
統合失調症は、幻覚や妄想などの陽性症状、感情の平板化や意欲低下といった陰性症状、集中力・記憶力の低下などの認知機能障害がみられる精神疾患です。症状や経過には個人差があり、再発を繰り返したり、長期にわたって生活へ影響したりする場合もあります。
治療では、抗精神病薬による薬物療法を基本に、心理教育、認知行動療法、生活技能訓練、就労・生活支援などの心理社会的アプローチを、本人の状態に応じて組み合わせます。
早期に適切な治療と支援につながり、治療を継続することで、症状の安定や生活機能の回復を目指すことができます。
監修医師:近澤 徹
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役
目次
統合失調症とは
統合失調症は、思考や感情、認知、行動などに影響を及ぼす精神疾患のひとつで、生涯に発症する人は100人に1人弱とされています。10代後半から30代ごろまでに発症することが多く、現実とそうでないものとの区別がつきにくくなることなどから、日常生活や社会生活にさまざまな困難が生じます。
主な症状は「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」などに分けられ、具体的には幻聴や妄想、感情表現の乏しさや意欲の低下、集中力・記憶力の低下などが挙げられます。症状の現れ方や程度には個人差があります。
発症の原因は一つに特定されておらず、遺伝的な要因に加え、ストレスや生活環境、脳内の神経伝達物質の働きなど、複数の要因が複雑に関係していると考えられています。
治療では、抗精神病薬による薬物療法を基本に、心理療法やリハビリテーション、家族支援、生活支援などを、本人の状態に合わせて組み合わせます。適切な治療を継続することで症状が長期間安定する人もおり、必要な支援や周囲の理解を得ながら、就労や社会参加を目指すことも可能です。
統合失調症の陽性症状
統合失調症の「陽性症状」の代表的なものとして、「幻聴」と「妄想」が挙げられます。
幻聴は、実際には存在しない声が聞こえる症状で、命令的・批判的な内容を伴うこともあります。本人には現実の声と同じように感じられるため、不安や恐怖につながる場合があります。
妄想は、事実とは異なる内容を強く確信する症状で、「誰かに監視されている」「テレビが自分に話しかけている」といった被害妄想や関係妄想がみられます。
陽性症状は周囲から理解されにくく、本人の言動が誤って受け止められることで、偏見につながることも問題のひとつです。
抗精神病薬による治療で症状の軽減が期待できますが、効果には個人差があります。
医師と相談しながら治療を継続することが大切です。症状が強い時期には、幻聴や妄想を頭ごなしに否定したり、無理に説得したりせず、不安に配慮して安心できる環境を整えることが安定につながります。
統合失調症の陰性症状
統合失調症の「陰性症状」とは、本来みられる感情表現や意欲、社会的なやり取りなどが乏しくなる状態を指します。
「意欲の低下」「感情の平板化」「会話や表情の乏しさ」「人との関わりが減る」といった症状が挙げられます。こうした陰性症状は、前述した陽性症状が落ち着いた後にも続く場合があり、生活に影響することもあります。
朝起きて着替えたり食事をとったりする行動にも強い負担を感じ、外出や就労などの社会活動が難しくなることがあります。また、表情の変化が少なくなったり、会話が単調になったりするため、周囲から「無表情に見える」「物事に無関心なのではないか」と誤解されることもあります。しかし、本人の性格や怠けによるものではなく、病気の症状として理解することが大切です。
統合失調症の認知機能障害
統合失調症では、記憶力や注意力、物事を順序立てて進める力などの「認知機能」が低下することがあります。
たとえば、会話の内容を覚えておけない、集中が続かない、考えを整理しにくいといった状態です。こうした症状は外見から分かりにくく、仕事の段取りを組めなかったり、会話の流れについていけなかったりするため、対人関係や日常生活に影響することもあります。
特に就労場面では、作業の正確さやスピード、新しい手順を覚えることなどにも影響が出る場合があります。そのため、本人が「自分は何もできない」と自信を失ったり、周囲から努力不足と誤解されたりすることもあります。
統合失調症のその他の症状
統合失調症では、陽性症状・陰性症状・認知機能障害のほかにも、不眠や昼夜逆転などの睡眠の乱れ、身体の違和感や不調があらわれることがあります。また、ストレスが病状の経過に影響し、生活環境の変化や人間関係の負担などをきっかけに、症状が強まることもあります。
症状が特に強い時期には、言動にまとまりがなくなったり、判断や意思決定が難しくなったり、感情を周囲にうまく伝えられなくなったりすることがあります。現れ方や程度には大きな個人差があります。
統合失調症の人を雇用するときに求められる配慮
統合失調症のある方を雇用する場合は、症状の波や認知機能の状態を踏まえ、本人と話し合いながら必要かつ適切な配慮を考えることが重要です。たとえば、急な予定変更に負担を感じる場合は事前に見通しを伝え、長時間の勤務が難しい場合は短時間勤務から始めるなど、その人に合った働き方を一緒に検討します。
周囲の理解も欠かせません。不調や静かな様子を「やる気がない」と決めつけず、体調の変化に応じて業務量や休憩、勤務時間を柔軟に調整することが求められます。業務の優先順位や手順を分かりやすく示し、指示を一つずつ伝える、メモやマニュアルを活用するといった工夫も役立ちます。
また、体調や仕事上の困りごとを相談できる担当者や窓口を設けることも、安心して働き続けるための支えになります。精神障害者保健福祉手帳の有無など一定の要件を満たす場合、事業主が利用できる助成制度もあります。
多くの統合失調症の方は安定的に働ける
統合失調症は、発症直後や再発時には、休養を取りながら生活のリズムを立て直す必要がありますが、症状が落ち着けば、体調に合わせて仕事を続けることも可能です。
実際に、就労支援事業所を利用したり、一般企業で配慮を受けたりしながら、長期間働き続けている人もいます。大切なのは、症状や体調の波があることを理由に諦めるのではなく、本人の希望を大切にしつつ、周囲と相談しながら無理のない働き方を見つけることです。
主治医や医療・福祉の専門職と連携し、家族や職場から必要な理解と支援を得ることは、本人の安心感を高め、再発予防や就労の継続、長期的な生活の安定にもつながります。
統合失調症の特性を知った上で対処する
統合失調症のある方と関わるうえで大切なのは、病気の特性を理解し、本人の状態に合わせて接することです。
感情の起伏が小さかったり反応が薄いように見えたりしても、必ずしも無関心とは限りません。返答を急かしたり、一方的に話を進めたりせず、本人のペースを尊重することが、信頼関係を築くうえで重要です。
また、疲れやすかったり、人との関わりに負担を感じたりする場合もあるため、生活や仕事では休める時間や距離を確保し、無理のないペースで関わる必要があります。
周囲が「できない部分」だけに注目せず、本人の得意なことや「できる部分」に目を向ける姿勢を持つことで、自信や安心感を支えることにもつながります。
ストレスチェックは活用できるか
ストレスチェックは、症状が落ち着き、回復の段階にある人にとって、自身の状態を振り返るきっかけのひとつになります。
「今の自分がどの程度ストレスを感じているのか」「どのような場面や業務が負担になっているのか」を客観的に見直す機会になります。
統合失調症では、ストレスが症状の悪化や再発に関係することがあるため、本人が自分自身で負担の増加や心身の変化に早めに気づくための参考として活用できます。
ただし、ストレスチェックは病気の診断や再発を予測するための検査ではありません。結果だけで病状を判断せず、気になる変化がある場合は、主治医や産業医などに相談することが大切です。結果を参考に、働き方や業務量を調整したり、休息の取り方を見直したりすることで、無理のない形で生活や就労を続けるための助けになります。
監修:精神科医・日本医師会認定産業医/近澤 徹
【監修医師】
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役・近澤 徹
オンライン診療システム「Mente Clinic」を自社で開発し、うつ病・メンタル不調の回復に貢献。法人向けのサービスでは産業医として健康経営に携わる。医師・経営者として、主に「Z世代」のメンタルケア・人的資本セミナーや企業講演の依頼も多数実施。
まとめ
統合失調症は、幻覚や妄想といった陽性症状、感情の乏しさや意欲の低下などの陰性症状、さらに思考力や集中力の低下といった認知機能の障害がみられる病気です。症状の現れ方や回復のスピードには個人差がありますが、多くの人が安定した生活や就労を継続していますが、統合失調症のある人と一緒に働くには、その人の状態を理解し、必要な支援を柔軟に取り入れていく姿勢が求められます。
職場では、体調の波に配慮しながら働けるよう、業務量の調整や静かな作業環境の確保、相談しやすい雰囲気づくりが大切です。また、ストレスが再発の引き金になることもあるため、本人の状態に応じてストレスチェックを活用することで、ストレスのサインに気づきやすくなります。とくに回復期の方にとっては、無理をせず、自分に合った働き方を探るきっかけにもなります。
ストレスチェッカーは、官公庁や上場企業、大学、大規模病院など、幅広い現場で導入されている国内最大級のストレスチェックツールです。受検画面のカスタマイズやメール文面の変更、未受検者への自動リマインド、進捗のリアルタイム管理、医師面接希望の収集まで、使う側の現場に合わせて柔軟に対応できます。
2025年5月1日からは、無料プランとWEB代行プランで「プレゼンティーイズム(体調や心理的な負担によって生産性が下がる状態)」の測定にも対応。まだ本人も気づいていない疲れや、やる気の低下などが数値で見えるようになるため、深刻化する前に手を打つきっかけになります。
また、どの部署にストレスが偏っているか、どんなタイプの不調が起きやすいかといった、職場全体の傾向も把握できます。
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