
指示待ち人間とは、自分からは動かず、判断も引き取らないといった人のことです。そのような人を見ていると、つい「やる気がない」「主体性がない」と決めつけたくなりますが、実は個人の問題ではなく、組織がつくり出したその人なりの“安全策”である可能性があります。
この記事では、指示待ち人間の特徴と、指示待ち人間が生まれる背景、対処法などについてご紹介します。
監修医師:近澤 徹
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役
目次
指示待ち人間とは
指示待ち人間とは、上司や周囲からの明確な指示がなければ、自分で考えて動けない人を指します。与えられた業務はきちんとこなす真面目さがある一方で、主体的に判断する場面では立ち止まりがちです。特にトラブルや想定外の出来事が起きたとき、自分で決めることを避けようとする傾向があります。
「指示がないのでやっていません」が多い
指示待ち人間の代表格が、「指示がないのでやっていません」と繰り返すタイプです。自分で判断することに強い不安を抱き、明確な指示がなければ動けない状態です。何を優先すべきか、どこまで踏み込んでいいのかが分からず、「勝手にやって失敗するよりは、待つほうが安全だ」と無意識に考えてしまいます。
たとえば、上司が外出中に問い合わせ対応が必要になっても、「特に指示を受けていないので」と保留にし、会議準備も「何を用意すればいいか言われていない」と手をつけないといったタイプです。
「聞いていません」が口癖
指示待ち人間の中には、「聞いていません」が口癖になっているタイプもいます。自分が直接言われていないことには動かない、共有事項も“自分ごと”として受け取らない傾向があります。会議やチャットで情報は流れていても、「正式に自分に対して指示されていない」という理由で動こうとはしません。ミスを避けたい、責任を負いたくないという防御意識が強く、結果的にチーム全体の連携が鈍ります。
ある事例では、プロジェクトの進行変更が会議で共有されたにもかかわらず、Bさんは対応を進めていませんでした。理由を尋ねると、「自分には直接指示がなかったので」「自分がやるべきとは聞いていません」とのことでした。資料も議事録も残っていたのに、本人の中では“ノーカウント”です。悪意はないものの、その姿勢が周囲の負担を増やし、職場の空気を重くしてしまいました。
「次は何をしますか?」と聞く
指示待ち人間の中には、「次は何をしますか?」と頻繁に確認するタイプがいます。一見すると前向きで素直に見えますが、自分で優先順位を決めたり、全体の流れを読んだりすることができません。常に正解を外からもらおうとするため、判断の負担は上司に集まりチーム全体のスピードも落ちていきます。
ある事例では、資料作成を終えたCさんが、上司の席に来て「次は何をしますか?」と尋ねました。上司は「今の進捗を見て、自分で考えて動いてほしい」と伝えますが、Cさんは「具体的に指示をもらえないと不安です」と動きません。
指示待ち人間は生まれる原因
指示待ち人間は、単にやる気がないから生まれるわけではありません。また、若手に限った話でもなければ、その人の性格が問題というわけでもありません。
背景には、過去に失敗を過度に責められた経験や、自発的に動いても評価されなかった記憶があることも多いものです。
指示待ち人間=やる気がない、ではない
指示待ち人間と聞くと、「やる気がない人」「主体性のない人」に見えることがありますが、実際にはそう単純ではありません。表面上は受け身に見えても、内側では「失敗したくない」「評価を下げたくない」という強い緊張を抱えているケースもあります。
本人はむしろ真面目で責任感も強く、ただ、その真面目さが防御に向かってしまった結果、指示待ち人間に見えていただけという可能性もあるのです。
指示待ち人間=若手ではない
指示待ち人間というと、「最近の若手に多い」と語られがちです。しかし実際には、年齢や社歴だけの問題ではありません。長く働いている人でも役職がついている人でも、状況次第で指示待ちになることはあります。
ある事例では、入社20年目のベテラン従業員が、会議中ほとんど発言せず、「方針が決まったら教えてください」と繰り返していました。若手からは「経験があるのに、なぜ意見を言わないのか」と疑問の声も上がりましたが、本人はかつて提案を否定された経験が重なり、次第に自発的な発言を控えるようになっていたのです。つまり、指示待ちは世代の問題ではなく環境との関係で生まれることもあるのです。
失敗を過度に責められた記憶
指示待ち人間の中には、やる気がないのではなく、過去に失敗を強く責められた記憶を引きずっている人もいます。一度の判断ミスで厳しく叱責されたり、皆の前で否定されたりした経験があると、「自分で決めること=危険」という学習が起こります。その結果、主体性よりも安全を選び、「指示があれば動く」という姿勢に変わっていきます。周囲からは消極的に見えても、本人にとっては防御なのです。
新人時代に独自の提案をしたところ、「勝手なことをするな」と強く叱られた経験をした人が、それ以降は必ず細かく確認を取り、「明確な指示がないと動かない」スタイルに変わったという事例もあります。つまり、指示待ちは、怠慢ではなく、過去の痛みから生まれることもあるのです。
自発的に動くメリットを感じない
指示待ち人間の中には、能力や意欲の問題ではなく、「自分から動くメリットを感じない」という合理的な判断をしている人もいます。提案しても評価が変わらない、むしろ余計な仕事が増えるだけ。責任は重くなるのに報酬や裁量は増えない…。そんな環境では、積極的に動くインセンティブが見当たりません。結果として、「言われたことを確実にこなす」ほうが効率的だと考えるようになります。
ある事例では、改善案を出して業務効率を上げたにもかかわらず、評価面談ではほとんど触れられず、逆に「時間に余裕があるなら他の業務も任せる」と仕事が増えただけというケースがありました。以降、その人は提案を控え、「指示されたことだけをやる」スタイルに変わりました。つまり、本人にとっては損得を考えた結果だったわけです。
役割を固定化させたい心理
指示待ち人間の中には、失敗への恐れや評価不安ではなく、単に「自分の役割を固定しておきたい」という心理で自ら動かない人もいます。仕事の範囲が広がるほど責任は増え、求められる成果も変わります。それよりも、担当業務を明確に区切り、その枠内で安定して働くほうが安心できるというわけです。そんな思考が背景にある場合、主体性の欠如というよりも、境界線を守る選択といえます。
ある事例では、自分の担当外の案件について意見を求められても、「それは〇〇担当の仕事です」と線を引いていました。業務は正確でミスも少ない一方、役割を越える提案はしません。上司からは「もっと全体を見てほしい」と言われますが、本人は「自分の責任範囲を明確にしたいだけ」と考えていました。
指示待ち人間が多い職場の共通点
トップダウンが強く、上の判断が絶対で現場の裁量がほとんどない職場や、心理的安全性が低く意見を出すと否定される空気がある職場では、指示待ち人間が増える傾向があります。
また慢性的なストレス環境も、指示待ち人間が増える傾向があります。
トップダウンが強すぎる
指示待ち人間が多い職場の背景には、トップダウンが強すぎる組織風土が隠れていることがあります。方針も判断もすべて上層部が握り、現場は「決まったことを実行するだけ」という職場です。
このような職場環境は、一見すると統制が取れているように見えますが、余計な判断をすると「なぜ勝手に動いた」と指摘されるため、次第に誰もリスクを取らなくなります。
ある企業には、部長の決裁なしでは小さな改善提案すら実行できない部署がありました。若手が業務効率化の案を出しても、「上に確認してから」と止められ、最終的には却下されてしまいます。やがてメンバーたちは「どうせ通らない」と提案をやめ、「指示があれば動く」姿勢に変わりました。トップダウンが強すぎる環境は、結果として指示待ち人間を量産してしまうのです。
心理的安全性が低い
意見を言うと否定される、失敗すると強く責められる、空気を読まない発言は浮いてしまう――そんな心理的安全性の低い環境では、自分の考えを出すよりも黙って指示を待つほうが安全です。主体性よりも「波風を立てないこと」が優先され、結果として全員が受け身になっていきます。
ある事例では、会議で若手社員が改善案を出したところ、上司から「余計なことを考える前に目の前の仕事をやれ」と一蹴されました。それを見ていた他のメンバーも、次第に発言を控えるようになります。やがて会議は上司の独演会となり、部下は「指示を待つだけ」の存在になってしまい、誰も反対も提案もしない職場が出来上がってしまいました。心理的安全性が低い環境では、指示待ち人間の方が、合理的な生存戦略になってしまうのです。
忙しすぎて対話がない
指示待ち人間が多い職場の中には、単純に「忙しすぎて対話がない」ことが原因になっているケースもあります。常に業務に追われ、上司も部下も余裕がない。そもそも基本的な方針や期待値が共有されておらず、「何をどこまでやればいいのか」が曖昧なまま仕事が回っています。こうした環境では、自分で判断する材料が不足し、結果として「指示を待つ」以外の選択肢が見えなくなります。
たとえば常に締切りに追われている部署では、上司は「とりあえずやっておいて」とだけ伝え、具体的な優先順位やゴールを示していませんでした。部下は不安になり、「次は何をすればいいですか」と細かく確認するようになります。しかし上司も時間がなく、十分な説明はできないままの状態が続き、結局、判断が止まり全体のスピードも落ちていきました。忙しさが対話を奪うと、指示待ち人間は自然と増えていくのです。
成果は求めるが裁量は与えない
指示待ち人間が増える職場の中には、「成果は求めるが裁量は与えない」という矛盾した環境が原因になっているケースもあります。数字や結果へのプレッシャーは強い一方で、判断権や決定権は上層部が握ったままで、現場は責任だけを背負わされ、自由にやり方を選ぶ余地がありません。こうした状況では、自発的に動くことはリスクでしかなくなり、「指示があれば動く」という姿勢が合理的な選択になります。
ある職場では売上目標の未達が続き、部長は「もっと主体的に動け」と叱責していました。しかし価格設定やキャンペーン内容の最終決定はすべて本部承認が必要で、現場の提案はほとんど通りません。やがて従業員たちは改善案を出さなくなり、「決まった方針通りに動く」ことだけに集中するようになりました。
成果だけを求め、裁量を与えない環境は、結果として指示待ち人間を増やしてしまうのです。
過干渉マネジメント
指示待ち人間が多い職場の中には、過干渉マネジメントが原因になっているケースもあります。細かい手順まで逐一指示され、少しでも独自の判断をすると修正が入り、さらに上司が常に先回りして答えを示してしまう環境では、部下は考える機会を失います。やがて「どうせ最後は直される」「自分で決めても意味がない」と学習し、自ら思考することをやめてしまうのです。
ある事例では、上司がメールの文面から資料の構成まで細かくチェックし、毎回赤字で修正していました。最初は勉強になると感じていたものの、次第に自分で考えるより「どう直されるか」を予測して動くようになります。過干渉は安心を与えるどころか、思考力を奪い、指示待ちを育ててしまうことがあるのです。
慢性的なストレス環境
指示待ち人間が多い職場の背景には、慢性的なストレス環境が影響していることもあります。常に人手不足、終わらない業務、厳しい評価といった心身に余裕がない職場環境では、主体的に考えるエネルギーは削られていきます。判断すること自体が負担になり、「言われた通りにやるほうが楽だ」という思考に傾いていくのです。これは怠慢ではなく、疲労による防御反応ともいえます。
ある事例では、繁忙期が続く部署で残業が常態化していました。メンバーは日々の業務をこなすだけで精一杯で、改善提案を求められても、「今はそこまで考える余裕がありません」と返すのが本音でした。やがて会議では誰も発言せず、上司の指示を待つだけの空気に変わります。慢性的なストレスは、主体性を奪い、指示待ちを“安全な働き方”に変えてしまうのです。
指示待ち人間を脱却するヒント
指示待ち人間を脱却するには、部下と上司の両方の視点が欠かせません。部下側は、完璧な正解を待つのではなく「仮説を持って提案する」姿勢を意識することが第一歩です。一方、上司は答えをすぐ与えるのではなく、考える余白を残し、失敗を過度に責めないことが重要です。裁量と安心感が揃ってこそ、指示待ち人間は減っていきます。
部下側ができること
指示待ち人間を脱却するためには、第一に、「考える」習慣を持つことです。指示された業務の目的やゴールを確認し、背景を理解するだけでも判断の精度は上がります。さらに「もし自分ならどう進めるか」と仮説を立てる癖をつけることで、受け身から一歩抜け出せます。顧客視点や他社事例を参考にするなど、視野を広げることも有効です。
コミュニケーションの質も変えられます。報告の際に「どうすればいいですか?」ではなく、「〇〇と考えていますがいかがでしょうか」と提案を添えてみます。また、仕事が終わったら次の指示を待つのではなく、「次は〇〇を進めます」と自ら示します。不明点はその場で確認し、判断材料を増やす姿勢も重要です。
さらに、優先順位を自分で決める、小さな決断から積み重ねる、振り返りを行うといった行動の質の向上も欠かせません。失敗を恐れず、完璧を待たずに動く。業務の本質的な意味を考えることが、指示待ち人間から抜け出す第一歩になります。
上司が変えるべきこと
指示待ち人間を減らすには、部下だけでなく上司側の関わり方も大きく影響します。まず重要なのはただ作業を振るのではなく、「何のために行うのか」を共有することです。また、目標を具体的に示しつつ、達成までのプロセスは任せるなど、選択できる機会を増やすことも大切です。
さらに、「責任」と同時に「権限」を与える姿勢も欠かせません。小さなタスクでも最後まで任せ、自主的に完結させる経験を積ませることで、自律性は育ちます。そして、分からないことを安心して相談できる空気づくりも重要です。失敗を過度に責めず対話を重ねる環境が構築されると、指示待ちは徐々に減っていく効果が期待できます。
ストレスチェッカーとは
「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しているのはもちろん、2025年5月からは無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施が義務化されることとなりました。
ストレスチェックは、自分の心身の状態を客観的に把握するための制度です。指示待ち人間が多い職場では、不安や緊張が背景にある可能性もあります。ストレスチェックで負荷を可視化し、やる気論ではなく環境改善へつなげられる可能性があります。
監修:精神科医・日本医師会認定産業医/近澤 徹
【監修医師】
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役・近澤 徹
オンライン診療システム「Mente Clinic」を自社で開発し、うつ病・メンタル不調の回復に貢献。法人向けのサービスでは産業医として健康経営に携わる。医師・経営者として、主に「Z世代」のメンタルケア・人的資本セミナーや企業講演の依頼も多数実施。
まとめ
ストレスチェックは、従業員のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした制度です。現在は従業員50人以上の事業場で義務化されていますが、今後は50人未満の企業にも対象が拡大される予定です。
指示待ち人間が多い職場では、主体性の低下だけでなく、慢性的な緊張や不安が背景にあることも少なくありません。ストレスチェックを活用すれば、個人の心理的負荷や部署ごとの傾向を客観的に把握できます。「やる気の問題」と片づけるのではなく、環境要因を可視化し、対話や業務設計の見直しにつなげるきっかけになります。
ストレスチェッカーは、官公庁・上場企業・医療機関などで採用されている国内最大級のストレスチェックツールです。自動リマインド、面接指導者管理、進捗確認機能を標準搭載し、2025年5月からは無料プランでも「プレゼンティーイズム(生産性低下)」の測定に対応しております。
導入方法や実施方法など、お気軽にお問合せください。
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