国のメンタルヘルス対策 中小企業はどう対応すべきか

働く人のメンタルヘルス対策は、いまや企業の自主的な取り組みにとどまらず、国も重視するテーマになっています。
さらに、2025年5月の法改正で、50人未満の事業場にもストレスチェック義務化の流れが示されています。
企業規模を問わず、早めの備えが求められています。

企業のメンタルヘルス対策の現状

企業のメンタルヘルス対策は、いまや「制度に対応するだけ」の段階から、「経営に活かす」段階へ移っています。
ストレスチェックを実施するだけでなく、その結果を部署ごとの課題把握に使う流れが広がっています。
あわせて、経済産業省は健康経営を「収益性を高める投資」と位置づけており、プレゼンティーイズムや人的資本の視点から、メンタルヘルス対策を企業価値向上につなげようとする動きも強まっています。

メンタルヘルス対策に取り組んでいる企業の割合

厚生労働省の令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、ストレスチェックを実施した事業所のうち、部や課など集団ごとの分析まで行っている事業所は75.4%にのぼり、前回調査の69.2%から増加しました。このことからも、結果を個人への通知だけで終わらせず、組織全体の課題把握に役立てようとする企業が増えていることが分かります。
一方で、分析結果を実際に活用した事業所の割合は76.8%で、前回の78.0%をわずかに下回っています。分析そのものは広がっている一方で、結果を職場改善や組織運営にどう結びつけるかが今後の課題だといえそうです。
参考:厚生労働省/令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況

事業所規模による取り組み状況の違い

事業所規模によって、メンタルヘルス対策の実施状況にははっきり差があります。厚生労働省の令和6年調査では、対策に取り組む事業所は全体で63.2%でしたが、50人以上では94.3%に達する一方、30~49人では69.1%、10~29人では55.3%にとどまりました。また、取り組み内容では「ストレスチェックの実施」が65.3%で最多ですが、50人以上では89.8%なのに対し、30~49人は57.8%、10~29人は58.1%です。規模が小さいほど、体制や人員の制約から対応に差が出やすい現状がうかがえます
参考:厚生労働省/令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況

中小企業こそメンタルヘルス対策に取り組むべき理由

中小企業では、一人がいくつもの役割を担っていることが珍しくありません。そのため、誰か一人がメンタル不調で休職したり離職したりすると、周囲の業務負担が一気に増えます。人手に余裕がない職場ほど、そのしわ寄せはすぐに現れます。結果として、残った社員にも疲れや不安が広がり、連鎖的に不調が起こるおそれがあります。中小企業にとってメンタルヘルス対策は、個人の問題ではなく、職場全体を守るための土台といえます。

採用と定着にも直結する

人手不足が続く中で、働きやすさや相談しやすさを整えているかどうかは、採用にも定着にも大きく関わります。
特に若い世代は、給与や休日だけでなく、安心して働ける職場かどうかをよく見ています。メンタルヘルス対策に取り組んでいることを社外に伝えられれば、「社員を大切にしている会社」という印象にもつながりやすくなります。採用の場面で選ばれやすくなるだけでなく、今いる社員が辞めにくい環境をつくることができます。

生産性の低下を防ぎやすい

メンタル不調は、休職や離職だけが問題ではありません。出勤していても、集中力や判断力が落ちたまま働いている状態は、仕事の質やスピードに大きく影響します。こうした状態が続くと、ミスや事故が増えたり、確認ややり直しが多くなったりするため、職場全体の効率が下がります。早めに気づいてケアできれば、社員が落ち着いた状態で働きやすくなり、結果として業務の安定や生産性の向上にもつながります。

法的なリスクを避けるためにも必要

「うちは小さい会社だから大丈夫」とは言えません。会社の規模にかかわらず、従業員の安全や健康に配慮する責任があります。もし過重労働やパワハラなどが原因で不調が起こり、会社が必要な対応をしていなかったと判断されれば、損害賠償請求などの法的な問題に発展する可能性もあります。経営基盤が大きくない中小企業にとって、こうしたトラブルはかなり重い負担になります。だからこそ、早い段階から対策を整えておくことが重要です。

距離の近さを強みに変えやすい

中小企業には、大企業にはない良さもあります。それは、経営者や上司と社員の距離が近いことです。日ごろから顔を合わせる機会が多く、ちょっとした変化にも気づきやすい環境があります。「最近少し元気がないように見える」「いつもより言葉数が少ない」といった小さなサインを拾いやすいのは、中小企業ならではです。制度を難しく考えすぎるより、まずは声をかけやすい雰囲気をつくり、早めに相談できる関係を整えることが、対策を機能させる第一歩になります。

ストレスチェック義務化で何が変わるのか

2026年3月現在、これまで「従業員50人未満の事業場(小規模事業所)」では努力義務だったストレスチェックが、すべての事業場(1人以上の従業員がいるすべての会社)で義務化されるという大きな転換点を迎えています。

50人未満事業場にも義務化へ

2026年3月時点では、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場でも、ストレスチェックを義務化する法改正がすでに公布されています。施行日は、2025年5月14日の公布後3年以内に政令で定める日とされており、今後は小さな店舗や事務所でも年1回の実施を前提に準備を進める必要があります。
 

ストレスチェッカーとは

「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しているのはもちろん、2025年5月からは無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施が義務化されることとなりました。
無料プランもございますので、導入や運用の相談は、ぜひお気軽にお問合せください。


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人数が少ない職場ほどプライバシー対策が重要になる
小規模事業場では、人数が少ないぶん「誰がどの回答をしたのか」が推測されやすく、従業員が本音を書きにくいという悩みが出やすくなります。そのため、自社で無理に集計するより、クラウド型の外部サービスなどを活用して、匿名性や情報管理を確保する考え方が広がっています。厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルでも、委託先を選ぶ際には、集団分析の単位が10人以上になるか、情報管理体制が整っているかなどを確認するよう示されています。

産業医がいない職場でも面接指導の体制づくりが欠かせない
50人未満の事業場には産業医の選任義務はありませんが、だからといって高ストレス者への対応を後回しにはできません。法改正後は、医師による面接指導をどう確保するかが現実的な課題になります。厚生労働省も、小規模事業場では外部委託先の医師や支援機関を活用しながら、面接指導やその後の対応までつなげる体制づくりが必要だとしています。

職場の状態を見える化できれば離職防止にもつながる
ストレスチェックは、単に不調者を探すためのものではなく、職場の負荷や支援不足を見える化するための仕組みでもあります。小規模事業場ほど、「なんとなく忙しい」「相談しづらい」といった空気が放置されやすい一方で、原因が見えれば改善も進めやすくなります。上司のサポート不足や業務の偏りが数字で見えるようになれば、対話や配置の見直しにつなげやすくなり、離職防止にも役立ちます。

中小企業におけるストレスチェック制度の目的

ストレスチェック制度は、単にストレスが高い人を見つけるための制度ではありません。まず大切なのは、従業員自身が自分のストレス状態に気づき、休息や相談などのセルフケアにつなげることです。あわせて、高ストレスの人には医師による面接指導につなげ、必要な助言や就業上の配慮を受けられるようにします。さらに、部署ごとの集団分析を通じて、仕事量や人間関係、上司の支援不足といった課題を見える化し、会社全体で職場環境を見直していくことも制度の大事な役割です。

小規模だからこそ運用面の工夫が必要になる
中小企業では、人数が少ないぶん「誰がどう答えたのか」が推測されやすく、従業員が正直に回答しにくいという課題があります。そのため、外部サービスの活用や、実施者と実施事務従事者の役割分担を明確にすることが大切です。厚生労働省が公表した小規模事業場向けマニュアルでも、プライバシーを守りながら現実的に運用できる体制づくりとして外部委託が推奨されています。

集団分析を職場改善に活かす視点

中小企業で集団分析を活用するいちばんの意味は、社長や店長の感覚だけに頼らず、客観的なデータをもとに職場の課題を見つけられることです。人も時間も限られている中で、何となく対策を広げるのではなく、どこに負担が集中しているのか、どの部署で相談しにくさが強いのかを把握できれば、必要なところに絞って動きやすくなります。規模が小さい会社ほど、こうした絞り込みは大事です。

仕事量だけでなく、裁量とサポートにも目を向ける
中小企業では、忙しさそのものをすぐに減らすのが難しい場面も少なくありません。そんなときは、仕事の量だけを見るのではなく、本人がどれだけ自分で進め方を決められるか、困ったときに上司や同僚へ相談しやすいかにも注目したいところです。たとえば、やり方や順番を少し任せるだけでも、気持ちの負担が軽くなることがあります。また、忙しくても「いざというときは助けてもらえる」と感じられる職場は、不調が広がりにくい傾向があります。

組織ごとの傾向を見て、優先順位をつける
集団分析は、通常10人以上の単位で集計し、個人が特定されないよう配慮しながら行います。そのうえで部署ごとに傾向を比べると、営業は対人面の負担が強い、製造は作業環境への不満が出やすいといった違いが見えてくることがあります。こうした差が分かれば、全社一律の対策をするのではなく、数値の悪い部署から優先的に見直すことができます。

数字を責めるためではなく、対話のきっかけにする
集団分析の結果は、誰かを責めるために使うのではなく、現場と話し合うための材料として使うことが大切です。「相談しにくさが出ているけれど、どうすれば声をかけやすくなるか」「業務の偏りを減らすにはどうしたらいいか」といった形で、管理職やリーダーと一緒に考える流れが望ましいです。会議の最初に少し雑談の時間をつくる、共有カレンダーで互いの状況を見やすくするなど、小さな工夫から始めるほうが、現場にもなじみやすいです。

やりっぱなしにしないことが信頼につながる
中小企業が特に気をつけたいのは、分析したままで終わらせないことです。結果を取ったのに何も変わらなければ、従業員は「答えても意味がない」と感じてしまいます。また、数値が悪い理由を個人の性格や管理職の資質だけに結びつけると、次回から本音が集まりにくくなります。だからこそ、あくまで仕組みや職場のあり方の問題として受け止め、改善した内容をきちんと伝えることが大切です。集団分析は、結果を見ることより、その後に何を変えるかで価値が決まります。

まとめ

メンタルヘルス対策は、大企業だけでなく中小企業にとっても重要です。人手に余裕がない職場ほど、一人の不調が業務全体や定着率、生産性に大きく影響します。ストレスチェック制度は、個人のセルフケア、面接指導、集団分析による職場改善を進めるための仕組みです。特に中小企業では、客観的なデータを対話のきっかけにしながら、無理のない改善を積み重ねていくことが大切です。

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