ストレス とは?意味・症状を解説

ストレスによる反応が長く続くと、身体的な不調や精神的な不調が現れることがあります。
この状態がさらに長く続くと、うつ状態、うつ病などのメンタルヘルス疾患を発症する可能性もありますので、早期に適切に対処する必要があります。

この記事では、ストレスの意味やストレスによる不調・病、ストレスに適切に対処するために最低限知っておきたい知識についてご紹介します。

監修:山本 久美(株式会社HRデータラボ 公認心理師)

ストレスとは

人にとって心理的あるいは身体的な負担となるような出来事を、「ストレッサー(ストレス要因)」といいます。そして、ストレッサーによって引き起こされた反応を「ストレス反応」、ストレスを受けても元に戻そうとする力を「ストレス耐性」といい、一般的にはこの3つをあわせてストレスと呼びます。

ストレッサーとストレス反応の関係は、心をゴムボールにあてはめるとイメージしやすくなります。

ボールを指で押さえつけるのがストレッサーで、ゴムボールがへこんだ状態がストレス反応です。
軽い力で押されただけなら、弾力性があれば元に戻ります(ストレス耐性)。
しかし、強い力で押されたり押されている時間が長かったりすると、形がゆがみ元に戻りにくくなります。
形がゆがみ元に戻りにくい状態が「ストレス関連疾患」で、あらわれる症状はストレッサーの強さ、時間、頻度の他、受け止め方によって変化します。

(1)ストレス要因(ストレッサー)

ストレス要因(以下ストレッサー)は、大きく分けると物理・化学・生物的要因(細菌・花粉など)と心理社会的要因に分類されます。

・物理的ストレッサー(騒音、高音など)
・化学的ストレッサー(化学物質による刺激など)
・生物的ストレッサー(花粉、細菌など)
・心理社会的ストレッサー(人間関係など)

どのストレッサーに関しても適切な対策が必要であることは言うまでもありません。なかでも心理社会的要因は、不安、焦燥、怒り、うつといった精神症状や、倦怠感や不眠などの身体症状、作業能率の低下、過食などの行動症状があらわれやすく、うつ状態やうつ病などのメンタルヘルス疾患につながることが懸念されます。そのため、個人任せにせず、職場や周囲が早期に気づき、正しい理解に基づいた対応を取ることが重要です。

(2)ストレス反応

ストレッサーによる刺激を受けると、人はその刺激に対抗します。対抗しきれなかった時に起こる反応を「ストレス反応」といいます。
ストレッサーによって引き起こされるストレス反応は、心理面、身体面、行動面の3つに分けることができます。

心理的な反応
ストレスが高まると、イライラしやすくなったり、不安や怒りを強く感じたりします。集中力が続かず忘れっぽくなり、これまで楽しめていたことにも興味がわかなくなる人もいます。
具体的には、不安感、イライラ、怒りっぽさ、抑うつ気分、意欲の低下、常に緊張している感覚、自信喪失などがあらわれやすく、心の余裕が少しずつ削られていく状態といえます。
身体的な反応
ストレスというと心理面の変化が注目されがちですが、実際には身体にもさまざまな反応があらわれます。自律神経のバランスが乱れることで、肩こりや頭痛、動悸や息切れを感じる人も少なくありません。
また、胃腸の不調として下痢や便秘が続いたり、食欲不振や不眠につながることもあります。反対に、過食によって体重が増え、肥満につながるケースもあります。
行動的な反応
ストレスが強まると、過食に走ったり、飲酒量や喫煙量が増えるなど、行動面に変化があらわれることがあります。また、集中力の低下から仕事上のミスや作業中の事故が起こりやすくなり、作業能率も下がりがちです。
さらに、朝起きるのがつらくなり遅刻や欠勤が増えるケースも見られます。これらは怠慢ではなく、心身の負担が限界に近づいているサインとして受け止めることが大切です。

これらのストレス反応は、3段階で変化します。
不安や緊張といった急性のストレス反応があらわれる「警告反応期」、ストレッサーに慣れ、一時的に乗り越えたように感じる「抵抗期」、そして心身のエネルギーを使い切ってしまう「疲弊期」へと進行します。
疲弊期に入ると、気力が湧かず回復にも時間がかかり、うつ状態や不安障害などのストレス関連疾患に移行している可能性が高まります。


引用: 文部科学省「第2章 心のケア 各論」
参考: 厚生労働省こころの耳「ストレスへの気づき」

(3)職場におけるストレスの実態

これまでご紹介したように、ストレス要因は、身体や心にさまざまな影響を及ぼします。では職場でストレスを感じている労働者は、どれくらいいるのでしょうか。

参考: J-STAGE「職場,および家庭におけるストレス要因が自覚的健康度,心理学的健康度に及ぼす影響」

厚生労働省の平成30年 労働安全衛生調査(実態調査)によると、現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は 58.0%と実に半数以上の労働者が、職場で強いストレスを感じていることが分かりました。

なかでも「仕事の質・量」と答えた労働者は59.4%と最も多く、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」が 34.0%、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」が 31.3%となっています。


引用: 厚生労働省「平成30年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」

米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が提唱した職業性ストレスモデルによれば、職場のストレッサーがストレス反応を引き起こし、さらに仕事以外の要因、個人要因、緩衛要因が影響を与え、個人のストレス耐性の限界を超えると、何らかの健康障害が発生すると考えられています。
このモデルによれば、職場のストレッサーを減らし緩衛要因を増やすことで、従業員のメンタルヘルス不調を予防することができるとされています。特に緩衝要因である「周りのサポートの有無」の役割は大きく、ストレス反応の軽減に大きく影響するとされています。

職場のメンタルヘルス対策

職場のメンタルヘルス対策は、未然防止(一次予防)、早期発見(二次予防)、治療からの職場復帰(三次予防)という幅広い範囲を含んでいます。
会社はメンタルヘルス対策の方針を表明して、その方針のもとに現状の把握、体制の整備、目標設定、計画策定、ストレスの軽減対策などを計画的に実施し、その結果について評価・見直しを行い、次年度の計画につなげていきます。

(1)個人のストレスを把握・評価する

ストレス変化が自分に起こっても、自分ではそのストレスになかなか気づけないことがあります。その結果、無理を重ねてしまい、対処が遅れてメンタルヘルス疾患につながるケースも少なくありません。特に、我慢が美徳とされやすい職場では見過ごされがちです。

そこで活用したいのが、ストレスチェック制度です。
ストレスチェック制度とは、ストレスに関する質問票に労働者が回答し、それを集計・分析することで、自分のストレス状態を客観的に把握する検査です。これまで努力義務だった50人未満の事業場でも実施が義務化され、施行は公布から3年以内、最長で2028年5月までに全事業場で年1回の実施と高ストレス者への医師面接が必須となります。
労働者が自分の状態を知ることで、早めに休息を取ったり、医師の助言を受けたり、会社に業務調整を相談することができます。制度を「気づきのきっかけ」として活用することが、未然防止につながります。
 

ストレスチェッカーとは

「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しているのはもちろん、2025年5月からは無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施が義務化されることとなりました。
導入や運用の相談は、ぜひお気軽にお問合せください。


★ ストレスチェック導入のご相談はこちら

 

(2)集団のストレスを把握・評価する

前述したストレスチェックは、個人だけでなく集団ごとにストレスを把握・評価することもできます。部署や職種、年代などの単位で傾向を確認することで、職場環境の課題が見えやすくなります。
集団ごとに労働者が感じているストレッサーやストレス反応を把握できれば、負担の大きい集団に対して早期に適切な対策を講じることが可能です。
さらに、ストレッサーが明確になることで、業務量や人間関係、体制面などへの具体的な改善策を検討でき、快適で働きやすい職場づくりの指針として活用できます。

(3)メンタルヘルス不調のリスクについて正しく理解する

メンタルヘルス不調については、いまだに「心の弱い人の問題だ」という誤った認識が残っています。
しかし、メンタル不調は誰にでも起こり得るもので、個人の性格や努力だけで防げるものではありません。
そのため、メンタルヘルス対策を特定の個人へのアプローチに限定せず、職場環境の改善や管理監督者の対処能力向上を目的とした研修など、職場全体の問題として取り組む仕組みづくりが重要です。

さらに、精神疾患は一定の要件を満たせば労災認定される可能性があり、認定されれば会社の管理責任が問われる場合もあります。経営陣を含め、管理職・従業員全員がメンタルヘルス対策の重要性を正しく理解することが欠かせません。

(4)職場の体制整備

メンタルヘルス対策では職場の体制や環境を整備することも求められます。「職場環境」は、大きく作業環境と組織環境に分けることができます。
事業者は従業員が安全に働けるよう作業環境を整える安全配慮義務がありますし、健康に働くことができるよう労務管理やハラスメント防止など組織環境を整える健康配慮義務も負っています。

職場環境に類する項目

作業場の環境 有害物質への暴露、騒音、照明、器具の性能、レイアウト
勤務上の環境 休憩場所、時差、福利厚生備品
労働時間 長時間労働や過重労働、休日出勤、深夜勤務
仕事の量 仕事量の多さ、作業負荷、工程量
仕事の質 能力と合わない単純作業、高度な業務
仕事のコントロール度 自分に裁量権があるか、ペースを決められるか
責任の重さ、役割 適性を発揮できるか、適性と合わない作業ではないか
職場の人間関係 ハラスメント、職場トラブル
目標や方針 目標や役割が明確か、昇進について情報があるか
ワーク・ライフ・バランス 常態的に公私のバランスが悪い
職場の風土・文化 固定化した慣習など
意思決定への参加 職場の意思決定に参加できるか
雇用の安定 リストラ、市場変化、雇用契約上の課題など

なお、先ほどご紹介したストレスチェックの結果からは「仕事のストレス判定図」を作成することができます。
職場のストレッサーが従業員に与えている影響や健康リスクの程度を判定することができるので、そのデータを職場改善に活用することができます。

(5)心の健康づくり計画の策定

厚生労働省の「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」では、職場のメンタルヘルスケアを推進するには、従業員の意見を聴きつつ、事業場の実態に合った取り組みを行うことが必要とされます。また、その具体的な方法について基本事項を定めた「心の健康づくり計画」を作成するべきとしています。
指針では、さらに「心の健康づくり計画」で決めるべき事項についても定められています。

①事業者におけるメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨を表明すること
事業場のトップがメンタルヘルスケアの重要性を認識し、その推進を表明することで全体の意識が高まり活動の効果が高くなります。

② 事業場における心の健康づくりの体制の整備に関すること
誰が中心となり、どのような場で議論しながら進めるか決めておきます。基本的には産業医の意見を聴きながら衛生委員会等で検討を進めるのがよいでしょう。

③ 事業場における問題点の把握及びメンタルヘルスケアの実施に関すること
中長期のメンタルヘルスケアの実施計画を立て、4つのケアをバランスよく実施することが求められます。
※4つのケアとは、①セルフケア、②ラインによるケア、③事業場内産業保健スタッフ等によるケア、④事業場外資源によるケアのことをいいます。


①セルフケア
・ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解
・ストレスチェックなどを活用したストレスへの気付き
・ストレスへの対処 など

②ラインによるケア
・職場環境の把握と改善
・労働者からの相談対応
・職場復帰における支援 など

③事業場内産業保健スタッフ等によるケア
・労働者や管理監督署者の相談対応
・労働者や管理監督者への教育研修
・職場復帰における支援 など

④事業場外資源によるケア
・情報提供やアドバイスを受けるサービスの活用
・ネットワークの形成
・職場復帰支援 など

④ メンタルヘルスケアを行うために必要な人材の確保及び事業場外資源の活用に関すること
メンタルヘルスケアを実施するために、産業保健スタッフなどにセミナーを受けさせたり、外部EAP機関を活用したりして体制を整えます。

⑤ 労働者の健康情報の保護に関すること
労働者の健康情報の保護は、メンタルヘルスケアに限らず健康管理全てにおいて行われるべきです。心の問題は誤解をされることもあるため、特に配慮が求められます。

⑥ 心の健康づくり計画の実施状況の評価及び計画の見直しに関すること
定期的に計画の実施状況について評価し、改善すべき事項を検討し計画の見直しを行います。

⑦ その他労働者の心の健康づくりに必要な措置に関すること
事業場の事情に合わせて、ルールやマニュアルを作成します。

まとめ

人はストレスを抱えると仕事のモチベーションや生産性が低下するため、職場のストレス要因を放置することは経営に悪影響を及ぼします。
ストレスチェックや厚生労働省の指針を活用し、事業経営の一環として職場環境の改善に取り組むことが望まれます。

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    監修:山本 久美(株式会社HRデータラボ 公認心理師)

    公認心理師 山本久美さんの写真

    大手技術者派遣グループの人事部門でマネジメントに携わる中、社内のメンタルヘルス体制の構築をはじめ復職支援やセクハラ相談窓口としての実務を永年経験。
    現在は公認心理師として、ストレスチェックのコンサルタントを中心に、働く人を対象とした対面・Webやメールなどによるカウンセリングを行っている。産業保健領域が専門。

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