
前例のない二刀流として、メジャーリーグで活躍している大谷翔平選手。
2025年シーズンにおいて、55本塁打を放ち、自己が樹立した所属球団ロサンゼルス・ドジャースのシーズン最多本塁打記録を更新しました。さらに、4連続本塁打のジャパニーズ・プレイヤー初の快挙や、ポストシーズンにおいて「3本塁打+6イニング無失点・10奪三振」という圧巻のパフォーマンスにより、NLCS MVPに選出されるなど、二刀流選手として新たな歴史を刻んでいます。
大谷選手が身体能力に恵まれているのは事実ですが、大谷選手が成功をおさめることができた要因は、夢を叶えるために欠かせないメンタルコントロールの方法を実践してきたことが大きいようです。
たとえば、マイナス思考を切り替える方法、運を味方につける方法など。
今回は、そんな大谷選手が成功をおさめることができた要因についてメンタリティの面から紐解いていきます。
目次
トイレ掃除やゴミ掃除で運を拾う
大谷選手は、高校1年生のときに「目標達成シート」を作り、その中心に「8球団からドラフト1位指名を受ける」という大きな目標を掲げました。その実現に向けて、「メンタル」「体づくり」「コントロール」など複数のテーマごとに行動目標を細かく設定しています。
印象的なのが、「運」というテーマを設け、その運を高めるための具体的な行動として「ゴミ拾い」「トイレ掃除」といった、日常の小さな積み重ねを挙げている点です。自分自身を律し、環境を整え、周囲に良い影響を与えることで運を引き寄せるという考え方は、現在の大谷選手の姿勢にもつながっています。
高校時代のトイレ掃除
大谷選手は、高校時代から人が嫌がるトイレ掃除や片付けを自ら進んで行っていました。花巻東高校で指導した佐々木洋監督も、大谷選手が誰よりも早くトイレ掃除に取り組んでいたことを証言しています。
これは単なる善行ではなく、「これで自分の運が上がる」と前向きな気持ちをつくるためのメンタルトレーニングの一部でした。スポーツメンタルトレーニングの世界では、物事をプラスに捉え、心からそう信じることで行動が変わり、結果につながるとされています。
大谷選手はまさにこれを実践し、環境を整える行動を通して自分の心を整え、前向きな思考習慣を育ててきました。こうした積み重ねが、のちに世界トップクラスの選手として活躍するための基盤を築いたと言えるでしょう。
メジャーでもゴミ拾いをする姿を目撃される
メジャーリーグでは、ベンチにゴミをそのまま捨てる選手がいる中で、大谷選手が黙々とベンチを清掃する姿がたびたび目撃されています。
大谷選手自身はその理由について「ゴミは人が落とした運。拾えば運を拾える」と語っており、行動の背景には明確な信念があります。高校時代のトイレ掃除と同様に、「これで自分の運が上がる」という前向きなマインドセットを、メジャーでも継続して実践しているのです。
他人が嫌がることを率先して行う姿勢は、環境を整えるだけでなく、自分自身の心の準備にもつながります。どの分野で成功するにも、実力はもちろん、肝心な局面で運に味方してもらえるかどうかは大きな差を生むものです。だからこそ、大谷選手のように行動から運を引き寄せる姿勢や習慣を持つことは、成功を目指す人にとって非常に有効なメンタルスキルだと言えるでしょう。
参考:『大谷翔平、ゴミ拾いで日本の礼儀正しさを示す』スペイン紙が称賛も…
誰も挑戦しなかったことにも挑戦する
現代のプロ野球では、野手と投手で仕事を分業するのが当然です。両者を同時に行うことは不可能であると思われていました。
過去に甲子園において投打で活躍した選手も、プロ入り時にはどちらかの道をあきらめて、片方のポジションに専念していました。
しかし、大谷選手は常識にとらわれず、現代野球において誰も挑戦しなかった二刀流に挑戦します。
周りから何を言われようとも、成功するビジョンを見据えて挑戦したからこそ大谷選手は成功できたのです。
自分の限界を決めて挑戦しなかったとしたら、メジャーで二刀流として活躍する大谷選手は見られなかったでしょう。
挫折に屈しない忍耐力
大谷選手のプロ野球人生は、怪我との闘いの連続で、決して順調とは言えませんでした。靭帯損傷や度重なる手術、そして周囲からの「二刀流は無理だ」という批判。普通ならどこかで折れてしまっても不思議ではない環境にいながら、大谷選手は一度も二刀流を諦めませんでした。苦しい場面に追い込まれても逃げずに向き合い続けたことで、ピンチに対する“免疫力”が鍛えられ、それが揺るがない忍耐力へとつながっていきました。
どれだけ身体能力が優れていても、困難をくぐり抜けなければ本当の強さは身につきません。むしろ、ピンチを経験した数だけ成長のチャンスが増え、成功の確率が高まっていきます。大谷選手は、この「ピンチは成長の材料」という考え方を深く理解し、実践してきた選手だと言えます。
だからこそ、逆境にぶつかるたびに心が折れるのではなく、むしろ「ここから強くなれる」と受け止める力が磨かれ、圧倒的なメンタルの強さにつながったのです。大谷選手の成功の裏には、才能だけではなく、困難を前向きに変換する“心の習慣”があったと言えるでしょう。
日本ハムファイターズ時代の怪我
日本ハムファイターズ時代の2016年7月10日。登板時に手の指のマメを潰してしまい、その後2ヶ月間登板を諦めざるを得ませんでした。
それでも打者として出場しながら投手の準備も怠らなかったので、投手として復帰を果たしています。
2017年2月には足首を怪我したため、出場予定であったWBC(ワールドベースボールクラシック)を欠場しています。
これらの怪我は、二刀流による疲労の蓄積も一因ではないかと考えられていました。しかし、それでも大谷選手は決して二刀流を諦めませんでした。
その結果、2017年も見事な成績を残し、11月にはポスティングシステムによるメジャーリーグ移籍を果たしています。
メジャーリーグ時代の二度の右肘損傷
2023年のシーズン途中に自身二度目の右肘の手術を受けた大谷選手。普通の人であれば投手を諦めてしまいそうな状況下でも、投手復帰の道を諦めていません。
自分で定めた軸を持ち続け、どんな状況に陥ってもその軸を貫き通すという強いメンタリティ、困難に直面したとしても決して諦めないメンタリティを持っていたので成功できたのではないでしょうか。
自己より全体の利益を優先
FA権を取得した大谷選手はドジャースと10年総額7億ドルの大型契約を結びました。しかし、チームの勝利を優先するために、大谷選手は大半の年俸を11年後以降に受け取ることを決めました。
現在のメジャーリーグでは、チームの総年俸の上限が設定されているため、大谷選手の年俸が高ければ高いほど、他の選手にかけられる年俸は少なくなってしまいます。
それによって補強が失敗し、ワールドシリーズ制覇が妨げられなくなることを危惧して大谷選手は年俸の後払いを選択したのです。
自分だけでなく全体の利益を考えられるのは、視野を広く持っているからであると考えられます。
そのように視野を広く持つことで自分を客観視できたので、自己分析を行いながら試行錯誤し、成功をおさめることができたのではないでしょうか。
絶えず挑戦し続ける
メジャーリーグMVPという歴史的快挙を成し遂げても、大谷選手は歩みを止めることなく、さらに高いレベルへ挑戦し続けました。普通であれば満足してもおかしくない実績を手にしながら、彼は決して慢心せず、常に次の成長ポイントを探し、自分自身を磨き続けています。まさに「成功してからが本当の勝負」という姿勢を体現しており、この向上心こそが大谷選手を唯一無二の存在へ押し上げた原動力だと言えます。
人は挑戦をやめた瞬間に成長が止まります。特にトップアスリートの世界では現状維持は後退と同じで、変化を恐れず前に進み続けることが不可欠です。大谷選手は、その姿勢を誰よりも体現しており、成功のあとにこそ努力を積み重ねることで、より大きな成果を掴んできました。
成功をつかむためには、たゆまぬ挑戦と継続的な自己研鑽が欠かせません。大谷選手のように「昨日の自分に勝ち続ける」という気持ちを持ち続けることが、圧倒的な成長と強いメンタルを生み出すのです。
成功するためのマインドセットを大谷翔平選手から学びましょう
たとえ誰よりも優れた能力を持っていたとしても、「成功するためのメンタリティ」が欠けていれば、その力を十分に発揮できず、成功の確率は大きく下がってしまいます。実際、多くの人は失敗を恐れて未知の領域に踏み出せず、挑戦する前に可能性を閉ざしてしまいます。
しかし、大谷選手のように、失敗を前向きに捉え、ピンチを成長の機会と考えるマインドを持てれば、成功へのルートは開けていきます。成功の要因は能力だけではなく、挑戦し続ける心の姿勢にこそ隠れているのです。
いきなり大きな挑戦をする必要はありません。まずは「できること」「やりやすいこと」から一歩を踏み出すだけでも、メンタリティは確実に鍛えられていきます。小さな挑戦の積み重ねが大きな自信となり、それが新たな挑戦を生み、やがて成功へとつながっていきます。
監修:精神科医・日本医師会認定産業医/近澤 徹
【監修医師】
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役・近澤 徹
オンライン診療システム「Mente Clinic」を自社で開発し、うつ病・メンタル不調の回復に貢献。法人向けのサービスでは産業医として健康経営に携わる。医師・経営者として、主に「Z世代」のメンタルケア・人的資本セミナーや企業講演の依頼も多数実施。
監修医師:近澤 徹
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役

