
これまで労働者50人以上の事業場に義務づけられていた「ストレスチェック」が、50人未満の事業場にも拡大されることとなり、改正労働安全衛生法が2025年5月8日に衆議院本会議で可決・成立しました。改正法は同年5月14日に公布され、50人未満の事業場への義務化は2028年4月1日に施行されます。事業場の規模に関わらず、労働者が自身のストレス状態に気づき、メンタルヘルス不調の予防につなげる制度です。
参考:厚生労働省/ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策
目次
ストレスチェック全事業所で義務化へ
職場のメンタルヘルス不調を未然に防ぐため、ストレスチェック制度は事業場の規模にかかわらず重要な仕組みとされています。2015年の制度開始当初、労働者数50人未満の事業場は当分の間、実施が努力義務とされていましたが、2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、50人未満の事業場にも実施義務が拡大されました。施行日は2028年4月1日です。
50人未満の事業場では、労働者のプライバシー保護の観点から、原則として外部機関への委託による実施が推奨されています。産業医や衛生委員会を置いていない場合もあるため、大規模事業場と同じ運用を一律に求めるのではなく、小規模事業場の実情に合った方法で実施します。衛生委員会の設置義務がない場合でも、関係労働者の意見を聴く機会を設けることが重要です。
50人未満の事業場には、ストレスチェックの実施結果を労働基準監督署へ報告する義務はありません。一方、事業者には制度を適切に実施する責任があり、実施状況を把握しておく必要があります。
厚生労働省は2026年2月、「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表しました。外部委託先の選び方や実施体制、個人情報の管理、高ストレス者への医師による面接指導、10人未満など特に小規模な事業場での進め方も示されています。外部委託する場合でも、事業者が実施主体であることに変わりはありません。
また、「こころの耳」には50人未満の事業場向けページが設けられ、マニュアルや相談窓口などが案内されています。高ストレス者が一定の要件を満たし、本人から申出があった場合には医師による面接指導につなげます。さらに、2026年6月には集団分析について、特定の個人を識別できない方法で実施することを定める省令改正が行われ、2027年4月1日に施行されます。
参考:ストレスチェック 50人未満事業場向け マニュアル
(1)そもそもストレスチェックとは
ストレスチェックとは、労働者の心理的な負担の程度を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための制度です。メンタルヘルス対策には、ストレスや不調を防ぐ「一次予防」、不調に早く気づいて対応する「二次予防」、職場復帰を支援する「三次予防」の3つがあります。
ストレスチェック制度は、このうち特に「一次予防」を強化するために導入されました。2025年の労働安全衛生法改正により、これまで努力義務だった労働者数50人未満の事業場にも実施義務が拡大され、2028年4月1日から施行されます。制度を活用することで、労働者自身の気づきや職場環境の改善につなげることが期待されています。
(2)ストレスチェック制度の実施状況
ストレスチェック制度の実施状況を見ると、令和6年の労働安全衛生調査の特別集計では、労働者50人以上の事業場で84.7%が実施しているのに対し、50人未満の事業場では33.5%となっています。50人未満の事業場についても、2028年4月1日からストレスチェックの実施が義務化されます。
ストレスチェックを実施した事業場のうち、結果を部署などの単位で集計・分析する「集団分析」を行った割合は、50人以上で80.0%、50人未満で73.4%でした。また、集団分析を実施し、その結果を職場環境の改善などに活用した事業場の割合は、50人以上で65.8%、50人未満で54.4%となっています。事業場規模による差はあるものの、50人未満でも一定数の事業場が集団分析まで取り組んでいることが分かります。
なお、集団分析とその結果を踏まえた職場環境改善は引き続き努力義務です。2026年6月の労働安全衛生規則改正では、集団分析を「特定の個人を識別することができない方法」で実施することが明文化され、2027年4月1日から施行されます。
参考:厚生労働省/ストレスチェック制度の実施状況
(3)集団分析・職場環境改善の現状
ストレスチェックの集団分析と、その結果を活用した職場環境改善は、現在も事業者の努力義務です。厚生労働省の令和6年労働安全衛生調査の特別集計では、ストレスチェックを実施した事業場のうち、集団分析を行った割合は50人以上で80.0%、50人未満で73.4%でした。
さらに、集団分析を実施し、その結果を活用した事業場の割合は、50人以上で65.8%、50人未満で54.4%となっています。取り組みは広がっていますが、職場環境の改善方法は、業務内容や人員体制、労働時間など事業場ごとの状況によって異なるため、集団分析や職場環境改善の義務化については引き続き検討課題とされています。
集団分析では、労働者のプライバシーを守ることも重要です。2026年6月の労働安全衛生規則改正により、集団分析は「特定の個人を識別することができない方法」で実施することが明文化されました。この改正は2027年4月1日に施行されます。なお、集団分析そのものが義務化されるわけではなく、努力義務という位置づけは変わりません。
ストレスチェックは、労働者自身がストレスの状態に気づくことに加え、集団分析によって職場や部署ごとの状況を把握し、職場環境の改善につなげることも重要です。分析結果だけで判断せず、業務内容や労働時間、労働者からの意見なども踏まえて、必要な改善策を検討することが求められます。
2028年4月1日からは、労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務化されます。今後は小規模事業場を含め、ストレスチェックを実施するだけで終わらせず、集団分析や職場環境改善につなげることが重要になります。
参考:厚生労働省/ストレスチェック制度 の実施状況(令和6年)
(4)ストレスチェック制度の効果
ストレスチェック制度については、チェックの実施に加え、集団分析や職場環境改善に取り組むことで、労働者の心理的ストレス反応の改善などがみられた事例や研究が報告されています。個人結果を労働者自身の気づきにつなげるだけでなく、職場単位で結果を分析し、業務の進め方やコミュニケーションなどを見直すことも重要です。
企業Cでは、ストレスチェックの集団分析をユニット単位、工程単位、課単位の3段階などで実施しました。産業医による結果の解説や管理監督者との意見交換を行い、各職場で年間計画を作成。事業場トップや産業医、安全衛生担当者が実施状況を確認し、安全衛生委員会でも報告しました。こうした取り組みの中で、職場環境改善の提案件数は2003年の50件から2014年には463件に増え、仕事のストレス判定図による総合健康リスクは2003年の110から2009年には98まで低下しました。
企業Dでは、2017年度の高ストレス者の割合が20%となっていました。集団分析から身体的負担や職場環境がストレス要因として大きいことが分かり、職場環境改善を進めたところ、高ストレス者の割合は2019年度に12%、2020年度には6%まで減少したと報告されています。
企業Eでは、ストレスチェック制度の導入後、メンタルヘルスへの理解が社内で広がり、不調が疑われる従業員について、メンタルヘルス推進担当者へ早期に相談する体制が整えられました。この取り組みの期間中、メンタルヘルス不調による1カ月以上の休職者は、2010年頃の20人から2020年には4人まで減少しています。
また、厚生労働省の委託調査では、ストレスチェックの個人結果を受け取ったことについて、約7割の労働者が「有効」と回答しています。医師による対面での面接指導を受けた労働者についても、過半数が有効だったと回答しました。ストレスチェックは実施するだけでなく、セルフケアや必要な面接指導、集団分析、職場環境改善につなげていくことが重要です。
参考:厚生労働省/第7回ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会議事録
(5)50人未満の事業場のストレスチェック(無料プラン)
ストレスチェッカーは、Web上でストレスチェックを実施・管理できるシステムです。実施画面の文言変更や未受検者へのリマインドメール送信に対応し、管理画面から受検状況を確認できます。ストレスチェックの実施期間の延長や、医師による面接指導を希望する人の申出を受け付ける機能も用意されています。
メールアドレスを持たない労働者も会社ごとの専用URLから受検でき、PCやスマートフォンに対応しています。システム基盤にはAWSを使用し、サービス提供者によると、AWSは政府情報システムのためのセキュリティ評価制度「ISMAP」に登録されており、KDDIの100%子会社へ監視・運用を委託するなどのセキュリティ対策を行っています。
無料プランでは、厚生労働省が示す「職業性ストレス簡易調査票」に対応した57問版を0円で利用できます。初期費用・月額費用はなく、ストレスチェックのデータは20年間無料で保管されます。集団分析の組織数にも制限がなく、日本語・英語を含む16言語での受検に対応しています。500人以上で実施する場合は、1人あたり120円(税別)が必要です。
ただし、無料プランにはストレスチェックの「実施者サービス」は含まれていません。ストレスチェックは、医師、保健師など法令で定められた資格を持つ実施者のもとで行う必要があります。2028年4月1日からは労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されるため、無料プランを利用する場合も、実施者の確保や個人情報を適切に管理できる体制を整えることが必要です。
なお、ストレスチェッカーでは、50人未満の事業場向けに実施者サービスを含む有料プランも提供しています。
まとめ
ストレスチェック制度を導入することで、職場のストレス環境が改善された事例は数多く報告されています。ただチェックを実施するだけでなく、結果をしっかり分析し、職場環境の改善に取り組むことで、社員のストレスが軽減され、メンタルヘルスの向上につながります。
ストレスチェッカー は、ストレスチェックをスムーズに実施できる便利なシステム。実施画面の文言変更や、未受検者へのリマインドメール送信など、細かなカスタマイズが可能です。リアルタイムで受検状況を確認できるので、管理もスムーズに進められます。
無料プラン(57問)は 0円 で利用可能。年間500人以上の受検がある場合は、 1人あたり120円(税込132円) で利用できるので、コストを抑えつつ、効果的にストレスチェックを運用できます。

