「不安」は誰もが感じる感情です。たとえば、山歩きをしていて「熊に注意」という看板を見かければ、不安を感じることでしょう。また、日常生活の中でも人前で話す時に緊張してしまうのはごく当たり前の反応です。
しかし、これといった原因もないのに不安を感じたり、過度に緊張してしまい、生活に悪影響を及ぼすようであれば、不安症の恐れがあります。
この記事では、不安症の具体的な症状や、そのチェック方法、対処法などを紹介します。
目次
不安症とは
不安症とは、正式には「不安症群」という名称で、いつの病気を示す病名ではなく、いくつかの病気を総称したものです。その症状によって、大きく4つに分類できます。
パニック障害 社会不安障害 強迫性障害 全般性不安障害 |
パニック障害
パニック障害とは、ある日突然強い不安や恐怖とともに、動悸、息切れ、目まい、冷や汗などの症状が起こり、「また起こるのではないか」と不安になる症状です。
パニック発作は通常、30分程度で軽快しますが、。パニック障害では、これらが起きたらどうしようと不安に思う、「予期不安」が見られ、また、パニック発作が起きた場所を避ける傾向もあります。
社会不安障害
社会不安障害とは、人に注目される状況を恐れて、人と話すことや人が多い場所に苦痛を感じる病気です。発表やスピーチなど人前で注目を浴びることが怖くなり、ひどい場合は、パニック発作を起こすこともあります。
強迫性障害
強迫性障害とは、やる必要がない行為を繰り返していないと不安になる病気です。例えば、次のような症状があります。
・家の鍵を閉めたか不安になる
・繰り返し手を何度も洗う
・コンロの火を消したか不安になる
・何度もこれらの行為を繰り返し、日常生活に支障をきたすのが強・迫性障害です。
全般性不安障害
全般性不安障害とは、学校のことや家族のことなど、日常生活上の様々なことが気になり、不安に思う状態が半年以上続く状態を指します。不安だけでなく、夜眠れない、疲れやすい、イライラするといった症状が見られることもあります。また、集中力の低下や筋肉の緊張、身体の不調を感じることも多く、日常生活に大きな支障をきたします。
不安障害は何が原因?
不安障害は若い世代で発症することが多い病気で、発症する原因は明らかになっていません。しかし、ストレスなどの環境的要因や、不安障害の家族歴などの遺伝的要因が複雑に影響しあっていると考えられています。
たとえば、子どもに多い分離不安症は、母親と離れるのが不安でずっと母親にまとわりつく行動が見られます。
6歳の双子を対象とした研究では、分離不安症の遺伝率は73%という報告もあります。
環境要因もあると言われていて、両親との離婚やペットとの死別などの喪失体験、引越しなどがストレスとなって発症することもあります。
また、不安障害の患者は、うつ病や他の不安障害を併発しやすいことが知られています。
不安障害のチェック
不安障害では、実際には危険や危機でない状況でも不安や恐怖を感じてしまい、日常生活に支障をきたすことがあります。もし「不安障害かもしれない」と感じたら、まずはセルフチェックをしてみることをおすすめします。
パニック障害
パニック障害は、パニック発作と呼ばれる激しい発作が特徴です。パニック障害は、通勤電車の中、仕事中、自宅でくつろいでいる時、眠ろうとしてベッドに入ったときなど、いつ起こるか分かりません。次の10個の項目のうち3個以上当てはまり、それらの症状が30分以内におさまる場合、パニック障害である可能性があります。
動悸 発汗 手足の震え 吐き気 めまい 胸痛 息苦しさ 手足の痺れ 気が遠くなる感覚 自分が自分ではない感覚 |
強迫性障害
強迫観念とは、繰り返し頭に浮かび、不安や恐怖を引き起こす考え、イメージ、衝動のことです。本人にとって無意味であると分かっていても、抑えることができません。以下の1つでも当てはまり、それによって日常生活に支障が出ている場合、強迫性障害の可能性があります。
・手が荒れるまで何度も繰り返し手を洗う ・自宅を出てから家の鍵を閉めたか火の始末をしたか気になり不安になる ・順番通りに物事を進めないと気が済まない ・取り返しのつかない間違いを犯さないか不安になる |
全般性不安障害
全般性不安障害は、日常生活の様々な状況や出来事に対して過度な不安や心配が続く状態を指します。症状には、疲労感、集中困難、過敏性、筋肉の緊張、睡眠障害など続き、、生活の質を低下させることが多く、社会的、職業的な機能にも影響を与えます。
次のチェックリストのうち2つ以上当てはまり、それらが半年間続き、日常生活に支障をきたしている場合、全般性不安障害の恐れがあります。
・仕事や学業が不安 ・集中力の低下 ・夜眠れない ・イライラする 気持ちが落ち着かない |
これらのチェックリストで不安障害の疑いがあると出た場合は、早めにカウンセリングを受けることをおすすめします。
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不安障害の対処法
不安障害だと診断された場合、薬物療法もしくは行動認知療法で治療を行います。
これらの治療では、症状を完全に抑えるのではなく、症状と付き合っていきながら問題なく日常生活を送れることを目標とします。
行動認知療法
行動認知療法では、医師や臨床心理士との対話を通じて治療が行われます。
不安と感じる状況を、簡単にできそうなところから練習し、最後の目標に向けて少しずつステップアップして、最後には苦手なものに対処できるようになるという方法です。もちろん、無理強いしてやるような療法ではなく、本人ができそうだと思うところから少しずつチャレンジしていきます。
通常、薬物治療と並行して行われます。
不安障害の薬物療法
不安障害の治療では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や抗不安薬という薬が用いられます。
ただし、SSRIは効果が出るまでに2週間程度かかります。そこで、短期間で効果が出て不安や緊張を緩和させてくれる抗不安薬を処方して、不安が強い時に屯用(症状に応じて服用すること)で服用してもらうこともあります。
なお、SSRIは服薬を急にやめると、症状の再発や離脱症状が起こる場合があるため、不安症の症状が改善したからといって勝手に薬をやめるのではなく、担当医の指示に従って少しずつ薬の量を減らしていくことが大切です。
ストレスチェックを活用しよう
不安障害は、早期に適切な治療を行うことで、問題なく日常生活を送れるようになる病気です。
ストレスチェックを適切に活用することで、症状が深刻化する前に適切な対策を講じることができます。定期的なチェックは、ストレスや不安のパターンを把握し、トリガーとなる要因を特定するのにも役立ちます。
また、ストレスチェックを通じて、自分自身の精神状態を客観的に評価することができ、必要な場合には専門家への相談や治療を早期に開始するきっかけになります。治療の効果が高まり、日常生活への影響を最小限に抑えることが可能です。
【監修医師】 精神科医・日本医師会認定産業医 株式会社Medi Face代表取締役 近澤 徹 オンライン診療システム「Mente Clinic」を自社で開発し、うつ病・メンタル不調の回復に貢献。法人向けのサービスでは産業医として健康経営に携わる。医師・経営者として、主に「Z世代」のメンタルケア・人的資本セミナーや企業講演の依頼も多数実施。 |