
勤怠不良とは、遅刻や早退、欠勤を繰り返す、勤務時間中の離席が多いなど、勤務状況に継続的な問題が見られる状態を指す言葉です。
なお、勤怠が乱れているからといって、すぐに「本人の意識の問題」と決めつけるのは適切ではありません。体調不良やメンタルヘルスの問題、過重な業務、人間関係などが背景にある場合もあるからです。
この記事では、勤怠不良にあたる主なケース、原因や背景を確認するときのポイント、本人への指導や就業規則に基づく対応まで、人事担当者が押さえておきたい流れを分かりやすく解説します。
目次
勤怠不良とは
勤怠不良とは、遅刻や早退、欠勤を繰り返すなど、会社が定めた勤務ルールに沿った就業ができていない状態を指す際に使われる言葉です。遅刻や欠勤だけでなく、勤務時間中の長時間の離席や居眠り、テレワークで勤務実態を確認できないケースなどが問題になることもあります。
なお、「勤怠不良」という用語に明確な定義があるわけではなく、実際には就業規則や雇用契約、勤務制度などに照らして判断します。
遅刻・早退・欠勤を繰り返す
勤怠不良として分かりやすいのが、遅刻や早退、欠勤を繰り返すケースです。たとえば、始業時刻に間に合わない日が続く、勤務途中に無断で帰宅する、事前の連絡なく欠勤するといった状態です。
ただし、遅刻や欠勤があったという事実だけで、すぐに本人の勤務態度に問題があると判断するのは適切ではありません。交通機関のトラブル、家族の事情、体調不良など、本人では避けられない事情がある場合もあるからです。
そのため、遅刻・早退・欠勤の回数だけを見るのではなく、理由や経緯、会社への連絡状況、就業規則で定めた手続きが守られていたかを確認することが重要です。同じ状態が繰り返されている場合も、まず事実関係と本人の事情を整理したうえで、その後の対応を検討します。
勤務時間中の離席や居眠りが続く
勤務時間中に長時間の離席を繰り返したり、居眠りによって業務が止まったりする状態も、勤怠不良として扱われることがあります。
たとえば、連絡せずに席を離れる時間が長く、その間に担当業務が進まない、会議や顧客対応の最中にも居眠りが続くといったケースです。単発の離席や一時的な眠気ではなく、繰り返し起こり、実際に仕事へ影響が出ているようなケースです。
なお、居眠りについては、単なる勤務態度の問題とは限りません。睡眠不足のほか、睡眠障害や体調不良、服用している薬の影響などが関係している場合もあるからです。そのため、勤怠不良と決めつける前に、背景に健康上の問題がないかも確認する必要があります。
テレワークで勤務実態を確認できない
テレワークでは、オフィス勤務のように、上司が本人の勤務状況をその場で確認することができません。そのため、会社が定めた方法で始業・終業時刻を記録しない、勤務時間中に長時間連絡が取れない状態が繰り返されるなど、実際に勤務していたことを確認できないケースが、勤怠上の問題になることがあります。
たとえば、始業・終業の報告が何度も行われない、勤怠システムに記録がないうえ、勤務時間中の連絡にも長時間応答がないといったケースです。
一方で、チャットへの返信が遅い、オンライン会議以外の時間に画面上で確認できないといった事情だけで、「仕事をしていなかった」と判断することはできません。テレワークの勤怠は、会社で定めた記録方法やパソコンの使用記録など、客観的に確認できる情報をもとに判断する必要があります。
フレックスタイム制の勤務ルールを守らない
フレックスタイム制では、一定の清算期間に働く総労働時間を定め、その範囲内で社員が日々の始業・終業時刻を決めます。
勤怠上の問題となるのは、フレックスタイム制で定められた勤務ルールを守っていないケースです。
たとえば、コアタイムが設定されているにもかかわらず、その時間帯に勤務しない状態を繰り返す、必要な勤怠記録を行わない、清算期間の総労働時間に不足が続くといったケースが挙げられます。
なお、コアタイムは必ず設定するものではありません。すべての勤務時間帯をフレキシブルタイムとする制度も認められています。そのため、フレックスタイム制の社員については、固定時間制と同じ基準で遅刻や早退を判断するのではなく、その会社で定めているコアタイムや勤怠管理の方法、清算期間の総労働時間などに照らして考える必要があります。
勤怠不良が続くときに確認したいこと
遅刻や早退、欠勤などが続いている場合は、なぜその状態が続いているのかを確認する必要があります。本人の生活上の事情だけでなく、体調の変化や仕事上の負担、職場の人間関係などが関係している場合もあるからです。
まず本人から事情を聞き、その内容と勤怠記録や業務状況に食い違いがないかを確認します。体調面に変化が見られる場合は健康上の問題も考慮し、さらに同じ部署で業務負担や支援体制に問題が生じていないかなど、本人と職場の両面から状況を整理します。
本人から理由や状況を聞く
勤怠不良が続いている場合は、本人に遅刻や早退、欠勤などが続いている理由を聞きます。最初から「勤務態度に問題がある」と決めつけて注意するのではなく、いつ頃から勤怠に変化が出ているのか、その背景にどのような事情があるのかをていねいに聞くことが大切です。
たとえば、育児や介護など家庭の事情を抱えていることもあれば、仕事の負担や職場の人間関係について悩んでいることもあります。勤怠記録だけを見ていても、こうした事情までは分かりません。
本人と話す際は、一方的に理由を問いただすのではなく、まず本人が置かれている状況を聞き取ります。そのうえで、勤怠上どのような問題が生じているのかを整理し、次に必要な確認や対応につなげていきます。
勤怠記録や業務状況を確認する
本人から事情を聞いたら、勤怠記録と実際の業務状況も確認します。遅刻や早退、欠勤がいつから始まり、どの程度の頻度で続いているのかを整理することで、本人の印象だけではなく、記録に基づいて現在の状況を把握することができます。
勤怠については、出退勤時刻や欠勤日、勤怠システムの記録などを確認します。あわせて、欠勤や遅刻によって担当業務に遅れが出ていないか、ほかの社員が継続的に業務を引き継いでいないかなど、仕事への影響も確認します。
本人への聞き取りと記録の両方を確認することで、「最近、遅刻が多い」といった印象だけで判断するのを避けることができます。また、いつ、どのような勤怠上の問題が起きているのかを整理しておけば、その後に本人と改善について話し合う際にも、具体的な事実をもとに話を進めることができます。
体調不良やメンタル不調を確認する
遅刻や早退、欠勤が増えている場合は、勤務態度だけでなく、本人の体調に変化がないかも確認します。厚生労働省「こころの耳」では、遅刻・早退・欠勤の増加のほか、仕事の能率低下、ミスの増加、会話の減少などを、周囲が気づく変化として挙げています。
こうした変化は、メンタル不調のサインとして現れることがありますし、身体的な病気や睡眠不足など、ほかの要因が関係している場合もあります。
したがって、本人と話す際は、上司や人事担当者が病名を推測するのではなく、「最近、体調で気になることはないか」「仕事をするうえで困っていることはないか」など、現在の状態を確認します。本人から不調の訴えがある場合や、普段と異なる状態が続いている場合は、社内の体制に応じて産業医や保健師などの産業保健スタッフへの相談につなげます。
業務量や人間関係など職場側の要因も確認する
勤怠不良が続いているときは、本人の事情だけでなく、職場側に原因となる問題がないかも確認します。仕事量が過度に多くなっていないか、特定の社員に業務が集中していないか、上司や同僚から必要な支援を受けられているかなど、実際の働き方や職場の状況を確認します。
たとえば、残業が続いている、担当する仕事が一人に偏っている、困ったときに上司へ相談しても対応されないといった状況があれば、本人への注意や指導だけでなく、業務分担や支援体制についても見直す必要があります。
なお、職場全体の状況を把握する際には、ストレスチェックの集団分析も参考になります。
「仕事のストレス判定図」では、仕事の量的負担、仕事のコントロール、上司の支援、同僚の支援などを集団単位で確認することができます。特定の部署で負担が高い傾向や支援の不足が見られた場合は、実際の労働時間や業務分担、職場での聞き取りなどと照らし合わせて、改善が必要な点を検討します。
なお、集団分析の結果、部署全体では大きな問題が見られなくても、特定の社員だけに負担が集中している場合もあります。本人への聞き取りや勤怠記録、実際の業務状況も含めて確認することが大切です。
企業における勤怠不良への対応
勤怠不良に関して対応をする際には、すぐに懲戒処分などを検討するのではなく、まず事実関係と本人の事情を整理することが基本です。そのうえで、就業規則や勤務ルールのどこに問題があるのかを本人と確認し、改善してほしい点を具体的に伝えます。指導後も同じ状態が続く場合は、本人への指導内容や勤怠の変化を記録し、必要に応じて書面でも改善を求めます。
健康上の問題が分かった場合は、勤務態度の問題とは分けて対応することも必要です。それでも改善が見られない場合は、就業規則やこれまでの経緯、問題の程度などを踏まえ、懲戒処分を含む人事上の対応を検討します。
就業規則や勤務ルールを本人と確認する
勤怠不良が続いている場合は、実際の勤務状況が会社の就業規則や勤務ルールとどのように異なっているのかを確認します。「遅刻が多い」「連絡が取れない」といった印象だけではなく、どのルールが守られていないのかを具体的に整理することが必要です。
たとえば、遅刻や欠勤をするときの連絡方法、始業・終業時刻の記録、テレワーク時の勤怠報告など、会社で定めているルールと本人の勤務状況を照らし合わせます。フレックスタイム制を利用している場合は、固定時間制と同じ基準ではなく、コアタイムの有無や清算期間など、その制度で定められた内容を確認します。
就業規則は、労働者が必要なときに内容を確認できる状態にしておく必要があります。勤怠について本人と話す際は、該当する規定を示し、「どの行為が、どのルールに反しているのか」を具体的に伝えます。そのうえで、今後はどのような連絡や勤務が必要なのかまで確認します。
改善が必要な点を具体的に伝える
勤怠上の問題が確認できたら、本人にどの点を改めてほしいのかを具体的に伝えます。「勤務態度を改めてほしい」「もっと真面目に働いてほしい」といった伝え方ではなく、問題となっている事実と、今後求める行動を明確にします。
たとえば、遅刻を繰り返している場合は、「始業時刻までに勤務を開始する」「やむを得ず遅れる場合は、就業規則で定めた方法で連絡する」など、何を改める必要があるのかを伝えます。欠勤時の連絡に問題がある場合も、誰に、いつまでに、どの方法で連絡するのかを改めて確認します。
指導する際は、「だらしない」「責任感がない」など、本人の性格や人格に踏み込む言い方は避けます。あくまで問題となっている勤怠の事実を取り上げ、会社のルールに照らして何を改善する必要があるのかを伝えることが基本です。
改善状況を記録し、必要に応じて書面で指導する
本人に改善を求めた後は、その後の勤怠状況と、会社が行った指導の経緯を記録しておきます。記録する際は、「以前から何度も注意している」といった曖昧な内容ではなく、いつ、どのような勤怠上の問題があり、本人からどのような事情を聞き、会社から何を伝えたのかを具体的に残します。
たとえば、「○月○日に無断欠勤があり、翌日に本人から事情を聞いた。今後、欠勤する場合は始業時刻までに上司へ連絡するよう伝えた」といった形です。その後に遅刻や欠勤が減ったのか、同じ問題が続いているのかも記録しておけば、改善の経過を事実に基づいて把握することができます。
口頭で改善を求めても同じ状態が続く場合は、指導内容を書面で伝える方法があります。書面には、問題となっている勤怠の事実、就業規則や勤務ルールのどの点に反しているのか、今後どのような改善を求めるのかを具体的に記載します。口頭だけで終わらせず、会社が何を問題とし、本人に何を求めているのかを明確に残しておくためです。
ただし、すべてのケースで「口頭注意の次は書面指導、その次は懲戒」という順番を踏む必要があるわけではありません。無断欠勤の回数や期間、業務への影響、本人から聞いた事情、これまでの指導内容などを確認し、就業規則に照らして対応を判断します。
改善が見られない場合は懲戒や人事上の対応を検討する
遅刻や欠勤などについて繰り返し注意・指導を行っても改善が見られず、就業規則上の懲戒事由に該当する場合は、懲戒処分を検討せざるを得ない場合があります。たとえば、会社が改善を求めても同じ状況が続いているケースです。
まずは、どのような勤怠上の問題があったのか、どの程度繰り返されているのか、本人にどのような事情があるのか、これまで会社がどのような指導を行ってきたのかなどを確認したうえで、処分の内容を判断する必要があります。
労働契約法でも、懲戒には客観的に合理的な理由と、処分としての相当性が求められています。
勤怠不良が続き、注意や指導を行っても改善が見られない場合は、普通解雇を含む人事上の対応を検討することがあります。ただし、遅刻や欠勤を繰り返しているという理由だけで、当然に解雇できるわけではありません。
解雇には、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められることが必要です。そのため、勤怠上の問題がどの程度続いているのか、業務にどのような影響が出ているのか、本人にやむを得ない事情がないか、これまでどのような注意や指導を行ってきたのかなど、経緯を含めて判断します。
また、遅刻や欠勤の背景に体調不良やメンタル不調があることが分かった場合は、単なる勤務態度の問題として扱わないことも大切です。本人の状態を確認し、会社に利用できる休暇・休職制度がある場合はその利用を検討するほか、必要に応じて産業医や保健師などの産業保健スタッフにつなげます。
まとめ
勤怠不良が続くときは、遅刻や欠勤といった表面的な行動だけで判断せず、本人の事情や体調、業務量、職場の人間関係などを含めて状況を確認することが大切です。そのうえで、就業規則や勤務ルールに沿って改善点を伝え、必要に応じて記録や書面による指導を行います。
また、ストレスチェックの集団分析も参考になります。個人の勤怠不良の原因を特定するものではありませんが、職場全体の傾向を把握し、業務分担や支援体制を見直す材料として活用することができます。
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