復職支援のために知っておきたい基礎知識

メンタルヘルス不調で休職するケースが増えています。
メンタルヘルス不調が原因で休職する従業員に対しては、まず診断書を会社に提出してもらい、休職をするか、それとも仕事を続けながら治療するかを検討します。そして休職することになったら、定期的に連絡をとり療養環境を確認します。また復職後も、定期的に面談するなど適切なサポート体制を整備しフォローしていくことも大切です。

復職支援とは

メンタルヘルス不調で休職するケースは、増加傾向にあります。
厚生労働省では、令和4年の労働安全衛生調査の概況が公表されています。
過去1年間(令和3年11月1日から令和4年10月31日まで)に、メンタルヘルス不調を理由として連続1か月以上休業した労働者、または退職した労働者がいた事業所の割合は13.3%となっています。これは、令和3年調査の10.1%から上昇しています。

内訳を見ると、連続1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.6%で、前回調査の8.8%を上回りました。また、退職した労働者がいた事業所の割合は5.9%となり、こちらも前回の4.1%から増えています。

一方、労働者全体に占める割合では、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者は0.6%、退職した労働者は0.2%となっており、いずれも前回調査と比べて大きな変化は見られません。

区分 事業所計 該当する労働者がいた事業所割合(%) 常用労働者計 労働者割合(%)
該当労働者がいた 連続1か月以上休業した 退職した 連続1か月以上休業した 退職した
合計 100.0 13.3 10.6 5.9 100.0 0.6 0.2
1,000人以上 100.0 93.5 90.8 75.4 100.0 1.0 0.2
500〜999人 100.0 89.4 88.7 43.1 100.0 1.0 0.3
300〜499人 100.0 66.4 65.3 33.2 100.0 0.7 0.2
100〜299人 100.0 52.0 46.9 23.6 100.0 0.7 0.2
50〜99人 100.0 27.4 23.6 9.3 100.0 0.5 0.2
30〜49人 100.0 19.2 14.1 8.7 100.0 0.5 0.3
29人以下 100.0 6.9 4.8 3.1 100.0 0.3 0.2

厚生労働省/白書、年次報告書

(1)休職開始前の対応

人は、生活しているうえで誰でもストレスを感じるものです。
そして、強いストレスにさらされたり、ストレスを受ける時間が長かったりすると、身体的な不調や精神的な不調が現れることがあります。
ストレスによる体の変化は、大きく「こころ」「からだ」「行動」にあらわれます。
「こころ」とは、気持ちが落ち込んだりメンタルヘルス不調に陥ったりするもので、「からだ」とは、不眠や胃痛などの身体の不調、そして「行動」とは、アルコールの量が増える、仕事のパフォーマンスが落ちている、会社に行けなくなるなどの状態を指します。

「こころ」「からだ」「行動」の不調が疑われる従業員がいて、休職させる場合には診断書は必須です。職場でこのような症状がみられる従業員がいる場合に、いきなり休職を勧めるのではなく、病院での受診を勧めてください。

この時注意したいのが、「あなたは、明らかに病気だと思うから、病院に行ってきて」というような言い方をしないということです。このような決めつけた言い方をしてしまうと、本人が納得しづらくなってしまうことがあります。

そこで、「最近、顔色が悪いけど、体調はどう?」「調子が悪いのであれば、病院で原因が分かるかもしれないから、病院に行ってみてはどう?」など、質問をするような言い方で、受診を勧めることをおすすめします。

休職しないで働きながら療養する場合でも、疾病が分かりますので診断書は取得しておいた方がよいでしょう。

産業医がいる場合には、この診断書を共有してその従業員と面談を実施します。
このとき、従業員が何日休んだら診断書を求めるのか、どのような場合に産業医との面談を実施するのかは、あらかじめ規程やルールを策定しておくことをおすすめします。

産業医との面談を実施した後、休職して自宅療養をするか、もしくは仕事を続けながら治療を続けるのかは、従業員本人の病状の程度や希望を踏まえたうえで判断する必要があります。

また、メンタルヘルス不調者が休職する場合には療養期間が長期にわたるケースも多くなることから、休職中の窓口を設定して直属の上司、人事担当者、産業医などとともに対策チームを設けることが大切です。

休職のために必要な書類を書いてもらい、休職をするうえで必要な情報を本人に伝えます。病気休暇制度の内容や、そのような制度がない会社の場合には、扱いが病気欠勤に代わり会社から給料が出なくなりますが、傷病手当金などの社会保障制度の活用を案内します。
すぐに生活が苦しくなることはないと伝えて、安心感を持ってもらうようにしましょう。

(2)休職中の対応

休職中は、定期的な連絡をとり、復職のタイミングについて検討します。
2週間に1回、1カ月に1回などのペースで、対面や電話で連絡をとります。メールやSNSだけのやり取りだと、状況がはっきりしないことも多いため、メールやSNSだけではなく、対面や電話と組み合わせて連絡をとることをおすすめします。

また、単身赴任中であったり1人暮らしをしていたりする人には、実家に戻るなど、家族の目の届くような形を1人にならないような環境を勧めるようにします。

定期的な連絡をとるなかでは、診断書の期限にも注意が必要です。
休職前に受診した際の診断書には、「1カ月間の療養が必要」などと記載されているので、その期限が切れる前に、引き続き療養が必要なのか確認します。つまり、その療養期間が経過する前に新しい診断書を提出してもらいます。

なお、まれに休職している人が休職中に海外旅行したり頻繁に飲み会をしたりするケースがあります。過去の事例では、配転命令拒否をして、うつ病により休職し始めたところ、会社批判を行なったりゲームセンターや場外競馬場に出かけたり、旅行に出かけたりした従業員を解雇したケースがありました。
裁判では、配転命令拒否による解雇は有効としたうえで、ゲームセンターや場外競馬場に出かけたりする行為を、主治医がとくに問題視していないような場合には、会社はその点について処分をすることはできないという判断をしました(東京地判平成20年3月10日)。
「療養中なのだから、治療に専念するべきだ」という考えは理解できますが、「療養中なのに不適切な環境と言えるか否か」は、まずは産業医や主治医に確認するべきです。

(3)復職検討中の対応

療養中に本人から復職したいという発言が出てきたら、休職している人に生活記録表を渡して記入してもらいます。
何時に起床したか、何時に寝たか、食事は三食摂っているか、どのような気分だったか、疲労感はあるかなどについて記入してもらいます。
これは、休職している人の体調を把握するだけでなく、休職している人が自分自身の体調を振り返り、回復していることを実感するためのツールにもなります。
なお注意したいのが、日常生活を送れるようになったことが、イコール復職しても問題ないほど回復したということではない、という点です。
日常生活が送れるようになったからといってすぐに復職をすると、復職直後に体調を崩してしまうケースが多々あります。
そして、復職ができなかったという経験は本人に挫折感を与え、体調がさらに悪化してしまうリスクがあります。

そこでまず、短期間の勤務やウォーキングを実施してもらったり、テレワークから始めてもらったりといったリハビリを始めます。
注意力・集中力の程度について確認することも重要なので、読書や資格取得の勉強などを勧めることも有効です。

そして、主治医や産業医と連携し職場復帰が可能である状態になったら、職場復帰支援プランを作成します。

厚生労働省では、職場復帰支援プラン作成の際に検討すべき内容について以下の項目を示しています。

①職場復帰日
復帰のタイミングについては、労働者の状態や職場の受入れ準備状況の両方を考慮した上で総合的に判断する必要がある。

②管理監督者による就業上の配慮
a 業務でのサポートの内容や方法
b 業務内容や業務量の変更
c 段階的な就業上の配慮(残業・交替勤務・深夜業務等の制限又は禁止、就業時間短縮など)
d 治療上必要なその他の配慮(診療のための外出許可)など

③人事労務管理上の対応等
a 配置転換や異動の必要性
b 本人の病状及び業務の状況に応じて、フレックスタイム制度や裁量労働制度等の勤務制度変更の可否及び必要性
c その他、段階的な就業上の配慮(出張制限、業務制限(危険作業、運転業務、高所作業、窓口業務、苦情処理業務等の禁止又は免除)、転勤についての配慮)の可否及び必要性

④産業医等による医学的見地からみた意見
a 安全配慮義務に関する助言
b その他、職場復帰支援に関する意見

⑤フォローアップ
a 管理監督者によるフォローアップの方法
b 事業場内産業保健スタッフ等によるフォローアップの方法(職場復帰後のフォローアップ面談の実施方法等)
c 就業制限等の見直しを行うタイミング
d 全ての就業上の配慮や医学的観察が不要となる時期についての見通し

⑥その他
a 職場復帰に際して労働者が自ら責任を持って行うべき事項
b 試し出勤制度等がある場合はその利用についての検討
c 事業場外資源が提供する職場復帰支援サービス等の利用についての検討

(4)復職後は再発防止策を検討する

休職前に休職理由について把握できている場合もありますが、休職前に理由が分からない場合もあります。
休職理由について把握できていると思っている場合でも、休職前に理由が把握できなかった場合でも、会社を休むことになった理由をていねいに確認し、再発防止策を検討することが大切です。
メンタルヘルス不調は、復職後に再発することも少なくないため、就業上の配慮についての慎重な対応(職場や仕事の変更等)が求められます。
対人関係などが理由となっている場合には、本人だけでなく上司や同僚からもヒアリングを行い、状況を把握します。
復職する際には、原則として休職前の職場に復帰することとされていますが、人間関係に原因がある場合には、職場を変えた方が、復職がスムーズなこともあります。
本人要因が強く、さらに本人も異動を希望する場合には、この先異動を繰り返すことがないように、このような休職措置は特別のものであること、配置転換は一時的な措置でであることなどを、復職前に説明をしておくことが大切です。
他の従業員のモチベーション低下につながらないよう、公平性を担保することも、本人の成長のために必要なことといえるからです。

(5)ストレスチェックの活用方法

2015年にスタートしたストレスチェックは、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、本人に自らのストレスの状況について気付きを促し、メンタルヘルス不調のリスクを低減させるとともに、検査結果について集団分析を行い、職場環境の改善につなげることなどを主な目的とした制度です。

参考:> ストレスチェックとは|実施方法は?罰則はあるの?

また、集団分析を活用すれば職場環境の改善につなげることが可能です。
分析単位を細分化して、部署別、男女別、就業内容別などで集団分析を行い、仕事の満足度の推移を見たうえで、現状把握と対策案を検討し、従業員にフィードバックしてポジティブな点を伸ばしたり、相談体制を整備したりすることで、職場環境の改善を実現できれば、仕事のストレス要因や健康状態が改善するだけでなく、生産性が向上することが多くの研究で報告されています。

参考:

> 厚生労働省「これからはじめる職場環境改善」

ストレスチェックは、「法律で決まったから仕方なく実施している」というケースもあります。
しかし、仕方なくストレスチェック制度を実施するだけでなく同時にその結果を活用して、職場環境の改善を実現できれば、生産性が向上するというデータもあります。

<参考:a href="https://www.jstage.jst.go.jp/article/juoeh/37/1/37_23/_article/-char/ja/" rel="noopener" target="_blank">> IT企業におけるストレス対処能力に着目した労働適応能力向上のための職場環境改善

ストレスチェッカーとは

「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しているのはもちろん、2025年5月からは無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施が義務化されることとなりました。
導入や運用の相談は、ぜひお気軽にお問合せください。


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