燃え尽き症候群とは?精神科医が解説

燃え尽き症候群は、仕事や学業などで熱心に活動していた人が、突然に心と体のバランスを崩してしまう状態です。「バーンアウト症候群」とも呼ばれます。
主な症状としては、やる気の低下、慢性的な疲労感、不眠、イライラ、自己否定感などがあります。改善するためには、しっかりと休むこと、自分のペースを取り戻すこと、周囲に相談することが大切です。
また、完璧であることにこだわり過ぎず、小さな達成感を積み重ねることで、少しずつ気持ちが前向きになることもあります。

燃え尽き症候群とは

責任感を持って仕事に取り組んでいた人が、心身ともに疲弊し、意欲や達成感を失ってしまう状態を指します。特に仕事や介護、育児などで強い責任感を持って取り組んできた人に多く見られ、ある時から急に気力が切れたように感じてしまいます。「バーンアウト症候群」とも呼ばれ、メンタルヘルスの重要な課題のひとつとされています。燃え尽き症候群はうつ病とも似た面があるため、正しい理解と早めの対処が必要です。

燃え尽き症候群の主な症状

燃え尽き症候群の代表的な症状には、「情熱や関心の喪失」です。これまで熱意を持って取り組んでいた仕事や活動に対し急にやる気が出なくなり、「どうでもいい」と感じるようになります。また、疲れやすさや慢性的な倦怠感、イライラ、不眠といった身体的な症状も現れます。
さらに、「自分は何の役にも立っていない」という無力感や自己否定感が強くなり、人とのコミュニケーションも避けがちになります。症状を放っておくと、仕事や日常生活に深刻な影響が出ることもあるため注意が必要です。

燃え尽き症候群の5つの原因

燃え尽き症候群の背景には、いくつかの要因が重なっています。

①「過度な理想」
完璧を目指しすぎると、思うようにいかない現実とのギャップに苦しむことになります。

②「過剰な責任感」
なんでも自分で抱え込み、頼れないタイプの人が陥りやすいのが、燃え尽き症候群です。

③「成果が見えにくい環境」
努力しても認められない、成果が数字に出ないという状況は消耗につながります。

④「サポートの不足」
理解してくれる上司や仲間がいないと孤独感が増します。

⑤「自己ケアの不足」
休むことに罪悪感を持ち、休息を取らず走り続けた結果、心身が限界を迎えてしまいます。

燃え尽き症候群の改善方法

改善の第一歩は、「自分が疲れていることを認めること」です。無理して頑張り続けるのではなく、立ち止まって自分の状態に気づくことが大切です。
手を抜けるところは抜く勇気を持ち、しっかりと休む時間を確保することです。趣味や自然に触れる時間、友人との会話なども心の栄養になります。
また、信頼できる人に話すことで、考えが整理されたり、気持ちが軽くなったりします。専門のカウンセラーや精神科医に相談することも有効です。心と体をいたわりながら、自分のペースを取り戻していくことが回復への近道です。

燃え尽き症候群にならないためには

燃え尽き症候群にならないためには、すべてを完璧にやろうとせず、他人に頼ったり、時には「今日は休む」と決めたりする勇気を持つことです。
自分の疲れに早く気づくことも重要です。イライラや寝つきの悪さ、朝起きるのがつらいなど、サインを見逃さないようにしましょう。
また、オンとオフをしっかり分ける生活も効果的です。休日には仕事のことを考えず、しっかりリフレッシュすることで、心身のバランスが保てます。さらに、同じ目標を持つ仲間との対話や、気軽に相談できる関係性を築いておくことで、孤独やストレスを減らすことができます。

燃え尽き症候群とストレスチェック

燃え尽き症候群に気づく手段として、「ストレスチェック」の活用があります。
ストレスチェックとは、従業員が自身のストレス状態を把握するために行う検査で、職場のメンタルヘルス対策の一環として導入されています。
これまで従業員50人以上の事業所に年1回の実施が義務付けられていましたが、2025年3月に労働安全衛生法の改正案が閣議決定され、全事業所に義務化されます。
自身のストレスレベルを可視化することで、普段見逃しがちな疲れや負担に気づくきっかけになります。
燃え尽き症候群は、ある日突然やってくるものではなく、じわじわと蓄積した疲労やストレスが引き金になります。ストレスチェックを定期的に実施することで、早期の対処が可能となります。

自分の変化に気づくきっかけとして使う

ストレスチェックは、体調や気分の「いつもと違う」を可視化するのに便利なツールです。日々熱心に物事に取り組んでいると、自分が疲れていることにも気づきにくくなりますが、ストレスチェックを定期的に使うことで、集中力の低下や睡眠の質の悪化、気分の落ち込みなど、小さな変化に早く気づくことができます。結果を見て「最近、ちょっと無理していたかも」と思えれば、それだけでも十分な予防になります。頑張る自分を一度立ち止まらせる「気づきのタイミング」として、活用することができます。

セルフケアの見直しに役立てる

ストレスチェックの結果をもとに生活習慣や働き方を見直すことは、燃え尽きの予防につながります。たとえば、「疲れが取れにくい」「集中力が続かない」といった結果が出れば、睡眠や食事、運動などの基本的な生活習慣を見直すことにつなげます。ストレスの原因を特定できれば、それに応じてセルフケアを行います。自分を客観的に見つめる材料としてストレスチェックを使うことで、対処のヒントが見つかりやすくなり、無理を続ける前にリセットできます。

第三者への相談やサポートにつなげる

ストレスチェックの結果をきっかけに、周囲に相談するハードルが下がります。「こういう結果が出ていて…」と話すことで、自分の気持ちや状態を伝えやすくなり、職場の上司や同僚、家族などに相談しやすくなります。ストレスチェッカーは、官公庁や上場企業、大学、病院などでも使われている日本最大級のストレスチェックツールです。受検画面やメール文面の変更、未実施者への自動通知、リアルタイム管理、医師面接希望の取得など、きめ細かなカスタマイズにも対応しています。

まとめ

ストレスチェッカーは、官公庁や上場企業、大学、大規模病院など多くの組織で採用されている、日本最大級のストレスチェックツールです。受検画面やメールの文面変更、未受検者への自動通知、リアルタイムの進捗管理、医師面接希望の収集など、現場に合わせた柔軟な対応が可能です。
さらに2025年5月1日からは、無料プランとWEB代行プランにおいて「プレゼンティーイズム(体調や心理的負担による生産性の低下)」の測定にも対応しています。プレゼンティーイズムの傾向を数値で捉えると、「本人がまだ自覚していない疲労」や「やる気の低下」に気づくことができ、燃え尽きが進行する前に対応する手がかりになります。
また、高ストレス者の傾向や、どの部署で負荷が高いかといった「組織全体の体調不良の傾向」も把握できます。プレゼンティーイズムの測定は、燃え尽き症候群を未然に防ぐ「職場の健康管理ツール」として有効です。
ぜひお問合せください。


    :参照記事
    >ワーカホリックとは|意味や症状、改善方法

    >エンゲイジメントとは|意味・メリット・取り組み方

    >ストレスチェック 全事業所で義務化へ

    監修:精神科医・日本医師会認定産業医/近澤 徹

    【監修医師】
    精神科医・日本医師会認定産業医
    株式会社Medi Face代表取締役
    近澤 徹

    オンライン診療システム「Mente Clinic」を自社で開発し、うつ病・メンタル不調の回復に貢献。法人向けのサービスでは産業医として健康経営に携わる。医師・経営者として、主に「Z世代」のメンタルケア・人的資本セミナーや企業講演の依頼も多数実施。

    > 近澤 徹| Medi Face 医師起業家