自動思考とは?対処法は?

自動思考とは、出来事に直面したときに頭の中へ瞬間的に浮かぶ考えのことです。認知行動療法(CBT)の考え方では、起きた出来事そのものではなく、その出来事を「どう受け取ったか(自動思考)」によって、その後の感情や行動、体に現れる反応が大きく左右されると言われています。
この記事では、仕事で起こりやすい自動思考の例をもとに、気づき方と整え方をわかりやすく整理していきます。

監修:山本 久美(株式会社HRデータラボ 公認心理師)

自動思考とは

自動思考とは、出来事に直面したとき、頭の中にほとんど無意識に瞬間的に浮かぶ考えのことです。たとえば、上司の反応や会議でのやり取りをきっかけに、「自分はダメだ」「嫌われたかもしれない」と受け取ってしまうことがあります。こうした考え方は、その後の不安や落ち込み、行動の変化にもつながるリスクがあります。

瞬間的に浮かぶ考え

自動思考とは、出来事に直面したときに、ほとんど反射のように頭に浮かぶ考えやイメージのことです。具体的な言葉(「どうしよう」「最悪だ」など)だけでなく、パッと思い浮かぶ嫌な場面のイメージ(映像)として現れることもあります。
あまりにも自然に浮かぶため、これは客観的な事実ではなく「単なる自分の考え」であるということに、その場ではなかなか気づけません。
なお、自動思考は何も悪いものだけを指すわけではなく、子犬を見て「かわいい」と思ったり、曇り空を見て「雨が降りそうだな」と感じたりすることも含まれます。

出来事・考え・感情はつながっている

自動思考を理解するうえで大切なのは、「出来事」「考え」「感情」が別々ではなく、連動しているという点です。
出来事とは、実際に起きた客観的な事実です。その出来事に対して、ほとんど無意識のうちに瞬間的に浮かぶのが自動思考であり、その考え方の影響を受けて、不安、悲しみ、怒り、落ち込みなどの感情が生まれます。
たとえば、街で友人に手を振ったのに反応がなかった場合、「嫌われているのかも」「何か悪いことをしたのでは」と考えると、不安や落ち込みが強くなります。
一方で、「気づかなかっただけかもしれない」「考え事をしていたのだろう」と受け取れば、必要以上に気持ちが乱れることはありません。
つまり、人は出来事そのものだけで苦しくなるのではなく、その出来事をどう受け取ったかによって気分が大きく変わるのです。

よくある自動思考

よくあるネガティブな自動思考には、物事を極端に捉える白黒思考、未来を悲観的に決めつける考え方、相手の気持ちを邪推する受け取り方、「こうあるべき」と自分を追い込む思考、自分に否定的なレッテルを貼るラベリング、できなかったことばかりに目を向ける過小評価などがあります。

会議で意見を否定された

会議で意見を否定されたとき、「自分の伝え方が悪かったせいで迷惑をかけた」「また的外れなことを言った。自分は仕事ができない」と、自分を必要以上に責めてしまうことがあります。あるいは、「あの人は自分が嫌いだから反対したのだ」「上司は呆れているに違いない」と、相手を決めつけてしまうこともあります。さらに、「一度否定されたから、もう意見は通らない」「この会社に居場所はない」と、未来まで悲観的に広げてしまうケースもあります。
しかし実際には、意見への反対は内容の調整や検討の一部であり、自分の価値そのものを否定されたわけではないのです。

上司の返信がそっけない

上司の返信がそっけないと、それだけで強い不安を感じることがあります。
たとえば、一言だけの返信やスタンプだけの反応を見て、「嫌われたのではないか」「何か怒らせたに違いない」と考えてしまうようなケースです。さらに、「報告が下手だから呆れられている」「信頼されていない証拠だ」と、自分の能力や立場まで否定的に受け取ってしまうこともあります。そこから、「次の人事評価に響くかもしれない」「今後は相談にも乗ってもらえないのでは」と、最悪の展開まで想像が広がる場合もあります。
しかし実際には、上司が忙しい、返信を簡潔にするタイプ、移動中で余裕がないなど、別の理由も十分に考えられます。

プレゼンで言い間違えた

プレゼンで言い間違えたときは、その小さな失敗をどう受け取るかで、その後の気持ちも話し方も大きく変わります。ネガティブな自動思考では、「噛んだせいで全部台無しだ」「みんなに見下されたに違いない」「このあとも失敗することになる」といったように、出来事を必要以上に悪い方向へ広げてしまいがちです。
一方で、適応的な受け止め方では、「言い直せば大丈夫」「大事な結論は伝わっている」「緊張しているだけだから深呼吸しよう」と考えることができます。つまり、同じ“言い間違い”でも、自分の中でどんな自動思考が浮かぶかによって、不安が強まることもあれば、落ち着きを取り戻して立て直すこともできるのです。

自動思考は「事実」ではない

自動思考は、出来事に対して瞬間的に浮かぶ「解釈」であり、事実そのものではありません。会議で意見が通らなかった、上司の返信が短かった、プレゼンで言い間違えた――こうした出来事に対して、「自分に能力がない」「怒らせた」「全部失敗だ」と受け取るのは、脳が一瞬で下した意味づけです。
過去の経験や思考のクセが影響するため、私たちはその解釈を事実だと思い込みやすくなります。苦しくなったときは、「それは100%事実か、それとも自分の解釈か」と問い直してみることが大切です。事実と思考を分けて見ることが、気持ちを立て直す第一歩になります。

場面 客観的な事実 自動思考(解釈)
会議 自分の意見が採用されなかった。 私の能力がないからだ。
上司の返信 返信が「承知しました」の1行だった。 怒らせてしまった。
プレゼン 途中で言葉を1回噛んだ。 プレゼンは完全に失敗だ。

自動思考への対処法

自動思考への対処では、まず頭に浮かんだ考えに気づき、それを当たり前のこととはせず言葉にすることが出発点です。そのうえで、「本当にそう言える根拠はあるか」を確かめ、別の見方ができないかを考えていきます。
こうした流れは、認知行動療法(CBT)の基本的な考え方でもあります。

自動思考に気づき、言葉にする

自動思考への対処でいちばん大切なのは、「今、自分はどんな考えに引っぱられているのか」に気づくことです。自動思考は一瞬で浮かぶため、そのまま不安や怒りにのみ込まれやすいですが、モヤッとした、急に不安になった、息が浅い、肩に力が入ったなど、そんな瞬間に、「今、頭の中で何て考えた?」と立ち止まってみます。

心のつぶやきを言葉にする
次に、その考えを実況するように言葉にします。
たとえば「嫌われたかも」と不安に浸るのではなく、「今、自分は『嫌われたかもしれない』と考えたな」と捉えます。さらに、「仕事ができない人間だ」ではなく、「仕事ができない人間だ『という考え』が浮かんでいる」と言い換えると、思考を事実そのものとして受け取りにくくなります。

最初は後から振り返る形でもいい
リアルタイムで気づくのが難しい場合は、お風呂や寝る前に、その日モヤッとした場面を振り返るところからで十分です。振り返る時は、「自分が悪い」とか「相手がひどい」とジャッジ(評価)せず、ただ録画したビデオを見るような感覚で、その場面を思い出すのがコツです。これを続けていると「クセ」を直すように、脳がパターンを学習し、だんだんと早めに「あ、これさっきの自動思考だ」と気づけるようになります。

 

ストレスチェッカーとは

「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しているのはもちろん、2025年5月からは無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施が義務化されることとなりました。
自動思考は無意識に浮かぶため、自分ではそれに気づくのが困難です。ストレスチェックを実施し、その結果を見ることで、自分の思考パターン(認知の偏り)を客観視できる場合があります。そのうえで、自分の考え方の偏りに気づくことで、極端な考えを少し柔軟な考え方に修正することも期待できます。
導入や運用の相談は、ぜひお気軽にお問合せください。


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根拠を確かめる

自動思考に気づいたあとに大切なのが、その考えをそのまま信じ込まず、「本当にそう言えるのか」を確かめることです。
私たちの脳は、自分の考えに都合のよい情報ばかり集めやすいものですから、一歩引いて、感情ではなく事実ベースで見直す視点が必要になります。

「根拠」と「反証」を分けて見る
やり方はシンプルで、その自動思考を裏づける客観的な事実があるかを確認し、同時に、その考えと矛盾する事実がないかを探します。
ここで大切なのは、「嫌われている気がする」のような感覚ではなく、「実際にどんな出来事があったか」で考えることです。
たとえば、上司からの返信が一言だけで不安になったとしても、「今日は返信が短かった」という事実と、「先週は褒められた」「忙しいと他の人への返信も短い」といった反証を並べてみると、受け取り方が少し変わってきます。

「別の見方を考える

自動思考は、一つの出来事に対する瞬間的な解釈にすぎません。そこで別の受け取り方を探せるようになると、思い込みに引っぱられにくくなり、気持ちの立て直しもしやすくなります。認知行動療法では、こうした考え方をバランス思考やリフレーミングとして扱います。

視野が狭くなるのを防ぐ
強いストレスがかかると、人はどうしても悪い可能性ばかりに目が向きやすくなります。別の見方を探すことは、そうした視野の狭さをやわらげる助けになります。「本当にそう言い切れるか」「他の捉え方はないか」と考えるだけでも、頭の中に少し余白が生まれます。その余白があると、最悪の結論へ一気に飛びつくことを避けられます。

具体的な行動につながる
「もうだめだ」という考えからは、落ち込みや諦めが生まれがちですが、「次はこうしてみよう」という見方に変わると、行動の選択肢が見えてきます。別の見方を探すときは、「親しい友人が同じことで悩んでいたら何と言うか」「100人全員が同じ受け取り方をするだろうか」「この出来事から得られる学びは何か」「5年後の自分ならどう見るか」と問いかけてみると、考えが少しずつほぐれやすくなります。

認知行動療法(CBT)の考え方を知っておく

これまでご紹介してきた「自動思考に気づき、根拠を確かめ、別の見方を探す」というステップは、認知行動療法の基本プロセスです。
CBTは、ものの受け取り方や考え方である「認知」と、日々のふるまいである「行動」に働きかけることで、気持ちを少しずつ整えていく心理療法です。

たとえば、会議で意見を否定されたときに、「自分は無能だ」と受け取ると、落ち込みや不安が強まり、次の会議で発言を控える行動につながることがあります。CBTは、この流れをそのままにせず、途中で立ち止まって見直すための考え方です。

感情ではなく、認知と行動に働きかける
落ち込むな、不安になるなと自分に言い聞かせても、感情そのものを直接コントロールするのは簡単ではありません。けれども、その感情を生み出している考え方や、その後の行動は見直す余地があります。自動思考に気づき、根拠を確かめ、別の見方を探すという流れは、まさにCBTの基本でもあります。

無理に前向きになるための方法ではない
CBTは、無理やりポジティブになるためのものではありません。目的は、極端に偏った見方を、より現実的でバランスの取れた見方に整えることです。「絶対に失敗しない」と思い込むのではなく、「今回は失敗したが、立て直す方法はあるし、次に活かせる」と考え直すことが大切です。
 

ストレスチェッカーとは

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ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場でも実施義務化が進むため、早めの準備が大切です。
導入や運用に不安がある場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

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監修:山本 久美(株式会社HRデータラボ 公認心理師)

公認心理師 山本久美さんの写真

大手技術者派遣グループの人事部門でマネジメントに携わる中、社内のメンタルヘルス体制の構築をはじめ復職支援やセクハラ相談窓口としての実務を永年経験。
現在は公認心理師として、ストレスチェックのコンサルタントを中心に、働く人を対象とした対面・Webやメールなどによるカウンセリングを行っている。産業保健領域が専門。

> ストレスチェッカー

 

    まとめ

    ストレスチェックは、従業員のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした制度です。現在は従業員50人以上の事業場で義務化されていますが、今後は50人未満の企業にも対象が拡大される予定です。
    自動思考とは、出来事に対して瞬間的に浮かぶ考えや受け止め方のことです。気分が落ちていると、「自分はダメだ」「うまくいかない」といったネガティブな自動思考に引っ張られやすくなります。ストレスチェックを活用すれば、自分のストレス状態を客観的に把握でき、考えの偏りに早めに気づくきっかけになります。
    ストレスチェッカーは、官公庁・上場企業・医療機関などで採用されている国内最大級のストレスチェックツールです。自動リマインド、面接指導者管理、進捗確認機能を標準搭載し、2025年5月からは無料プランでも「プレゼンティーイズム(生産性低下)」の測定に対応しております。
    導入方法や実施方法など、お気軽にお問合せください。

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