メンタルヘルスケアを行ううえでは、事業場が抱える問題や必要なサービスに応じて、メンタルヘルスケアに関する専門的な知識を有する機関を活用することが有効です。
また、労働者が相談内容などを事業場に知られたくないといった場合にも、事業場街の機関を活用することは効果的です。
このような機関のひとつが、産業保健総合支援センターです。
目次
産業保健総合支援センター
(さんぽセンター)とは
産業保健総合支援センター(さんぽセンター)は、産業医や衛生管理者などの事業場内産業保健スタッフ等に対して、産業保健全般についての相談対応やセミナー・研修などのサービスを提供する機関です。
なお、地域産業保健センターの活動に対しても、専門的・技術的支援や調査研究等も行っています。
(1)研修・セミナー
産業保健総合支援センターでは、産業保健に関する最新の知識や技術を提供するために、職場の健康管理に必要な知識を身につけるための講座や、具体的な健康対策の実践方法を学ぶワークショップなどを定期的に開催しています。メンタルヘルスケアの手法やストレス管理技術、労働災害予防のための安全対策などについても、情報提供を行っています。
(2)産業保健スタッフからの相談対応・訪問支援
産業保健スタッフが、企業や職場を訪問して健康管理に関する相談や支援を行います。たとえば、従業員の健康状態を評価し、適切な対策を提案するためのサポートや職場環境の改善点の指摘、健康管理プログラムの導入支援などを行います。
(3)メンタルヘルス対策支援
従業員の心理的ストレスを軽減し、心の健康を守るための施策を導入するために、職場のメンタルヘルス対策を強化するための支援を行います。具体的には、メンタルヘルスケアに関する研修の実施や、カウンセリングサービスの提供、ストレスチェックの実施支援などが含まれます。
(4)治療と仕事の両立支援
治療を続けながらも安心して働ける環境を整えるために、治療と仕事の両立を支援するためのサポートを行っています。
具体的には職場の理解を促進するための啓発活動や、治療計画に基づいた職場の調整などが含まれます。治療に必要な通院時間の確保や、柔軟な勤務形態の導入支援など具体的な支援も行います。
(5)情報提供・調査研究
企業や産業保健スタッフに対して、有益なデータや知見を提供し、健康管理の質を向上させることを目的として、産業保健に関する最新の情報を提供し、また必要に応じて調査研究結果を公表しています。
地域産業保健センターとは
地域産業保健センターは、産業医等の選任義務の内労働者数50人未満の小規模事業場の労働者及び事業者に対する産業保健サービスを提供している機関です。
メンタルヘルスケアについて、心の健康に関する相談を実施しているほか、心の健康づくり専門スタッフ等の紹介や助言、情報提供、事業場外資源とのネットワークの形成、維持等に関する支援などを行っています。
(1)健康結果意見聴取
健康診断の結果に基づき、産業医等が従業員の健康状態について意見を聴取し、適切なアドバイスを提供します。健康診断の結果を正確に理解し、必要な健康対策を講じるために生活習慣の改善指導や、定期的な健康チェックの推奨なども含みます。
(2)長時間労働者等への面接指導
長時間労働者や高ストレス環境で働く従業員に対して、面接指導を行い、健康リスクを軽減するための支援を行います。これは過労による健康障害を防止するための重要な対策で、たとえば、労働時間の短縮や業務の効率化、適切な休息の確保などをどのように行うのかといった具体的なアドバイスも含まれます。
(3)労働者の健康管理の相談
労働者の健康維持と向上を図るため、労働者やその家族からの健康管理に関する相談を受け付け、適切な対応策を提案します。栄養指導や運動プログラムの提案、ストレス対策のアドバイスなどが含まれます。
(4)個別訪問による産業保健指導
企業ごとの特性に応じた健康管理対策を提供するために、企業や事業所を個別に訪問し、産業保健に関する具体的な指導やアドバイスを行います。具体的には、職場環境の評価と改善提案や、従業員の健康教育プログラムの導入支援などを行います。
まとめ
メンタルヘルスケアを行ううえでは、事業者が労働者の意見を聴きつつ、事業場の実態に即した取り組みを行うことが大切です。
メンタルヘルスケアに関する専門的な知識を有する産業保健総合支援センターを上手に活用し、産業医等の産業保健専門職のアドバイスを求めることが大切です。
産業保健総合支援センターで提供されるサービスの中で、「大変役に立った」と評価されたサービスのトップは、「産業保健研修(Web形式を除く集合形式等)(46.6%)」であり、次いで、「両立支援促進員による支援」が42.6%で高い評価を得ています。
一方、地域産業保健センターでは、「健診結果の医師の意見聴取」が47.0%で最も高く、続いて「健康相談」が37.0%、「長時間労働者に対する面接指導」が33.1%となっています。
事業場の規模別に見ると、産業保健総合支援センターの多くのサービスは、従業員50人以上の事業場から高く評価されています。特に、「産業保健研修」や「両立支援促進員による支援」は、50人未満の事業場からも4割以上が「大変役に立った」と回答しています。
これらの調査データからも、メンタルヘルスケアを行ううえでは、事業者が労働者の意見を聴きつつ、事業場の実態に即した取り組みを行うことはもちろん、メンタルヘルスケアに関する専門的な知識を有する産業保健総合支援センターを上手に活用し、産業医等の産業保健専門職のアドバイスを求めることが大切であることが分かります。
独立行政法人労働者健康安全機構「令和4年度
産業保健活動総合支援事業アウトカム調査報告書」
【監修医師】 精神科医・日本医師会認定産業医 株式会社Medi Face代表取締役 近澤 徹 オンライン診療システム「Mente Clinic」を自社で開発し、うつ病・メンタル不調の回復に貢献。法人向けのサービスでは産業医として健康経営に携わる。医師・経営者として、主に「Z世代」のメンタルケア・人的資本セミナーや企業講演の依頼も多数実施。 |
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