リワークプログラムとは|種類や進め方を解説

休職後少し体調が回復してくると、「早く復職しなければ」と焦ってしまうケースがありますが、十分に回復しないうちに復職してしまうと、これが再発の原因となってしまうことがあります。
そこで、このような再発を防ぎ職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)を実施するために開発されたのが、リワークプログラムです。

リワークプログラムとは、会社に復職することを想定した訓練で、医療機関や職業センター、企業内等で行われます。

リワークプログラムとは

リワークプログラムの「リワーク」とは、「return to work」の略語で、休職と復職を繰り返す従業員や、治りづらい抑うつ状態にある患者を対象として開発されたプログラムです。
リワークプログラムには、医療機関で行うものや、企業内で行われるものなどがあり、それぞれのプログラムに従ってリハビリテーションが行われます。

(1)リワークプログラムのメリット

メンタルヘルス不調の回復には、数カ月から半年程度の時間がかかることがありますし、メンタルヘルス不調は、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、少しずつ回復していくものです。
復職できる状態になったからといって無理をして復職しても、仕事に必要な集中力や判断力などはまだ十分回復していないケースは多く、無理をして復職して、再休職を繰り返すケースは多く見られます。

独立行政法人「労働政策研究・研修機構が2012年に実施した調査によれば、休職した労働者の再発・再休職率は身体疾患では20%であるのに対して、精神疾患では復職率が45.9%と低く、さらに退職率も42.3%と高いという報告がされています。

> 独立行政法人労働政策研究・研修機構「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」

上記の調査結果からも分かるように、メンタルヘルス不調は、まずは主治医や産業医と相談しながら、無理のないように復職の準備を進めていくことが大切です。そして、このようなときに活用を検討したいのが、リワークプログラムです。

リワークプログラムでは、休職に至ったプロセスを見つめ直し、集団生活に慣れ、ストレスへの対処の仕方などを通じて、復職後ふたたび休職する状況にならないための準備を行っていくことができます。

また、リワークプログラムを通じて、従業員が「休職の要因が自分側にもある」と理解できると、復職後に再休職し最終的に退職となった場合でも、「会社に無理やり辞めさせられた」などのトラブルに発展することを回避できるというメリットもあります。

(2)リワークプログラムの種類

リワークプログラムには、大きく①医療機関で実施されるリワークプログラム(以下、医療リワーク)、②職業センターで実施されるリワークプログラム(以下、職リハリワーク)、③企業内やEAP(従業員支援プログラムなどで行われるリワークプログラム(以下、職場リワーク)の3つの種類があります。

対象 主な目的 実施期間 費用
医療リワーク 休職者 再休職予防 医療機関 健康保険
職リハリワーク 休職者事業主 支援プランに基づく支援 職業センター 労働保険
職場リワーク 休職者 労働させて良いかの判断 企業内、EAPなど 企業負担

(3)医療リワーク

医療リワークは、医療機関におけるリワークプログラムで、第1段階で生活リズムを整えて病状を回復させ、第2段階で疾病の理解と発症要因を分析し、それまでの認識を修正していきます。そして、第3段階で、さまざまなストレス状況に対処するための対処方法を知り、対人間関係能力の改善を目指します。
プログラムを通じて、休職前と同じ結果にならないように対処法を変え、復職後のフォローアップのためのプログラムや集団認知行動療法を実施し、再休職の予防を図ります。
医療リワークは、健康保険が財源であり、原則3割、自立支援医療制度に適応した場合には1割の自己負担が発生します。

(4)職リハリワーク

職リハリワークは、職業センターにおけるリワークプログラムで、厚生労働省の独立行政法人高齢・障がい・求職者支援機構によって都道府県に1カ所以上置かれている地域障がい者職業センターで行われます。
内容は、休職している労働者に対する職場復帰と職場適応、および雇用主の支援となっています。
病状を回復するための治療ではなく、休職している従業員の職場復帰に際して企業担当者や主治医をコーディネートするという点が、医療リワークとの最も大きな違いです。
職リハリワークは、労働保険を財源としていて、利用料は無料です。

(5)職場リワーク

職場リワークは、企業内で行われる復職支援のためのプログラムで、企業が従業員に対して安全に復職を果たすために行います。
厚生労働省では「心の健康問題により休職した労働者の職場復帰支援の手引」といいう指針を示していて、この指針に盛り込まれた試し出勤やリハビリ出勤なども職場リワークの内容に含まれます。
業務はさせずに出勤が可能かを確認し、復職させて安定した就労が可能かを見極めることを目的としています。

短期型リワークプログラムとは

メンタルヘルス不調による求職者のリワークプログラムは、復職後の就労継続に効果があると言われていますが、リワークプログラムの参加期間は半年を超えることも多く、なかなかリワークプログラムを利用しづらいという面も否定できません。
そこで、現在は短期間でも一定の就労継続効果が期待できるリワークプログラムの開発が進められています。

(1)短期型リワークプログラムの特徴

短期型リワークプログラムは、「主観的評価によるうつ症状が軽いが、生活リズムの調整ができていない」といった休職者が利用するケースが多いという特徴があります。つまり、医療的支援というより職業リハビリテーションに重点を置いた支援を必要としている人が利用しており、この点では職業センターなどで行うリワークプログラムに近い内容であるという特徴があります。

(2)短期型リワークプログラムの事例

国立精神・神経医療研究センターの臨床心理部では、「仕事場面に焦点化した認知行動療法」と「職場連携」に力を入れたリワークデイケア(復職支援のための認知行動療法)を行っています。

> 国立精神・神経医療研究センター「リワークデイケアについて」

認知行動療法のスキルを学び、ものの見方(認知)に働きかけ、問題解決のための対処ができるようになることで、ストレス対処力を高めていきます。また、栄養士やキャリアコンサルタント、産業医、社会保険労務士などの協力のもと、疾病、服薬、睡眠、栄養管理などに関する心理教育なども行っています。
国立精神・神経医療研究センターの短期型リワークプログラムでは、休職を失敗ととらえず、これまでの自分の働き方を振り返り、今後どのように生きていくか考える機会と捉え、キャリアデザインの演習を行います。

(3)リワークプログラムを利用するには

リワークプログラムを利用する場合には、企業の担当者は本人の了解を得たうえで、主治医やリワークスタッフと連携を図ることが大切です。
休職者本人だけでなく、第三者からの情報を得ることは、客観的な視点に基づいた支援を行うことが可能となります。
「どのようなタイミングで、受け入れることが良いのか」「復職するうえでの最低限の条件は何か」など、会社の方針や事情を本人とリワークスタッフに伝えたうえで連携を図ることは、復職を円滑に進めるうえでも効果的です。

なお、リワークプログラムは復職前に慌てて導入するのではなく、早い段階から利用を検討しておくようにしましょう。

まとめ

リワークプログラムの利用を検討するうえでは、休職者も企業側も「主体的にリワークプログラムを利用する」という意識を持つことが大切です。
医療従事者と目的や活用方法を相談しながら、リワークプログラムを利用し、スムーズに復職を目指すようすすめていきましょう。

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