メンタルヘルスマネジメント|8つのポイント

心の病を発症すると、作業効率が低下したり長期休業が必要になったりすることがあります。

平成29年(2017年)の「労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業又は退職した労働者の割合は0.4%で、退職した労働者の割合は、0.3%となっています。特に「1,000人以上」の事業所の休業者は0.8%と、最も高い割合になっています。
 

▶ 厚生労働省|「平成29年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況」

長期休業者が出れば、周囲の負担は増え職場全体の生産性は低下します。
メンタルヘルスマネジメントは個人の問題ではなく、組織全体で取り組む問題なのです。

メンタルヘルスマネジメントとは

メンタルヘルスマネジメントとは、労働者がメンタルヘルス不調に陥らないよう、職場環境の改善やメンタルヘルス対策を行うなど、心の健康面における取り組みを推進することをいいます。

具体的には、メンタルヘルスケアの意義を理解し、ストレスチェックを活用して組織のメンタルヘルス状況を把握したり、職場環境の状況を測定して必要な措置を講じたり、教育研修を通じてセルフケア・ラインケア・ハラスメントなどの知識を深めたりする必要があります。

場合によってはメンタルヘルス問題で会社の責任が追及され、訴訟に発展したり労災認定されたりするリスクについても理解を深めておく必要があります。

(1)メンタルヘルスケアの重要性を認識する

職場のメンタルヘルスが社会問題として注目される一方、依然として「メンタルヘルスは個人の問題だ」「その人の心が弱いだけだ」という声が、根強く残っているのも事実です。

しかし、職場でメンタルヘルス不調を起こす要因は、仕事の量や人間関係など職場の環境にあることが多く、決して個人の問題だけではありません。にもかかわらず必要な措置を講じることなく問題を放置すれば、ますます職場の環境は悪化します。本人の作業効率が落ちるだけではなく、周囲の労働者の負担も増加し、職場全体の生産性に影響が出ることになりかねません。
強いストレスなどによってメンタルヘルス不調を発症すると、その個人の集中力、判断力、生産性が低下するだけではなく、その業務を分担する他の従業員の負荷も高まるなど、組織全体に影響を及ぼすリスクが生じるからです。

また、場合によっては訴訟に発展する可能性もあります。

企業は、リスクマネジメントの観点からもメンタルヘルスケアを重大な問題ととらえ、労働者や社会に対する責任として、積極的にメンタルヘルスマネジメントを推進する姿勢を示すことが求められています。

(2)メンタルヘルスケアの基礎知識を知る

メンタルヘルスマネジメントを推進するうえで欠かせないのが、メンタルヘルスケアの基礎知識です。

厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(メンタルヘルスケア指針)によると、労働者が個人でストレス要因に対処するのは難しいことから、まずは事業者がメンタルヘルスケアの積極的な推進を表明し、衛生委員会で調査・審議し、「心の健康づくり計画」を策定する必要があるとしています。

また、計画を実施する際には、一次予防(メンタルヘルス不調の未然防止)、二次予防(メンタルヘルス不調の早期発見・対応)、三次予防(休職・復職支援など不調者への対応や再発防止)が行われることが重要であるとしています。
計画を実施する際には、以下の4つのケアを継続的に推進する必要があるとしています。

①セルフケア
労働者自身によるメンタルヘルスの理解、ストレスチェック制度を活用したストレスへの気づき、対処、自発的な相談②ラインケア
管理監督者による職場環境の把握、改善、労働者からの相談対応、職場復帰支援

③事業場内産業保健スタッフによるケア
セルフケアやラインケアが効果的に実施されるための支援(研修計画の立案など)

④事業場外資源によるケア
事業場外資源とのネットワークづくりなど

(3)会社責任(労災や訴訟リスク)を理解する

昨今、精神障害等による労災認定件数は、増加傾向にあります。

▶ 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」

労災申請を受け付ける労働基準監督署には、取り調べや逮捕もできる機能があります。過重労働やハラスメントを原因とするメンタルヘルス不調による労災申請がされれば、労働基準監督署の立ち入り調査を受け、人事担当者はもちろん経営幹部も対応に追われる可能性があります。さらに訴訟に発展すれば、それによる時間と労力の負担は計り知れません。

ましてやメンタルヘルス疾患を発症した際の損害賠償額は、年々増額傾向にあります。万が一自殺など重大な結果を招いてしまった場合には、その損害賠償額は極めて高額になる可能性があります。

従業員のメンタルヘルス不調によって労災申請されたり、訴訟に発展したりすることは、事業者にとってリスクであると認識することが大切です。

(4)ストレスチェックを活用する

ストレスチェック制度とは、労働者に選択式の質問に回答してもらい、その結果をもとに自身のストレス状況へ気づきを得るための検査です。
この制度は平成27年(2015年)にスタートし、50人以上の事業場に義務づけられています。

労働者が自分自身のストレス状態に気づくことで、メンタルヘルス不調を防止するとともに、集計結果を分析し、職場の改善につなげることを目的としています。

結果を分析し各職場や組織に合った対策を考えることは、単に職場のストレスを軽減させるだけではなく、「会社が本気で従業員にとって働きやすい環境をつくろうと努力している」という姿勢を従業員に示すことにもつながります。

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(5)セルフケア-ストレスへの気づきと対処

メンタルヘルス不調を予防するための第一歩は、「自分のストレス状態に気づくこと」です。メンタルヘルス不調は心理的負荷が関係することから、周囲が気づきにくい側面があります。そこで、自分自身がまずストレスに気づくことができれば、早期に適切な対応をとることができるというわけです。

心身の不調を感じたりストレスチェックの結果で高ストレス者と判定されたりしたら、すぐに問題を解決に走るよりも、まずは体調の回復を優先することが重要です。
十分な休息・睡眠はもちろん、趣味や適度な運動、マインドフルネス(瞑想)もストレス軽減に効果があることが分かっています。

▶ セルフケア|はじめの一歩は「ストレスへの気づき」

ただし、メンタルヘルス不調はひとりでは対処が難しいことも多いので、自発的に相談することも大切です。メンタルヘルスマネジメントにおいては、労働者が問題をひとりで抱え込まず、友人や家族、職場の同僚や上司、産業医などに協力を求めることができる体制を整備する必要があります。

具体的には、労働者に研修などを通じてセルフケアの重要性や対処法、相談することの大切さについて積極的に教育します。

(6)ラインケア-管理監督者の役割

厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」によれば、管理監督者は、部下の状況や具体的なストレス要因を把握し、改善できる立場にあることから、ラインケア(部下を積極的にサポートする)を行う必要があるとしています。

管理監督者に求められているのは、以下のとおりです。

①メンタルヘルスに対する自社の方針を理解する。
②職場環境等の改善を進める。
③部下からの相談に対応する。
④職場復帰支援の方法を理解する。
⑤産業保健スタッフや事業場外資源との連携の方法を知る。
⑥セルフケアの方法、個人情報の保護等を理解する。

管理監督者は、仕事配分の見直しや職場におけるコミュニケーションの活性化にも配慮することが大切です。
コロナ禍で難しい状況ではありますが、社内報や情報システムを使ったコミュニケーションの活性化を図ることで、部下からの意見や要望を上手に吸い上げるように配慮します。

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(7)社内外資源との連携

事業場内資源
社内資源のうち事業場内の産業医、保健師、衛生管理者を「事業場内産業保健スタッフ」といいます。メンタルヘルスマネジメントを推進するうえでは、人事労務管理者や管理監督者が、この事業場内産業保健スタッフと連携し活用することが大切なポイントです。

産業医:
1000人以上の労働者がいる事業場や、有害な業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場では、専属産業医を選任する必要があります。また50人以上の労働者がいる事業場では、嘱託の産業医を選任することになっています。
産業医は健康診断や面接指導を行い、産業保健のプロとして労働者の状態を評価し、健康を維持できるようアドバイスを行うほか、職場改善の提案なども行います。

保健師・看護師:
保健指導、健康の相談・教育、疾病予防をすることが主な役割です。
メンタルヘルス不調の疑いがある人を早期発見したり、メンタルヘルス不調者のフォローアップを行ったりするほか、労働者や管理監督者の相談窓口となり必要に応じて産業医との面談につなげるなどの役割も担います。

人事労務管理スタッフ:
人事労務管理スタッフは、産業医と連携し労働者のストレスの軽減や時間外労働の制限など、人事労務管理上の適切な配慮を行います。

事業場外資源のうち行政機関等
厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、メンタルヘルスケアに関する専門的な知識を有する事業場外資源を活用することが有効とされています。

以下に事業場外資源の代表的なものをご紹介します。

中央労働災害防止協会:
労働災害防止団体法に基づいて設立された期間です。
心の健康づくり計画の支援、教育研修などを有償で行います。

精神保健福祉センター:
精神保健、精神障害福祉に置いて、知識の普及や調査研究を実施し、相談窓口にもなります。

勤労者メンタルヘルスセンター:
労災病院に設置される、メンタルヘルス専門センターです。

事業場外資源のうち民間の機関
メンタルヘルスに関して十分なトレーニングを受けたカウンセラーや臨床心理士、保健師、公認心理師などによる面談や電話相談も有効とされています。

外部EAP機関:
外部EAP機関は、事業所に対しては組織の生産性に関わる問題を見つけて支援し、労働者に対しては仕事のパフォーマンスに影響を与える個人的な問題(健康、家庭問題、人間関係、その他のストレス要因など)を見つけて支援します。
外部EAP機関と連携しメンタルヘルスマネジメントに関する業務を委託することで、さらに専門性の高いサービスを活用することができます。

「ストレスチェッカー」では、ストレスチェックデータに加え、業績評価や残業時間等のHRデータをクロス解析し、総合的にHRデータを使った組織分析が可能です。またさまざまなテーマでセミナーも実施しております。

(8)職場復帰支援の方法

メンタルヘルス不調で休職していた従業員の職場復帰も、メンタルヘルスマネジメントの重要な事項です。
メンタルヘルス疾患からの復職は、時間がかかるケースもあります。このタイミングを見誤り早く復職させてしまうと再発のリスクが高まります。

まずは休職中の従業員の不安感を軽減できるよう、十分な情報提供を行います。管理監督者の理解と支援は、スムーズな復職に大きな影響を与えます。
さらに人事労務管理担当者や産業保健スタッフ、主治医と連携し、復職しようとする従業員の心理的支援や職場環境改善につなげます。

職場復帰にあたっては、事前に職場復帰支援プログラム(休職の開始から通常業務までの復帰の流れ)を明確にしておくことが必要です。もちろん、職場復帰は個々の状況に応じて臨機応変に対応することが求められますが、休職する従業員には、これらの体制が完備されていることを周知することで、安心感を与えることができます。

まとめ

以上、メンタルヘルスマネジメントを推進するうえで知っておきたい8つのポイントについてご紹介しました。

米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の「健康職場モデル」によれば、従業員のエンゲージメントと組織の生産性は両立するとされています。さらにこの2つは相互作用があり、お互いに強化することができると言われています。

▶ 厚生労働省「ストレスに気づこう」

ストレスチェック制度が義務化されたことをきっかけとしてメンタルヘルスマネジメントの推進に力を入れ、生産性の高い職場環境の構築につなげたいものです。

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    【監修】
    公認心理師 山本 久美(株式会社HRデ―タラボ)

    大手技術者派遣グループの人事部門でマネジメントに携わるなかで、職場のメンタルヘルス体制の構築をはじめ復職支援やセクハラ相談窓口としての実務を永年経験。
    現在は公認心理師として、ストレスチェックのコンサルタントを中心に、働く人を対象とした対面・Webやメールなどによるカウンセリングを行っている。産業保健領域が専門。

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