
VDT症候群とは、パソコン・スマートフォンなどの画面を長時間見続けることで起こる心身の不調のことです。眼精疲労、ドライアイ、肩こり、頭痛、手指のしびれなどの身体症状に加え、イライラ感や集中力低下、不眠など精神面にも影響することもあります。
VDT症候群への対策としては、1時間以上の連続作業を避け、1時間に1回は15分程度の休憩を推奨するルールづくりが効果的です。また、短時間の小休止や遠くを見る休眼タイムを取り入れることも推奨されます。さらに、ディスプレイは目線よりやや低く設定し、照明の反射を避けるなど環境調整も重要です。
「ただの疲れ」と放置せず、組織として予防策を講じることで、従業員の健康維持と生産性の向上に寄与することができます。
監修医師:近澤 徹
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役
目次
VDT症候群とは
VDT症候群とは、PCやスマートフォンなどの画面(VDT)を長時間使用することで心身に不調が現れる状態を指します。代表的な症状として、まず「目の疲れ」があります。まばたきの減少によるドライアイ、視界のかすみ、眼精疲労などが典型です。
また、「肩こりや背中の痛み」を感じることもあります。同じ姿勢を続けることで筋肉が緊張し、頭痛や手のしびれにつながることもあります。
深刻なのが「うつ状態」です。ストレスや疲労の蓄積により、意欲低下・イライラ・不眠といった精神面への影響が出ることもあります。
VDT症候群の症状①-目の疲れ
VDT症候群の中でも最も多く見られるのが「目の疲れ」です。長時間パソコンやスマートフォンの画面を注視すると、まばたきの回数が大きく減り、涙が蒸発しやすくなるため、ドライアイや目の乾燥、痛み、充血、視界のかすみなどが起こりやすくなります。
また、画面との距離が近すぎたり照明が合っていなかったりする場合、ピント調整を続ける毛様体筋が疲労し、眼精疲労や頭痛につながることもあります。企業としては、画面位置・照明・明るさの調整、ブルーライトカット環境の導入、1時間に1回の休憩ルールやスキマ時間の遠方視トレーニングなど、作業環境と働き方の両面で対策を講じることが重要です。
VDT症候群の症状②-肩こり・背中の痛み
VDT症候群では、目の不調に加えて「肩こり・背中の痛み」がよくみられます。これは、長時間同じ姿勢で作業することにより、首・肩・背中・腰周辺の筋肉が緊張し続け、血流が悪化することが主な原因です。
特に、前傾姿勢や猫背、ディスプレイが高すぎる・低すぎる、肘や背中を支える環境が整っていない場合、負担が増しやすくなります。症状としては、肩こりや首・腰の痛みだけでなく、緊張性頭痛、吐き気、手指のしびれなど神経症状が併発するケースもあります。
このような症状を防ぐためには、正しい姿勢で作業できる環境整備(机と椅子の高さ調整、肘・背中のサポート、足裏の接地など)に加え、長時間作業を前提としない運用ルールの整備が重要です。また、1時間に数分のストレッチや肩回し、立ち上がり動作を推奨するだけでも症状悪化を防ぐことができます。
VDT症候群の症状③-うつ状態など
VDT症候群では、身体症状だけでなく、精神面にも影響が及ぶことがあります。特に長時間の作業による疲労やストレス、集中状態が続くことで、脳が休まらず、自律神経が乱れることが背景にあります。その結果、イライラしやすくなる、不安感が強くなる、集中力や意欲が低下する、眠れない(不眠)などの症状が現れます。
これらは一時的な疲れからくるものと誤解されがちですが、放置すると、うつ状態へ進行する可能性があります。
企業側としては、「本人の努力不足」と捉えるのではなく、環境要因や業務配分、長時間労働、リモートワーク環境などに問題がないか客観的に確認することが必要です。また、相談窓口や産業医、ストレスチェック制度を活用し、早期の気づきや支援につなげることが効果的です。VDT症候群による精神的負荷は、本人だけでなく組織全体のパフォーマンス低下にもつながるため、定期的なメンタルケアと作業環境改善の両立が求められます。
VDT症候群の予防対策
VDT症候群を予防するためには、企業側の環境づくりが重要です。まず作業場所の照明や採光を調整し、画面の反射や見づらさを防ぐことが基本です。また、長時間の連続作業を避け、一定時間ごとに休憩を取るルールを設けることも効果的です。健康管理として、眼科受診や姿勢改善、ストレッチの推奨なども必要です。さらに、従業員に適切な知識を提供する労働衛生教育や、テレワーク環境に応じたガイドライン整備も欠かせません。最後に、ストレスチェック制度を活用し、早期に不調に気づける体制を整えることで、VDT症候群の発生を抑え、働きやすい環境づくりにつながります。
ストレスチェッカーとは
「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しているのはもちろん、2025年5月からは無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施が義務化されることとなりました。
VDT症候群は精神的ストレスとも関連し、早期対応が重要です。ストレスチェックを活用することで、疲労や不安、集中力低下の兆候を把握し、環境改善やサポートにつなげられます。
導入や運用の相談は、ぜひお気軽にお問合せください。
作業場所の照明・採光
VDT症候群を防ぐためには、作業場所の照明や採光環境を整えることがとても重要です。画面が暗すぎたり明るすぎたりすると、目に負担がかかり、眼精疲労や頭痛の原因になります。特に、ディスプレイへの光の映り込み(反射)は、視認性を低下させ、無意識に姿勢が前傾するなど、肩こり・首こりの悪化にもつながります。対策としては、ディスプレイを窓や照明の正面に置かない配置を検討し、カーテンやブラインドで直射日光を調整することが効果的です。また、照明は「暗すぎず、眩しくない中間の明るさ」が理想とされており、デスクライトを併用し光を分散させる方法も有効です。ブルーライトカットフィルムや反射防止フィルムの活用も、目の負担軽減につながります。
作業時間の管理
長時間連続して画面を見続けると、目や身体の疲労が蓄積し、肩こりや頭痛、集中力の低下、さらには精神的な不調につながることがあります。そのため、厚生労働省のガイドラインでも「1時間作業したら10~15分程度の休憩を挟む」ことが推奨されています。また、連続作業中にも1~2分の小休止を入れ、画面から目を離して遠くを見る、軽く身体を動かすなど、負担を分散させる工夫が効果的です。企業としては単に休憩を推奨するだけではなく、休憩時間のルール化や、ポモドーロタイマーなどの生産性ツール導入、業務量の偏り調整、テレワーク時の勤務管理ルール整備などが求められます。従業員自身がセルフマネジメントできるよう、教育や啓発も欠かせません。作業量・休息・環境調整を組み合わせ、無理のない働き方を制度として整えることが、VDT症候群の予防とパフォーマンス向上につながります。
健康管理
定期的な健康診断や視力検査を実施し、従業員の体調変化を早期に把握する仕組みが重要です。また、眼精疲労や肩こり・頭痛などの症状は本人が「仕事だから仕方ない」と放置しがちですが、その蓄積は生産性低下や長期休職につながる可能性があります。そのため、セルフケアを促す社内教育やリーフレットの配布、産業医や保健師との相談窓口の整備が効果的です。
さらに、生活習慣とメンタルヘルスもVDT症候群と密接に関係します。睡眠不足、運動不足、食生活の乱れは症状を悪化させることが多く、企業としてもウォーキングイベントの開催、ストレッチプログラム、健康アプリとの連携など、習慣改善に取り組む仕組みづくりが有効です。
労働衛生教育
VDT症候群の防止には、設備改善や休憩ルールだけでなく、従業員が正しい知識を持ち、自分の健康を守れるようにするための労働衛生教育が欠かせません。特にVDT作業では、姿勢・視線の高さ・キーボード位置・照明環境など、ちょっとした工夫で負担が大きく変わるため、知っているかどうかが健康状態に直結します。
企業としては、「なぜ必要なのか」「どうすれば防げるのか」を分かりやすく共有し、従業員が実践できるレベルまで落とし込む教育が必要です。
具体的には、eラーニングや研修会でのVDT作業指針の説明、ストレッチ方法や目の休め方、ブルーライト対策など、実践的な内容を継続的に周知すると効果的です。管理職向けには、部下の体調変化に気づく方法や、作業時間管理のポイントに関する教育も重要です。また、新入社員や部署異動時など、節目ごとに教育の機会を設けることで、形骸化を防ぎ定着につながります。
テレワークにおける対策
テレワーク環境では、会社と違い設備が整っていないケースが多く、VDT症候群のリスクが高まりやすい傾向があります。そのため企業としては、従業員が適切な作業環境を整えられるよう、基準やガイドラインを示すことが重要です。
たとえば、椅子や机の高さ調整、画面位置、照明、温湿度など、快適な姿勢と視環境を維持できるポイントを明確に伝えることが効果的です。また、必要に応じて外付けモニターや人間工学に基づいた周辺機器の導入支援を検討する企業も増えています。
さらにテレワークでは、長時間座りっぱなしになりやすく、自律的な休憩管理が難しいため、企業側が「1時間に1回の休憩」「短時間ストレッチ」など具体的な行動ルールを推奨することが有効です。オンライン上でストレッチ動画やセルフケアのコンテンツを共有する企業もあります。
加えて、テレワークは孤独感やコミュニケーション不足がストレス要因となるため、定期的なオンライン面談や朝礼、チャット活用などで心理的なフォロー体制を整えることも必要です。
ストレスチェックの活用
VDT症候群は、身体だけでなく精神面の不調につながるケースが多いため、早期の兆候を把握し対策につなげることが重要です。その手段として有効なのがストレスチェックの活用です。ストレスチェックを活用することで、従業員のストレス状況や仕事環境との不調和、集中力低下や睡眠障害など、VDT作業による精神的ストレスの早期発見が可能になります。特にテレワークやデスクワーク中心の働き方では、本人が不調に気づきにくい傾向があるため、定期的な心理的状態の評価は重要です。また、ストレスチェック結果は部署や組織単位の集団分析に活用することで、業務量の偏り、休憩が取りにくい職場環境、コミュニケーション不足といった構造的課題の可視化にもつながります。気づいた課題に対し、人員配置の見直し、作業環境改善、産業医との面談導入、衛生委員会での検討など、組織としての改善策に発展させることができます。
ストレスチェッカーとは
「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しているのはもちろん、2025年5月からは無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施が義務化されることとなりました。
VDT症候群は精神的ストレスとも関連し、早期対応が重要です。ストレスチェックを活用することで、疲労や不安、集中力低下の兆候を把握し、環境改善やサポートにつなげられます。
導入や運用の相談は、ぜひお気軽にお問合せください。
監修:精神科医・日本医師会認定産業医/近澤 徹
【監修医師】
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役・近澤 徹
オンライン診療システム「Mente Clinic」を自社で開発し、うつ病・メンタル不調の回復に貢献。法人向けのサービスでは産業医として健康経営に携わる。医師・経営者として、主に「Z世代」のメンタルケア・人的資本セミナーや企業講演の依頼も多数実施。
まとめ
ストレスチェックとは、従業員のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための制度です。現在は従業員50人以上の事業場で実施が義務づけられていますが、今後は50人未満の事業場にも義務化が拡大される見込みです。VDT症候群は身体症状だけでなく精神的ストレスとも関連が深く、早期発見・予防が重要です。ストレスチェックを活用することで、従業員の疲労や不安傾向、集中力低下などの兆候を把握し、必要な支援や環境改善につなげることができます。
国内最大級のストレスチェックツール「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・大規模医療機関など、幅広い組織で導入されてきた信頼と実績を持つサービスです。未受検者への自動リマインド機能やリアルタイム進捗確認、医師面接希望者の管理など、実務に即した機能を標準搭載しています。さらに、2025年5月からは無料プランやWEB代行プランでも「プレゼンティーイズム(体調不良や心理的負担による生産性低下)」の測定が可能に。欠勤や離職といった深刻な事態に至る前に課題を早期発見し、対策を講じることができます。導入や運用に関するご相談も、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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