ブルシット・ジョブとは?無意味な仕事が生まれる理由

ブルシット・ジョブとは、働いている本人でさえ「この仕事は本当に必要なのか」「なくても困らないのではないか」と感じ、その存在意義を説明することが難しい仕事を指す言葉です。

職場では、ほとんど読まれない資料の作成や、目的が曖昧な会議、必要性の分からない報告など、「これは何のためにやっているのだろう」と疑問を感じる業務が少なからず存在するものです。

この記事では、ブルシット・ジョブの5つの類型を整理したうえで、なぜこうした仕事が生まれ、なくならないのか、職場にどのような影響を与えるのか、減らすためには何ができるのかを解説します。

目次

ブルシット・ジョブとは

ブルシット・ジョブとは、働いている本人でさえ「この仕事は本当に必要なのか」と疑問を感じるほど、必要性や意味を見出せない仕事を指します。社会人類学者のデヴィッド・グレーバーが提唱した概念で、2018年に刊行された著書『Bullshit Jobs: A Theory』で詳しく論じられました。

ここで注意しておきたいのは、ブルシット・ジョブは「楽な仕事」や「待遇の悪い仕事」を意味する言葉ではないことです。グレーバーが問題にしたのは、本人が仕事を無意味、不必要、あるいは有害だと感じているにもかかわらず、仕事としては必要であるかのように振る舞わなければならない状態です。
そして、重要なのは、その仕事をしている本人自身が「この仕事は存在する必要がない」と考えている点です。

グレーバーは、ブルシット・ジョブを大きく5つの類型に分けています。

取り巻き(フランキー)
上司や組織を重要な存在に見せるための仕事です。

脅し屋(グーン)
競争相手への対抗や攻撃のために必要とされる仕事です。

尻拭い(ダクト・テーパー)
組織の仕組みや運用上の欠陥を、その場しのぎで補う仕事です。

書類穴埋め人(ボックス・ティッカー)
組織が「対応している」と示すために、形だけの書類や手続きを行う仕事です。

タスクマスター部下に不要な仕事を割り振ったり、新たに作り出したりする管理職です。

取り巻き(フランキー)|上司や組織を偉く見せるための仕事

取り巻き(flunkies)とは、上司や組織を実際以上に重要な存在に見せるために置かれている仕事です。

グレーバーは、典型例として、実質的な必要性が乏しい受付係やドアマン、上司の代わりに簡単な連絡をするアシスタントなどを挙げています。
もちろん、受付や秘書などの仕事そのものがブルシット・ジョブという意味ではありません。来客対応やスケジュール管理など、明確な役割がある場合は当然必要な仕事です。あくまでグレーバーが問題にしているのは、「これだけの部下を従えている」「専属の担当者がいる」と見せることで、上司や組織の権威を演出する役割です。

脅し屋(グーン)|他者への対抗や攻撃のために存在する仕事

脅し屋(goons)とは、競争相手や他の組織も同じような人材を使っているため、対抗上必要になっている仕事です。

グレーバーは、企業のロビイストや一部のPR担当者、テレマーケティング、企業法務などを例に挙げています。これらの仕事には、相手を説得する、圧力をかける、競争で優位に立つといった要素があります。

たとえば、ある企業が広告やロビー活動を強化すると、競合企業も「自社だけ何もしなければ不利になる」と考え、同じような活動を始めることがあります。すると、一方がやめない限り、もう一方もやめられず、双方が対抗のために同じ種類の仕事を続ける状態になります。

グレーバーが「脅し屋」と呼んだのは、こうしたように、相手が同じことをしているから自分たちも続けなければならない仕事です。個々の企業にとっては必要でも、社会全体で見れば「双方がやめれば、その仕事自体が必要なくなるのではないか」と考えられる点に、ブルシット・ジョブとしての問題があります。

尻拭い(ダクト・テーパー)|組織の欠陥を埋めるための仕事

尻拭い(duct-tapers)とは、組織内のミスや仕組みの欠陥を補うために存在している仕事です。
本来であれば、原因そのものを修正すれば必要なくなるはずなのに、問題を放置したまま、別の人が毎回その後始末を担当します。

たとえば、入力システムを改善すれば自動化できる作業を毎回手作業で処理する、ある部署が繰り返すミスを別の部署が修正し続ける、といったケースです。

一時的なトラブルに対応する作業は、もちろん必要です。しかし、同じ問題が何年も改善されないまま残り、そのたびに誰かが手作業で修正したり、別の部署が後処理をしたりする状態が続くと、その対応自体が日常業務になっていきます。
本来であれば、問題が起きる原因を見直し、仕組みそのものを改善する必要があります。ところが、原因には手をつけず、毎回同じように穴埋めを続けていると、「問題を解決する仕事」ではなく、「問題が残った状態を補い続ける仕事」になってしまいます。

書類穴埋め人(ボックス・ティッカー)|仕事をしているように見せるための仕事

書類穴埋め人(box-tickers)とは、組織が何かに取り組んでいるように見せるために行われる仕事です。
ここでいう「書類穴埋め」とは、単なる事務作業を意味するものではありません。グレーバーが問題にしているのは、実際の改善や成果にはほとんどつながらないにもかかわらず、「対応しました」「確認しました」と示すためだけに行われる報告書や手続きです。

たとえば、問題が発生するたびに新しいチェックシートや報告書を作るものの、肝心の問題そのものは改善されない、といったケースが考えられます。
しかも、こうした業務が増えると、本来の仕事に使える時間まで奪われてしまいます。「仕事をした証拠を作るための仕事」が増え、実際の仕事に割ける時間が減るという逆転が起こる点が、この類型の厄介なところです。

タスクマスター|不要な仕事を割り振ったり作り出したりする管理職

タスクマスター(taskmasters)は、部下に仕事を割り振ったり、新しい仕事を作ったりすること自体が主な役割になっている管理職です。

グレーバーは、タスクマスターを大きく2つのタイプに分けています。

1つ目は、部下が自分たちで判断しながら仕事を進められるにもかかわらず、業務の割り振りや進捗確認を細かく行う管理職です。本来であれば現場に任せられる仕事まで管理の対象にすると、部下は実務とは別に、進捗を報告したり、確認を受けたりするための時間を取られることになります。

2つ目は、管理するための仕事そのものを増やしてしまう管理職です。たとえば、新たな報告書の提出を求める、実務との関係が薄い目標管理を追加する、同じ内容を複数の形式で報告させるといったケースです。このような管理が重なると、本来の業務を進めるためではなく、管理に対応するための仕事が増えていきます。

この2つに共通しているのは、管理そのものが目的になり、現場の仕事を支えるはずの管理が、かえって新たな業務を生み出してしまう点です。必要な調整や判断のための管理ではなく、管理を続けるために報告や確認の仕事が増えていくことが、タスクマスターの問題とされています。

管理職には、部下の育成や業務の調整、意思決定、問題が起きたときの対応など、組織を動かすうえで必要な役割があります。問題になるのは、その範囲を超えて、細かな報告や確認、書類作成などを必要以上に増やしてしまう場合です。管理のための業務が増えるほど、現場は本来の仕事に使える時間を奪われてしまいます。
参考:David Graeber/I had to guard an empty room: the rise of the pointless job
参考:Simon & Schuster/Bullshit Jobs: A Theory

なぜ「意味のない仕事」はなくならないのか

ブルシット・ジョブは、働く本人が必要性を感じていなくても、なくせないケースが多々あります。
そこには、仕事の内容だけではなく、組織の仕組みや職場の慣習、働くことに対する価値観が関係しています。
グレーバーは、忙しく働いていること自体が評価される考え方や、部下の人数や部署の大きさが管理職の権威につながる「管理封建制」などを、その背景として挙げています。また、一度始まった業務が「これまで続けてきたから」という理由で残ることもあります。

「働いていること」そのものが評価されるから

グレーバーは、現代社会には「仕事をしていること自体に道徳的な価値がある」という考え方が強く残っていると論じています。

本来、仕事は何らかの成果を生み出したり、誰かの役に立ったりするために行うものです。しかし、「忙しく働いている人は立派だ」「楽をしている人は努力が足りない」という考え方があると、仕事の内容よりも、働いている時間や忙しそうに見えること自体が評価されるようになります。グレーバーは、こうした労働観が、必要性の乏しい仕事まで残す背景の一つになっているとしています。

たとえば、短時間で仕事を終えた人より、遅くまで会社に残っている人の方が頑張っていると評価されることがあります。資料も、必要な情報だけを簡潔にまとめるより、ページ数が多い方が「きちんと作り込んでいる」と受け取られることがあります。
このように、成果よりも「どれだけ仕事をしているように見えるか」が重視されると、不要な仕事を減らすより、仕事を続けること自体が評価されるようになります。その結果、必要性の薄い業務も残り続けてしまいます。

部下や部署の大きさが権威になる「管理封建制」

グレーバーは、ブルシット・ジョブが生まれる背景の一つとして、「管理封建制(managerial feudalism)」という考え方を挙げています。

管理封建制とは、管理職の地位や権限が、担当する仕事の成果だけでなく、「何人の部下を抱えているか」「どれだけ大きな部署を任されているか」といった組織の規模によっても左右される状態を指します。グレーバーは、多くの家臣を従えることが権威の象徴だった封建社会になぞらえて、この言葉を使っています。

たとえば、業務を見直した結果、これまで10人で行っていた仕事を5人でこなせるようになったとします。会社全体で見れば、人員や時間をほかの業務に回せるため、効率化につながります。一方で、その部署を率いる管理職から見れば、部下の人数が減り、担当する組織の規模も小さくなることが考えられます。
このとき、もし部下の人数や部署の規模が、管理職の社内での地位や権限と結びついていれば、人員を減らすことは、自分の影響力を小さくすることにもつながります。そのため、会社全体では業務の効率化につながるとしても、管理職自身は、部下や部署の規模を積極的に縮小しようとは考えることができない場合があります。

グレーバーは、こうした仕組みのなかでは、管理職やその補助を担うポジションが増え、それに伴って進捗報告、会議、社内資料の作成など、管理のための仕事まで増えていくと論じています。本来であれば業務を効率化して仕事を減らせるにもかかわらず、組織の規模や管理する立場を維持するために、必要性の乏しい仕事まで残ってしまう状態を、グレーバーは「管理封建制」として批判しました。

必要性が薄れても、慣例で仕事が続いてしまうから

職場では、始めた当時は必要だった仕事が、その後も見直されないまま続いていることがあります。
たとえば、紙で管理していた頃に必要だった確認作業が、システムを導入した後も残っているケースです。担当者が変わっても、「前任者もやっていたから」という理由だけで、同じ作業がそのまま引き継がれる場合もあります。

このように、一度、職場の決まりごととして定着した仕事は、特に問題が起きなければ、その必要性まで改めて確認されないことがあります。その結果、「なぜこの作業をしているのか」「今も続ける必要があるのか」が分からないまま、作業だけが残ってしまいます。
こうした仕事を減らすためには、以前から続いているという理由だけで業務を残すのではなく、現在も必要なのかを定期的に見直す視点が大切です。

「楽をするのは許せない」というルサンチマン

ルサンチマンとは、自分より恵まれているように見える相手に対して抱く、嫉妬や反感、恨みに近い感情を指します。グレーバーは、仕事をめぐっても、こうした感情が生まれることがあると論じています。
たとえば、「自分は毎日つらい思いをして働いているのだから、ほかの人も同じように苦労するべきだ」という考え方です。

グレーバーは、このような感情が、「仕事には苦労が伴って当然だ」という考え方と結びつくと指摘しています。その結果、仕事を効率化して負担を減らすことまで、「楽をしようとしている」と否定的に受け取られることがあるとしています。

たとえば、毎週行っていた会議を月1回に減らす、報告書を簡略化する、自動化できる作業をシステムに任せるといった改善です。本来であれば、必要のない作業を減らし、本来の仕事に時間を使うための見直しです。しかし、「これまで皆がやってきたのだから続けるべきだ」「自分たちも苦労してきたのだから、今の人も同じようにやるべきだ」と考えれば、不要な仕事が残ってしまいます。

グレーバーは、社会的に必要とされる仕事をしている人や、自分の仕事にやりがいを感じている人に対して、嫉妬や反感が向けられることもあると論じています。
自分自身が「この仕事に何の意味があるのだろう」と感じながら働いていると、誰かの役に立っている実感を持つ人や、仕事そのものに満足している人を見て、「自分より恵まれている」と感じることがあります。さらに、その相手が自分より短い時間で仕事を終えていたり、楽しそうに働いていたりすると、「自分はこれだけ苦労しているのに、なぜあの人は楽しそうなのか」という不満にもつながることがあるとしています。

こうした感情が強くなると、「仕事は苦労してこそ価値がある」「楽にできる仕事は価値が低い」といった考え方が強まります。グレーバーは、こうした労働観も、ブルシット・ジョブがなくならない背景の一つとして捉えています。
参考:ストレスチェッカー/ルサンチマンとは?職場での現れ方は?
参考:David Graeber/Is Your Job Bullshit? On Capitalism’s Endless Busywork

ブルシット・ジョブが職場に与えるリスク

ブルシット・ジョブの問題は、単に「無駄な仕事に人件費がかかる」ということだけではありません。自分の仕事に意味を感じられない状態が続けば、働く意欲や仕事への満足度にも影響します。また、必要性の低い業務に時間を使うほど、本来取り組むべき仕事に使える時間も減ってしまいます。

実際に、自分の仕事を社会的に役立たないと感じている人ほど、仕事への満足度や心理的なウェルビーイングが低いことを示した研究もあります。ブルシット・ジョブは、働く本人だけではなく、組織にとっても無視できない問題です。

仕事の意味を感じられず、働く意欲が低下する

毎日仕事をしていても、「この作業は誰の役に立っているのか」「なぜこの仕事を続けているのか」が分からなければ、仕事に意味を感じることは難しくなります。
たとえば、提出してもほとんど読まれない資料を毎月作り続けたり、結論がほぼ決まっている会議に何時間も参加したりしていると、仕事を終えても達成感を得ることができません。とくに、本人が真面目に取り組んでいるほど、「自分は何のためにこの作業をしているのだろう」という疑問も強くなります。

仕事の意味に関する研究では、自分の仕事に意味を感じている人ほど、仕事への満足度やエンゲージメント、組織へのコミットメントが高い傾向が確認されています。逆に考えれば、仕事の必要性を感じられない状態が続くことは、働く意欲を損なう要因になります。

不要な業務に時間を取られ、本来の仕事に集中できなくなる

ブルシット・ジョブが増えると、本来必要な仕事に使える時間が減ってしまいます。

たとえば、顧客への提案を考えなければならない営業担当者が、社内向けの報告資料を何種類も作成しているようなケースです。同じ数字を形式の異なる資料へ何度も入力し、さらに進捗報告のための会議にも参加していれば、その分だけ顧客と向き合う時間は少なくなってしまいます。

そして、やっかいなのは、一つひとつの作業だけを見ると、それほど大きな負担には見えないことです。しかし、10分の報告、30分の会議、月1回の資料作成でも、それが何種類も重なれば相当な時間になります。

しかも、「以前から提出しているから」「上司が確認することになっているから」という理由だけで続いている業務は、本人の判断ではやめることができません。

無駄な会議や報告が増え、組織全体の生産性が下がる

会議や報告書は、必要な情報を共有したり、意思決定を進めたりするために欠かせないものです。ただし、目的が曖昧なまま回数だけが増えると、多くの社員の時間を奪うことになります。

たとえば、10人が参加する1時間の会議では、組織全体で10時間分の労働時間を使います。さらに、会議資料の作成、事前確認、終了後の議事録作成まで加われば、実際に費やす時間はそれ以上です。報告書も同じで、作成する人だけでなく、内容を確認する上司や承認する管理職の時間まで使います。

もちろん、必要な会議や報告まで減らせばよいわけではありません。見直したいのは、「この会議には本当に全員が参加する必要があるのか」「この資料は毎回作る必要があるのか」「この報告は意思決定や業務改善に使われているのか」といった点です。
こうした点を確認しないまま会議や報告を続け、さらに新しい確認作業や資料作成が追加されれば、社員が本来の業務に使える時間が少しずつ減ってしまいます。必要性の低い仕事に多くの時間を使う状態が続けば、組織全体の生産性にも影響します。

「何のために働いているのか」というストレスにつながる

仕事の負担というと、長時間労働や仕事量の多さを思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、自分の仕事に意味を感じられない状態も、精神的な負担につながります。

欧州の労働者を対象とした研究では、自分の仕事を「社会の役に立っていない」と感じている人ほど、心理的なウェルビーイングが低い傾向が確認されています。毎日多くの時間を仕事に使っているにもかかわらず、「この仕事は何のためにあるのか」「誰の役に立っているのか」が分からない状態が続けば、働く意味そのものを見失ってしまいます。

仕事の意味を感じられないと、離職意向が高まる

仕事に意味を感じられない状態は、社員がその会社で働き続けるかどうかにも関係します。

47か国、約10万人の労働者を分析した研究では、自分の仕事を社会的に役立たないと感じる人ほど、仕事への満足度が低いことが報告されています。また、仕事の意味に関する複数の研究をまとめたメタ分析では、仕事に意味を感じることと、離職意向の低さとの間に関連が確認されています。
毎日の仕事の大部分が、必要性の分からない資料作成や報告、確認作業で占められていれば、「この会社で働き続けたい」という気持ちにも影響します。給与や労働時間だけでなく、自分の仕事が誰の役に立ち、どのような成果につながっているのかを実感できることも、働き続けるうえで大切な要素です。
参考:University of Cambridge/Alienation Is Not ‘Bullshit’: An Empirical Critique of Graeber’s Theory of BS Jobs
参考:IZA Institute of Labor Economics/Socially Useless Jobs
参考:Journal of Management Studies/Outcomes of Meaningful Work: A Meta-Analysis
参考:Management Science/Too Many Meetings? Scheduling Rules for Team Coordination

ブルシット・ジョブを減らすには

ブルシット・ジョブを減らすには、精神論ではなく、実際の業務を一つずつ見直すことが必要です。経営側には必要に見えても、実際に担当している社員から見ると、「誰も使っていない資料」「同じ内容を何度も入力する作業」「結論の出ない会議」になっている場合があります。
まずは、現場でどのような仕事が負担になっているのかを把握し、そのうえで会議や報告、承認などの業務を一つずつ見直す必要があります。

社員に「無駄だと感じる仕事」を聞く

ブルシット・ジョブを見つけるうえで欠かせないのが、実際にその仕事をしている社員の声です。

管理職から見ると必要な報告書でも、担当者からすれば、同じ内容を別の資料にも入力しているかもしれません。毎週開いている会議も、参加している社員の多くが「メールで共有すれば十分」と感じている場合があります。業務の細かな重複や無駄は、日常的にその仕事をしている社員だからこそ気づけるものです。

方法としては、匿名アンケート、1on1、部署ごとの業務棚卸しなどが考えられます。「なくしても困らないと思う仕事はありますか」「同じ内容を何度も報告していませんか」「時間を取られている割に、何に使われているのか分からない資料はありませんか」と具体的に聞くと、業務上の問題を把握しやすくなります。

ただし、聞くだけでは十分ではありません。社員が「無駄だと思います」と答えたことで、自分の仕事を否定したと受け取られたり、上司に反抗していると思われたりする職場では、本当の意見は出てきません。

心理的安全性や発言行動に関する研究でも、社員が問題や懸念を口にできる職場環境の重要性が指摘されています。社員の意見を集めるのであれば、意見を述べたこと自体が不利益につながらず、実際の改善にも反映される仕組みまで整える必要があります。

会議・報告書・社内資料を減らす

会議や報告書、社内資料は、すべてが無駄なわけではありません。意思決定や情報共有に必要なものも当然あります。問題は、目的を確認しないまま、「以前から行っている」という理由だけで続けることです。

たとえば、毎週1時間の定例会議を開いているなら、本当に毎週必要なのかを確認します。情報共有だけが目的なら、チャットやメールで代替できるかもしれません。10人全員が参加する必要がなく、一部の担当者だけで十分な場合もあります。

報告書や社内資料についても同様です。「誰が読むのか」「読んだ後に何を判断するのか」「この資料がなくなると何が困るのか」を確認します。明確な答えが出ない資料については、廃止や簡略化を検討する余地があります。
大切なのは、資料を1ページ減らすといった小手先の効率化ではなく、その仕事自体が今も必要なのかを確認することです。

前例だけで続いている業務を見直す

職場には、始めた当時は必要だったものの、現在では役割を終えている仕事もあります。
たとえば、紙で管理していた時代に始まった確認作業が、システム導入後も続いているケースです。過去のトラブルを受けて始めた報告書が、問題の解決後も提出され続けていることもあります。

こうした業務は、「前任者から引き継いだから」「毎年やっているから」という理由だけで残ってしまいます。担当者が交代するたびに手順だけが受け継がれ、そもそもの目的を知っている人がいなくなることも珍しくありません。
定期的な業務棚卸しでは、「いつ始まった仕事なのか」「何のために始まったのか」「現在も同じ目的があるのか」まで確認します。続ける理由を説明できない業務については、廃止や変更を検討する必要があります。

承認や確認の回数を減らす

担当者が確認した内容を係長が確認し、課長が確認し、部長が承認する。その途中で同じ内容を別のシステムにも入力し、紙の書類にも押印する。このような流れになっていれば、ひとつの判断をするまでに多くの社員の時間を使うことになってしまいます。
見直す際には、「この承認者は何を判断しているのか」を明確にします。実際には内容を確認せず、形式的に承認しているだけであれば、その工程を残す意味を検討する必要があります。

すべてのチェックをなくすのではなく、リスクの大きさに応じて承認の段階を変える方法もあります。重要な契約や高額な支出には複数の確認を残し、日常的な少額の処理は担当者に任せるなど、業務の内容に応じた設計が必要です。

管理職が必要以上に仕事を増やさない

ブルシット・ジョブを減らすうえでは、管理職自身が「管理のための仕事」を増やしていないか振り返ることも大切です。
管理職には、意思決定、業務の調整、部下の育成、問題が起きた際の対応など、本来担うべき役割があります。一方で、細かく管理しすぎると、現場には進捗報告、確認資料、定例会議などの仕事が次々と加わってしまいます。

たとえば、部下が問題なく進めている仕事について、毎日の進捗報告を求め、その内容を週次会議でも説明させ、さらに月次報告書にもまとめさせれば、同じ情報を何度も報告することになりかねません。

このように、管理のための仕組みを追加するたびに、現場には新しい作業が発生します。そのため、報告や確認のルールを増やす際には、「この仕組みで何を把握したいのか」「今ある報告では足りないのか」「社員にどれだけ新しい作業が発生するのか」まで確認する必要があります。
管理を増やすことが、そのまま管理の質を高めるわけではありません。現場に任せられる部分は任せ、管理職が判断や調整に時間を使える状態をつくることが大切です。

ストレスチェックから職場の負担を確認する

ブルシット・ジョブを減らす方法の一つとして、ストレスチェックの結果を職場環境の見直しに活用することもできます。
とくに参考になるのが、部署など一定の集団ごとに結果をまとめる「集団分析」です。厚生労働省が示す「仕事のストレス判定図」では、仕事の量的負担、仕事のコントロール、上司の支援、同僚の支援といった項目から、職場にどのような負担が生じているのかを確認できます。

たとえば、ある部署で仕事の量的負担が高く、仕事のコントロールが低いという結果が出た場合には、社員への聞き取りや業務棚卸しもあわせて行います。「同じ内容を何度も報告している」「会議が多く、本来の仕事に時間を使えない」「細かな確認作業が多い」といった声が集まれば、業務の進め方を見直す材料になります。

ブルシット・ジョブを減らすうえでは、社員個人の負担だけを見るのではなく、その負担がどのような業務や管理方法から生まれているのかを確認することが大切です。ストレスチェックの集団分析と社員への聞き取り、業務棚卸しを組み合わせることで、仕事量や裁量、職場の支援などを含めて、職場環境を見直すきっかけになります。
参考:厚生労働省/ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策
参考:厚生労働省/労働者数50人以上の事業者の方
参考:厚生労働省/労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について
参考:BMC Health Services Research/A systematic review exploring the content and outcomes of interventions to improve psychological safety, speaking up and voice behaviour

 

ストレスチェッカーとは

「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しています。
また、無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下である「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場でも実施義務化が進むため、早めの準備が大切です。
導入や運用については、ぜひお気軽にご相談ください。

ストレスチェック導入のご相談はこちら

 

まとめ

ブルシット・ジョブとは、働いている本人でさえ「この仕事は本当に必要なのか」と疑問を感じるような、意味や必要性を見いだしにくい仕事を指します。
誰も読まない資料、目的の曖昧な会議、同じ内容を繰り返す報告、必要以上の承認作業などは、一つひとつを見ると小さな負担に思えるかもしれません。しかし、こうした仕事が積み重なると、本来の業務に使える時間が減り、仕事への意欲や満足度にも影響します。
ブルシット・ジョブを減らすには、社員の声を聞きながら、会議や報告、承認、慣例化した業務を一つずつ見直すことが大切です。「以前からやっているから」ではなく、「今も本当に必要なのか」という視点で確認する必要があります。
その際、ストレスチェックの集団分析も、職場の負担を把握する材料の一つになります。仕事量や裁量、上司・同僚からの支援などを確認し、社員への聞き取りや業務棚卸しと組み合わせることで、負担の背景にある仕事の進め方を見直すきっかけになります。

社員のストレスについては、本人の感じ方や対処法だけでなく、仕事の進め方そのものにも目を向ける必要があります。必要性の低い業務や、目的の分からない会議・報告が積み重なっていないかを確認し、職場全体で見直していくことが大切です。ストレスチェックも、こうした職場環境の改善につなげるための材料として活用することができます。

ストレスチェッカーは、官公庁・上場企業・医療機関などで採用されている国内最大級のストレスチェックツールです。自動リマインド、面接指導者管理、進捗確認機能を標準搭載し、2025年5月からは無料プランでも「プレゼンティーイズム(生産性低下)」の測定に対応しております。
導入方法や実施方法など、お気軽にお問い合わせください。

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