労働安全衛生法とは?安全配慮義務とは?罰則はある?

労働安全衛生法とは、労働者の安全と健康を守り、労働災害を防止するために制定された法律です。
安全衛生管理体制や平成27年にスタートしたストレスチェック制度など、会社(事業者)が行うべきさまざまなルールが定められており、労働者も会社に協力して、この法律を守っていかなければなりません。

労働安全衛生法とは

労働安全衛生法(以下、安衛法)は、労働基準法に合った内容を独立させ、労働災害の防止を目的として制定された法律です。
事業者(会社)は事業場の安全衛生水準の向上に努めなければならないとされ、事業者が講じるべき最低限のルールが定められています。
安衛法の目的は、職場における労働者の安全および健康を確保すること、そして快適な職場環境を構築していくことであり、具体的には下記の3つの手段・方法を用います。

①危害防止基準の確立
②責任体制の明確化
③自主的活動促進の措置

安衛法は、労働災害の状況を踏まえ労働災害を未然に防止するためのしくみを充実させるために、改正が行われました。そのひとつが、精神障害の労災認定件数の増加から創設されたストレスチェック制度です。

なお、安衛法の義務の主体は事業者ですが、安全で快適な職場は事業者だけの努力だけで成し遂げることはできませんので、労働者も労働災害を防止するために必要な事項を守り、労働災害の防止に関する措置に協力するよう努めなければなりません。

(1)安全配慮義務とは

安全配慮義務とは、労働者の生命や身体などの安全を確保して労働できるように、事業者が配慮すべき義務のことです。
機械等の点検や整備、安全装置の点検や設置、健康診断の実施などはもちろん、過重労働やハラスメントなどによる脳疾患、心臓疾患、精神疾患などの発症を防止するための措置などを講じる必要があります。

安全配慮義務違反が認められた裁判例は数多く存在しています。
なかでも、製造業における石綿(アスベスト)に関する裁判例が数多く、たとえば労働者が石綿を吸い込み、後に悪性中皮腫を患い死亡した事例では、会社がじん肺防止対策などの必要な措置をとらなかったとして、安全配慮義務違反が認められました。

恒常的な長時間労働に伴う業務に従事していたシステムエンジニアが過労死した事件において、雇用主である会社は適切な措置をとる義務があったとされました。

(2)労働安全衛生法の罰則

安衛法の違反行為には罰則があります。
ひとたび事故や災害が起こってしまい、事業者の違反行為が認められれば、罰則が適用されたり、刑事責任や賠償責任が発生したりといったリスクがあります。
罰則規定が置かれていない事項でも、事業者は安衛法の規定を遵守しなければなりません。
たとれば、ストレスチェックは常時50人以上の事業場で実施が義務づけられていますが、実施しなかったことに対する罰則は存在しません。しかし、ストレスチェックの実施状況の報告義務を怠ったことに対する罰則(50万円以下の罰金)は存在します。また、ストレスチェックを実施しないことは、労働基準監督署から是正勧告(法令違反の解消を求める行政指導)の対象にはなりますので、注意が必要です。

(3)安全衛生管理体制の構築

安衛法では、労働災害を未然に防ぎ労働者が安全な環境で作業するために、安全衛生管理体制の構築に関する規定が設けられています。
たとえば、林業、鉱業、建設業などの場合には常時使用する労働者が50人以上の事業場には、安全委員会を設置しなければなりません。
また、業種を問わず常時使用する労働者が50人以上の事業場には、衛生委員会を設置しなければなりません。
また、従業員が10人以上99人までの事業場には、安全衛生推進者や衛生推進者を設置しなければなりません。

林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業 製造業(物の加工業含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、所定の卸売業、所定の小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業 その他
1000人以上 統括安全衛生管理者、衛生管理者、安全管理者、産業医 統括安全衛生管理者、衛生管理者、安全管理者、産業医 統括安全衛生管理者、衛生管理者、産業医
300人~999人 衛生管理者、産業医
100人~299人 衛生管理者、安全管理者産業医
50人~99人 衛生管理者、安全管理者、産業医
10人~99人 安全衛生推進者 安全衛生推進者 安全衛生推進者

健康診断とストレスチェック

事業者は、労働者に対して、医師による健康診断を行わなければなりません。健康診断は、会社の規模にかかわらず労働者が1人であっても省略することはできません。
また、常時50人以上の事業場ではストレスチェックの実施が義務づけられています。

(1)健康診断

健康診断には、一般健康診断と特殊健康診断があります。
一般健康診断とは、職種によらず行わなければならないもので、定期健康診断、雇入れ時の健康診断、海外派遣労働者の健康診断などがあります。
特定業務(深夜業)の従事者に対しては、特定業務従事者の健康診断を行わなければなりません。

特殊健康診断とは、トンネルなどの高気圧環境での業務や有機溶剤を使用する印刷業など、他業務と比較して負傷、疾病などの発生原因との関連性が高い有害業務に従事して実施が義務づけられている健康診断です。

(3)ストレスチェック

ストレスチェックとは、労働者のメンタルヘルス対策として義務づけられている制度で、常時使用する労働者が50人以上の事業場で実施しなければなりません。

メンタルヘルス不調には、1次予防、2次予防、3次予防の3つの段階があると言われています。
1次予防とは、不調を起こす前に対策を行い未然に防止すること、2次予防とは、不調を早期発見し適切な措置を行うこと、そして3次予防とは、メンタル不調となり休職した従業員に対して復職支援や再休職防止措置を行うことです。
ストレスチェックは、この3つの段階のうち1次予防に該当し、労働者自身が自分のストレス状態に気づきセルフケアを促し、ストレス要因である職場環境の改善を目的としています。

ストレスチェックは、1年以内に1回以上実施することが義務づけられており、実施後は報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。
この報告書を提出しなかったり、虚偽の内容の報告書を提出したりした場合には、罰則の対象となり50万円以下の罰金が科せられます。

まとめ

安衛法は、労働災害防止のための危害防止基準を確立し、責任体制を明確にし、自主的活動の促進の措置を講じるなど、その防止に関する総合的計画的な対策を推進し、労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成の促進を目的としています。
安衛法の改正で創設されたストレスチェック制度は、常時50人以上の事業場で実施が義務づけられています。
労働者のメンタルヘルス不調の問題はとても深刻で、うつ病などの労災申請が後を絶ちません。
事業者の義務としてストレスチェックを実施することは、企業のメンタルヘルス対策のひとつとして不可欠といえるでしょう。

ストレスチェックを気づきに活かす

メンタルヘルス不調者の早期発見、メンタルヘルス不調の予防には、ストレスチェックが有効です。
ストレスチェックとは、メンタルヘルス対策の一次予防として、定期的に社員のストレスの状況について検査を行なう制度です。
平成27年(2015年)12月1日に施行され、常時50人以上の労働者を使用する事業場において義務づけられています。

企業の安全配慮義務違反があり労働契約法の違反であると認定されれば、社員からメンタルヘルス不調を理由として損害賠償責任を追及されるリスクがありますので、ストレスチェックの活用をはじめとした「事象が生じる前の取り組み」「予防するための取り組み」の実施は非常に重要です。

ストレスチェックの集団分析(部署ごとのストレスチェック結果の分析)の活用は、職場の環境改善に活用することができます。
まずは、各部署の所属長が集団分析結果から、課題や強みを把握して、実現可能な対策を検討します。
集団分析の結果は、悪い点にばかり目が向きがちですが、よい点にも目を向けて、低ストレス職場での取り組みなどを他部門で共有して、会社全体の活性化に活用します。

ストレスチェッカーは、日本最大級のストレスチェックツールです。
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