ストレスチェックの結果|メンタルヘルス対策にどう活かすか

ストレスチェック制度は、従業員が自身のストレス状態を把握することでメンタル不調に気づき、セルフケアにつなげることを目的とした制度です。さらにストレスチェックの結果から職場全体の状況を分析し、職場環境の把握・改善にもつながると考えられています。

ストレスチェックの結果の活用

ストレスチェック制度の目的のひとつに、「集団分析を用いた職場環境改善」があります。しかし、ストレスチェックの結果の活用方法がよくわからず、職場環境の改善へうまくつなげることができていないケースがあるようです。
しかしストレスチェックは、単に実施して従業員のセルフケアに任せるだけでは、職場環境を改善することはできません。
では、具体的にどのように取り組めば、ストレスチェックの結果を活用することができるのでしょうか。

(1)個人でストレスチェックを活用する

ストレスチェックは、従業員本人が自分のストレス状態に気づき、セルフケアによってメンタル不調を未然に防止することが主目的です。

高ストレス判定となった従業員へは、メンタルヘルス不調となる前に医師の面接指導を受けるよう促し、高ストレスと判定されなかった従業員へは、産業医面談やその他のカウンセリングを受けられるような体制を整備したり、ストレスチェック結果の見方やセルフケアについてセミナーを開いたりすることをおすすめします。

(2)集団ごとの集計・分析と職場改善

ストレスチェックは、個人のストレスの状態だけでなく、職場環境についても同時に測定できます。

たとえば、ストレスチェックの結果をグループや部署ごとに分析し、全国平均や業界平均と比較して、組織のストレスの特徴を読み取ります。そして、職場巡視や管理監督者からのヒヤリングを実施して職場における課題を調査することで、その後の職場環境改善に活かすことができます。

ストレスチェックの結果から、仕事上のストレスの特徴を読みとる
  ↓
職場巡視を実施して、実際の職場における課題を調査する
  ↓
職場の管理監督者や従業員にヒヤリングを行う
  ↓
具体的な課題のリストを作成する
  ↓
職場環境の改善対策の計画を立てる

ストレスチェックの集団分析の方法

前述したとおり、ストレスチェックは結果を集団(部署、グループ、チームなど)ごとに集計し、分析することができます。
ここでは、ストレスチェックの集団分析の方法についてご紹介します。

(1)仕事のストレス判定図を活用する

仕事のストレス判定図とは、職場内の集団(会社全体、属性別、チーム別データなど)を対象に、仕事や職場のストレス要因を評価し、それが健康に与える影響の大きさを判定するためのツールです。

仕事のストレス判定図は2種類あり、1つは「仕事の量的負担」と「仕事のコントロール(仕事の裁量度)を要因としてプロットされる『仕事の量的負担-仕事のコントロール判定図』と、もう1つは「上司の支援」と「同僚の支援」から作成される『職場の支援判定図』です。

上記の図は、ストレスチェッカーが提供している仕事のストレス判定図です。
いずれも色が濃くなるほどストレスが高い状態を示します。プロットされた集団の位置を、他の集団や平均値と比較することで、その集団におけるストレスの傾向や特徴を確認ことができます。

ストレスチェッカー「仕事のストレス判定図」

また、2つの図の健康リスクを掛け合わせることで、各職場の総合健康リスクを算出することもできます。総合健康リスクは、数値で各職場を比較できるので、職場改善を行う際に大変有益な指標となります。

ただし、仕事のストレス判定図は「仕事のストレスを4つの側面でしか評価していない」という点において、注意が必要です。総合的にリスク評価を行うためには、判定図にとりあげられていないストレス要因があることも考慮する必要があります。

(2)仕事のストレス判定図以外の情報を活用する

ストレスチェックでは、ストレス判定図以外にもさまざまなデータを取得できるので、前述した仕事のストレス判定図を参考にしながら、他のデータを考慮して総合的にリスク評価を行うのが適切です。

ここでは、ストレスチェックの高ストレス判定で用いられる「ストレス原因と考えられる因子(以下「ストレス要因」)と「ストレスによって起こる心身の反応(以下「ストレス反応」)から、4つのマトリックスに分けて分析する手法をご紹介します。

①ストレス要因とストレス反応のいずれも高い場合
①は、職場のストレスが高く、かつ体調不良という状態なので、早急な対策が望まれます。必ず会社に原因があると判断するのは早計ですが、「残業時間が多い」「与えられたノルマに高いプレッシャーがかかっている」など問題がないかを調査して、早急に改善する必要があります。

②ストレス要因が低く、ストレス反応が高い場合
②は、職場でのストレスが高くないのに、従業員の心身が不調である状態です。
職場のストレスが高くないからといって、全てがプライベートの問題であるとは限りません。「転勤で家族と会えない」など仕事に関連した事情により、プライベートの問題が発生している可能性もあります。また、従業員自身が職場の問題に気づいていないケースもあるので、何が原因でストレス反応が高くなっているのかを調査する必要があります。

③ストレス要因が高く、ストレス反応が低い場合
③は、急成長しているベンチャー企業などに多いタイプで、ストレスが高くても従業員が前向きに仕事に取組んでいるタイプです。しかし、どれほど前向きだからといって、ストレスの高い状態をずっと続けられるかといえば、それは別問題ですので、このパターンでも対策を講じる必要があります。

④ストレス要因とストレス反応がいずれも低い場合
④は、職場のストレスも少なく、心身の不調も少ない状態です。
ストレスも不調も感じていないのは良いことですが、一方でやりがいのない環境につながるなどの問題を抱えている可能性があります。

(3)従業員個人の属性による違いを分析する

従業員の属性による違いを分析することで、職場の問題点が把握できることがあります。
たとえば、女性のストレスが男性より高い職場であれは、女性のキャリアパスに問題があるなど、さまざまな可能性を考えることができます。

また、雇用形態別の分析では、仮に正社員のストレスは低いのに、派遣社員や契約社員のストレスが高い結果が出た場合、派遣社員や契約社員の不満に気づくこともできます。
このような時には、「契約内容と実際の業務の責任や負担が釣り合っているか」「派遣社員を不利に扱っていないか」などを確認するとよいでしょう。

(4)部署や事業所による違いを分析する

職種や事業所別に分けて、ストレス状態を把握する方法も有用です。
営業職のストレスが高い場合には、長時間労働や過剰なノルマなどの問題があるかもしれません。工場や工事現場は、繁忙期になると長時間労働になることも考えられるため、実施時期によってはストレスが高くなる可能性があります。
このように、職種や事業所の特徴に応じてデータを分析することで、状況に応じた対策を講じることができます。

(5)過去データと比較する

集団分析を活用して職場環境の改善を行うためには、毎年過去のデータと比較して、PDCAサイクルを回すことが大切です。
PDCAとは、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の4段階を繰り返すことで、業務を継続的に改善する手法です。

引用: 厚生労働省「これからはじめる職場環境改善」

Plan(計画)
ストレスチェック、特に集団分析を活用した職場環境改善についての方針作成
実施計画のデザイン

Do(実行)
① ストレスチェックの実施
② 集団分析
③ 集団分析結果報告 事業者・幹部向け
④ 集団分析結果報告 個別職場向け
⑤ 職場環境改善に向けた取り組み

Check(評価)
実施手順の振り返り・評価

Act(改善)
次年度の計画へ、実施手順や実施方法の見直しを反映する

まとめ

ストレスチェック制度は、従業員に自身のストレス状態を確認する機会を与えるだけでなく、さまざまな視点から分析することで職場全体の課題を把握することができます。具体的な職場環境の改善については、厚生労働省が「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」に基づき、「職場における心の健康づくり」を公開しています。
ストレスチェックを実施際には、その結果を踏まえて職場環境の改善に活用しましょう。

厚生労働省「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」

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