ギャンブル依存症とは?メカニズムや対処法を精神科医が解説!

大谷翔平選手の通訳として有名な水原一平さんがギャンブル依存症によって借金を作り、それが原因でドジャースを解雇されるという衝撃的なニュースが報道されました。

ギャンブル依存症は気持ちの弱さが原因などではなく、れっきとした脳内の神経伝達物質の異常が原因である病気です。

この記事では、ギャンブル依存症のメカニズムやその対処法について解説します。

ギャンブル依存症とは

ギャンブル依存症とは、競馬やパチンコなどの賭け事にハマり込み、それらを連想させるものを見るだけでギャンブルをしたいという強い欲求に襲われる病気です。
依存症は、「ほんの軽い気持ち」から始まります。
そのうち、心地よさ、解放感、高揚感がくせになり、いつしか習慣になってしまいます。
ギャンブルを我慢していると不快な症状が出ることもあり、自分だけでなく家族の生活まで生活が破綻してしまうことがあります。

なお、依存症という用語はWHOが提唱したもので、要約すると「ある快感を覚えた特定の物事を繰り返し行うことで、かえって刺激を欲しくなり、ほかのことに優先してその物事をしたくなる、しないことが苦痛に感じる」ということになります。

ギャンブル依存症のメカニズム

ドーパミンとは、快楽物質とも呼ばれているホルモンです。ドーパミンは、楽しいことをしていたり報酬を受け取ったりなど、快感や多幸感を感じたり意欲を感じたりといったときに脳内で分泌されます。

ある行為を行う時にドーパミンが分泌されて快楽を感じると、脳はそれを学習し、その行為を再びしたくなるようプログラミングします。

ギャンブル依存症の人は、他の人であれば楽しいと感じることをしていてもドーパミンが分泌されません。
さらに、普通にギャンブルをしていてもドーパミンが分泌されなくなり、段々と賭ける金額が大きくなっていきます。
つまりギャンブル依存症も、アルコール依存症や薬物依存症となどと同じようなメカニズムの病気といえるのです。

ギャンブル依存症のリスク要因

次の項目にあてはまる人は、ギャンブル依存症になるリスクが高いと考えられています。

・初のギャンブルで大きく勝った
・幼少期からギャンブルを経験
・ストレス過多の生活

最初のギャンブルで大きく勝つと、脳はその時のドーパミン分泌量を覚えてしまい、ギャンブル依存症になるリスクが高いと考えられています。
また、ストレスの多い生活では快楽を感じることが少ないため、ギャンブルをより楽しいと感じてしまうようです。

ギャンブル依存症の最大の問題は「お金」

ギャンブル依存症の症状は、以下のようなものがあります。

・借金を繰り返す

・周囲の人にギャンブルをしていることを隠す
・周りの人のものを盗む

借金を繰り返す

ギャンブル依存症で問題となるのは、なんといっても借金です。ギャンブル依存症の人は、ギャンブルで作った借金を返すために借金をしがちで、必ずお金の問題がついて回るといっても過言ではありません。基本的に勝つまで続けてしまうため、ほとんどの人は借金が膨れ上がって生活が破綻します。
頭の中はギャンブルのことでいっぱいになり、なんとか資金を工面しようとします。大切な家族に嘘をついてでも、お金を出させようとするケースもあります。

周囲の人にギャンブルをしていることを隠す

競馬やパチンコを趣味程度に楽しむ人であれば、周囲にやっていることを公言することもあるでしょう。
しかし、ギャンブル依存症でのめり込んでいる人ほど、ギャンブルをやっていることを徹底的に周囲の人に隠します。
ある日急に、何をしているのか明かさないまま出かける時間が増えた人が身近にいる場合は、注意しましょう。隠れてギャンブルにはまっていて、取り返しのつかない借金を作っているケースもあります。

周りの人のものを盗むことも

お金を自分で工面できないギャンブル依存症患者は、周囲の人のものを盗むことで工面しようとするケースさえあります。
ギャンブルをしたいという気持ちが勝ってしまい、「負けた分はギャンブルで稼ごう」と考えてしまうのです。地道に働いて返そうなどとは思いません。

ギャンブル依存症の対処法

ギャンブル依存症は放置すれば生活が破綻する病気ですが、適切に対処して治療を行えば完治が見込める病気です。
ここでは、ギャンブル依存症の主な対処法を3つ紹介します。

・専門の医療機関の受診を勧める
・違和感に気づき早期発見する
・借金の肩代わりをしない

専門の医療機関の受診を勧める

ギャンブル依存症は、脳の異常が原因である病気です。放置して自然治癒する可能性は限りなく低いです。
社会生活に支障が出る状態であれば、依存症の専門家を受診して治療やサポートを受けましょう。
専門の医療機関で適切な治療を行えば、社会復帰も見込めます。

周囲の人が違和感に気づく

脳は学習してドーパミン分泌量をコントロールします。そのため、ギャンブルにのめり込めばのめり込んでいる人ほど、社会復帰にかかる治療期間は長くなってしまいます。
早期の社会復帰のためにも、周囲の人が違和感に気づいて受診を勧めることが重要です。
以下のようなギャンブル依存症の初期サインが見られたら、本人と話し合い、受診を勧めてみましょう。

・目的を言わずにお金を借りたがる
・目的を言わず外出する時間が増える
目的を言わず外出する機会が増えたり、お金を借りる機会が増えたりする人には注意しましょう。
ひっそりとギャンブルをし、借金を作っている可能性があります。

・何をしても楽しそうに見えない
ギャンブル依存症の人はギャンブル以外で快楽を感じることが難しい状態になっています。うつ病でずっと外出できない訳ではないのに楽しそうでない場合は、ギャンブル依存症に陥っている可能性が考えられます。

借金の肩代わりをしない

両親や子供などの身内が、「これで全て精算して、二度とギャンブルをしないのでお金を貸して欲しい」と言ったらあなたはどうしますか。その言葉を信じて、借金の肩代わりをしてしまう人もいるのではないでしょうか。
一見親切に見えるこの行動ですが、ギャンブル依存症の治療という観点から見るとあまり良くありません。
更生の機会を与えるためにも、きっぱり断る勇気を持ちましょう。

まとめ

ギャンブル依存症は、適切な治療を行えば社会復帰できる病気です
ギャンブル依存症は脳の異常が原因である病気です。適切な治療を行えば社会復帰できます。しかし、病気が進行しているほど社会復帰は難しくなるため、早期発見が重要です。
目的を言わない外出が増えたり、お金の無心が増えたりした場合はギャンブル依存症の可能性があります。
そのような初期のギャンブル依存症のサインを見逃さないようにしましょう。

監修:精神科医・日本医師会認定産業医/近澤 徹

【監修医師】
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役
近澤 徹

オンライン診療システム「Mente Clinic」を自社で開発し、うつ病・メンタル不調の回復に貢献。法人向けのサービスでは産業医として健康経営に携わる。医師・経営者として、主に「Z世代」のメンタルケア・人的資本セミナーや企業講演の依頼も多数実施。

> 近澤 徹| Medi Face 医師起業家