ふとしたことで気分が落ち込んでしまうことはありませんか。気分の落ち込みが続けば、うつ病等を引き起こしてしまうこともあります。この記事では、メンタルを強くする方法を3つ紹介します。
目次
運動によるメンタルヘルスの改善
運動不足の人は、メンタルヘルスの不調をきたしやすいということが複数の研究結果より示されています。
1999年にアメリカのデューク大学医学部で実施した大規模な研究では、運動には抗うつ薬と同じくらいの効果があることが分かっています。
運動がメンタルヘルスを改善するメカニズム
運動がメンタルヘルスを改善する理由は、主に3つあります。
・ストレスや疲労を解消 ・睡眠の質の向上 ・血流量の増加 |
ストレスや疲労を解消
運動をすると、神経伝達物質であるセロトニンやエンドルフィンが分泌されます。セロトニンは精神を安定させる効果を持つホルモンです。うつ病の治療では、脳内のセロトニンの量を増やす薬が用いられます。
運動はセロトニンの量を増やすことでストレスや疲労感を解消し、メンタルヘルスを向上させると考えられています。
睡眠の質の向上
運動をした日の夜はよく眠れると感じたことのある人もいるのではないでしょうか。運動によって睡眠リズムを司るホルモンの量が増えるので、睡眠の質が高くなることが知られています。
先ほど解説したように、運動によってセロトニンが分泌されます。このセロトニンは睡眠のリズムを司るホルモンであるメラトニンの材料でもあるので、それによってメラトニンの量も増加します。
血流量の増加
慢性的にストレスを受けている人は、感情を司る脳の部位への血流量が減っていることが知られています。
運動をすることで心拍数が上がり、血流量は増加します。それによって脳への血液の供給量が増えるので、感情の処理も上手くいくようになると考えられます。
メンタルヘルス改善におすすめの運動
メンタルヘルス改善におすすめの運動は、有酸素運動もしくは筋力トレーニングです。
有酸素運動の例としては、ランニングやウォーキング、スイミング等が挙げられます。筋力トレーニングの例としては、腕立て伏せやスクワット等が挙げられます。
最初は、無理をしない程度で始めることが大切ですから、最初は週3回のウォーキングを目標にして慣れてきたら週5回程度に増やしてみましょう。
ただし、体調が悪いときや疲労感を感じる時は、無理に運動するのは逆効果です。自分の体調に合わせて無理なく実行して継続することが大切です。
睡眠によるメンタルヘルスの改善
睡眠不足は脳の感情をコントロールする働きを低下させます。また、ストレスへの対抗力も弱めてしまいます。
睡眠の質を高める3つの生活習慣
睡眠の質を高めるのに良い生活習慣を3つ紹介します。
・定期的な運動 ・就寝前1時間はリラックス ・睡眠時間を7時間確保 |
定期的な運動
先ほど解説したように、運動は睡眠リズムを司るメラトニンの分泌を増やすことで、睡眠の質を高めます。運動は精神を安定させるセロトニンの量を増やすだけでなく、睡眠の質を向上させることでもメンタルヘルスを向上させます。
就寝前1時間はリラックス
就寝前に緊張状態にあると、睡眠の質は低下してしまいます。寝る前は可能な限りリラックスするよう心がけましょう。
例えば、ベッドに入ってからスマートフォンを操作したり、就寝前に仕事をしたりすることは睡眠の質を低下させてしまいます。
就寝前の1時間はパソコンやスマートフォンから離れて、家族との会話に充てたり、読書に充てたりすると良いでしょう。
睡眠時間を7時間確保
成人では、最低7時間の睡眠が必要であると言われています。睡眠不足によってパフォーマンスが低下すれば、仕事等でミスが増え、それが原因でストレスを抱えるリスクも増えてしまいます。
理想は、早寝早起きの生活です。
朝が苦手なら、少し寝坊しても構いませんが、できるだけ毎日決まった時間に起床、就寝をするように心がけましょう。
食生活とメンタルヘルス
食生活とメンタルヘルスは深い関係にあります。バランスの悪い食事を続けて栄養状態が悪ければ、メンタルヘルスに異常をきたしやすいことが知られています。
メンタルを強くするために重要な栄養素を3つ紹介します。
・タンパク質 ・食物繊維 ・ビタミンB6 |
タンパク質
先ほど紹介した睡眠リズムを作るメラトニンや、精神を安定させるセロトニンなどの神経伝達物質は、タンパク質から作られます。
タンパク質から神経伝達物質をつくるためには、さまざまな酵素が働く必要があり、後述するビタミンB群などの栄養素は、酵素を活性化させることで、脳内神経伝達物質をスムーズにつくる手助けをしてくれます。
セロトニンは必須アミノ酸であるトリプトファンから合成されます。トリプトファンを多く含む食物は、大豆や乳製品、米などの穀物類です。これらを意識して食べると良いでしょう。
食物繊維
近年、脳と腸の間に密接な関係があることが示されています。脳内のセロトニン濃度は、腸内のセロトニン濃度とも関係があるようです。
良い腸内環境を保つには、食物繊維を摂ると良いでしょう。ひじきやわかめなどの海藻類や、大根やごぼうなどに食物繊維は多く含まれています。
ビタミンB6
トリプトファンからセロトニンを合成するには、ビタミンB6が必要です。ビタミンB群は脳細胞のエネルギー産生にも重要で、ビタミンB群の欠乏は、うつ状態につながることがあります。ビタミンB6は、赤身の魚やバナナ、パプリカなどに含まれています。
睡眠・運動・食事でメンタルを強くしよう
運動はセロトニン量を増やすだけでなく、睡眠の質を向上させることでもメンタルに良い影響を与えます。ウォーキングやスクワットなど取り組みやすいことから始めましょう。
また、それらの神経伝達物質はタンパク質より作られます。大豆や乳製品を積極的に摂取するとともに、良い腸内環境を保つための食物繊維の摂取、トリプトファンからセロトニンを合成するために必要なビタミンB6の接種を心がけましょう。
監修:精神科医・日本医師会認定産業医/近澤 徹
【監修医師】 精神科医・日本医師会認定産業医 株式会社Medi Face代表取締役 近澤 徹 オンライン診療システム「Mente Clinic」を自社で開発し、うつ病・メンタル不調の回復に貢献。法人向けのサービスでは産業医として健康経営に携わる。医師・経営者として、主に「Z世代」のメンタルケア・人的資本セミナーや企業講演の依頼も多数実施。 |