ストレスマネジメントとは?精神科医が解説!

ストレスマネジメントとは、ストレスと上手に付き合うための工夫や方法です。深呼吸や軽い運動、十分な睡眠など、日常生活の中で心身を整えることが基本ですが、自分のストレスの原因を知り、その影響を理解することも大切です。

監修医師:近澤 徹
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役

ストレスマネジメントとは

ストレスマネジメントとは、日々の生活で避けることが難しいストレスに気づき、上手に付き合っていくための考え方や対処法です。強いストレスが続くと、心理面だけでなく、自律神経の働きや睡眠、体調にも影響が及ぶことがあるため、早めに対処する工夫が求められます。

ストレスマネジメントでは、何が自分にとってストレスの原因になっているのかを理解し、それに対して自分がどのような反応を示しているのかを冷静に振り返ることが大切です。感じ方や考え方のクセを知ることで、状況の捉え方や対処の仕方を少しずつ調整できます。呼吸法などのリラクゼーション、適度な運動、十分な休息、人とのつながりを保つことなど、日常に取り入れられる方法も多くあります。自分に合った方法を見つけ、無理のない範囲で続けることが大切です。必要に応じて、専門家へ相談することも大切です。

(1)ストレスマネジメントの重要性

ストレスマネジメントは、心と体の健康を保つうえで大切です。ストレスは誰にでも起こり得る自然な反応ですが、強い状態が続くと、不眠や食欲不振、イライラ、集中力の低下などが現れ、日常生活に影響を及ぼすことがあります。さらに負担が重なると、うつ病などの精神疾患や、心身の不調につながる可能性もあります。

ストレスマネジメントを実践することで、自分の状態に気づき、休息や相談といった対処につなげられます。また、困難な状況でも考えを整理して対応することで、人間関係や仕事への集中を保つ助けにもなります。

目的は、ストレスを完全になくすことではありません。必要に応じて休む、周囲に相談するなどの対応を取りながら、ストレスとうまく付き合い、自分のペースを保つことが大切です。

ストレスを感じること自体は悪いことではなく、心身の変化に早めに気づき、どのように対応するかが生活の質を保つカギを握ります。

(2)ストレスが職場に及ぼす影響

ストレスは、心身の健康だけでなく、仕事の生産性にも大きな影響を与えます。
職場で強いストレスが続くと、集中力や判断力が低下し、ミスが増えるほか、体調不良や欠勤、休職につながることがあります。その結果、本人だけでなく周囲や組織全体のパフォーマンスにも影響する可能性があります。

企業には、ストレスマネジメントの重要性を理解し、従業員が自分のストレスに気づき、適切に対処・相談できる環境を整えることが求められます。定期的な研修、相談体制の整備、ストレスチェックの実施、業務量や職場環境の見直し、柔軟な働き方の導入などを通じて、無理を重ねずに働ける職場づくりを進めることが大切です。
ストレスへの対処方法を身につけることは、仕事の質を保ち、チーム内のコミュニケーションや信頼関係を支えることにもつながります。企業が取り組むことは、従業員の健康維持と組織の安定した運営の両面で大きな意味を持ちます。

(3)ストレスマネジメントの職場への導入

ストレスマネジメントを導入するには、まず経営層がその重要性を理解し、組織全体として取り組む姿勢を明確にすることが出発点です。そのうえで、従業員のストレス状況を把握するためのアンケートやストレスチェックを実施し、現状を可視化します。
次に、社員向けにストレスの正しい知識や対処法を学ぶ研修やセミナーを開催し、自分のストレスに気づき、コントロールする力を養う機会を設けます。

さらに、相談窓口や産業医との連携体制を整えることで、メンタル不調の早期発見と対応を可能にします。職場環境の改善も重要で、長時間労働の見直しや、コミュニケーションの活性化、柔軟な勤務制度の導入など、働きやすさに配慮した制度設計も有効です。

導入後は効果の検証と継続的な改善を行い、単発で終わらせず、企業文化として根づかせていくことが長期的な成果につながります。

(4)Googleで取り入れているストレスマネジメント

Googleは、従業員のストレス軽減とメンタルヘルス向上に向けて、取り組みを行っています。代表的なものが、2007年にGoogle社内で始まった「Search Inside Yourself(SIY)」プログラムです。これは、マインドフルネスを基盤に感情知能やレジリエンスを育む研修で、集中力や共感力、自己認識を高めることを目指しています。
SIYはGoogleの社内研修として始まり、現在では外部の企業や団体にも提供されています。

また、Googleはテクノロジーを活用したストレス管理にも取り組んでいます。対応するFitbit端末やPixel Watch 2に搭載されたセンサーは、心拍数や皮膚電気活動などを測定し、身体反応の変化を捉えます。ただし、皮膚電気活動はストレス以外の要因でも変化するため、医療的な診断を行う機能ではありません。ユーザーは通知をきっかけに気分を振り返り、呼吸法やマインドフルネスの機能を利用できます。

Googleの公式記事では、従業員同士のつながりを支える「Blue Dot」というピアサポートネットワークが紹介されています。メンバーが話を聴くことで、メンタルヘルスについて会話を始めるきっかけをつくっています。専門的な治療の代わりではなく、必要な支援につながる入口の一つです。

(5)ストレスマネジメントとストレスチェック

ストレスマネジメントとストレスチェックは、どちらも心身の健康を守るために重要ですが、目的と役割は異なります。
ストレスマネジメントとは、ストレスとうまく付き合いながら、日常生活や仕事の中で心と体の状態を整えるための考え方や対処法です。休息や運動、相談、考え方の見直しなど、日々のセルフケアの積み重ねが基本です。

一方、ストレスチェックは、質問票への回答を通じて、現在のストレス状態を把握するための検査です。定期的に受けることで、心身の変化に気づくきっかけになります。ただし、病気の有無を診断するための検査ではありません。
現在、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、ストレスチェックを1年以内ごとに1回実施することが事業者に義務付けられています。2028年4月1日からは、労働者数50人未満の事業場にも実施義務が広がります。

ストレスチェックでは、主に仕事量や職場の人間関係などの「仕事のストレス要因」、不安や疲労感、意欲の低下などの「心身のストレス反応」、上司や同僚などからの「周囲のサポート」を確認します。本人が高ストレスの状態に気づき、必要に応じて医師による面接指導を申し出るきっかけとすることも、制度の目的です。

ストレスチェックの結果は、ストレスマネジメントを始めるための手がかりになります。どのような環境や場面で負担を感じているのかを振り返ることで、自分に合った対処法を考えられます。たとえば、気持ちの切り替えに時間がかかる場合は、呼吸法やマインドフルネスを試す、仕事に集中し続けて疲労がたまっている場合は、休憩の取り方や時間の使い方を見直すといった方法があります。結果だけで判断せず、日頃の体調や生活状況と併せて考えることが大切です。
企業は、個人を特定できない形で結果を集計・分析することにより、部署や職場ごとの課題を把握し、業務量、働き方、職場の人間関係などの改善に生かせます。個人の対処だけに任せるのではなく、組織として職場環境を見直すことが、働く人の健康を守るうえで重要です。

つまり、ストレスチェックは「状態を知るためのツール」、ストレスマネジメントは「把握した状態に応じて行動するための取り組み」です。定期的に自分自身の状態を確認し、その結果をセルフケアや相談、職場環境の改善につなげることで、ストレスと付き合いながら健やかに働くための基盤が整います。両者を組み合わせることは、個人の健康だけでなく、職場全体の安定した運営にもつながります。
 

ストレスチェッカーとは

「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しています。
また、無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下である「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場でも実施義務化が進むため、早めの準備が大切です。
導入や運用については、ぜひお気軽にご相談ください。

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ストレスマネジメントを行うことで、心身の健康が保たれ、集中力や判断力が向上します。その結果、業務効率や生産性が高まり、ミスやトラブルの予防にもつながります。

(1)感情に合わせて音楽を活用する

気分が落ち込んだときやイライラするとき、音楽は手軽に心を整える手段になります。落ち着きたいときには静かなメロディー、気持ちを高めたいときにはリズムのある音楽など、そのときの感情に合った音楽を選ぶことで、自分の気分に働きかけることができます。音楽は脳や自律神経に直接影響を与えるため、無理に感情を押さえ込むよりも、自然な形でリラックスや気分転換を促してくれます。
自分なりのテーマソングを決めておくのも、おすすめです。冷静になりたい時は牧歌的な歌、ここぞという時には元気の出る歌を決めておいて、いざという時に口ずさめるようにしておくと、脳をコントロールするのに役立ちます。

(2)考え方に柔軟性を持たせる

「こうあるべき」「絶対にこうしないといけない」といった極端な思考は、ストレスを溜め込むことがあります。物事を少し違う角度から見てみたり、「まあ、そんなこともある」と受け流したりする柔軟な姿勢が、精神的な余裕につながります。
周りに理解しにくい言動をする人がいても、「あの人は変わっている、理解できない」で終わらせるのではなく、その背景を考えてみたり、自分の行動と比較したりすると、新しく見えてくるものがあるはずです。
自分も周囲にも完璧を目指さず、失敗や不調を認めることで心にゆとりが生まれ、自分にも周囲にも優しくなれます。

(3)睡眠は大切!忙しい時ほど寝よう

仕事や家事が立て込んでいると、つい睡眠時間を削ってしまいがちですが、睡眠は心身のリセットに不可欠です。
質の良い睡眠を十分とることは、脳のメンテナンスのために欠かせないものです。
また、自律神経は体内時計が深くかかわっていて、夜にしっかり睡眠をとることで自律神経の働きも整ってきます。寝不足は思考力や集中力を下げるだけでなく、感情のコントロール力も弱めてしまいます。忙しいときこそ意識的に早めに休むことで、翌日のパフォーマンスも上がり、ストレスにも強くなれます。短時間でも質の良い睡眠をとることが大切です。
なかには、不眠に悩む人もいると思いますが、そのような人は寝ようと焦らずにイメージトレーニングをするのもおすすめです。うとうとするだけでも効果はある、寝たい時に寝ればよいといった大らかに考えることも大切です。

(4)生活リズムを見直す

起きる時間、寝る時間、食事のタイミングなど、生活のリズムが乱れると、自律神経のバランスが崩れやすくなります。その結果、イライラしやすくなったり、集中力が落ちたり、胃腸の不調や睡眠の質の低下といった体のトラブルが出てしまうこともあります。ストレスへの耐性も下がるため、普段なら気にならないようなことに強く反応してしまうこともあります。

だからこそ、まずは自分の生活パターンを振り返ってみることが大切です。
たとえば、夜中までスマホを見て寝つきが悪くなっているなら、寝る1時間前にはスマホを手放して、ぬるめのお風呂にゆっくり入るなど、睡眠に向けた準備を意識してみるとよいでしょう。朝は、決まった時間に起きてカーテンを開けて朝日を浴びるだけでも、体内時計が整いやすくなります。
朝ごはんも重要なポイントです。忙しいとつい抜いてしまいがちですが、パンと果物だけでも口にすることで、体と脳に「1日が始まった」と伝えることができます。生活リズムを整えることは、難しいテクニックではなく、身近な習慣の積み重ねです。毎日を気持ちよく過ごす土台として、少しずつ整えていくことがストレス軽減にもつながります。

(5)腹式呼吸を意識する

身体を動かして自律神経を整える時の基本が、「腹式呼吸」です。ストレスがかかると呼吸が浅くなりがちですが、意識的に腹式呼吸を取り入れることで心拍数が落ち着き、自律神経が整いやすくなります。
通常、交感神経の働きが高まると呼吸は速く浅くなります。そして、副交感神経の働きが高まると、呼吸は深くゆっくりになります。
つまり、意識して呼吸を深くゆっくりすると、交感神経の働きが抑えられて副交感神経の働きが促されるようになるのです。

ストレスにさらされると人は交感神経の働きが強くなるため、副交感神経の働きを高めてバランスをとるために、腹式呼吸がおすすめなのです。
ちなみに、腹式呼吸はゆっくりとお腹を膨らませるように息を吸い、吐く時間を長めにするのがポイントです。短時間でも、1日数回深呼吸をするだけで、頭や体がすっきりし、気分の切り替えにもなります。

(6)運動や趣味を楽しむことの大切さ

軽い運動や趣味の時間は、ストレスを外に発散する大切な手段です。体を動かすと、ストレスを和らげるホルモンが分泌され、気分が自然と前向きになります。
とはいえ、あまりに運動や趣味を張り切ってしまうと、それはそれで逆効果になり心身のバランスを崩してしまうこともあるので、注意が必要です。
「楽しい」「快適」「面白い」と感じるとき、脳内ではドーパミンが多く分泌され、気分が自然と前向きになります。このドーパミン優位の状態は、ストレスに強い心をつくるうえでも重要です。

何かを「やらなきゃ」ではなく、「やりたいからやる」という気持ちで取り組むことが大切です。たとえば、散歩が好きなら毎日15分歩くだけでもいいし、音楽や絵を描くのが好きなら、その時間を無理なく確保するのも立派なストレス対策です。周囲の人と笑い合う時間や、好きなカフェで過ごすひとときなど、自分が心地よいと感じられる時間を意識的に生活に取り入れることで、心の余裕が生まれます。こうした小さな「楽しい」の積み重ねが、ストレスマネジメントなのです。

(7)歩行や立ち姿勢を改善する

姿勢が悪いと呼吸が浅くなったり、筋肉がこわばったりして、知らないうちに体に負担がかかっています。
正しい立ち姿勢とは、下腹の丹田と呼ばれる場所に力を集中させて、顔や腕に余計な力を入れず、胸を張った美しい姿勢です。
猫背やうつむき加減で歩くと、胸が閉じて呼吸が浅くなり、自律神経が乱れやすくなり、ストレスへの耐性が落ちてしまいます。
逆に、背筋を伸ばして、視線をまっすぐ前に向けて歩くと、呼吸が深くなり、血流もよくなり、副交感神経を優位にし、リラックスしやすい状態をつくることができます。

また、歩くテンポや足の運び方も気分とリンクしています。リズムよく落ち着いたペースで歩くと、心も自然と落ち着いてきます。これは「行動が感情に影響を与える」という、心理学的な原則に基づいたものです。
日常の歩き方や立ち姿勢を意識するだけで、体のこわばりが緩み、気分も安定しやすくなります。肩の力を抜き、背筋を自然に伸ばすことで、呼吸が深くなり、ストレスの軽減にもつながります。

(8)肩ではなく肩甲骨を意識する

本来の腕の付け根は、肩ではなく肩甲骨の内側にあります。
腕の付け根を肩だと思ったまま無理に作業をすると、どうしても肩こりが起こりやすくなってしまいます。さらにデスクワークやスマホの使用が多いと、つい肩が前に入りやすくなり、肩まわりがガチガチにこります。肩甲骨を意識して動かすことで、血流が改善され、肩こりや首の疲れが和らぎます。簡単なストレッチや肩甲骨を回す体操を日常に取り入れると、体の緊張がほぐれ、気持ちにもゆとりが出てきます。

(9)怒りをコントロールする方法を見つける

イライラや怒りをためこんでしまうと、心だけでなく体にも大きな負担がかかります。血圧が上がったり、呼吸が浅くなったり、睡眠の質が落ちたりすることもあるため、感情を無理に抑え込むのではなく、「あ、今ちょっとイラついているな」と気づくことが大事です。

たとえば、会議中に腹が立つ発言があったとき、その場で感情的に反応するのではなく、一度深呼吸してクールダウンするだけでも冷静さを保てます。また、モヤモヤを紙に書き出してみると、思考が整理されて感情が収まりやすくなります。感情は悪者ではなく、「今の自分の状態を知らせてくれるサイン」です。怒りを否定せず、うまく扱う方法をいくつか用意しておくと、ストレスの連鎖を断ち切ることができます。

(10)自分で自分を認めてあげる

たとえどんなに能力があっても、万人に受けることはまずありません。誰に認めてもらうのが一番大切なのかといえば、それは自分自身です。社会的に間違ったことをするのは論外ですが、自分をしっかりと認めて進めば、実力も向上しますし、次第に周囲も理解してくれるはずです。

自己肯定感を持って行動することも、重要なストレスマネジメントのひとつなのです。ストレスが強くなると、自分を責めたり否定したりしやすくなります。小さなことでも「できた」と感じたら、自分をねぎらう習慣を持つことが大切です。誰かに褒められなくても、自分自身で自分を認めることで、心に安定感が生まれます。無理に完璧を求めず、「これで十分」と思える感覚を大事にすることが、ストレスと付き合う力になります。

監修:精神科医・日本医師会認定産業医/近澤 徹

【監修医師】
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役
近澤 徹

オンライン診療システム「Mente Clinic」を自社で開発し、うつ病・メンタル不調の回復に貢献。法人向けのサービスでは産業医として健康経営に携わる。医師・経営者として、主に「Z世代」のメンタルケア・人的資本セミナーや企業講演の依頼も多数実施。

> 近澤 徹| Medi Face 医師起業家

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