ストレスチェック 検討会(厚労省)を精神科医が解説

厚生労働省では、2024年3月29日から2025年11月20日までに、「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」が9回開催されました。
第1回・第2回では、職場のメンタルヘルス対策の現状やストレスチェック制度の効果が検証されました。その後、50人未満の事業場への義務化、集団分析と職場環境改善、小規模事業場における実施体制などについて議論がなされ、2024年11月には中間とりまとめが公表されています。
さらに、2025年5月の労働安全衛生法改正を受け、第8回・第9回では、50人未満の小規模事業場に向けたストレスチェック実施マニュアルの内容が検討されました。

この記事では、ストレスチェック制度の基本的な仕組みと、第1回から第9回までの主な議論を紹介します。

監修医師:近澤 徹
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役

ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会とは

ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会は、ストレスチェック制度の実施状況や効果を検証し、今後の職場のメンタルヘルス対策について検討するために設置された検討会です。

ストレスチェック制度は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐ一次予防を強化するため、2015年12月に施行されました。しかし、制度開始後も精神障害の労災支給決定件数や、メンタルヘルス不調による休業者・退職者がいる事業場の割合は増加傾向にありました。

また、制度開始当初は、常時50人以上の労働者を使用する事業場にストレスチェックが義務付けられる一方、50人未満の事業場では努力義務とされていました。小規模な事業場ほどメンタルヘルス対策やストレスチェックの実施割合が低いことも、検討会が開かれた背景の一つです。

第1回から第9回までの主な検討内容は、次のように整理できます。

時期 主な検討内容
第1回・第2回 職場のメンタルヘルス対策の現状、ストレスチェック制度の効果
第3回・第4回 第1回・第2回で示された意見の整理、ストレスチェック制度の論点
第5回~第7回 50人未満の事業場、集団分析、職場環境改善、中間とりまとめ
第8回・第9回 労働安全衛生法改正の報告、小規模事業場向けマニュアルの検討

第1回は2024年3月29日、第2回は同年4月25日に開催されました。第3回・第4回では、それまでに出された意見や今後検討すべき論点が整理され、第5回から第7回にかけて中間とりまとめの内容が検討されています。
2024年11月1日に公表された中間とりまとめでは、「ストレスチェック制度の効果検証」「50人未満の事業場におけるストレスチェック」「集団分析・職場環境改善」の3項目が、主な検討事項として整理されました。
参考:厚生労働省/ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会

ストレスチェック制度とは

ストレスチェックとは、労働者が質問票に回答することで、仕事上の負担や心身のストレス反応、周囲からの支援状況などを調べる検査です。病気を診断する検査ではなく、労働者本人に自分のストレス状態への気付きを促し、メンタルヘルス不調の未然防止につなげることを目的としています。

ストレスチェックの結果は、実施者から労働者本人へ直接通知されます。本人の同意がない限り、個人の検査結果が事業者に提供されることはありません。

高ストレス者に該当し、医師による面接指導が必要と判断された労働者は、事業者に面接指導を申し出ることができます。申出を受けた事業者は医師による面接指導を実施し、医師の意見を踏まえて、必要に応じて労働時間の短縮や配置の変更などの就業上の措置を検討します。

ストレスチェック制度の主な流れ

ストレスチェック制度は、単に質問票を配布して結果を返すだけの制度ではありません。
まず、事業者が実施方針や社内ルールを定め、対象となる労働者に質問票を配布します。その後、医師や保健師などの実施者が結果を評価し、労働者本人に通知します。
高ストレス者のうち、医師による面接指導を申し出た労働者には面接指導を行い、その結果に応じて就業上の措置を検討します。さらに、個人が特定されない方法で結果を集計・分析し、職場環境の改善につなげることも、ストレスチェック制度の重要な取組です。

集団分析と職場環境改善

集団分析とは、ストレスチェックの個人結果を、部署や職場などの一定規模の集団ごとに集計・分析することです。個人を特定するためのものではなく、仕事の量や裁量度、上司・同僚からの支援など、職場ごとのストレス要因を把握するために行います。
集団分析の結果から、仕事量が多い、業務の進め方を自分で決めにくい、職場内のコミュニケーションが不足しているといった課題が確認された場合は、業務配分の見直しや情報共有の改善、管理監督者への研修などにつなげます。
集団分析と、その結果を活用した職場環境改善は、現時点では事業者の努力義務です。ただし、ストレスチェック制度の主な目的がメンタルヘルス不調の未然防止であることを踏まえると、個人への結果通知だけでなく、職場のストレス要因そのものを減らす取組も重要です。

第1回・第2回で検証されたストレスチェック制度の効果

第1回・第2回の検討会では、学術論文や厚生労働省の調査報告書などをもとに、ストレスチェック制度の効果が検証されました。
中間とりまとめでは、ストレスチェックと医師による面接指導によって、自分のストレス状態への気付きを促す効果や、個人のストレスを低減させる効果が確認されたとしています。
一方で、ストレスチェックを一度実施すれば、すべての労働者や事業場で同じ効果が得られるわけではありません。結果の通知、セルフケアに関する情報提供、医師による面接指導、集団分析、職場環境改善などを組み合わせ、継続的に取り組む必要があります。

自分のストレス状態への気付きを促す

ストレスチェックの基本的な役割は、労働者が自分のストレス状態を客観的に確認する機会をつくることです。
厚生労働省の調査では、ストレスチェックの個人結果を受け取ったことについて、約7割の労働者が有効だったと回答しています。また、医師による対面の面接指導を受けた労働者の過半数が、面接指導を受けたことを有効と回答しました。
ただし、個人結果を通知するだけでは、労働者がどのように対応すればよいのか分からない場合があります。事業者は、結果の見方やセルフケアの方法、社内外の相談窓口、高ストレス者に対する医師の面接指導などを、あわせて案内することが重要です。

事業場のメンタルヘルス対策を進める

ストレスチェック制度の導入は、事業場がメンタルヘルス対策全体を見直すきっかけにもなります。
実施方針や社内ルールを定め、相談窓口、医師の面接指導、就業上の措置、個人情報の管理方法などを整理することで、メンタルヘルス不調が生じた場合の対応体制も明確になります。
ただし、ストレスチェックを実施すること自体が目的になってしまうと、制度の効果は限定的です。労働者が安心して受検できる環境を整え、必要な支援や職場環境改善へつなげることが求められます。

集団分析と職場環境改善を組み合わせる効果

検討会では、ストレスチェックに集団分析と職場環境改善を組み合わせた研究結果も紹介されました。
常勤労働者3,891人を対象とした調査では、ストレスチェックの受検と、労働時間や働き方、職場内のコミュニケーションなどの改善をあわせて経験した労働者は、どちらも経験していない労働者と比べて、約1年後の心理的ストレス反応が有意に低下していました。
また、全国の労働者3,915人を2年間追跡した調査では、職場環境改善を経験した労働者は、ストレスチェックを受検していない労働者と比べて、心理的ストレス反応が低下し、生産性の指標も改善していました。
これらの研究結果は、個人にストレスチェック結果を返すだけでなく、結果を職場単位で分析し、実際の職場環境改善まで行うことの重要性を示しています。

一方、特定の研究で確認された結果が、すべての職場にそのまま当てはまるとは限りません。職場ごとの課題を確認し、改善策を実施した後も、効果を評価して見直す必要があります。

第3回から第7回までの主な検討内容

第3回では、第1回・第2回で出された主な意見と今後の検討の進め方が整理されました。第4回以降は、50人未満の事業場へのストレスチェックの適用、集団分析、職場環境改善、労働者のプライバシー保護などについて具体的な検討が進められています。
第5回から第7回では中間とりまとめの内容が検討され、2024年11月1日に正式な中間とりまとめが公表されました。

50人未満の事業場にも義務を広げる方向へ

中間とりまとめでは、ストレスチェックや医師の面接指導を通じて、自分のストレス状態に気付く機会は、事業場の規模にかかわらず、すべての労働者に与えられることが望ましいとされました。
制度開始当初、50人未満の事業場では、産業医の選任義務がなく、個人情報を適切に管理する体制が十分ではないとの懸念から、ストレスチェックが努力義務とされていました。
その後、外部機関への委託やオンラインによる実施が広がり、労働者のプライバシーを保護しながら実施できる環境が一定程度整ってきたとして、十分な支援体制を整えたうえで、50人未満の事業場にも実施義務を広げる方向が示されました。

小規模事業場では外部委託を推奨

産業医がいない小規模事業場では、ストレスチェックの個人結果や高ストレス者に関する情報を、事業場内だけで適切に管理することが難しい場合があります。
このため、中間とりまとめでは、労働者のプライバシー保護の観点から、50人未満の事業場では、ストレスチェックの実施を外部機関へ委託することが原則として推奨されました。

ただし、外部機関へ委託すれば、事業者が制度に関与しなくてもよいわけではありません。事業者は、ストレスチェックを行う目的や方針を示し、実施計画、社内ルール、実施体制などを整える必要があります。

集団分析と職場環境改善は努力義務を継続

中間とりまとめでは、集団分析と職場環境改善について、ストレス要因そのものを減らすために重要な取組であると評価されました。

一方、2023年の労働安全衛生調査では、集団分析を実施した事業所の割合は、50人以上の事業所で64.5%、10人から49人の事業所では22.6%にとどまっていました。
実施方法や活用方法について十分に理解されていない事業場も多く、まずは適切な実施方法や取組事例を普及させる必要があるとして、中間とりまとめの段階では、一律の義務化は行わず、努力義務を継続する方向となりました。

50人未満の事業場でもストレスチェックが義務化

2025年5月14日に公布された改正労働安全衛生法により、これまで努力義務だった労働者数50人未満の事業場についても、ストレスチェックの実施が義務付けられることになりました。
第8回検討会では、この法改正の内容が報告されるとともに、小規模事業場が円滑に制度を導入できるよう、実施マニュアルの作成や地域産業保健センターの体制拡充などを進める方針が示されています。

なお、事業場とは、企業全体ではなく、本社、支店、営業所、店舗、工場など、一定の場所を単位として事業が行われている組織を指します。ストレスチェックの実施体制を検討する際は、会社全体の従業員数だけでなく、それぞれの事業場の状況を確認する必要があります。

施行日は2028年4月1日

第8回・第9回の検討時点では、50人未満の事業場への義務化について、法律の公布から3年以内に政令で定める日に施行するとされていました。
その後、施行日は2028年4月1日と決定されました。50人未満の事業場でも、同日からストレスチェックの実施が義務となります。

第8回・第9回で検討された小規模事業場向けマニュアル

2025年8月20日に開催された第8回では、小規模事業場向けのストレスチェック実施マニュアルを作成するため、ワーキンググループを設置することが示されました。
マニュアル作成に向けた主な論点として、次の7項目が整理されています。

  • 関係労働者の意見を聴く機会の活用
  • 事業者の関わり方と外部委託先の適切な選定
  • 調査票の項目数や紙・Webなどの実施方法
  • 高ストレス者に対する医師の面接指導
  • 集団分析と職場環境改善
  • 労働者のプライバシー保護
  • 10人未満など、特に小規模な事業場での実施方法

第8回では、事業者による方針表明、労働者からの意見聴取、社内ルールの作成、実施担当者や外部委託先の選定、結果の通知・保存、医師の面接指導、集団分析、プライバシー保護など、制度の一連の流れに沿って論点が整理されました。

第9回ではマニュアル案を検討

2025年11月20日に開催された第9回では、ワーキンググループでの検討を踏まえた「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル案」が提示されました。

マニュアル案は、ストレスチェック制度の目的や効果を説明したうえで、次の順序で実施方法を確認できる構成となっています。

  • 事業者による実施方針の表明
  • 関係労働者からの意見聴取
  • 社内ルールの作成と周知
  • 実務担当者の選任
  • 外部委託先と面接指導を依頼する医師の選定
  • 対象者、実施時期、調査票の決定
  • 質問票の配布、回収、結果通知
  • 医師による面接指導と事後措置
  • 集団分析と職場環境改善
  • プライバシー保護と不利益取扱いの禁止

また、モデルとなる実施規程、外部委託先からサービス内容の説明を受けるための書式、57項目版と23項目版の職業性ストレス簡易調査票などを、巻末資料として収録する案も示されました。

外部委託しても事業者が主体的に関わる

小規模事業場では、個人情報の管理や専門人材の確保を考慮し、外部機関へストレスチェックを委託する方法が想定されています。

ただし、外部委託先にすべてを任せるのではなく、事業者が制度の目的を理解し、方針の表明、担当者の選任、労働者への周知、実施状況の確認などに主体的に関わる必要があります。

外部委託先を選ぶ際は、医師や保健師などの実施者が配置されているか、個人結果が適切に管理されるか、医師の面接指導まで対応できるか、委託終了時にデータを引き継げるかといった点を確認することが重要です。

労働者のプライバシー保護

小規模事業場では、事業者と労働者の距離が近く、ストレスチェックの結果や面接指導の申出を知られることへの不安が生じやすいと考えられます。
そのため、個人結果を取り扱う人を必要な範囲に限定し、事業者や人事権を持つ管理職が、本人の同意なく個人結果を取得しない仕組みを整える必要があります。

また、ストレスチェックを受けなかったこと、検査結果、高ストレス者に該当したこと、医師による面接指導を申し出たことなどを理由に、解雇、配置転換、降格などの不利益な取扱いを行ってはなりません。

正式なマニュアルは2026年2月に公表

第9回で検討された内容を踏まえ、厚生労働省は2026年2月25日に、「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」の正式版を公表しました。

小規模事業場が準備しておきたいこと

50人未満の事業場では、産業医や衛生委員会が設置されていないことも多いため、制度の施行直前になってから準備を始めると、外部委託先や面接指導を依頼する医師を確保できない可能性があります。

まずは、自社の事業場ごとの労働者数と対象者を確認し、ストレスチェックの実務を担当する人を決めます。そのうえで、外部委託の有無、委託する業務の範囲、医師の面接指導を依頼する方法、個人情報の管理方法などを整理します。

また、ストレスチェックの目的や個人結果の取扱い、不利益取扱いの禁止などを労働者に説明し、安心して受検できる環境をつくることも重要です。

小規模事業場では、地域産業保健センターや産業保健総合支援センターによる相談、研修、個別訪問などの支援も利用できます。
 


     

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    監修:精神科医・日本医師会認定産業医/近澤 徹

    精神科医 近澤徹氏

    【監修医師】
    精神科医・日本医師会認定産業医
    株式会社Medi Face代表取締役・近澤 徹

    オンライン診療システム「Mente Clinic」を自社で開発し、うつ病・メンタル不調の回復に貢献。法人向けのサービスでは産業医として健康経営に携わる。医師・経営者として、主に「Z世代」のメンタルケア・人的資本セミナーや企業講演の依頼も多数実施。


    > 近澤 徹 | Medi Face 医師起業家(Twitter)

    まとめ

    ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会では、第1回・第2回で制度の効果が検証され、その後、50人未満の事業場への義務化、集団分析、職場環境改善、小規模事業場における実施体制などについて検討が重ねられました。
    2024年11月の中間とりまとめでは、十分な支援体制を整えたうえで、50人未満の事業場にもストレスチェックの実施義務を広げる方向が示されました。これを受けて2025年5月に労働安全衛生法が改正され、2028年4月1日から、50人未満の事業場でもストレスチェックが義務化されます。
    第8回・第9回では、小規模事業場における実施方法が具体的に検討され、2026年2月には正式な実施マニュアルが公表されました。

    ストレスチェックは、質問票を配布して結果を返すだけでは十分ではありません。労働者本人のストレスへの気付きを促し、必要に応じて医師の面接指導へつなげるとともに、集団分析を活用して職場のストレス要因を見直すことが重要です。
    50人未満の事業場では、義務化の施行を待つのではなく、外部委託先、医師の面接指導、個人情報の管理、労働者への周知など、必要な実施体制の検討を早めに始めることが求められます。

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