アサーションとは|意味は?アサーションの具体例とは?

アサーションとは、お互いを大切にした、率直な自己表現をいいます。
「自他尊重のコミュニケーション」と言われることもあります。
アサーションを理解し、アサーティブなコミュニケーションの手法を身につけることで、お互いにとって心地よい人間関係をつくることができます。そしてそれが、結果的に職場環境の改善につながることが期待できることから、最近はこの考えを取り入れる職場が増えてきています。

アサーションとは

「アサーション(assertion)」とは、自分も相手も大切にした自己表現やコミュニケーションのことです。
「assertion」の直訳は「主張する」「断言する」ですが、それだけではなく相手の気持ちと考えも尊重しようという相互作用の意味も含まれています。
単に自身が率直な表現をするのではなく、意見の違う相手にも自主的な発言を推奨します。

その結果、お互いの意見が食い違うこともありますし、自分が相手の意見に賛同できないこともあるでしょう。しかし、そのような時にもすぐに相手にゆずったり、自分の意見に同意させたりしようとしないで、根気よくお互いの意見を出し合い、双方にとって納得のいく結論を出そうと努力します。

アサーションでは、自己表現をより深く理解するために、自己表現のタイプを「受け身的」「攻撃的」「アサーティブ」の3つに分けて考えます。

(1)受け身的コミュニケーション

受け身のコミュニケーションとは、自分自身より他者を常に優先し、自分の気持ちや意見を率直に表現できない状態です。自分の考え、気持ちを言えず、相手との関係に波風を立てないよう、あいまいな言い方をしたり言い訳がましい言い方をしたりします。

一見、相手の意見を尊重しているように言えますが、我慢し続けていると「自分がやっぱりダメだ」といった劣等感につながり、時には「相手にゆずってあげた」という恩着せがましい気持ちが残ったりします。

この状態が続くと、自分を十分に表現できないネガティブな気持ちが残ってしまい、人と付き合うことが億劫になってしまいます。時には、それが相手へのうらみとなり、八つ当たりや意地悪として現れたりすることもあります。

また自分は譲っているつもりでも、相手には「私の気持ちや考えは、価値のないことです」と受け止められてしまうことがあります。また、相手としてもいつも優先されてばかりいると、「従わせてしまった」「自分を押し通してしまった」という罪悪感やいらだちが生じることがあります。

こうした体験が繰り返され耐え続けると、過剰なストレスを感じて、うつ状態になってしまうことがあります。

(2)攻撃的コミュニケーション

攻撃的なコミュニケーションとは、自分のことだけを考えて他者をふみにじるタイプのコミュニケーションです。一見自分の意見をはっきりと表現しているようにも見えますが、それは相手の配慮を欠いており、独りよがりの自己主張に終始しています。

このタイプの自己主張は、相手の犠牲のうえに成り立った自己表現でしかないので、その場では自分の言い分が通っても、相手の気持ちを害し、見下しています。
自信満々なタイプに見えることも多いのですが、「私はOKだが、あなたはOKではない」という態度でしかなく、相手より優位に立とうとしたり、勝ち負けで物事を判断したりする態度がにじみ出ています。

このような攻撃的なコミュニケーションをとるタイプは、大声で怒鳴ったり相手をきつく責めたりするだけではありません。
相手の気持ちや要求を無視して、たくみに自分の要求を押しつけたり、相手を自分の思い通りに動かそうとしたりします。

この状態が続くと、相手は服従させられた気持ちになってしまい、傷ついて相手を敬遠します。
結果的にこのようなタイプは、周囲の人たちとの関係が悪化しますし、友好な人間関係を築くことができなくなってしまいます。

(3)アサーティブなコミュニケーション

アサーティブなコミュニケーションとは、自分のことも考えながら、他者をも配慮するコミュニケーションで、アサーションができている状態です。アサーションは1950年代にアメリカで生まれましたが、日本で取り入れられるようになったのは、ほんの30年ほど前からです。

アサーションができている状態を「アサーティブ」といいます。

アサーティブな表現とは、自分の気持ち、考えを正直に率直にその場にふさわしい方法で表現できることであり、そこには自分も相手も尊重する気持ちが同時に存在していて、「聴く」と「話す」の相互交流が含まれています。

自分の気持ちや意見を率直に表現する一方で、相手の意見も大切にして相手の意見に耳を傾ける態度です。たとえ意見の食い違いがあっても、お互いを尊重しながら歩み寄ろうとします。

もちろん、立場や考え方の違いがあるため、時には互いの意見が葛藤を生み出すこともありますが、そうした葛藤についても、お互いの意見や気持ちを出し合い、譲り合いながら乗り越えていくことで、新たな関係性を構築することが可能になります。

つまり、アサーションとは歩み寄りの精神で、お互いを尊重し合ったという気持ちが残る会話を目指すコミュニケーションといえます。

アサーションの事例

これまで、アサーションは、自己表現のタイプを「受け身的」「攻撃的」「アサーティブ」の3つに分けて考えるとご説明してきました。
そこでここでは、この3つのタイプを具体的な事例に沿って、考えてみましょう。

(1)上司が威圧的である

たとえば、職場の上司が威圧的で怒ってばかりいる…というケースです。

受け身的な反応は、とにかくうつむいて黙ってしまい言い返せず、そのうち自分に自信がなくなります。「自分が悪いのだ」と自分を責め、暗い気持ちが続きます。

攻撃的な反応は、上司に「部下の気持ちが理解できない上司だ」と言い返して攻撃したうえで「そういう態度だから、ミスが増えるんだ」、ミスを上司のせいにします。

アサーティブな反応は、間違いを謝罪し、「今後は注意します」と反省をしている気持ちを伝えます。そのうえで、「もう少し穏やかに話していただきたいのですが」と自分の気持ちを伝えます。
もし、その気持ちを伝えても上司が態度を変えない時には、それはパワハラになりますから、同僚と話し合ってあとで交渉する、相談窓口を利用するなどの対策を検討します。

(2)転職先で誰も仕事を教えてくれない

次は、「転職したばかりの新しい職場で、誰も仕事を教えてくれない」というケースです。

受け身的な反応は、「前の職場なら、先輩がしっかり指導してくれたのに」と前の職場と比較してしまい、「毎日が辛い、不安だ」とネガティブになってしまいます。

攻撃的な反応は、開き直って相手を責め、反抗的な態度をとります。
「自分はやる気があるのに、教育ができない会社に問題がある」と会社のせいにします。

アサーティブな反応は、先輩たちの仕事ぶりを観察し「何か手伝えそうなことはありませんか」とコミュニケーションをとる努力をします。周囲の様子をよく観察していれば、仕事についての知識も身について、できることが見つかります。「自分から動けば、相手から仕事を頼まれる可能性が広がる」と考えて、自分からチャンスをつくろうとします。

アサーションを身につける方法

これまでご紹介したように、アサーティブなコミュニケーションを身につけることは、円滑な人間関係を構築し、自分自身の可能性を広げることにつながります。
それでは、このようにお互いを大切にしながら率直にコミュニケーションをとるためには、どのようにすればよいのでしょうか。

(1)思い込みを見直す

自分があたりまえだと思っているモノの見方や考え方がアサーティブでない時には、アサーションができないことがあります。
たとえば、受け身的なコミュニケーションをとる人は、「物わかりのよい人が好かれる」「上司には従うべき」という考え方が、身についてしまっています。また、攻撃的なコミュニケーションをとる人は「負けるのはよくないことだ」という考えに固執しているケースが、多く見られます。

このような思い込みは、アサーションを妨げてしまうことがあります。そこでまずは、この思い込みを見直して、より自分に素直な表現を心がけることを意識します。

また、周囲に適切なアサーションができている人がいたら、その人の言動を観察してみましょう。それの人と自分の言動を比較して、どのようなスキルがあるのかどのような表現をすればよいのかをよく検討しましょう。

(2)3つの要素バランスを考える

私たちは、何かを感じ、考え、行動する生き物です。
この感情、思考、行動の3つの要素に注目し、この3つのバランスをとることを意識してみます。

感情型の人
「感情」に偏ったタイプは、思考や行動よりも感情を優先します。自分の感情に敏感でその感情を豊かに表現します。「嬉しい」「辛い」「起こっている」など、自分の感情に素直で、その感情を言葉に表します。
しかし、時にはその自分の感情に振り回されて、その場に応じた適切な判断ができなくなってしまい、時として激しい感情に周りを巻き込んでしまうことがあります。

思考型の人
「思考」に偏ったタイプは、感情や行動よりも考えることを大切にします。
慎重かつ冷静で、何かあっても感情を表現したり見境なしに行動したりしません。何か行動を起こす時には、事前に十分なデータを集め、分析と検討を繰り返すべきだと考えます。

しかしこのタイプは、客観的なデータに基づいて思考し、納得できる結論が出なければ行動に移せないので、どれだけ観察力や思考力があっても行動に移しません。
「試しにやってみよう」ということがないので、結局周りには「文句ばかり言って、何も行動しない」と思われることもあります。

行動型の人
「行動」に偏ったタイプは、考える前にまず行動するのが好きなタイプです。
「やってみなければ分からない」「とにかく行動に移そう」と考えていて、ものごとに取り掛かるのが早く積極的です。新しいモノ好きなので、新商品が出ればすぐに使い、話題になっているスポットには出かけてみるなど、好奇心が旺盛です。

しかしこのタイプは、失敗しても反省したり整理したりしないまま、次々に行動してしまうので、先の見通しに欠けていることが多々あります。失敗して誰かを道連れにしてしまっても反省しないので、次第に周りは迷惑と感じてしまい、距離を置かれてしまうこともあります。

このように、3つの要素はどれもメリット、デメリットが混在しています。
したがって、どれか1つの要素にかたまったりしないように、3つの要素をバランスよく育て、状況に合わせて発揮できるように練習します。
感情型の人は、自分の表現をいきなり表現するのではなく、「どのように表現するか」考える習慣を身につけましょう。

思考型の人は慎重になり過ぎず、自分が感じたことを率直に表現することを意識しましょう。

そして行動型の人は、すぐに行動する前に思考し、ゆっくり感情を味わう時間を持つ努力をしてみましょう。

(3)結果や周囲を過度に気にしない

受け身的なタイプの人は、自分の主張が他者にどのように受け取られるかを気にし過ぎると、アサーションに影響してしまうことがあります。なぜなら、相手を気にし過ぎて自己主張が曖昧になってしまうことがあるからです。したがって、相手の気持ちを大切にする気持ちは持ちつつ、それだけにとらわれることなく、自分のできる範囲で気持ちを正直に表現することを意識してみましょう。

攻撃的なタイプの人は、勝ち負けを気にし過ぎて「ここで何かを言い返さなければ、周りの評価が下がるのでは」と考える傾向があります。そして、「自分が無視された」とか「軽く見られた」などのネガティブな感情に支配されてしまいます。
しかし勝ち負けに固執する姿勢は、他社の正当な意見を軽視する可能性があり強引に物事を進めて、結果的に嫌われ、敬遠されてしまうかもしれません。

したがって、まずは「相手を尊重し、そのうえで相手を否定せずに率直に自分の意見を伝える」ということを意識して、結果や周囲を過度に気にし過ぎないことが大切です。
結果や周囲を気にし過ぎることは、自己理解を妨げ、成長の妨げになります。

まとめ

以上、アサーションの意味や具体例、アサーションを身につけるための方法などについてご紹介しました。
アサーションは、自己表現のタイプを「受け身的」「攻撃的」「アサーティブ」の3つに分けて考えますが、「受け身的」「攻撃的」は、自身のストレスを増加させ、職場環境を悪化させる要因になりかねないリスクをはらんでいます。
これらのリスクは、ストレスチェックの結果を活用することで、その傾向を把握することも可能です。ストレスチェックの集団分析等から、その傾向が見られる時には、早期に原因を確認し、対策を講じることが大切です。

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