
早期離職とは、一般的には入社後3年以内に離職することを指します。
早期離職は、本人の我慢が足りないから起きるものではありませんし、最近の若手はすぐ辞めると一言で片づけられるものでもありません。
早期離職は、仕事内容のミスマッチ、人間関係、働き方への不安、将来の見通しの持ちにくさなど、いくつもの要因が重なって起こります。
働く側にとってはキャリアの悩みであり、企業にとっては定着や育成に関わる課題です。
この記事では、早期離職が起きる背景と、個人・企業の両面から考えたい対策を整理します。
監修:山本 久美(株式会社HRデータラボ 公認心理師)
目次
早期離職とは
早期離職とは、一般的に就職してから3年以内に会社を辞めることを指します。近年は3年以内の離職だけでなく、入社から数か月、場合によっては数週間ほどで退職する「超早期離職」も注目されています。
背景には、人間関係や仕事内容のミスマッチ、入社前後のギャップなど、さまざまな要因があります。
一般的には就職後3年以内の離職を指す
早期離職とは、一般的に新卒採用者が入社後3年以内に離職することを指します。厚生労働省でも「新規学卒就職者の離職状況」として3年以内の離職率が毎年公表されており、企業にとっては定着率を見ていくうえで重要な目安となっています。
厚生労働省が公表した令和4年3月卒業者のデータでは、就職後3年以内の離職率は中学54.1%、高校37.9%、短大等44.5%、大学33.8%でした。
参考:厚生労働省/新規学卒就職者の離職状況
超早期離職も課題になっている
最近は、一般的に入社から半年〜1年未満で会社を辞める「超早期離職」も深刻な課題として注目されています。
先ほどの厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」に関する調査でも、大学新卒者の約10~12%前後が入社1年以内に離職しており、超早期離職は見過ごせない課題となっています。
早期離職が起きる主な理由
早期離職が起きる理由としては、上司や同僚との人間関係がうまくいかない、長時間労働や休日の少なさなど労働条件に不満がある、思っていた仕事と実際の業務が違うと感じる、といった理由が挙げられます。
さらに、会社の将来性に不安を覚えたり、このままで自分のキャリアは大丈夫なのかと悩んだりするケースも見られます。
人間関係の悩み
早期離職が起きる理由の中でも、とくに見過ごせないのが人間関係の悩みです。独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)が行った、初めて就職した会社を3年以内に辞めた若年層への調査では、「人間関係がよくなかった」という理由が、「労働時間・休日・休暇への不満」や「仕事が自分に合わなかった」と並んで、上位に入っています。なかには、「入社後に適切な指導が受けられなかった」「困っていても放置された」といった声も掲載されています。
参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構/若年者の離職状況と離職後のキャリア形成
労働条件や職場環境への不満
早期離職の背景には、労働条件や職場環境への不満もあります。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査でも、「労働時間・休日・休暇の条件が悪い」というケースが30%前後であったことが報告されており、若手の負担につながる実態が見えてきます。
仕事内容への違和感(配属ガチャ)
独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)が行った調査では、男女ともに「仕事が自分に合わない」が40%を超えています。統計上は「合わない」と表現されますが、その背景には「希望職種ではなかった」「やりたいことができない」という配属の問題が含まれているものと思われます。
企業の将来性やキャリアへの不安
早期離職の背景には、企業の将来性や自分のキャリアへの不安もあります。終身雇用を前提にしにくくなった今、とくに若手は「この会社にいて10年後の自分はどうなるか」という視点で職場を見ています。
厚生労働省の調査でも、離職理由として「満足のいく仕事内容でなかった」が26.7%となっており、男性では「会社の将来に不安を感じた」が31.0%となっています。
参考:厚生労働省/離職理由(令和5年)
早期離職で起こりやすい問題
早期離職が続くと、企業にはさまざまな負担が生じます。
採用や研修にかけた時間や費用を十分に回収できなくなりますし、現職の社員の業務負担が増え、職場の不満が高まることで連鎖的な離職につながることもあります。
加えて、定着率の低さは企業イメージや採用力の低下を招き、組織に知識や経験豊富な人材を保持しにくくなる点も大きな問題です。
「採用・教育コストの損失
早期離職のリスクの1つが、採用や教育にかけたコストの損失です。負担は求人広告費だけではなく、一人を採用するまでにかかった面接対応や会社説明会の準備など、人事や役員の工数も含まれます。
さらに、入社後には研修費や教材費に加え、先輩社員やメンターが自分の業務を止めて指導した時間も積み重なります。こうした育成のための投資は、本人が早い段階で辞めてしまうと十分に回収できません。
現職の社員の負担増&連鎖離職
早期離職が起こると、まず現場で大きくなるのが、現職の社員の負担です。一人抜けた分の業務を周囲で埋めることになり、作業量が増えて残業が続きやすくなります。加えて、「時間をかけて教えたのに辞めてしまった」という徒労感が、先輩社員やリーダーのやる気を下げることもあります。
また、本来その人が担うはずだった仕事を急きょ引き継ぐことで、ミスやトラブルが起こりやすくなる懸念もあります。
さらに深刻なのは、こうした離職が周囲にも影響することです。「あの人が辞めるなら、自分も考えたほうがいいかもしれない」と職場への不信感が広がり、連鎖的に退職が続くことがあります。
企業イメージや採用力の低下
早期離職が続くと、企業イメージや採用力にも悪影響が出ます。
最近は、応募前にクチコミサイトを確認する人も多く、入社前の説明と実態のずれや、教育体制への不満といった声が蓄積すると、企業への不信感が広がり、広告を出しても応募が集まらなくなることもあります。
組織の「ノウハウ蓄積」の停滞
早期離職が続くと、組織にノウハウがたまりにくくなります。
仕事には、マニュアルだけでは伝えきれないコツや、過去の経緯を踏まえた判断の積み重ねがありますが、人が育つ前に辞めてしまうと、そうした知識が次の世代に引き継がれないため、同じミスや手戻りが繰り返されやすくなります。
組織にノウハウが溜まらないということは、「毎年1年生からやり直している学校」のようなものです。時間が経っても組織としての戦闘力が上がらず、競合他社にどんどん差をつけられる原因になり得ます。
早期離職を防ぐために会社ができること
早期離職を防ぐには、入社後の対応だけでなく、採用段階からの工夫が欠かせません。仕事内容や職場の実態は、採用時にできるだけ正直に伝え、入社後のギャップを減らすことが大切です。
あわせて、オンボーディングを充実させ、定期的な面談や声かけで不安を早めに拾うことも重要です。さらに、柔軟な働き方やキャリアの見通しを示し、ストレスチェックも活用しながら職場環境を見直していくことが、定着率の向上につながります。
採用段階:リアリティショックの防止
採用では、人数を集めることより長く働ける人と出会う視点が大切です。
したがって、採用の段階で入社後のギャップをできるだけ小さくしておくことが大切です。会社をよく見せることばかりを意識するのではなく、実際の働き方を誠実に伝える姿勢が、結果として定着につながります。
RJPの実施
仕事の良い面だけでなく、繁忙期の忙しさや地道な業務、クレーム対応の有無なども事前に伝えておくことで、「思っていたのと違う」という状態を回避することができます。
現場社員との面談
配属予定の部署で働く先輩と本音で話せる場があると、職場の雰囲気や人間関係を具体的にイメージできるようになります。
配属先や仕事内容の明確化
どこで、誰と、どんな仕事から始めるのかをできるだけはっきり示すことで、不安や不信感を減らせます。
社内見学や実務体験
実際の現場を見たり、短時間でも仕事を体験したりすることで、自分に合う職場かどうかを応募者自身が判断できるようになります。
入社直後:オンボーディング(早期適応支援)の強化
入社直後のオンボーディングは、単なる事務手続きや研修ではなく、新しく入った人が早く職場になじみ、孤立しないようにするための大切な支援です。
メンター・バディ制度
業務を教える担当とは別に、気軽に相談できる先輩社員をつけることで、小さな悩みも抱え込まずに済み、仕事におけるストレスにも早期に対処することが期待できます。
歓迎の場づくり
初日のメッセージやランチ会などで、「受け入れられている」と感じられる空気をつくることが大切です。
小さな成功体験
最初は達成しやすい仕事を任せ、役に立てた実感を持ってもらうことで、自信につながります。
暗黙のルールの見える化
社内のちょっとした習慣や用語を共有しておくと、聞きづらい言葉によるストレスを減らせます。
早めの振り返り面談
入社1週間後や1か月後に違和感や困りごとを聞くことで、小さな不安が大きくなる前に対応できるようになります。
コミュニケーション:定点観測とフォロー
早期離職を防ぐには、本人の変化を早めに捉えフォローできる体制をつくることが大切です。辞めたい気持ちは、いきなり退職の申出として意思表示されるのではなく、言葉や態度の小さな変化として表れることも少なくありません。
1on1ミーティング
定期的に上司と1対1で話す場を設け、進捗確認だけでなく、困りごとや気持ちの変化にも目を向けます。答えやすい問いかけから始めると、本音を引き出しやすくなります。
パルスサーベイ
短いアンケートをこまめに実施すると、本人が言い出しにくい不調を数値で把握できます。スコアの変化を見て、早めの面談につなげることもできます。
周囲の気づきの共有
教育担当や先輩社員が、あいさつや表情、昼休みの様子などの小さな変化に気づけると、早い段階で声をかけることができます。
心理的安全性の確保
本音を話しても、自分にとって不利益がないと感じられる職場でなければ、どんな仕組みも機能しません。相談しやすい空気づくりが土台になります。
制度の整備:柔軟性とキャリアの可視化
早期離職を防ぐには、制度面での整備も欠かせません。特に、柔軟な働き方とキャリアの見通しを示すことは、将来への不安を減らします。
柔軟な働き方の整備
テレワークやフレックスタイム、短時間勤務などを取り入れることで、「仕事は続けたいが、今の働き方では厳しい」という状況を減らし、育児や介護など、ライフステージに応じて働き方を切り替えることができます。
キャリアの可視化
どんな経験やスキルを積めば、どのような役割や処遇につながるのかを具体的に示すことで、将来の見通しを持てるようになります。
成長実感を持てる評価制度
年に数回の査定だけでなく、日々の達成や成長をこまめに認める仕組みがあると、「この会社で働き続ける意味」を感じることができるようになります。
職場環境:ストレスチェックの活用
ストレスチェックは、メンタルヘルス不調の予防だけでなく、早期離職のサインを早めに見つける手段としても有用です。年1回実施するだけで終わらせず、結果を職場改善につなげることが大切です。
高ストレス者への早期フォロー
産業医面談や人事面談につなげることで、離職に至る前に業務負担を軽減するなどの措置を行うことができます。
集団分析による職場の見直し
部署ごとの傾向を見れば、業務量が偏っている職場や、上司の支援が不足している職場に気づくきっかけになります。問題が見えれば、配置やマネジメントの改善にもつなげられます。
ストレスチェッカーとは
「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しているのはもちろん、2025年5月からは無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施が義務化されることとなりました。
ストレスチェックを活用することで自分の状態を客観的に把握でき、早めのセルフケアにつなげることができますし、集団分析を通じて職場環境の改善につなげることができます。無料プランもございますので、導入方法などお気軽にご相談ください。
監修:山本 久美(株式会社HRデータラボ 公認心理師)
大手技術者派遣グループの人事部門でマネジメントに携わる中、社内のメンタルヘルス体制の構築をはじめ復職支援やセクハラ相談窓口としての実務を永年経験。
現在は公認心理師として、ストレスチェックのコンサルタントを中心に、働く人を対象とした対面・Webやメールなどによるカウンセリングを行っている。産業保健領域が専門。
まとめ
ストレスチェックは、従業員が自分のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐためにセルフケアに繋げることを目的とした制度です。現在は従業員50人以上の事業場で義務化されていますが、今後は50人未満の事業場にも対象が拡大される予定です。
早期離職の背景には、人間関係の悩みや業務負担、将来への不安などが重なっていることがあります。ストレスチェックを活用すれば、部署ごとの課題について把握することができ、職場環境の見直しやフォローにつなげることが期待できます。
ストレスチェッカーは、官公庁・上場企業・医療機関などで採用されている国内最大級のストレスチェックツールです。自動リマインド、面接指導者管理、進捗確認機能を標準搭載し、2025年5月からは無料プランでも「プレゼンティーイズム(生産性低下)」の測定に対応しております。
導入方法や実施方法など、お気軽にお問合せください。

