レジリエンスとは?精神科医が解説!

レジリエンスとは、ストレスに対処し回復する力です。
レジリエンスを構築することで、個々の従業員は創造性や問題解決能力が向上し、パフォーマンスの安定が期待できます。また、職場全体においてもチームの生産性が向上し、協力的な文化が生まれやすくなります。その結果、従業員のモチベーションが高まり、離職率の低下やストレス関連の欠勤が減少することが見込まれます。レジリエンスの強化は、健全な職場環境の形成に非常に重要な要素です。

監修医師:近澤 徹
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役

レジリエンスとは

レジリエンスとは、困難な状況や逆境に直面した際に、その状況に対処し、元の状態にしなやかに回復する力や適応する力のことを指します。たとえば、失敗やストレス、トラウマなどの負の経験に対して、精神的・感情的な柔軟性を持ち、適応的に対応する力です。

レジリエンスには、元の状態に回復するだけでなく、スライブ(=成長する、栄える)といった意味も含まれています。
トラウマを経験した人が、その経験を乗り越えた時に、経験を糧として、トラウマを経験する前よりも一層内面的に成長している状態になることです。
高いレジリエンスを持つ人は、ストレスやプレッシャーの中でも自分の感情をコントロールし、状況を前向きに捉えることができるため、精神的な健康状態が維持されやすくなります。

現代社会では、仕事のプレッシャーや人間関係、経済的な不安など、ストレス要因が多く、レジリエンスが求められる場面が増えています。そのため、レジリエンスを高める方法を理解することが、メンタルヘルスや自己成長において非常に重要視されています。

レジリエンスを高めるメリット

レジリエンスを高める主なメリットは、ストレスや環境の変化に直面したとき、状況に柔軟に適応し、立て直す力を身につけられることです。

精神面では、ストレスを一人で抱え込まず、気持ちを切り替えたり、周囲に助けを求めたりする力が養われます。失敗や困難を単なる挫折で終わらせず、次に生かす経験として捉え直せるようになることもメリットです。また、予想外のトラブルが起きたときも、感情に振り回されず、落ち着いて状況を整理することにつながります。

仕事では、プレッシャーのかかる場面や変化の大きい環境でも、自分の状態を整えながら業務に取り組めます。ミスや失敗から比較的早く気持ちを切り替え、原因の確認や改善策の実行へ進む力も高まります。新しい仕事や役職に挑戦する際にも、不安やリスクと向き合いながら一歩を踏み出す助けになります。

人間関係では、相手の意見や指摘を必要以上に否定的に受け取らず、冷静に考える余裕が生まれます。本人が落ち着いて対応することで、職場のコミュニケーションやチーム内の協力にもよい影響が期待できます。

レジリエンス構築の10の方法

企業では、従業員のメンタルヘルスや職場への適応を支えるため、EAP(従業員支援プログラム)や社内研修の一環として、レジリエンスを高める取り組みが行われています。
アメリカ心理学会(APA)は、レジリエンスを高める考え方を「人とのつながり」「心身の健康」「健全な考え方」「人生の意味」という4つの要素に整理しています。従来のガイドで示されていた実践方法をもとに、ビジネスパーソンにも取り入れやすい10項目を紹介します。

① 人とのつながりを大切にし、必要なときは周囲に頼る

家族や友人、同僚などとの関係を大切にし、周囲と良好なつながりを築くことは、レジリエンスを支える要素の一つです。困難な状況に直面したとき、信頼できる人との会話や支え合いが精神的な助けになります。一人で問題を抱え込まず、必要に応じて相談することで、別の視点や解決の糸口を得られることもあります。
職場でも、上司や同僚に早めに状況を共有することが、問題の深刻化を防ぐ助けになります。

② 危機を、決して乗り越えられない難局だと決めつけない

危機的な状況に直面したとき、その問題を「自分には乗り越えられない」と決めつけないことが大切です。問題を冷静に整理し、変えられることと変えられないことを分けて考えると、次に取るべき行動が見えてきます。
すぐに解決できない場合でも、状況は時間とともに変化する可能性があります。仕事上のトラブルでも、課題を細かく分け、今できる対応から着手することが現実的です。

③ 変化を受け入れ、仕事や人生の一部として柔軟に対応する

人事異動や組織再編、新しい業務への対応など、仕事には自分の力だけでは避けられない変化があります。すべてを以前と同じ状態に戻そうとするのではなく、変化した状況を受け入れ、そのなかで可能な選択肢を考えることが大切です。
柔軟に対応する姿勢を持つことで、環境の変化に伴う負担を整理することができます。変化を無理に肯定するのではなく、時間をかけて適応することも必要です。

④ 日々の仕事や生活に、自分なりの目的を持って取り組む

毎日の仕事や生活に目的や意味を見いだすことも、レジリエンスを支える要素です。大きな目標だけでなく、「今日中に資料を完成させる」「一人の顧客にていねいに対応する」といった具体的な目標でも構いません。自分で決めた行動を積み重ねることで、困難な状況でも前に進んでいる感覚を持てます。
担当業務が組織や顧客にどう役立っているかを考えることも、仕事の意味を確認するきっかけになります。

⑤ 睡眠や運動を意識し、心身の健康を日頃から整えておく

心身の健康を保つことは、ストレスの多い状況に対応するための土台になります。
十分な睡眠、適度な運動、バランスの取れた食生活を心がけ、疲労を過度に蓄積させないことが大切です。趣味や休息の時間を確保し、仕事から心理的に離れる時間をつくることも役立ちます。不調が続く場合はセルフケアだけで解決しようとせず、産業医や医療機関などの専門家に相談することが大切です。

⑥ 困難な経験から、自分の強みや新たな可能性を見つける

困難な出来事を経験した後、自分の考え方や行動を振り返ることで、新たな強みや可能性に気づく場合があります。失敗を無理に前向きに解釈する必要はありませんが、「何がうまくいかなかったのか」「次は何を変えられるか」を整理することは、次の行動に役立ちます。
業務上のミスも、原因や改善策をチームで共有すれば、個人だけでなく組織全体の学びにつなげることができます。

⑦ 目の前の問題だけにとらわれず、長期的な視点で捉える

問題に直面したとき、一つの出来事だけに意識を集中させず、より広い視点から状況を捉えることが大切です。現在の困難が、仕事やキャリア全体のなかでどの程度の影響を持つのかを考えると、必要以上に悲観することを避けられます。
過去に乗り越えた経験や、利用できる支援を思い出すことも有効です。一度その場を離れ、時間を置いて考えることで、別の選択肢が見える場合もあります。

⑧ 避けている問題と向き合い、できる範囲から行動を起こす

困難な問題を放置すると、不安が長引いたり、状況がさらに複雑になったりすることがあります。問題の全体を一度に解決しようとせず、情報を集める、関係者に相談する、期限を決めるなど、実行可能な行動から始めることが大切です。
自分から行動して状況を少しでも動かせると、問題に対処できるという感覚につながります。
ただし、一人で背負わず、必要に応じて周囲の協力を求めましょう。

⑨ 自分の能力を過小評価せず、現実的な自己認識を持つ

自分の能力やこれまでの経験を必要以上に低く評価しないことも、レジリエンスを支える要素です。過去に困難を乗り越えた経験や、身につけてきたスキルを振り返ることで、現在の課題に対応するための手がかりが見つかります。
根拠なく「自分なら何でもできる」と考えるのではなく、得意なことと支援が必要なことを現実的に把握する姿勢が重要です。小さな成功を記録する方法も役立ちます。

⑩ 今後の状況が良くなる可能性を考え、現実的な希望を持つ

将来に対して一定の希望を持つことは、困難な状況で行動を続ける助けになります。ただし、問題が自然に解決すると考えるのではなく、自分が望む状態を具体的にイメージし、そこに近づくための行動を考えることが大切です。最
悪の結果だけを想定せず、複数の可能性を検討すると、考え方に余裕が生まれます。仕事でも、達成可能な短期目標を設定することで、前進している感覚を得ることができます。
 

レジリエンス研修に関する事例として、クイーンズランド工科大学の研究者らは、ブリスベン周辺の地方自治体で働く従業員を対象に、7週間の「Promoting Adult Resilience(PAR)」プログラムを実施しました。

研修終了後には、参加者の対処に関する自己効力感、家族生活への満足度、ワーク・ライフ・バランスなどに改善がみられました。約5か月後の調査では、楽観性、仕事の満足度、仕事への活力などにも差が確認されています。

ただし、この研究は参加者が28人の小規模なパイロット研究であり、同じ職場から無作為に選んだ対照群を使用したものではありません。そのため、レジリエンス研修を受ければ誰にでも同様の効果が得られるとまではいえず、結果は研究条件を踏まえて捉える必要があります。

 

ワークエンゲージメントとレジリエンス

ワークエンゲージメントとは、仕事に対するポジティブで充実した心理状態を指し、「活力」「熱意」「没頭」の3つの要素から成り立ちます。ワークエンゲージメントが高い人は、仕事に意欲的に取り組み、やりがいや誇りを感じている状態にあります。

この状態は、個人のレジリエンスとも関連しています。
レジリエンスが高い人は、仕事上のストレスや困難に直面しても、状況を整理しながら柔軟に対応し、気持ちや行動を立て直せる傾向があります。また、仕事から得られる充実感や達成感は、困難に対応するための心理的な支えとなり、レジリエンスを保つことにもつながります。

職場でレジリエンスを高める取り組みを進めることは、従業員がストレスに適切に対処し、仕事の要求に対応する力を支える一つの方法です。レジリエンスとワークエンゲージメントには正の関連が報告されており、従業員の心身の健康と仕事のパフォーマンスを支えるには、個人への働きかけだけでなく、職場環境や周囲の支援についても、あわせて整備することが重要です。

職場とレジリエンス

職場におけるレジリエンスとは、従業員が困難な状況やストレスに直面した際、対処しながら心身の状態や仕事への取り組みを立て直す力を指します。
レジリエンスは個人の資質だけで決まるものではなく、職場環境も関係します。特に、上司の支援や同僚との協力関係は、困難に対応するための支えとなります。

職場でレジリエンスを高めるには、率直に意見や悩みを伝えられるコミュニケーション環境を整えることが大切です。
従業員がストレスや問題を早めに相談できれば、一人で抱え込むことを防ぎ、必要な支援につながります。また、柔軟な勤務制度や休息を取りやすい仕組みなど、仕事と生活の両立を支える取り組みも、心身の回復を支える要素です。

さらに、研修やスキルアップの機会を設けることで、従業員がストレスへの対処法や問題解決の方法を学び、自分で対応できるという感覚を育てることが期待できます。マネージャーが部下の話を丁寧に聞き、業務を調整しながら適切なフィードバックを行うことも重要です。個人への研修だけでなく、過度な業務負担や人間関係など、ストレスの原因となる職場環境も見直す必要があります。

ストレスチェックとレジリエンス

ストレスチェックは、従業員が自分のストレス状態に気づき、必要なセルフケアや相談につなげるための制度です。メンタルヘルス不調の診断や早期発見を直接の目的とするものではなく、不調を未然に防ぐ一次予防と、職場環境の改善を主な目的としています。

ストレスチェックを受けることで、従業員は仕事の量や質、周囲からの支援、心身の反応などを振り返るきっかけを得られます。結果を見ながら、自分がどのような場面で負担を感じているのかを整理し、休息の取り方や相談先、仕事の進め方を見直すことは、レジリエンスを支える一つの方法です。

人間関係や職場の雰囲気がストレスの原因となっている場合は、本人の対処だけに任せず、上司や人事、産業保健スタッフなどに相談し、業務分担やコミュニケーションの改善を検討する必要があります。本人の努力だけでは解決できない問題もあるため、組織側の対応が欠かせません。

また、個人の結果とは別に、部署や職場単位で結果を集計・分析することで、仕事の負担や周囲の支援など、職場に共通するストレス要因を把握できます。集団分析の結果を、業務量の調整、役割分担の見直し、管理職の支援、相談体制の整備などに生かすことで、働きやすい職場づくりにつなげることができます。

 

ストレスチェッカーとは

「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しています。
また、無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下である「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場でも実施義務化が進むため、早めの準備が大切です。
導入や運用については、ぜひお気軽にご相談ください。

ストレスチェック導入のご相談はこちら

 

まとめ

レジリエンスの構築を怠ることで、従業員がストレスや困難に直面した際に適切に対応できず、職場でのパフォーマンスが大幅に低下するリスクがあります。
また、ストレスチェックを実施しないことで、従業員が抱えるストレスの状態を把握できなくなり、潜在的な問題を見過ごしてしまう可能性が高まります。
また、従業員の健康状態が悪化すれば、企業はその対応に多くのコストを費やすことになります。医療費や労災費用が増加するほか、欠勤や休職による人材のロスが生じ、新たな人材の採用や研修にかかる費用も増加します。さらに、職場のメンタルヘルス問題が表面化すれば、ビジネスチャンスが減少し、企業全体の収益にも悪影響を及ぼすリスクさえあります。
ストレスチェックを行い、レジリエンス構築に積極的に取り組むことは、企業にとって経営的観点から見ても、合理的であると言えるのです。

監修:精神科医・日本医師会認定産業医/近澤 徹

【監修医師】
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役
近澤 徹

オンライン診療システム「Mente Clinic」を自社で開発し、うつ病・メンタル不調の回復に貢献。法人向けのサービスでは産業医として健康経営に携わる。医師・経営者として、主に「Z世代」のメンタルケア・人的資本セミナーや企業講演の依頼も多数実施。

> 近澤 徹| Medi Face 医師起業家

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