
ブレインフォグとは、頭に霧がかかったように感じ、集中力や記憶力、思考のスピードが落ちたように感じる状態を指す言葉です。仕事中に会議の内容が頭に入らない、メールを何度も読み返してしまう、ミスや物忘れが増えるなど、ビジネスマンの日常業務にも影響することがあります。
原因は睡眠不足や疲労、ストレス、生活習慣の乱れなど一つとは限らず、心身の負担が重なって表れる場合もあります。放置すると、仕事のパフォーマンス低下やコミュニケーションの行き違いにつながることもあるため、早めに気づくことが大切です。
この記事では、ブレインフォグの症状や原因、仕事で出やすいサイン、対処法を解説し、ストレスチェックで負担に気づく方法も紹介します。
目次
ブレインフォグとは
ブレインフォグとは、頭に霧がかかったようにぼんやりして、考えがまとまらない、集中できない、物事を思い出せないといった状態を指す言葉です。特定の病名ではなく、思考力や記憶力、注意力などに関する不調を表します。
いつもなら短時間で終わる作業に時間がかかる、会議の内容を十分に理解できない、言いたい言葉が出てこないなど、日常業務に影響する場合も考えられます。
ブレインフォグは、新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)として知られていますが、睡眠不足やストレス、ホルモンの変化、病気や薬の影響など、さまざまな要因が関係します。
症状の現れ方や原因には個人差があるため、疲れによるものと決めつけず、心身の状態を確認することが大切です。
ブレインフォグの主な症状
ブレインフォグでは、考えることや集中すること、物事を記憶することなどに不調を感じます。
症状の現れ方は人によって異なり、頭がぼんやりする感覚が続く人もいれば、仕事中に言葉が出てこない、直前に聞いた話を忘れるなど、具体的な問題を感じる人もいます。
主な症状は、次の5つに分けられます。
思考力・情報処理能力の低下
考えをまとめたり、情報を整理したりするのに時間がかかります。仕事では、資料の内容を理解するまでに何度も読み返す、複数の業務の優先順位を決められないなど、普段どおりに作業を進められないと感じる場合があります。
言葉が出てこない・会話についていけない
話したい内容は分かっていても、適切な言葉がすぐに浮かばない状態です。会議中に質問への回答が出てこない、相手の説明を理解するのに時間がかかるなど、会話に影響する場合も考えられます。
集中力・注意力の低下
一つの作業に集中できず、途中で別のことに気を取られたり、作業の手順を見失ったりします。メールの確認漏れや入力ミスが増えるなど、普段は問題なく進めていた仕事でミスが生じる場合もあります。
記憶力の低下
直前に聞いた内容や、これから行おうとしていたことを思い出せなくなります。仕事では、依頼された作業を忘れる、会議で決まった内容を思い出せないなど、記憶に関する不調を感じます。
頭がぼんやりする感覚
頭に霧やがかかったように感じ、考えがはっきりしない状態です。頭を使う作業によって強い疲労感を覚える人もいます。
これらの症状は、必ずしもすべて同時に現れるわけではありません。また、症状の程度や続く期間も人によって異なります。
集中力や記憶力の低下が続き、仕事や日常生活に支障が出ている場合は、単なる疲労と判断せず、医療機関で相談することが大切です。
ブレインフォグの主な原因
ブレインフォグは、特定の原因だけで起こるものではありません。睡眠不足やストレス、感染後の体調不良、ホルモンの変化、病気や薬の影響など、さまざまな要因が関係すると考えられています。
新型コロナウイルス感染症の罹患後症状として研究が進められていますが、発症の仕組みには、まだ解明されていない部分も残っています。
主な原因や関連する要因を確認しましょう。
新型コロナウイルス感染症などの感染後の不調
新型コロナウイルス感染症にかかった後、集中力や記憶力の低下、頭がぼんやりする感覚などが続く人がいます。
厚生労働省も、罹患後症状の一つとして、記憶障害や集中力の低下を挙げています。
こうした症状については、感染に伴う免疫反応や炎症などとの関係が研究されています。ただし、発症する仕組みがすべて明らかになったわけではありません。
また、感染後の症状と思っていても、別の病気が原因となっている可能性もあるため、症状が続く場合は医療機関で確認する必要があります。
睡眠不足や慢性的なストレス
睡眠不足や慢性的なストレスも、集中力や記憶力に影響する要因です。
十分な睡眠を取れていない状態では、注意力が低下し、情報を整理したり、新しい内容を覚えたりする作業に支障が出ます。
また、強いストレスを感じていると、仕事に集中できなくなったり、考えがまとまらなくなったりする場合も考えられます。
長時間労働によって睡眠時間が不足している、仕事の悩みが続いているなど、生活や勤務状況を振り返ることも重要です。
ホルモンの変化
ホルモンの変化によって、記憶力や集中力に影響が出る場合もあります。
更年期には女性ホルモンの変動に伴い、物忘れや集中力の低下、頭がぼんやりする感覚などを訴える人がいます。更年期に伴う睡眠障害や疲労も、こうした不調に関係すると考えられています。
また、甲状腺機能の低下など、ホルモンに関係する病気によって、思考や記憶に関する不調が生じる場合もあります。
病気や薬の影響
うつ病や不安障害などの精神疾患、慢性疲労症候群(ME/CFS)、線維筋痛症などでも、集中力や記憶力に関する不調が生じる場合があります。
また、薬の副作用によって眠気や注意力の低下、頭がぼんやりする感覚が生じる場合もあります。
新しい薬を飲み始めてから症状が現れた場合は、服用している薬の種類や、症状が始まった時期を医師や薬剤師に伝えましょう。自己判断で薬の服用を中止することは避けてください。
なお、突然言葉が出なくなる、ろれつが回らなくなる、片側の手足に力が入らなくなるといった症状は、脳卒中などの可能性があります。このような場合はブレインフォグと判断せず、すぐに119番通報してください。
参考:厚生労働省/新型コロナウイルス感染症の罹患後症状に関するQ&A
参考:Cleveland Clinic/Brain Fog: What It Is, Causes, Symptoms & Treatment
仕事中に起こりやすいブレインフォグのサイン
ブレインフォグは、集中力や記憶力、思考力などの低下を感じる状態で、仕事にも影響を及ぼします。
普段なら問題なく進められる作業に時間がかかる、会議の内容を理解できない、予定や依頼された仕事を忘れるなど、さまざまな形で不調が現れます。また、複数の仕事を抱えたときに、何から始めればよいのか判断できなくなる人もいます。
こうした症状は、睡眠不足やストレス、病気など、さまざまな要因によって生じるため、仕事のミスが増えたからといって、必ずしもブレインフォグとは限りません。
ただし、以前と比べて仕事の進み方やミスの頻度が変わった場合は、心身の状態を確認することが大切です。
集中力が続かない
ブレインフォグの症状の一つに、集中力の低下が挙げられます。
普段なら問題なく取り組める作業でも、途中で集中が途切れ、仕事を終えるまでに時間がかかる場合が考えられます。
一つの作業に集中できない
資料を作成している途中で別のことが気になり、何度も作業を中断してしまいます。再び仕事を始めようとしても、どこまで進めたのか確認するところからやり直すため、作業がなかなか進みません。
パソコンの前で手が止まる
作業を始めても考えがまとまらず、画面を眺めたまま時間が過ぎてしまいます。いつもなら短時間で終えられる業務に、普段より長い時間がかかる状態です。
会議やメールの内容が頭に入らない
ブレインフォグでは、相手の話や文章の内容を理解したり、新しい情報を整理したりすることにも支障が出る場合があります。
会議の話についていけない
相手の話は聞こえているものの、内容を理解するまでに時間がかかります。議論が進むと、それまでに説明された内容を整理できず、何について話し合っているのか分からなくなる場合も考えられます。
メールを何度も読み返す
メールを最後まで読んでも要点を理解できず、最初から読み直してしまいます。複数の依頼事項が書かれている場合は、何を求められているのか整理するのにも時間がかかります。
言いたいことをうまく説明できない
質問に答えようとしても適切な言葉が出てこず、説明の途中で考えが止まってしまいます。頭の中では伝えたい内容が分かっていても、言葉にまとめられない状態です。
ミスや物忘れが増える
注意力や記憶力の低下によって、普段なら間違えない作業でミスが増えたり、予定を忘れたりする場合も考えられます。
確認漏れや入力ミスが増える
数字や日付を間違える、メールにファイルを添付し忘れる、資料の修正箇所を見落とすなど、これまで問題なくできていた作業でミスが増えます。
依頼された仕事を忘れる
上司から頼まれた仕事や、同僚と約束した内容を忘れてしまいます。依頼を受けたこと自体は覚えていても、具体的な内容を思い出せない場合も考えられます。
予定や締め切りを忘れる
会議の予定を勘違いする、提出期限を忘れるなど、仕事のスケジュール管理に影響が出る場合も考えられます。
ただし、ミスや物忘れが増える原因はブレインフォグだけではありません。業務量の増加や睡眠不足などによっても注意力や記憶力は低下するため、仕事の状況と心身の状態をあわせて確認する必要があります。
判断や優先順位づけが難しくなる
ブレインフォグでは、複数の情報を整理して判断したり、仕事の順序を考えたりすることにも支障が出る場合があります。
簡単な判断に時間がかかる
普段ならすぐに決められることでも、複数の選択肢を比較するのに時間がかかります。メールへの回答内容や仕事の進め方など、小さな判断にも迷い、業務が停滞する場合も考えられます。
仕事の優先順位を決められない
複数の仕事を抱えた際に、何から始めればよいのか分からなくなります。締め切りや重要度を考えて仕事を整理しようとしても、判断がまとまらず、作業を始めるまでに時間がかかります。
複数の作業を並行して進められない
一つの仕事を進めながら別の依頼に対応すると、元の作業で何をしていたのか分からなくなります。複数の業務を管理する負担が大きくなり、予定どおりに仕事を進められない場合も考えられます。
ブレインフォグの対処法
ブレインフォグによって頭がぼんやりする、集中できない、物忘れが増えるといった不調を感じる場合は、まず生活習慣や仕事の進め方を見直しましょう。
睡眠不足や疲労、ストレスが関係している場合は、十分な休息を取ることが大切です。また、長時間のパソコン作業を見直し、適度に休憩を取ることも、仕事中の負担を減らす方法の一つです。
ただし、ブレインフォグには感染症後の不調や病気、薬の影響など、さまざまな原因が考えられます。生活習慣を改善するだけで、必ず症状が解消するわけではありません。
特に、感染症にかかった後は、身体的・精神的な活動によって症状が悪化する場合も考えられます。無理に活動量を増やさず、自分の体調に合わせて対処することが重要です。
十分な休息と睡眠をとる
睡眠不足や疲労は、集中力や記憶力、判断力に影響するため、ブレインフォグを感じる場合は、まず睡眠時間や休息の取り方を見直すことが大切です。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人に対して、個人差を考慮しながら6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保することを推奨しています。
毎日の睡眠時間を確保する
残業や夜更かしによって睡眠時間が不足している場合は、まず就寝時刻を見直しましょう。また、休日も含めて起床時刻を大きく変えず、規則正しい生活を心がけることが大切です。
寝る前の過ごし方を見直す
就寝直前までスマートフォンやパソコンを使用する習慣は、睡眠に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。
寝る前は画面を見る時間を減らし、寝室の照明を暗くするなど、落ち着いて眠れる環境を整えます。
仕事中も休憩を取る
長時間続けて作業せず、適度に休憩を取りましょう。特に集中力が落ちてきたと感じたら、作業をいったん中断し、静かな場所で休む方法も考えられます。
また、仕事によって症状が悪化する場合は、作業時間を短く区切り、休憩を挟みながら進めることが大切です。疲労が強い場合は、無理に作業を続けず、上司に業務量の調整を相談しましょう。
デジタル・デトックスを取り入れる
デジタル・デトックスとは、スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器を使用する時間を意識的に減らす取り組みです。
仕事中にメールやチャットの通知が頻繁に届くと、そのたびに作業が中断され、集中が途切れる原因になります。
デジタル機器の使用を減らすことでブレインフォグが治ると証明されているわけではありませんが、作業への集中を妨げる要因を減らす工夫として取り入れられます。
通知を必要なものに絞る
資料作成など、集中して取り組みたい仕事では、緊急性の低いメールやチャットの通知を一時的に停止しましょう。
通知を確認する時間を決めておけば、作業中に何度も別の画面を開くことを減らすことができます。
休憩中はスマートフォンから離れる
休憩中もSNSやニュースを見続けるのではなく、スマートフォンを置いて過ごす時間を設けましょう。
目を閉じて休む、窓の外を眺めるなど、仕事や情報の確認からいったん離れることが大切です。
一度に取り組む仕事を絞る
メールを確認しながら資料を作成するなど、複数の仕事を頻繁に切り替えることは、集中力に負担をかけます。
作業に必要のないアプリやブラウザのタブを閉じ、一つの仕事を終えてから次の仕事に取り組むなど、仕事の進め方を工夫しましょう。
軽い運動でリフレッシュする
デスクワークが長時間続く場合は、仕事の合間に体を動かすことも、気分転換や健康維持に役立ちます。
ただし、ブレインフォグを感じている人すべてに運動が適しているわけではありません。特に、新型コロナウイルス感染症の罹患後症状がある人は、軽い運動でも症状が悪化する場合があるため、注意が必要です。
体調に問題がなければ短時間の散歩を取り入れる
普段の疲労やデスクワークによる負担を感じている場合は、昼休みに短い散歩をするなど、無理のない範囲で体を動かしましょう。
長時間座り続けず、仕事の合間に立ち上がって姿勢を変えることも、気分転換になります。
肩や背中を軽く動かす
長時間同じ姿勢で仕事をしている場合は、肩を回す、背中を伸ばすなど、簡単なストレッチを取り入れてもよいでしょう。
ただし、ストレッチによってブレインフォグそのものが改善するとは限りません。あくまで体のこわばりを和らげたり、気分転換を図ったりする目的で取り入れます。
活動後に症状が悪化する場合は運動を控える
新型コロナウイルス感染症の罹患後症状では、身体的・精神的な活動の後に、強い疲労やブレインフォグなどが悪化する「労作後症状増悪(PEM)」が起こる場合も考えられます。
このような症状がある場合は、無理に散歩や運動を続けず、活動量を調整して休息を優先しましょう。必要に応じて医師に相談し、体調に合った活動量を確認することが重要です。
不調が続く場合は医療機関に相談する
頭がぼんやりする、集中できない、物忘れが増えるといった症状が続く場合は、医療機関に相談しましょう。
ブレインフォグに似た症状は、睡眠障害や感染症後の不調、甲状腺の病気、うつ病、薬の副作用などによっても生じます。
原因によって必要な治療や対応が異なるため、自己判断で疲労やストレスによるものと決めつけないことが大切です。
受診を検討する目安
十分に休んでも症状が改善しない、以前より物忘れが増えた、仕事や日常生活に支障が出ている場合は、早めに相談しましょう。
症状が続く期間だけで受診の必要性が決まるわけではありません。短期間でも症状が強い場合や、急に悪化した場合は、早急な対応が必要です。
まずは内科やかかりつけ医に相談する
どの診療科を受診すればよいか分からない場合は、内科やかかりつけ医に相談しましょう。
感染症後から症状が続いている場合は、罹患後症状に対応する医療機関も相談先になります。医師が症状や診察結果を確認し、必要に応じて専門の診療科を案内します。
症状の経過を記録しておく
診察を受ける際は、症状が始まった時期、困っていること、症状が悪化する状況、睡眠時間、服用中の薬などをメモしておきましょう。
特に、仕事をした後に症状が悪化する場合は、どのような作業をどれくらい行ったのかも記録しておくと、診察時の参考になります。
なお、突然ろれつが回らなくなる、片側の手足に力が入らなくなる、急に言葉が出なくなるといった症状が現れた場合は、脳卒中などの可能性があるため、すぐに119番通報してください。
ストレスチェックで負担に気づく
ブレインフォグを感じる背景に、仕事の負担やストレスが関係している場合は、ストレスチェックの結果も自分の状態を振り返る材料になります。
仕事の負担や心身の反応を確認する
ストレスチェックでは、仕事の量や裁量の程度、対人関係などのストレス要因に加え、疲労感や不安感、気分の落ち込みといった心身の反応を確認できます。
結果を見ながら、最近の仕事量や残業時間、睡眠の状況などを振り返ってみましょう。
必要に応じて仕事の進め方を見直す
仕事の量的負担が大きい場合は、担当業務や納期を確認し、上司に業務分担の変更を相談する方法も考えられます。
また、周囲から十分な支援を受けられていないと感じる場合は、仕事上の相談先やサポート体制について確認しましょう。
産業医や社内の相談窓口を活用する
ストレスチェックで高ストレスと判定され、所定の要件を満たす場合は、本人の申し出により、医師による面接指導を受けることができます。
また、高ストレスと判定されていなくても、仕事の負担や心身の不調について、産業医や社内の相談窓口に相談することは可能です。
ただし、ブレインフォグの症状が続いている場合は、ストレスチェックの結果だけで原因を判断せず、医療機関にも相談することが大切です。
参考:厚生労働省/健康づくりのための睡眠ガイド2023
参考:University College London Hospitals NHS/Cognition and Brain Fog(ブレインフォグへの対処)
まとめ
ブレインフォグとは、頭に霧がかかったように感じ、集中力や記憶力、判断力が落ちたように感じる状態を指す言葉です。仕事では、会議の内容が頭に入らない、メールを何度も読み返す、ミスや物忘れが増えるなどの形で表れることがあります。原因は睡眠不足や疲労、ストレスなど一つに限らず、心身の負担が重なって起こる場合もあります。
ストレスチェックはブレインフォグを診断するものではありませんが、仕事の負担感や疲労、メンタル面の変化に気づくきっかけになります。結果を見て終わりにせず、休息や相談、職場環境の見直しに活用することが大切です。
ストレスチェックを活用すれば、職場の負担感やサポート状況を把握し、バイアスが生む働きにくさを見直す手がかりにできます。
参考:厚生労働省/ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策
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