コロナ禍で在宅勤務やテレワークといった「新しい働き方」へのシフトが急速に進んでいます。その結果、長期の在宅勤務にストレスを感じる人が増えています。
パーソル研究所「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」
しかしテレワークのストレスからメンタル不調となっても、上司が部下の姿や行動を直接確認することが難しいため、その不調に気づきにくいという問題があるようです。
目次
テレワーク・在宅勤務のストレス要因
コロナ禍において、在宅勤務などテレワークの普及が急ピッチで進んでいます。
コロナ禍となる前から、オンライン診療や遠隔授業など離れた場所の人と人を繋ぐサービスの提供は行われていました。これについては政府も「Society 5.0」において、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させることで、社会と経済を発展させようと推進してきました。この流れが、コロナ禍で一気に加速しています。
テレワーク導入については、「通勤時間がなくなって、時間を有効活用できるようになった」「地方に居住しながら東京の会社に勤めるなど、自由な働き方を選択できるようになった」「家族との絆が深まった」など、ポジティブな意見も聞かれます。
しかしながら、テレワークのデメリットについて十分に検討する時間もないまま、なかば強制的に導入となった企業も少なくないのではないでしょうか。そうした企業ではとにかくテレワークのためのICTのインフラ整備を優先しており、メンタルヘルスケアが後回しになってしまっている印象を受けます。
ここではテレワークのデメリットについて、特にメンタルヘルスやストレスといった観点からみていきましょう。
(1)コミュニケーションがとりづらい
テレワークのデメリットについて多く聞かれるのが、「コミュニケーションがとりづらい」という声です。
従来のオフィス勤務でもメールやチャットツール、Web会議ツール等は活用されていましたが、それでも全く顔を合わせないということはありませんでした。会議後のちょっとした雑談やランチが社内の連携につながっていたり、モチベーションの維持につながっていたと考える人もいます。
そのような人は、この「ちょっとしたコミュニケーション」がなくなったことに物足りなさを感じてしまうようです。
パーソル研究所「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」
(2)不安感・孤独感を感じる
パーソル総合研究所の「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」によれば、テレワーク勤務者が感じる不安感の理由として最も多いのが「相手の気持ちが察しにくい」で39.5%、次いで「仕事をさぼっていると思われるのではないか」で38.4%となっています。
孤独感については「孤立しているように思う」が28.8%となっており、3割弱の人が孤独感を感じていることが分かりました。
パーソル研究所「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」
(3)オン・オフの切り替えが難しい
仕事とプライベートの切り替えが難しく、ついだらだらとPCに向かう時間が長くなってしまう…という声も、在宅勤務者からよく聞かれる悩みです。
一般的には、自分のペースで仕事ができる環境は仕事のパフォーマンスを上げる効果があるものですが、在宅勤務となるとつい仕事を抱え込みやすくなってしまう傾向があるようです。
テレワーク・在宅勤務のストレス対応策
これまでご紹介したように、在宅勤務やテレワークでは、不安や孤独を感じやすいといったデメリットがあり、またオン・オフの切り替えが難しかったり、コミュニケーションがとりづらかったりといったストレスを抱え込みやすくなる要因も見受けられます。
職場のメンタルヘルス対策は、コロナ禍以前から企業が取り組むべき課題ではありましたが、今後はさらに優先的に取り組むべき問題になっていくことでしょう。
(1)孤独感・不安感を軽減する体制を整える
孤独感や不安感は精神的なエネルギーを奪い、その結果パフォーマンスを低下させ、メンタルヘルス不調の引きがねにもなります。
これらを防ぐためには、メールやチャットだけに頼らず、ビデオ電話やオンライン会議を定期的に開催してコミュニケーションをとることがおすすめです。
ローテーションで出社し、密にならないようミーティングを行っている企業やオンラインで雑談の場を設けて交流するといった工夫を行っている企業もあります。
(2)相談体制を強化する
職場の管理監督者は日々、部下からの相談に対応するよう努めなければなりませんが、そのためにはまず部下が上司に相談しやすい環境づくりを行う必要があります。
まずは週1回など定期的にWeb会議ツールを活用して1対1でミーティングを行なうのもおすすめです。モニター越しでもお互いの顔が見えることで、管理側は部下の顔色や表情、身だしなみ、言動等に異変がないかを確認できます。
早期に不調に気づければ、さまざまな対策の選択肢を持つことも可能となります。
(3)ストレスチェックを活用する
目に見えないメンタルヘルスの問題を、早い段階で把握するのはなかなか難しいことです。
そこでおすすめなのが、ストレスチェックを定期的に行って、早期にメンタル不調の気づきを促す方法です。
ストレスチェックとは、平成27年(2015年)から施行された制度で、産業医選任義務のある50人以上の事業場に義務づけられているものです。
仕事や職場に関する質問に対して、今の自分の状態を一問一答形式で回答していきます。
ストレスチェックによって、従業員は自分のストレス状態に気づき、ストレスが高い場合には医師へ相談することができます。また企業側はケアが必要な従業員に対して就業上必要な措置を実施し、メンタルヘルス不調を防止できるのです。
またストレスチェック全体の結果を分析することで職場や労働環境の改善につなげることも可能となっています。
(4)組織のサポート体制を整える
メンタルヘルスケアに組織のサポートが有効であることは、阪神淡路大震災や東日本大震災などの災害時にも報告されています。
業務の内容や目標、それに対する評価方法を明らかにして従業員に周知し、正しいフィードバックを行うことはもちろん、従業員同士が互いに関心を持ち続けられる体制も大切になってきます。
あるテレワーク導入企業では、メンバーが毎朝オンライン朝礼を行っており、「表情に活気がない」「寝癖がついたまま」「声が小さい」などいつもと違う様子にいち早く気づくことができたそうです。
変化にいち早く気づくことができれば、産業医の判断を経て就業上の措置に関する措置を講じたり管理監督者や人事担当者によるフォローアップを行ったりするなど、メンタルヘルス不調に対して適切な対応をとることができます。
(5)モーニングストレッチなどのサービスを活用する
毎朝決まった時間にオンライン朝礼を行ったりオンラインランチ会を開催したりすると、距離は離れていても孤独感を感じずに済みます。
ある会社では、9時から11時をコアタイムとするフレックスタイム制を導入し、9時にメンバー全員がカメラをオンにして朝礼を行っています。
朝礼と言っても形式的なものではなく、実際にオフィスに出社した時に立ち話するような雰囲気を目指して実施しており、従業員にも好評とのことです。
また仕事の合間にエクササイズ動画を画面共有して、メンバーが遠隔で取り組む施策を行っている企業があり、これも「いい気分転換になる」と好評です。
ストレスチェッカーでは、規則正しい生活の維持とストレス軽減、そして最高のパフォーマンスの発揮を目的として、スポーツスパ アスリエを運営する株式会社文教センターと共同で、産業医(種市摂子)のもと、Zoomを利用したリモートモーニングストレッチの提供を行っています。
メンバーの出欠確認やメニューのカスタマイズも対応しておりますので、まずはお気軽にお問合せください。
まとめ
在宅勤務やテレワークはさまざまなストレス要因が指摘されており、メンタルヘルス不調にも気づきにくいという課題を抱えています。しかし、オンライン朝礼やオンラインランチ会、定期的なミーティングなど、「いつもと違う」状態に気づくための施策は工夫次第で行うことができます。
メンタルヘルス不調は早期に対応することで、事態の深刻化を防げる場合がありますので、ちょっとしたストレス解消の場もサポートの1つとなることを認識しておきましょう。
事業者としては長時間労働にならないよう配慮することはもちろん、ストレスチェックなどを活用してセルフケアを促したり、相談体制を強化して専門家によるサポートを受けるよう促したりすることは、「企業がどれだけ従業員の生命や健康、安全管理を真剣に考えているか」を意味します。
そして、企業が従業員のことを真剣に考え施策に取り組む姿勢は、従業員のモチベーションを向上させ、会社全体の生産性を向上させる可能性があります。
在宅勤務やテレワークの導入に伴うメンタルヘルス対策は、今後企業の取り組むべき重要な課題になっていくと考えられます。”
法人向けストレスチェッカーへのお問合せ
法人向けストレスチェッカーは、官公庁、テレビ局、大学等に導入いただいている日本最大級のストレスチェックツールです。
社内の実施事務従事者にストレスチェックのシステムをご利用いただく『無料プラン』もございます。お気軽にお問い合わせください。
【監修】 公認心理師 山本 久美(株式会社HRデ―タラボ) 大手技術者派遣グループの人事部門でマネジメントに携わるなかで、職場のメンタルヘルス体制の構築をはじめ復職支援やセクハラ相談窓口としての実務を永年経験。 |