が続けば、発言を控えたり、周囲との会話を避けたりするようになることも考えられます。

また、「若いんだから元気でしょ」「その年齢なら家庭より仕事を優先できるよね」といった言葉も、本人の事情を無視して年齢だけで役割や負担を決めつけるものです。こうした言葉が繰り返されると、自分だけが理解されていないと感じたり、職場の人間関係から距離を置いたりするきっかけになることもあります。

WHOは、エイジズムが心身の健康や生活の質に悪影響を及ぼし、社会的な孤立や孤独とも関係するとしています。職場での年齢差別を扱った研究でも、年齢差別を受けているという認識と、抑うつ症状や仕事への満足度、主観的な健康状態との関連が報告されています。
参考:OECD/Promoting an Age-Inclusive Workforce
参考:Frontiers in Psychology/Ageism toward older workers and wellbeing at work: a systematic review

職場のエイジズムを防ぐための対策

職場のエイジズムを防ぐには、採用や昇進の基準、研修の機会、仕事の任せ方などを見直すことが大切です。
まずは、年齢ではなく、本人の能力や経験、実績をもとに判断するルールを整えます。
また、「若手はこう」「ベテランはこう」と決めつけていることに、気づくことも重要です。異なる世代が一緒に働き、お互いの知識や経験を共有する機会を設けることは、年齢に対する固定観念を見直すきっかけになります。

採用・配置・昇進の基準を明確にする

採用や配置、昇進で年齢による思い込みを避けるには、担当者の感覚だけで決めるのではなく、判断する項目をあらかじめ決めておくことが大切です。

採用する際には、まず「この仕事を任せるために何が必要か」を具体的に整理します。たとえば、法人営業であれば、営業経験の年数だけを見るのではなく、顧客への提案力、商談の進め方、業界知識など、実際の仕事に必要な項目に分けます。面接では応募者ごとに質問を大きく変えず、あらかじめ決めた質問と評価項目を使って確認します。評価シートを作り、「提案力」「業務知識」「必要な経験」などを同じ基準で採点する方法も有効です。

なお、日本では、一定の例外を除き、募集や採用で年齢制限を設けることは禁止されています。厚生労働省も、職務の内容や、仕事に必要な適性、能力、経験、技能をできる限り具体的に示すよう求めています。

配置を決める際は、本人がこれまで担当してきた仕事、身につけたスキル、希望する業務などを確認します。「若手だから営業」「ベテランだから管理業務」と年齢から役割を決めるのではなく、新しい部署で求められる能力と本人の経験を照らし合わせて判断します。定期的な面談で、今後経験したい仕事や身につけたいスキルを確認しておくと、配置を検討する際の材料にもなります。

昇進については、役職ごとに求める能力や実績を具体的に決めておく方法があります。たとえば管理職であれば、売上などの成果だけでなく、部下の育成、目標管理、業務改善、チーム運営など、役割に応じた評価項目を設定します。そのうえで、年齢や勤続年数ではなく、求める基準を満たしているかを確認します。

年齢にかかわらず学び直しの機会を設ける

研修や学び直しの機会は、年齢ではなく、仕事内容や本人に必要なスキルを基準に決めます。

まず確認したいのが、社員が現在持っているスキルと、担当業務で求められるスキルです。たとえば、新しい業務システムを導入する場合は、業務でそのシステムを使う社員を対象にします。すでに十分な知識を持つ社員は基礎研修を省き、必要な社員には基礎から学べる講座を用意するなど、習熟度に合わせて内容を分ける方法もあります。

会社から指定する研修だけでなく、社員自身が学びたい分野を選べる仕組みも有効です。上司との面談で「今後担当したい仕事」「身につけたいスキル」「現在の業務で不足している知識」を確認し、研修や資格取得、外部講座などにつなげます。研修費や資格取得費の補助制度を設ける場合も、務との関連性や本人のキャリアを基準に利用できるようにします。

OECDも、働く人が年齢にかかわらず学び続けられる環境を整えることの重要性を指摘しています。研修の対象者を年齢で決めるのではなく、「その人に何が必要か」「今後どの仕事を担うのか」を基準に考えることが重要です。

世代を超えて知識や経験を共有できる機会をつくる

エイジズムを防ぐには、年齢の異なる社員が実際に一緒に仕事をし、お互いの考え方や得意分野を知る機会をつくることも有効です。WHOも、異なる世代が交流する取り組みを、エイジズムを減らす方法の一つに挙げています。

たとえば、月に1回30分程度、お互いの得意分野を教え合う時間を設けます。営業資料の作り方、顧客対応、業務ツールの使い方、プレゼンの進め方など、テーマは実際の仕事に関係するものを選びます。

このとき、「ベテランが若手を指導する」と最初から役割を決めないことがポイントです。年齢ではなく、それぞれが持っている知識や経験をもとに、教える側と学ぶ側を入れ替えます。たとえば、あるテーマでは入社3年目の社員が教え、別のテーマでは20年以上の経験を持つ社員が教えるという形です。

普段の業務でも、同じ年代だけでチームを固めず、経験年数や専門分野の異なる社員をプロジェクトに参加させる方法があります。プロジェクト終了後に「誰から何を学んだか」「次の仕事でも使えそうな知識は何か」を簡単に共有すれば、個人が持つノウハウを組織に残すこともできます。
参考:ストレスチェッカー/リバースメンターとは?世代間ギャップ対策

管理職が年齢に対する思い込みを見直す

管理職は、年齢に対する思い込みが判断に影響していないかを定期的に確認する必要があります。
まず、仕事を任せる人を決めるときに、「若いから任せる」「年齢が高いから今回は外す」ではなく、これまでの経験、必要なスキル、本人の希望など、仕事と直接関係する理由で説明できるかを確認します。
判断に迷ったときは、「この人が10歳若くても、あるいは10歳上でも同じ判断をするか」と考えてみます。年齢が変わるだけで結論まで変わるのであれば、能力や実績以外の要素が判断に影響している可能性があります。

人事評価では、評価コメントを見直すことも有効です。「若手の割にはよくできている」「年齢を考えると十分」といった表現が含まれていないかを確認し、具体的な成果や行動に置き換えます。複数の管理職で評価を確認する場を設け、同じ実績でも年代によって評価が変わっていないかを比べる方法も考えられます。

管理職研修を行う場合も、エイジズムの定義を説明するだけで終わらせず、実際の場面を使って判断を振り返る内容にします。たとえば、「新規プロジェクトの担当者を選ぶ」「管理職候補を決める」「研修の参加者を選ぶ」といったケースを用意し、どの情報を根拠に判断したのかを参加者同士で確認します。

年齢に関する悩みや不適切な扱いを相談できる体制を整える

年齢を理由に不当な扱いを受けたと感じても、直属の上司や同僚には相談できないことがあります。そこで、相談窓口を設ける際は、連絡先だけを社内に掲載するのではなく、「どのような内容を相談できるのか」「誰が相談内容を確認するのか」「相談後はどのように対応するのか」まで明示します。メール、専用フォーム、面談など、複数の相談方法を用意しておくと、本人が状況に応じて選ぶことができます。

さらに、相談を受けた後の流れも決めておきます。
たとえば、「年齢を理由に研修から外された」という相談であれば、本人から経緯を聞いたうえで、研修対象者を決めた担当者にも理由を確認します。「昇進を見送られた理由として年齢を挙げられた」という相談であれば、実際の評価基準や選考記録を確認し、年齢が判断材料になっていなかったかを調べます。

相談内容は、個人が特定されない形で記録しておくことも重要です。
「どの部署で」「どのような内容の相談が」「どの程度発生しているか」を定期的に確認すれば、同じような問題が特定の部署で繰り返されていないかを把握することができます。複数の相談に共通する問題があれば、管理職への研修や人事制度の見直しにつなげます。
また、相談した本人がその後の評価や配置で不利益を受けないよう、相談内容の共有範囲や記録の管理方法も決めておく必要があります。
参考:厚生労働省/募集・採用における年齢制限禁止について

 

ストレスチェッカーとは

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まとめ

職場でエイジズムが続くと、採用や昇進の機会が狭まるだけでなく、仕事への意欲や働きがい、世代間のコミュニケーションにも影響します。また、社員が持つ経験や能力を十分に生かせず、企業にとっても人材を活用する機会を失うことになります。
対策としては、採用・配置・昇進の基準を明確にする、年齢にかかわらず学び直しの機会を設ける、異なる世代が知識や経験を共有する、管理職が年齢への思い込みを見直すといった取り組みが挙げられます。
大切なのは、「若手だから」「もうこの年齢だから」と判断するのではなく、一人ひとりの能力や経験、実績、希望を見て判断することです。年齢に左右されず、それぞれが持つ力を発揮できる職場づくりが求められます。

ストレスチェッカーは、官公庁・上場企業・医療機関などで採用されている国内最大級のストレスチェックツールです。自動リマインド、面接指導者管理、進捗確認機能を標準搭載し、2025年5月からは無料プランでも「プレゼンティーイズム(生産性低下)」の測定に対応しております。
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