一次予防とは?二次予防・三次予防との違いは?

メンタルヘルス対策における一次予防とは、病気や健康障害が生じる前に、その発生を未然に防ぐための取り組みを指します。具体的には、主に職場環境の改善や従業員への教育研修、ストレスチェックの実施などを通じて、ストレスの原因を早期に把握し、メンタルヘルス不調が起こりにくい職場づくりを組織全体で継続的に進めます。
この記事では、メンタルヘルス対策における一次予防の意味や具体的な対策、二次予防・三次予防との違いなどについてご紹介します。

監修医師:近澤 徹
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役

一次予防とは

昨今は、雇用形態や働き方の多様化、人間関係の変化、職場内のコミュニケーション不足などを背景に、仕事上のストレスを抱える従業員が少なくありません。
こうしたストレスを抱えたまま、適切な対策をとらずに働き続けると、心身の健康に影響が及び、うつ病などのメンタルヘルス不調につながることがあります。
その結果、従業員が休職や退職に至れば、周囲の負担増加や生産性の低下など、事業場全体にも影響が生じます。
そこで事業場では、メンタルヘルス対策として、一次予防、二次予防、三次予防を段階的かつ継続的に進めることが重要です。

一次予防とは、メンタルヘルス不調の発生を未然に防ぐための取り組みで、ストレスチェックや教育研修、職場環境の改善などが挙げられます。
一方、二次予防は不調の早期発見と早期対応、三次予防は休職者の職場復帰支援や再発防止を中心とする取り組みです。三つの予防を組み合わせ、継続的な支援体制を整えます。
 

 

(1)ストレスチェック

ストレスチェック制度とは、2015年12月から、常時50人以上の労働者を使用する事業場に実施が義務づけられている制度です。50人未満の事業場についても、2028年4月1日から実施が義務化されます。
主な目的は、働く人のストレスの程度を定期的に把握し、本人が自らの状態に気づいて、セルフケアや必要な相談につなげることです。
あわせて、検査結果を集団ごとに分析し、職場環境の改善に活用することも重要です。

また、高ストレス者と判断され、本人から申出があった場合には、医師による面接指導を実施します。事業者は医師の意見を踏まえ、必要に応じて就業上の措置を検討します。

(2)職場環境の改善

職場環境の改善とは、働く場所や仕事の進め方、人間関係などを見直し、職場にあるストレス要因を減らしていく取り組みです。
メンタルヘルス不調につながる要因には、職場の人間関係や仕事量、裁量の少なさ、役割の不明確さなどがあります。メンタルヘルス不調を訴える個人への対応だけでは、同じ職場で新たな不調者が生じる可能性があり、根本的な解決にはつながりません。

職場全体にストレス要因がある場合は、組織として課題を把握し、改善策を進める必要があります。
ストレスチェックの結果を集団ごとに分析すれば、部署や職種ごとの傾向を把握し、業務量の調整や相談体制の整備、コミュニケーションの改善など、具体的な対策につなげることができます。

(3)教育研修

教育研修も、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための重要な対策のひとつです。従業員がストレスの兆候や対処法を理解することで、自分の変化に早く気づき、セルフケアや周囲への相談につなげられます。また、管理職がストレスの影響を学び、職場環境の改善や部下のメンタルヘルスに配慮できるようになることにも大きな意義があります。

従業員向けの研修では、ストレスの仕組みや心身に現れるサイン、セルフケアの方法、社内外の相談窓口などを学び、ストレスへの気づきと対処力を高めます。管理職向けには、部下の変化に気づくポイントや声のかけ方、相談を受けた際の対応、専門職へのつなぎ方などを扱います。

実践的なワークショップやケーススタディを取り入れると、職場での対応を具体的にイメージできます。定期的な研修と継続的な情報提供を組み合わせることで、学んだ内容を日常の職場づくりに活かします。

二次予防・三次予防とは

これまでご紹介してきたとおり、メンタルヘルス対策には、一次予防、二次予防、三次予防があります。
一次予防が主に組織全体への働きかけであるのに対し、二次予防と三次予防では個別対応が中心です。
二次予防は不調の早期発見と対応、三次予防は職場復帰や再発防止を目的とします。

(1)二次予防

二次予防とは、メンタルヘルス不調の兆候を早期に発見し、適切な支援や相談対応につなげる取り組みです。
職場では、上司や同僚がストレスのサインに気づき、本人の状況に配慮しながら声をかけることが重要になります。

上司や同僚の支援・気づき
メンタルヘルス不調のサインには、業務効率の低下、遅刻や欠勤の増加、表情や言動の変化、対人関係の変化などがあります。上司や同僚がこうした兆候に早く気づき、決めつけずに声をかけることで、本人が相談や受診につながるきっかけをつくれます。

相談対応
上司は、部下が安心して相談できる環境を整えることが大切です。傾聴の姿勢を持ち、本人の話を遮ったり否定したりせず、必要に応じて産業医や保健師、カウンセラー、人事担当者などと連携して支援します。相談内容のプライバシーにも十分配慮し、職場内で適切に対応することで、不調の深刻化や長期化を防ぐことにつながります。

(2)三次予防

三次予防も、二次予防と同様に個別対応が中心です。
主な取り組みとして、メンタルヘルス不調による休職者へのフォロー、職場復帰の支援、復職後の再発防止などがあります。

休職者へのフォロー
休職中は、本人の療養を妨げないよう配慮しながら、適切なタイミングで連絡を取り、状況を確認することが大切です。復帰への不安を軽減するため、産業医やカウンセラーなどに相談できる機会を設け、流れを分かりやすく伝えます。

職場復帰支援
復職時には、本人の回復状況や医師の意見を踏まえ、勤務時間や業務内容を段階的に調整し、無理のないペースで仕事に戻れるよう支援します。上司や同僚は本人の様子を見守り、負担が集中しないよう配慮しながら、定期的な面談を通じて状況を確認します。復職後も必要な支援を続け、職場全体で理解を深めることが、再発防止と安定した就業につながります。

一次予防の重要性

一次予防は、メンタルヘルス対策において非常に重要な役割を果たします。
メンタルヘルス不調は、発症してからの治療や回復に時間がかかることも多いため、そもそも不調の発生を防ぐことが効果的な対策となります。従業員の心身の健康が保たれれば、生産性の向上や職場の活性化につながるほか、医療費や休職・離職に伴うコストの抑制も期待できます。また、安心して相談できる環境や働き方を整えることで、従業員の定着や組織への信頼にもつながります。個人任せにせず、企業が継続的に取り組むことが重要です。

(1)メンタルヘルス不調の発症を防止できる

一次予防の最大の目的は、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことです。ストレスチェックを通じて、従業員自身がストレスの状態に気づくとともに、集団分析によって職場全体の傾向も把握できます。過度なストレスが続く前に、業務量の調整や職場環境の見直し、セルフケアなどの対策を講じることで、うつ病や適応障害などの発症リスクを低減できます。

(2)健康維持と生活の質(QOL)の向上

病気になってから治療を始めるよりも、日頃から予防に取り組むほうが、身体的・精神的な負担を抑えながら健康な状態を維持できます。ストレスチェックを活用し、自身のストレスに気づいて、必要に応じて休養や相談につなげることも大切です。さらに、職場環境や働き方を見直すことで、働く人の健康と生活の質(QOL)の向上につながります。

(3)医療費や社会的コストの削減

メンタルヘルス不調を予防できれば、治療費や医療機関の負担を抑えることにつながります。特に、不調による長期休職や離職は、本人だけでなく、企業にとっても人員不足や業務停滞、代替要員の確保などの負担を招きます。ストレスチェックを活用し、早い段階で職場環境の改善や支援につなげることは、企業や社会全体のコストを減らすうえでも重要です。

ストレスチェックを通じて、従業員の気づきと職場環境の改善を進めることで、心身の健康を守り、安定して働き続けられる環境を整えられます。
 

ストレスチェッカーとは

「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しています。
また、無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下である「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場でも実施義務化が進むため、早めの準備が大切です。
導入や運用については、ぜひお気軽にご相談ください。

ストレスチェック導入のご相談はこちら

 

監修:精神科医・日本医師会認定産業医/近澤 徹

精神科医 近澤徹氏

【監修医師】
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役・近澤 徹

オンライン診療システム「Mente Clinic」を自社で開発し、うつ病・メンタル不調の回復に貢献。法人向けのサービスでは産業医として健康経営に携わる。医師・経営者として、主に「Z世代」のメンタルケア・人的資本セミナーや企業講演の依頼も多数実施。


> 近澤 徹 | Medi Face 医師起業家(Twitter)

 

まとめ

以上、メンタルヘルス不調を防止するための一次予防についてご紹介しました。
ストレスチェックは、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための一次予防として重要な役割を担います。従業員が自身のストレス状況を把握し、早い段階で対策を講じることで、うつ病や適応障害などの深刻なメンタルヘルス不調を防ぐことができます。

また、ストレスチェックの結果をもとに職場の環境を改善することで、働きやすい職場づくりにつながり、長期的な生産性の向上にも貢献します。特に、組織単位でストレス要因を分析し、業務負担の見直しや職場の人間関係の改善を行うことは、企業全体の健康経営にも直結します。

さらに、ストレスチェックを定期的に実施することで、従業員が自分のストレス状態に気づき、セルフケアの意識を高めることができます。結果的に、職場全体のメンタルヘルスを維持し、休職や離職のリスクを減らすことにもつながるため、積極的な活用が求められます。

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