
リフレーミングとは、物事の見方や解釈を意図的に変えることで、状況に対する認識や感情を変化させる心理学の手法です。
同じ出来事でも「失敗した」と見るのか、「改善点が見つかった」と捉えるのかで、その後の気持ちや行動は変わります。
つまり、物事を別の視点から捉え直すことで、仕事のストレスや人間関係への向き合い方を整える考え方です。
この記事では、リフレーミングの基本や職場で使える言い換え、注意点、身につける方法を分かりやすく解説します。
監修:山本 久美(株式会社HRデータラボ 公認心理師)
目次
リフレーミングとは
リフレーミングとは、物事の見方や解釈、つまり「フレーム」を意図的に変えることで、状況に対する認識や感情を変化させる心理学の手法です。同じ出来事でも、「失敗」と捉えるか「改善のヒント」と捉えるかで、気持ちや次の行動が変わります。
リフレーミングには、場面を変えて強みを見つける「状況のリフレーミング」と、出来事の意味を捉え直す「意味のリフレーミング」があります。

状況のリフレーミング
状況のリフレーミングとは、短所や問題に見えるものでも、置かれる状況や文脈を変えることで、強みやチャンスとして捉え直す考え方です。性格や能力そのものを無理に変えるのではなく、その人や物事が活きる場所を見つける点に意味があります。
たとえば、細かい点を気にして作業が遅い社員も、正確性が重視される経理・品質管理・法務などでは、大きな強みを発揮できる可能性があります。
意味のリフレーミング
意味のリフレーミングとは、起きた出来事や仕事の意味づけを変え、別の価値として捉え直す考え方です。環境を変えるのではなく、今ある状況の見方を変える点に違いがあります。
たとえば、部下がルーティンワークを「つまらない作業」と感じている場合も、業務のムダや改善点を見つけるリサーチ業務と捉え直せば、主体的に取り組むきっかけになります。
リフレーミングの効果
ビジネスにおいてリフレーミングを活用すると、物事の受け止め方が変わり、認知の歪みや固定観念にとらわれにくくなります。その結果、組織運営や業務改善、個人の行動にも前向きな変化が生まれます。
組織・マネジメントへの効果
欠点に見える性質を強みとして捉え直すことで、適材適所の人員配置につながります。また、失敗を責めるのではなく学びの材料と考えることで、部下が挑戦しやすい職場づくりにも役立ちます。
業務・マーケティングへの効果
「できない理由」や顧客の断り文句を別の角度から見直すことで、新しい提案や改善策を考えやすくなります。固定観念を外すことで、これまで気づけなかった市場や課題も見えるようになります。
個人への効果
苦手な出来事や人間関係も、自分の成長材料として捉え直せるようになります。被害者意識から当事者意識へ切り替わることで、ストレスを抱え込みにくくなり、主体的な行動にもつながります。
リフレーミングの具体例一覧
リフレーミングには、使う相手や場面によっていくつかの種類があります。
自分に使う場合は、失敗や短所を成長の材料として捉え直し、気持ちを立て直すきっかけになります。
苦手な上司や同僚との関わりでは、「合わない人」と決めつけず、相手の価値観や立場を別の角度から理解する助けになります。
また、部下や後輩を指導するときは、ミスや課題を責めるのではなく、学びや次の行動につなげる伝え方として活用できます。
自分に使えるリフレーミング
自分に使えるリフレーミングは、自分自身への声かけやセルフケアに活用しやすい考え方です。仕事や日常でよくある悩みも、見方を少し変えることで、前向きな行動や安心感につなげやすくなります。
自分の「性格・短所」に対するリフレーミング
| 悩み・捉え方 | リフレーミング後 |
|---|---|
| 優柔不断で決められない | 物事を多角的に捉え、リスクを慎重に見極めている。 |
| 飽きっぽくて長続きしない | 好奇心が旺盛で、新しいことに次々と挑戦できるエネルギーがある。 |
| 頑固で人の意見を聞けない | 自分の軸が明確で、一度決めたことをやり抜く意志の強さがある。 |
| 心配性でいつも不安になる | 危機管理能力が高く、事前にしっかり準備できる。 |
| ルーズで計画通りに進められない | 枠にとらわれず、状況の変化に柔軟に対応できる臨機応変さがある。 |
| 人見知りでうまく話せない | 相手の反応をよく見ており、人の話を丁寧に聴く力がある。 |
| 他人の目が気になってしまう | 周囲への配慮ができ、協調性や共感力が高い。 |
| 大雑把でミスが多い | 細かいことにこだわりすぎず、全体像をスピーディーに捉えて行動できる。 |
| 自分に自信が持てない | 現状に満足せず、常に向上心を持って成長しようとしている。 |
| 傷つきやすく打たれ弱い | 感受性が豊かで、他人の痛みや小さな変化に気づける優しさがある。 |
仕事・キャリアの行き詰まりに対するリフレーミング
| 悩み・捉え方 | リフレーミング後 |
|---|---|
| また仕事で失敗してしまった | ダメな方法を1つ発見した。成功へ一歩近づくための貴重なデータを得た。 |
| 周りの同僚と比べて出遅れている | 他人は他人。自分だけのユニークなキャリアや強みを育てる時間がある。 |
| プレッシャーで押しつぶされそう | これを乗り越えれば、自分の器が一回り大きくなるステージにいる。 |
| やりたくない雑務ばかり任される | 組織の土台を学びつつ、業務効率化や仕組み化を試せる実験の場である。 |
| 自分の意見が通らなかった | 否定されたのは意見であって自分ではない。別の切り口を考えるチャンス。 |
| 完璧にこなせなくて落ち込む | 完璧を目指した証拠。まずは6割で形にできた自分を評価する。 |
| 目標が高すぎて達成できる気がしない | 細かく分解すれば、今すぐできることが見えてくる。 |
| 上司から厳しい指摘を受けた | 感情は横に置き、期待されている改善ポイントだけを回収する。 |
日常のストレス・感情に対するリフレーミング
| 悩み・捉え方 | リフレーミング後 |
|---|---|
| 今日も何もできない一日だった | 心身が休息を求めていた。エネルギーをしっかり充電できた一日。 |
| あの人の一言にイライラする | 自分が大切にしている価値観を再確認させてくれた。 |
| やりたいことがあるのに時間がない | 制限があるからこそ、本当に大切なことだけに集中するチャンス。 |
| 毎日同じことの繰り返しで退屈だ | トラブルがなく、平和で安定した基盤が作れている状態。 |
| 想定外のトラブルが起きてパニック | 予定調和の毎日にスパイスが加わった。後で面白い経験談になる。 |
| モチベーションが全く上がらない | 脳や体が休めと言っている。今は無理せず、省エネモードで過ごす時。 |
苦手な上司や同僚との関わりで使えるリフレーミング
苦手な上司や同僚に対するリフレーミングは、相手の行動や存在そのものの解釈を変え、感情的な消耗を減らすために役立ちます。相手を無理に変えようとするのではなく、自分の受け止め方や関わり方を少し変えることで、必要以上に振り回されにくくなります。
高圧的・厳しい上司や同僚へのリフレーミング
| 悩み・捉え方 | リフレーミング後 |
|---|---|
| いつも高圧的で言い方がキツい | 言い方はよくないが、言っている内容の核心だけを抜き取れば、業務のヒントになる。 |
| 細かい重箱の隅をつつくように怒る | 自分が気づけないリスクを事前に潰してくれる、無料の品質チェック役である。 |
| 自分のやり方を押し付けてきて、指示が細かい | こだわりが強い人。その通りに進めておけば、失敗したときに責任の所在を明確にしやすい。 |
| いつも不機嫌そうで話しかけにくい | 自分のせいではなく、相手のコンディションの問題。今は不機嫌モードという環境要因があるだけ。 |
| 感情的に声を荒らげて怒る | 感情のコントロールが苦手な人。相手の感情ではなく、必要な情報だけを切り分けて受け取る。 |
| こちらの意見を一切受け入れず、否定から入る | 防衛本能が強い人。まずは相手の立場に一定の理解を示してから、本題に入ればよい。 |
| マイクロマネジメントが激しい | 心配性な人。進捗を言われる前に先回りして報告すれば、信頼を得るチャンスになる。 |
無責任な司や同僚へのリフレーミング
| 悩み・捉え方 | リフレーミング後 |
|---|---|
| 仕事を丸投げしてきて無責任だ | 自分を信頼して任せているとも捉えられる。自分の裁量でプロジェクトを動かせる機会になる。 |
| 優柔不断で、大事な決断をいつも先延ばしにする | 慎重すぎる人。こちらでA案・B案のメリットを整理し、選ぶだけの状態を作る練習になる。 |
| 仕事のスピードが遅く、納期を守らない | ペース配分が苦手な人。最初から本来の納期より早めの期限を伝えておく訓練になる。 |
| いつもサボっていて、楽をすることばかり考えている | どうすれば最小限の労力で業務を回せるか、効率化のヒントを持っている人でもある。 |
| 指示がコロコロ変わり、一貫性がない | 状況の変化に敏感すぎる人。決定事項をメールやチャットで残し、言質を取る習慣が身につく。 |
| ミスをしても言い訳ばかりで謝らない | プライドが高い人。非を認めさせることに力を使わず、原因と対策だけに集中する。 |
| 当事者意識が低く、他人事のように仕事をしている | 感情移入しすぎていない人。ドライで客観的な意見を求める相手として使える。 |
マウンティング・自己中心・愚痴が多い上司や同僚へのリフレーミング
| 悩み・捉え方 | リフレーミング後 |
|---|---|
| 自慢話やマウンティングばかりしてくる | 承認欲求が強い人。適度に認める言葉を返せば、機嫌よく動いてくれる。 |
| 自分の手柄を横取りする | 必死な人。次からは手柄の所在が見えるように、メールのCcや共有範囲を工夫して仕事を進める。 |
| プライベートなことにまで踏み込んでくる | 距離感が近すぎる人。適当に受け流すスルー力を鍛える練習台になる。 |
| お気に入りの部下だけを贔屓する | わかりやすい人。評価基準に感情が入ると把握し、必要以上に逆らわず、損をしない距離感を取る。 |
| 自分の非を認めず、他人のせいにしようとする | 自分を守るのに必死な人。巻き込まれないよう、自分の仕事の境界線を明確にする防衛力を磨く。 |
話が通じない・価値観が合わない上司や同僚へのリフレーミング
| 悩み・捉え方 | リフレーミング後 |
|---|---|
| 何を考えているかわからず、不気味だ | ポーカーフェイスな人。感情ではなく、ロジックだけで交渉すれば通じる相手と捉える。 |
| ジェネレーションギャップが大きすぎる | 別の文化圏の人。異文化コミュニケーションの研修だと思って、相手の常識を観察する。 |
| 説明が下手で、何を言いたいのかわからない | 要約が苦手な人。こちらが「つまり〇〇ということですか」と整理することで、要約力を鍛えられる。 |
| 正論ばかりを振りかざして、現場の気持ちを汲まない | ロジック重視の人。こちらも感情論を避け、データと数字で伝えるスキルを磨くチャンスになる。 |
| お節介で、頼んでもいないアドバイスを連発してくる | 世話焼きな人。味方にすれば、困ったときに助けてくれる可能性がある。 |
苦手な人と働く環境そのものへのリフレーミング
| 悩み・捉え方 | リフレーミング後 |
|---|---|
| この人と毎日顔を合わせるのが本当に苦痛だ | 給料の一部。この人と関わるストレス代も、毎月の基本給に含まれていると割り切る。 |
| なぜこの人が自分の上司や同僚なのかと理不尽に思う | 反面教師の最高峰。自分はこういう人にならない、という教科書として活用する。 |
| 職場の人間関係のせいで、仕事に集中できない | 課題の分離が必要な状態。仕事の成果と人間関係を切り離し、自分のタスクに集中するゲームと捉える。 |
| 相手を変えようとしても、全く変わってくれない | 他人は変えられない。相手の取扱説明書を更新し、自分の関わり方を変えるタイミングと捉える。 |
| この苦手な関係性は一生続く気がして絶望する | 組織は流動的。異動、転職、退職などで環境は変わるため、今だけの期間限定の辛抱と捉える。 |
部下や後輩を指導するときに使えるリフレーミング
部下や後輩を指導・育成するときのリフレーミングは、本人の欠点をそのまま否定するのではなく、「どうすれば強みとして仕事に活かせるか」を伝えるフィードバックです。課題を指摘するだけで終わらせず、本人のよい面を認めたうえで、次の行動につなげる声かけとして活用できます。
行動・スピードに関するリフレーミング
| 課題・気になる行動 | リフレーミング後 | 声かけ例 |
|---|---|---|
| 慎重すぎて仕事が遅い、手が遅い | 丁寧でミスが少ない。 | いつも確実でクオリティが高いね。次はスピードを上げるために、どこを簡略化できるか一緒に考えよう。 |
| 大雑把でミスや確認漏れが多い | 行動力とスピード感がある。 | 初動が早くて助かるよ。そのスピードを活かすために、提出前にこの3点だけチェックする仕組みを作ろう。 |
| 指示されるまで動かない、受動的 | 指示を忠実に守る、規律性がある。 | 言われたことをきっちりこなせる安定感があるね。次は「自分ならどうするか」も一言添えてみて。 |
| 焦りやすく、パニックになりがち | 当事者意識が高く、真剣に取り組んでいる。 | それだけ責任感を持ってやってくれている証拠だね。まずは一つずつ整理するから、落ち着いて進めよう。 |
| すぐ諦める、粘り強さに欠ける | 切り替えが早く、執着しない。 | 見切りの早さは立派な武器だよ。次へ行く前に、今回の振り返りだけ1分で終わらせておこう。 |
思考・マインドに関するリフレーミング
| 課題・気になる行動 | リフレーミング後 | 声かけ例 |
|---|---|---|
| 頑固で、アドバイスをなかなか聞き入れない | 自分の軸がある、信念が強い。 | 自分のこだわりを形にしたい熱意は素晴らしい。そこに他者の視点を1つ足すと、もっと良くなるよ。 |
| 優柔不断で、自分で決断できない | 多角的に物事を見られる、リスク管理ができる。 | いろんな可能性を想定できているね。今回はリスクの低いA案で、まずは進めてみよう。 |
| 心配性で、ネガティブなことばかり言う | 危機管理能力が高い、慎重である。 | 発生しうるリスクを先に見つけてくれて助かる。じゃあ、それが起きたときの対策も一緒に考えよう。 |
| 自信がなさそうで、声や態度がオドオドしている | 謙虚で、伸び代や向上心がある。 | 現状に満足せず、真摯に向き合っている証拠だよ。できている部分もたくさんあるから安心していこう。 |
| プライドが高く、自分の非を認めない | 仕事に対して高いプライドや基準を持っている。 | 成果にこだわりたい気持ちは分かるよ。基準が高いからこそ、プロセスでのミスは早く修正した方が得だよ。 |
人間関係・コミュニケーションに関するリフレーミング
| 課題・気になる行動 | リフレーミング後 | 声かけ例 |
|---|---|---|
| 自分の意見を主張せず、周りに流されやすい | 協調性が高く、チームの和を大事にできる。 | 全体のバランスを意識してくれてありがとう。今の話、個人としてはどう感じた? |
| おしゃべりが多く、仕事の手が止まりがち | ムードメーカーで、コミュニケーション能力が高い。 | チームの雰囲気を明るくしてくれるね。その発信力を、次のミーティングのファシリテートで活かしてほしい。 |
| 人見知りで、報連相が遅い | 相手の状況を察する配慮ができる。 | 忙しそうだからと気を使ってくれたんだね。でも、バッドニュースほど1秒でも早く知りたいから遠慮なく言ってね。 |
| 自己主張が強く、周りと衝突しやすい | リーダーシップがある、自分の意見が明確である。 | エネルギーがあって頼もしいよ。周りを巻き込むために、相手の意見も一度受け止めるスタンスを意識してみよう。 |
| お節介で、他人の仕事に首を突っ込みすぎる | 視野が広く、周囲へのサポート精神がある。 | 周りをよく見て助けようとする姿勢は素敵だね。まずは自分のタスクを完璧に終わらせると、さらに信頼されるよ。 |
ポテンシャル・成長プロセスに関するリフレーミング
| 課題・気になる行動 | リフレーミング後 | 声かけ例 |
|---|---|---|
| 質問が多く、自分で考えようとしない | 自己流で進めず、確認を徹底している。 | 確認を怠らないのは良いことだね。次は「私は〇〇だと思いますがどうですか?」という形で聞いてみて。 |
| 同じミスを繰り返してしまう | 既存のやり方が本人に合っていない、仕組みの改善期である。 | 注意力の問題だけではなく、ミスが起きやすい手順になっているのかも。チェックリストを一緒に作ろう。 |
| ルーティンワークを嫌がり、すぐ飽きる | 効率化への意欲がある、新しいことに挑戦したい。 | 同じ作業はつまらないよね。じゃあ、この業務をどう自動化・効率化できるか、改善案を出してみてくれる? |
| 型破りで、マニュアル通りにやらない | 独創性がある、新しい視点を持っている。 | 面白いアプローチだね。ただ、基本の型をマスターした上で崩した方が、もっと大きな成果が出るよ。 |
| 経験が浅く、戦力として物足りない | 先入観がなく、純粋に吸収できる状態である。 | 業界の常識に染まっていない今だからこそ、気づける違和感やアイデアがある。何でも発信してね。 |
リフレーミングを使うときの注意点
リフレーミングは、物事の見方を変えるうえで役立ちますが、無理に前向きに考えることではありません。
つらい気持ちがあるのに「よい経験だった」と決めつけると、かえって心の負担が大きくなる場合があります。また、相手の悩みに対して安易に「考え方次第」と返すと、苦しさを軽く扱われたように受け取られることもあります。
事実や問題点を無視せず、現実を受け止めたうえで、別の見方を探すことが大切です。
無理に前向きに考えない
リフレーミングを使うときは、無理に前向きに考えようとしないことが大切です。失敗や不満、つらさがあるのに「成長のチャンスだから落ち込んではいけない」と押し込めると、かえって心の負担が大きくなります。
まずは「悔しい」「しんどい」といった感情や事実を受け止め、そのあとで別の見方を探す流れが自然です。部下に使う場合も同じで、最初に大変さを認めたうえで、次に活かせる視点を伝えることが重要です。
事実を無視しない
リフレーミングを使うときは、事実を無視しないことが大切です。
リフレーミングは、都合よく現実を塗り替える考え方ではありません。基本は、起きている事実はそのまま受け止め、その事実に対する解釈や見方だけを変えることです。
たとえば、売上目標が50%未達だった場合、「数字だけがすべてではない」で片づけてしまうと、解決すべき課題から目をそらすことになります。
一方で、「今の営業手法が通用しなかったという明確なデータが得られた」と捉え直せば、営業戦略を見直すきっかけになります。
ビジネスでは、事実を直視しなければ改善策も見えてきません。厳しい現実をなかったことにするのではなく、次の行動につなげるために解釈を変えることが、正しいリフレーミングです。
相手の悩みを軽く扱わない
リフレーミングを他者に使うときは、相手の悩みを軽く扱わないことが大切です。よかれと思って「見方を変えればチャンスだよ」と伝えても、相手が深く悩んでいる心理状態であれば「自分の苦しさを分かってもらえなかった」と受け取られることがあります。
特にビジネスシーンでは、部下がプレッシャーや不安を訴えているときに、すぐ成長機会として捉え直そうとすると、励ましではなくポジティブの押し付けになってしまいます。
まずは相手の感情を受け止める
相手がつらさや不安を話しているときは、すぐに助言やリフレーミングをしないことが重要です。「それは大変だったね」「悩むのも無理はないよ」と、まずは感情をそのまま受け止めます。
前を向くサインを待つ
心が疲れているときは、別の見方をする余裕がありません。相手が「これからどうすればいいと思うか」と問いかけたタイミングで、初めて視点を変える提案をするようにします。
選択肢としてそっと伝える
「こう考えるべき」と押し付けるのではなく、「こういう見方もできるかもしれない」と手渡す姿勢が大切です。リフレーミングは、相手の悩みに土足で踏み込むものではなく、隣に座って一緒に別の視点を探すためのコミュニケーションです。
リフレーミングを身につける方法
リフレーミングを身につけるには、まず一つの出来事に対して別の見方を考える練習を行います。
たとえば、失敗を「自分はダメだ」と捉えるだけでなく、「改善点が見えた」「次に同じミスを防げる」「周囲に相談するきっかけになった」と複数の解釈を出してみます。
別の見方を3つ考える
リフレーミングを身につけるには、1つの出来事に対して、別の見方を3つ考える練習が有効です。
人は何か嫌なことが起きると、つい「自分はダメだ」「もう終わりだ」と、いつもの思考のクセで判断しがちです。しかし、あえて複数の解釈を出すことで、「この見方だけが正解ではない」と気づくことができます。たとえば、プレゼンで失敗した場合も、単なる失敗ではなく、次回に向けた改善点が見えた経験、周囲に相談しやすくなるきっかけ、将来語れる挫折のエピソードとして捉え直せます。
モヤッとしたら書き出す
頭の中だけで考えると感情に引っ張られやすいため、まずは起きた事実を書き出します。そのうえで、別の見方を3つ並べると、状況を少し客観的に整理できます。
ゲーム感覚で考える
最初からきれいな答えを出そうとしなくても大丈夫です。「別の人ならどう見るか」「映画のワンシーンならどう解釈するか」など、少し大喜利のように考えると視点が広がります。
今の自分が動ける見方を選ぶ
3つ出した解釈の中から、事実を無視せず、無理なく受け入れられるものを選びます。リフレーミングは性格ではなく思考のスキルなので、日々の小さな出来事で練習するほど自然に使えるようになります。
第三者の視点で考える
悩みやトラブルの渦中にいると、どうしても感情や思い込みに引っ張られ、「もう無理だ」「自分が悪い」といった一面的な見方になってしまうことがあります。そんな時は、第三者の視点を借りて少し距離を置いて状況を見直すことが役立ちます。
憧れのビジネスリーダーや尊敬する人の視点で考える
尊敬する上司や経営者なら、この状況をどう捉えるかを想像します。目の前の失敗やピンチを、大きな流れの中で見直し、次に何をすべきか考えやすくなります。
客観的なデータ・アナリストの視点で考える
感情をいったん横に置き、事実や数字だけを見ます。怒りや自己嫌悪に飲み込まれず、「何が起きたのか」「次にどんな対策が必要か」を冷静に整理できます。
大切な親友の視点で考える
もし親友が同じ悩みを抱えていたら、どんな言葉をかけるかを考えます。自分を責めすぎず、悩みを軽く扱わない優しい見方を持てるようになります。
未来の自分の視点で考える
10年後の自分なら、今の経験をどう振り返るかを想像します。目の前の苦しさを、人生やキャリアの中の通過点として捉え直しやすくなります。第三者の視点は、心のカメラを切り替えるようなものです。自分の視点で行き詰まったときほど、別の角度から状況を見る習慣がリフレーミングの力を育てます。
使うタイミングを見極める
リフレーミングを身につけるには、「別の見方を考える力」だけでなく、「いつ使うか」を見極めることも大切です。タイミングを間違えると、現実逃避になったり、相手の悩みを軽く扱ったりする可能性があります。リフレーミングは、ネガティブな感情や思考にとらわれ、前に進めなくなったときに使うと効果的です。
変えられない過去を悔やみ続けている時
「あのとき、ああしていれば」と考え続けても、過去の事実は変えられません。この場合は、失敗を責め続けるのではなく、「次の仕事で同じミスを防ぐ材料にする」と捉え直し、未来の行動につなげます。
他人の言動に感情が振り回されている時
苦手な上司や同僚の態度に怒りが収まらない時には、相手を変えようとするより、「この人とはどう距離を取ればよいか」「どう対応すれば消耗を減らせるか」と、自分の行動に焦点を戻します。
できない理由ばかり浮かぶ時
予算がない、時間がない、人手が足りないなど、制約ばかりに目が向くと行動が止まりやすくなります。そのときは、「制約があるからこそ、何を優先すべきかが見える」と捉え直すことで、次の一手を考えやすくなります。
ただし、心身が限界に近いときや、明らかなパワハラ・長時間労働がある場合は、無理に前向きに捉える必要はありません。また、失敗直後で感情が強く揺れているときも、まずは悔しさや怒りを受け止めることが先です。リフレーミングは、感情を無視するためではなく、落ち着いたあとに前へ進むための心のギアチェンジとして使うことが大切です。
監修:山本 久美(株式会社HRデータラボ 公認心理師)
大手技術者派遣グループの人事部門でマネジメントに携わる中、社内のメンタルヘルス体制の構築をはじめ復職支援やセクハラ相談窓口としての実務を永年経験。
現在は公認心理師として、ストレスチェックのコンサルタントを中心に、働く人を対象とした対面・Webやメールなどによるカウンセリングを行っている。産業保健領域が専門。
まとめ
ストレスチェックは、従業員本人のセルフケアを進めることや、職場環境の改善に役立てることが重視されています。部署ごとの集団分析を行うことで、高ストレス者が多い部署や、仕事の量・質の負担、周囲からの支援の低さなどを把握しやすくなります。
リフレーミングの観点で見ると、ストレスチェックの結果は「個人が弱い」「我慢が足りない」と判断するためのものではありません。むしろ、「この部署では業務量が偏っているのではないか」「相談しにくい雰囲気があるのではないか」と、職場の見方を変えるきっかけになります。
個人にとっても、自分がどの場面でストレスを感じやすいのかを知ることで、「自分はダメだ」と責めるのではなく、「今は負荷が高い状態にある」「相談や休息が必要なサインかもしれない」と捉え直しやすくなります。つまり、ストレスチェックはリフレーミングを無理に促すものではなく、自分や職場の状態を客観的に見直すための材料として活用できます。
ストレスチェックは、従業員のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした制度です。現在は従業員50人以上の事業場で義務化されていますが、今後は50人未満の企業にも対象が拡大される予定です。
ストレスチェッカーは、官公庁・上場企業・医療機関などで採用されている国内最大級のストレスチェックツールです。自動リマインド、面接指導者管理、進捗確認機能を標準搭載し、2025年5月からは無料プランでも「プレゼンティーイズム(生産性低下)」の測定に対応しております。
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