マインドワンダリングとは?産業医監修

マインドワンダリングとは、意識や注意が目の前の作業から離れ、別の考えや記憶、想像へと自然に移っていく状態のことです。「注意散漫」や「集中力不足」として否定的に捉える方も多いと思いますが、マインドワンダリングは集中を妨げる面がある一方で、条件によっては過去の経験や知識の結びつきが生じやすくなり、新しい発想につながる可能性が、一部の研究で指摘されています。

監修医師:細江 隼
日本医師会認定産業医
医学博士(東京大学大学院)
総合内科専門医
糖尿病専門医、指導医
健康経営アドバイザー
株式会社中央総合産業医事務所 代表取締役

マインドワンダリングとは

マインドワンダリングは、分かりやすくいうと「集中しようとしているのに別のことを考えてしまったりする状態」です。
日本語では「心の迷走」「思考のさまよい」「心の漂流」などと訳されることがあります。これらは、どれも完全に一致するわけではなく、「意図せず別のことを考えている状態」を広く含みます。

マインドワンダリングについては、19世紀末にはウィリアム・ジェームズが「意識の流れ」を論じ、人の心が一つの対象に固定され続けるものではないことを示しました。現在の『マインドワンダリング』という概念そのものではありませんが、その源流として参照されることがあります。
そして2000年代以降、心理学や脳科学の研究によって、これは単なる気の緩みとしてではなく、自己生成的思考の一形態として研究が進められるようになりました 。

マインドワンダリングの特徴

マインドワンダリングは、多くの場合「今から違うことを考えよう」と意識して始まるのではなく、いつの間にか思考がそれています。仕事中に昨日の会話を思い返したり、次の商談の流れを頭の中で想像したりするのも、その一例です。
また、現在起きていることよりも過去の出来事や未来への予測に向かいやすい傾向があります。
そして、不安や後悔、期待、願望といった感情とも結びつきやすく、頭の中で同じテーマを繰り返してしまうことがあります。

マインドワンダリングは自然な脳の働き

マインドワンダリングは、人間の脳に備わった自然な働きの一つで、意志の弱さや性格の問題とは関係ありません。真面目な人にも努力家にも起こりうる現象であり、必ずしも意志の弱さや性格の問題として説明できるものではありません。
また、マインドワンダリングと集中は、完全に反対の関係ではありません。人は集中している最中でも、短い単位で注意がそれたり戻ったりを繰り返しています。見た目には作業に集中していても、内側では細かな意識の移動が起きているのが自然です。つまり集中とは雑念が全くない状態というわけではなく、「それた意識を仕事や課題に戻そうとしている」と考えたほうが実態に近いといえます。

デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)との関係

デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)は、安静時や内的な思考に関連して活動がみられやすい脳内ネットワークです。自己について考えること、記憶の想起、将来の想像などにも関わるとされています。
そして、このデフォルト・モード・ネットワークは、内省や空想、心の放浪のような内的思考と関連すると考えられています。
マインドワンダリングに関連する場面で、脳活動を調べるfMRI研究では、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)に関わる活動がみられることが報告されています。DMNは、記憶の想起や自己関連的な思考、将来のシミュレーションなどに関わるとされており、こうした働きが自由な連想と関係する可能性があります。このような内的思考の働きが、条件によっては自由な連想や発想の広がりに関係する可能性が指摘されています。
参考:2022年度日本認知科学会第39回大会/マインドワンダリングと脳のデフォルトモードネットワーク

マインドワンダリングの肯定的な側面

近年の研究では、一定の条件下でマインドワンダリングが創造的思考と関連する可能性が示されています。

人は、何か問題に取り組むときには意識的に論理的で順序だてた思考を行います。この時には、目的や正解を強く意識するため、思考の範囲が狭まってしまうことがあります。
一方でマインドワンダリングが起きている状態では、過去の経験や知識、記憶などの結びつきを行う処理が比較的に自由に行われています。
つまり、すでに頭の中で蓄積されている情報同士がこれまでとは異なった形で結びつくため、ひらめきやアイデアにつながることがあります。
ビジネスの現場では集中力ばかりが重視されがちですが、発想力が求められる場面では、常に考え続けることだけが正解ではありません。
発想力が求められる場面では、意図的に少し距離を置くことが役立つ場合もあります。

マインドワンダリングの否定的な側面

マインドワンダリングには発想を広げる面がある一方で、反すう(後悔)や心配(取り越し苦労)といった反芻思考(ぐるぐる思考)につながることがあり、不安や抑うつとの関連が指摘されてきました。
近年の研究では、とくに「非意図的」に始まるマインドワンダリングや、「ネガティブ」「曖昧」「未来志向」といった内容を伴う思考が、反芻思考(ぐるぐる思考)を強め、その結果として不安や抑うつにつながりやすいことが示されています。
2025年に公開された早稲田大学らの研究でも、こうした傾向が確認され、問題なのは考え事そのものではなく、コントロールしにくく否定的な方向へ流れ続けることだと指摘されています。
また、反芻思考(ぐるぐる思考)に早めに気づき、長引かせないよう意識することが、メンタルヘルス不調の抑制や生産性の向上に役に立つ可能性があることもあわせて示唆されています。
参考:早稲田大学 研究活動 Research Activities/いつの間にか自己否定

マインドワンダリングへの対策と付き合い方

これまでご紹介したように、マインドワンダリングは、創造的思考を後押ししアイデアの創出数を増やす可能性がある一方で、ネガティブ・未来志向・曖昧な内容になると、反芻思考(ぐるぐる思考)を増やし、不安や抑うつにつながるリスクがあります。
対策としては、早めに反芻思考(ぐるぐる思考)に気づくこと、マインドフルネス瞑想や呼吸法を取り入れること、タスクを細かく分けて小さな目標を決めることなどが有効です。

反芻思考(ぐるぐる思考)に気づく

マインドワンダリングと上手に付き合うには、まず自分が反芻思考(ぐるぐる思考)に入っていることに気づくことが大切です。反芻思考(ぐるぐる思考)は、原因や後悔をいくら掘り下げても状況が前に進みにくく、同じ考えを頭の中で繰り返しやすく、具体的な「解決策」や「未来」への視点が欠けています。
したがって「反芻思考(ぐるぐる思考)しているな」と気づいたら、その思考を無理に消そうとせず呼吸や目の前の作業、周囲の景色に意識を移します。さらに頭の中だけで解決しようとせず、席を立って外を歩く、軽く体を動かす、音楽を聴く、温かい飲み物を飲むなど、五感を使って思考の流れを切り替えるのも有効です。加えて、短時間の瞑想を取り入れたり、「悩むのは1日10分まで」と時間を区切ったりすると、考えと距離を取りやすくなります。
※なお、こうした対処法はストレス反応が比較的軽度な場合の参考として紹介しています。
不安・抑うつが強い場合や長期間続く場合には、精神科・心療内科などの専門医にご相談ください。

マインドフルネス瞑想や呼吸法を取り入れる

マインドワンダリングと上手に付き合うには、マインドフルネス瞑想や呼吸法を取り入れる方法があります。

姿勢を整える(調身)
姿勢は、椅子でも床(あぐら)でもOKです。足の裏を床につける、あるいは坐骨を安定させるようにして、無理のない姿勢をとります。背筋は軽く伸ばし、頭のてっぺんが上に引っぱられているような感覚を持つと整えやすくなります。手は太ももの上など、楽に置ける場所で十分です。目は軽く閉じてもいいですし、1~2メートル先をぼんやり見る形でも大丈夫です。

呼吸を整える(調息)
次に、呼吸に意識を向けます。ただし、無理に深呼吸をしたり、呼吸を変えようとしたりする必要はありません。今そのまま行われている自然な呼吸を観察します。鼻を通る空気の感覚や、喉を通る感じ、胸やお腹のふくらみとへこみなどを静かに追っていきます。「今吸っているな」「今吐いているな」と、心の中でそっと見守るような感覚です。

心を整える(調心)
瞑想中は必ず雑念が浮かんできますが、これはごく自然なことです。たとえば「今日の夕飯どうしよう」「明日の仕事が気になる」と思考がそれたら、まずはそのことに気づきます。そして、「だめだ」と責めたり、その考えを追いかけたりせず、「考え事をしていたな」「不安が出てきたな」と軽く受け止めます。そのうえで、意識をそっと呼吸の感覚に戻します。この「気づいて、戻す」を何度も繰り返していくことが、マインドフルネス瞑想の基本です。

マインドフルネスは、数分からで構いません。まずは1日5分だけでも、呼吸に集中する時間をつくることから始めると続けやすいでしょう。

タスクを細かく分けて小さな目標を決める

マインドワンダリングへの対策として、タスクを細かく分けて小さな目標を決める方法も実践しやすい方法として挙げられます。
ただし、目標が大きすぎると脳が「大変そうだ」「面倒だ」と感じやすく、現実逃避のように思考がそれやすくなります。そこで、作業を具体的な行動単位まで細分化すると「今、何をするか」が明確になり、意識を目の前の作業に向けやすくなります。
たとえば「レポートを書く」ではなく、「タイトルを打つ」「1ページ目を読み返す」といった5分以内で終わる単位にすると取りかかりやすくなります。また、「会議の準備」ではなく「アジェンダを印刷する」「会場を予約する」のように細かく書き出すのも有効です。
タスクリスト全体を見て圧倒されるのではなく、「今すぐできそうな一つ」だけを決めることで、注意が散りにくくなります。

作業環境を物理的にリセットする

視界に入る情報が多いほど脳は余計な刺激を受けやすく、思考がそれるきっかけも増えます。そこで、机の上には今使うものだけを残し、関係のない書類や小物はいったん視界から外すことが大切です。スマホも目に入るだけで注意を奪いやすいため、引き出しや別の部屋に置くと集中しやすくなります。

さらに、香りや音を「集中モード」の合図として用いる方法が役立つ人もいます。たとえば、仕事中だけ同じアロマを使ったり、ホワイトノイズや決まったBGMを流したりすると、脳が「今は集中する時間だ」と覚えやすくなります。

ストレスチェックを活用する

マインドワンダリングへの対策を考えるうえで、ストレスチェックは有効な手がかりになります。
たとえば「心理的な仕事の負担」が高い場合は、業務量の多さで脳が疲れ、現実逃避のように注意がそれやすくなっている可能性があります。また、「不安感」や「疲労感」が強い時は、無理に集中しようとしても思考が迷走しやすく、まず休息や立て直しが必要なサインと考えられます。
大切なのは、ストレスチェックを単なる判定として見るのではなく、「今の自分はどれくらい注意が散りやすい状態か」を客観的に把握するツールとして活用することです。

ご注意

本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個別の医学的アドバイスではありません。気分の落ち込み、不安、反すう思考が続く場合や、日常生活や仕事に支障が出ている場合は、精神科・心療内科などの専門医にご相談ください。

 

ストレスチェッカーとは

「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しているのはもちろん、2025年5月からは無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施が義務化されることとなりました。
ストレスチェックを活用することで自分の状態を客観的に把握でき、早めのセルフケアにつなげやすくなります。導入方法など、お気軽にご相談ください。


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監修:医学博士・日本医師会認定産業医/細江 隼

医学博士・日本医師会認定産業医/細江 隼氏

【監修医師】細江 隼
日本医師会認定産業医
医学博士(東京大学大学院)
総合内科専門医
糖尿病専門医、指導医
健康経営アドバイザー
株式会社中央総合産業医事務所 代表取締役

都内の基幹病院・大学病院内科で専門医・指導医として診療に従事してきた経験から予防医学の重要性を実感し、現在は多様な業種の企業で産業医として活動。衛生委員会参加や職場巡視、健診の事後措置、長時間労働面談、ストレスチェック、休職・復職面談など幅広い産業保健業務を担当しています。メンタルヘルス対策やフィジカル面の健康管理、健康経営の推進を通じ、働く人と組織双方の支援を行っています。


> 細江 隼 | 株式会社中央総合産業医事務所

    まとめ

    ストレスチェックは、従業員のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした制度です。現在は従業員50人以上の事業場で義務化されていますが、今後は50人未満の企業にも対象が拡大される予定です。
    マインドワンダリングとは、意識が目の前の作業から離れ、過去の出来事や未来の不安、別の考えへ自然にそれていく状態で、集中力の低下や思考疲労につながることがあります。ストレスチェックを活用すれば、自分の疲労感や不安の強さを客観的に把握し、早めのセルフケアを行い働き方の見直しにつなげることができます。
    ストレスチェッカーは、官公庁・上場企業・医療機関などで採用されている国内最大級のストレスチェックツールです。自動リマインド、面接指導者管理、進捗確認機能を標準搭載し、2025年5月からは無料プランでも「プレゼンティーイズム(生産性低下)」の測定に対応しております。
    導入方法や実施方法など、お気軽にお問合せください。

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