能登半島地震被災者へのメンタルケア

令和6年1月に発生した能登半島地震の被災者に対してお見舞い申し上げます。

被災地では、炊き出しなどの災害に対する物理的な支援だけではなく、メンタルケアも実は重要です。
厚生労働省からも、このように災害時のメンタルケアについて注意喚起がなされています。
この記事では、被災した際にどのようにしてメンタルケアを行うべきであるのかについて紹介いたします。

厚生労働省e-ヘルスネット「災害とこころの健康」

周囲の人とのコミュニケーションの確立

被災して不安定になっている家族や友人を見つけた場合、出来る限り早く寄り添いましょう。
地震等に遭遇した場合に不安を抱えたり、眠れなかったりするのは正常な反応です。それが一時的なことであれば問題ありません。
しかし、それが長く続くようであればうつ病等の可能性があるため、専門的な医療機関を受診する必要があります。

一人では抱えきれないことでも、周りと不安なことを共有することで解決できるかもしれません。そのため、被災した際には信頼できる人とのコミュニケーションを確立しておくことが重要です。
また、自分では気付けないことでも、コミュニケーションをとっている人がいれば指摘してもらうことができます。

安心できる環境を確保

プライバシーを確保しづらい避難所においては難しいことですが、安心できる環境を確保することは被災時のメンタルケアにおいて重要です。
そこで、安心できる環境を確保するための方法をいくつか紹介します。

パーテーションを利用する

パーテーションなどを使って物理的にパーソナルスペースを確保することがおすすめです。避難所によってはそれが難しい場合もあるかと思います。その場合は、カーテンや布等で簡易的な仕切りを設置してみましょう。

ノイズキャンセリングイヤホンやアイマスクの用意

熊本地震の被災者の中には、「他人の目線や生活音が気になる」と訴える方もいました。
ノイズキャンセリングイヤホンやアイマスクがあれば、他人の視線や生活音を気にすることなく生活を送れます。

内閣府「平成 28 年度避難所における被災者支援に関する事例等報告書」

特に、夜間に騒音が気になって眠れず不眠を訴えている方にはおすすめです。睡眠不足により疲労が取れない場合、他の精神的不調に繋がるリスクがあります。
そのようなリスクを回避するためにも、ノイズキャンセリングイヤホンやアイマスクを防災セットの中に入れておくと良いでしょう。

私物を持ち込む

家で普段使っていたものを持ち込み、視覚的な安心感を得るのも一つの手です。
例えば、普段使いしていたカーテンを仕切りとして利用することで、避難所を自室と錯覚させることも可能です。

オンラインカウンセリング等を利用する

避難所で他人とコミュニケーションを確立することが難しいこともあると思います。その場合は、インターネットにおけるオンラインカウンセリング等を利用するのが良いでしょう。

オンラインカウンセリングで可能なことは、ビデオ通話等による相談です。
薬物治療を行うことはできませんので、その必要がある場合は後述する医療機関を受診してください。

cotree
あなたのいばしょ

この二つのオンラインサービスをここでは紹介します。

cotree

cotreeは、臨床心理士や公認心理士等によるビデオ通話のカウンセリングを受けることができるサービスです。
通常は有料ですが、能登半島地震被災者に向けて無料のメンタルケアサービスを提供しています。

cotree「令和6年能登半島地震へのメンタルケア支援について」

あなたのいばしょ

あなたのいばしょは、365日24時間無料で匿名性を保ったまま相談できるサービスです。身近に相談できる人がいない場合、利用してみることをおすすめします。
厚生労働省からも支援を受けているため、安心して利用できるサービスです。

厚生労働省支援情報検索サイト登録窓口「あなたのいばしょ」

専門機関にメンタルケアを依頼する

自分達でメンタルケアの問題を解決できない場合は、専門家にメンタルケアを依頼しましょう。
災害時には、精神医療や精神保健活動を行う専門的なチームである災害派遣精神医療チーム(DPAT)が派遣されることもあります。

災害派遣精神医療チーム(DPAT)とは

東日本大震災等の経験により、震災後のメンタルケアが重要であることが認知されました。そこで発足したのがDPATです。DPATは、被災地における精神科医の代診等を行います。

避難所で受診可能なことも

能登半島地震を受けて、実際にDPATが避難所で診療を行ったことがニュースとして取り上げられました。

RKBオンライン「避難所で暮らす人たちの「心のケア」医師や看護師でつくる精神医療チームDPATを派遣…必要であれば薬も処方」

地震等の災害時には、道路状況等が悪化するため、病院を受診することが難しい場合も存在します。そこで、病院ではなく避難所で診察を行うために、DPATが派遣されることもあります。
専門家のメンタルケアが必要であるものの自分で受診することが難しい場合は、避難所へのDPATの派遣予定があるか避難所に聞いてみるのが良いでしょう。

自分でメンタルケアが難しい場合は専門家に相談を

被災時に数日間気分が落ち込むのは普通のことであり、それほど心配いりません。しかし、それが数週間続くようであれば、心療内科等の専門機関に相談しましょう。
被災によって精神科や心療内科へのアクセスが制限されている場合、DPATという専門チームが派遣されることもあります。避難所で診察を受けられるケースもあるので、必要のある方は避難所に相談してみてください。

監修:精神科医・日本医師会認定産業医/近澤 徹

【監修医師】
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役
近澤 徹

オンライン診療システム「Mente Clinic」を自社で開発し、うつ病・メンタル不調の回復に貢献。法人向けのサービスでは産業医として健康経営に携わる。医師・経営者として、主に「Z世代」のメンタルケア・人的資本セミナーや企業講演の依頼も多数実施。

> 近澤 徹| Medi Face 医師起業家