新入社員は慣れない環境・人付き合いの中で働いているため、他の社員に比べてストレスを溜めがちです。
実際に、日経ビジネスでも、新入社員の五月病が近年の社会問題として取り上げられています。
コストをかけて採用した人材を手放さないためにも、新入社員のメンタルケアはとても重要です。
この記事では、どのような対策をとれば新入社員のメンタル不調にいち早く気づき、職場復帰に導けるのかについて紹介します。
目次
相談できる環境の整備
まずは、メンタルの不調に陥る前の段階で新入社員の悩みに気付いてあげることが重要です。
新入社員の悩みを早期発見できる方法として、以下の3つを紹介します。
懇親会の開催 メンター制度の導入 相談窓口の設置 |
懇親会の開催
仕事の場ではプライベートなことを相談しにくいという人もいるでしょう。その場合、懇親会などの仕事以外の場を設けることで、悩みを相談しやすい環境を用意できるかもしれません。
懇親会を開くのが難しい場合は、ランチの時間を有効活用するのも一つの手です。年齢の近い先輩社員や同期がランチに誘うことで、そこで悩みを打ち明けてくれるかもしれません。
ただ、気軽に悩みを打ち明けられる人もいれば、1人で悩みを抱え込んでしまう人もいて、そのような人から無理に悩みを聞き出そうとすると、それがさらにストレスになってしまう可能性がありますので、その点は十分に注意する必要があります。
メンター制度の導入
若手社員にメンターとして中堅社員をあてて、相談しやすい環境を作るのも良いでしょう。実際に、トヨタはこの制度を実施しています。
年齢差のある直属の上司には悩みを打ち明けにくい場合でも、日頃からお世話になっているメンターであれば相談できる実例もあるようです。吐き出すだけでラクになれる、とよく言いますが、これは本当です。悩みやグチなどを一度吐き出すと、次からはメンターに相談しやすくなり、段々とストレスコントロールができるようになるケースもあります。
ただ、悩みの内容が深刻だったり長期間に及んでいたりする場合には、メンターだけで解決するのも難しくなるでしょう。その場合には、本人の了解をとってカウンセラーや産業医に相談することを勧めてみましょう。
なお、この時には、カウンセラーや産業医などには守秘義務が課せられていること、悩みが外部に漏れる心配はないことをしっかりと伝えるようにしましょう。
相談窓口の設置
職場の人間には相談しにくいという人もいると思います。そのような方のために、相談窓口を設置するのも良いでしょう。
利用することに抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、心は一度不調に陥ってしまうと、回復に時間がかかるものです。悪化してしまう前に、これらのサービスに頼ることが有効であることは、セミナー等でしっかりと伝えるようにしましょう。
セルフチェックやメンタルケア教育の実施
相談できる環境を整えたとしても、どのような症状がメンタルの不調なのかを知らなければ、症状が軽いうちに対処することは難しいでしょう。
そのため、新入社員に対してメンタルケアの教育を実施するのが重要です。また、早期スクリーニングができるセルフチェックを定期的に行うことも必要です。
メンタルケアの講習を行う
メンタルの不調は骨折など目に見てわかるものばかりではないので、人によっては自身のメンタルの不調に気付かず放置し、悪化してしまうこともあります。
早期発見して職場復帰を目指せるようにするためにも、メンタルケア講習はとても重要です。
メンタルケア講習では、以下の内容について触れると良いでしょう。
メンタル不調の初期症状に関する教育 不利益を被らないことを事前に告知 相談窓口の案内 |
メンタル不調の初期症状に関する教育
不調にいち早く気付くためにも、メンタル不調の初期症状に関する教育を実施することは重要です。
例えば、うつ病は気分の落ち込み以外にも、「倦怠感」や「集中力の低下」などが初期症状として挙げられます。
また、ミスが増える、朝起きられないという症状もストレスが原因ということがあります。
心因性発熱や肩こり、蕁麻疹がストレスの原因ということもあります。このように典型的な症状以外にも、初期症状の教育を行うことで、早期発見に繋がるかもしれません。
不利益を被らないことを事前に告知
メンタル不調で悩む人の中には、相談することで給料を下げられるなど、仕事で不利益を被るのではないかと心配する方もいるでしょう。
そのような心配があると、相談することは難しいです。そのため、メンタルの不調に関する相談を受けても不利益を被らないことを事前に告知しておくと良いでしょう。
また、あわせて不調の原因がストレスや過労に関連している可能性が高いのであれば、会社もそれを踏まえて今後の勤務形態について考えること、体調を崩さずに快適に働けるようになるためにはどうすればよいかを検討することを伝えておくと、より安心して相談できるようになるでしょう。
相談窓口の案内
相談窓口を設置しても、その存在が知られていなければ意味がありません。メンタルケア講習では、相談窓口への連絡方法も案内しましょう。
相談窓口は、職場事情や組織の特性などについて熟知していますから、具体的な解決方法を示し働きかけてくれることも期待できます。
定期的にメンタルチェックを実施する
精神障害の労災認定の増加が問題視されました。それを受けて労働安全衛生法が改正され、事業所は定期的なストレスチェックを行うことが義務付けられました。
しかし、形式的にストレスチェックを行うだけでは意味がありません。必要に応じて精神科医の専門家にコンサルを依頼できる環境を整えておくのも良いでしょう。
既存社員に対する若手指導の方針の教育
最近の新入社員は、怒られることに対して慣れていません。更に、新型コロナウイルスの影響で大学や高校教育がオンライン化していたこともあり、他の世代に比べてコミュニケーションをとる機会も多くはありませんでした。
そのような新入社員に対して頭ごなしに怒ると、場合によってはパワハラだと思われるかもしれません。
時代に合わせて後輩の指導方法を変える必要があるということを既存の社員に対して教育することも、新入社員のメンタルケアに繋がるでしょう。
新入社員のメンタルケアから副産物が生まれることも
職場に馴染めない新入社員のメンタルケアのためにメンター制度を導入したトヨタですが、職場の風通しが良くなったり、社員を適切に評価できるようになったりするという副産物も生まれています。
そのようなポジティブな評判が社員の後輩に伝わっていけば、より優秀な人材の獲得にも繋がるでしょう。
このように、新入社員の早期離職を防ぐ以外にもメリットが多数存在するので、新入社員のメンタルケアはとても重要です。
メンタルの不調の初期症状に関する教育や相談窓口の設置など、手軽にできることから新入社員のメンタルケアを実施してみてください。
また、近年はメンタルケアに関する外部委託サービスも増えています。場合によってそのようなサービスを活用するのも良いでしょう。
監修:精神科医・日本医師会認定産業医/近澤 徹
【監修医師】 精神科医・日本医師会認定産業医 株式会社Medi Face代表取締役 近澤 徹 オンライン診療システム「Mente Clinic」を自社で開発し、うつ病・メンタル不調の回復に貢献。法人向けのサービスでは産業医として健康経営に携わる。医師・経営者として、主に「Z世代」のメンタルケア・人的資本セミナーや企業講演の依頼も多数実施。 |