反芻思考(ぐるぐる思考)とは?

反芻思考(ぐるぐる思考)とは、過去の出来事や失敗、他人の反応などを何度も思い返し、頭の中で繰り返し再生してしまう思考の状態です。
考え続ければ答えが出るわけではないと分かっていても、「なぜあの判断をしたのか」「別の選択肢はなかったのか」と思考が止まらなくなってしまいます。

監修医師:近澤 徹
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役

反芻思考(ぐるぐる思考)とは

反芻思考(ぐるぐる思考)とは、過去の出来事や嫌な記憶、不安な感情を何度も思い返し、同じ考えを繰り返してしまう思考の状態を指します。「反芻」という言葉は、動物が一度飲み込んだ食べ物を再び口に戻して噛み直す行為に由来しており、終わったはずの出来事を頭の中に引き戻し、そのたびに感情まで再体験してしまう心の動きに似ています。原因や後悔を考え続けても新しい答えは生まれず、不安や自責の念だけが積み重なっていきます。こうした堂々巡りの状態で思考が頭の中を回り続けることから、「ぐるぐる思考」とも呼ばれています。

考えても解決策はない

反芻思考(ぐるぐる思考)は、考えても状況が前に進みません。原因や後悔を掘り下げても新しい解決策は生まれず、思考は堂々巡りになりやすいものです。また、過去の失敗や将来への不安に意識が向きやすく自己否定や気分の落ち込みを強めてしまいます。さらに「考えたくないのに考えてしまう」という制御しにくさもあります。

なぜ失敗したのかと後悔が止まらない

反芻思考(ぐるぐる思考)では、「なぜ失敗したのか」という問いが頭から離れなくなります。過去の言動や判断を何度も思い返し、そのたびに自己嫌悪や後悔を強めてしまいます。「なぜあんなことを言ってしまったのか」「もし別の対応をしていれば」といった言葉が頭の中を巡り、考えは同じ場所を行き来し続けます。本人は原因分析をしているつもりでも、実際には新しい気づきが得られることは少なく、ネガティブな感情だけが繰り返し呼び起こされ後悔のループを生み出します。

考えるほど、落ち込みが増幅する

反芻思考(ぐるぐる思考)は、考えれば考えるほど気分が落ち込みやすくなります。「考える=解決につながる」と思いがちですが、反芻思考の多くは建設的な問題解決ではなく、過去の失敗や将来への不安を同じ場所で行き来する思考です。さらに、自分を責める思考が重なることで自己評価が下がり、嫌な出来事を何度も思い出しては感情を再体験するループに陥ってしまいます。

反芻思考が強い人とは

反芻思考が強い人は、完璧主義で責任感が強い傾向が見られます。「失敗してはいけない」「もっと良いやり方があったはずだ」と考え、一度のミスや違和感を長く引きずってしまうのです。
仕事が終わった後も、頭の中でひとり反省会が続き、何日も前のやり取りを思い返すことがあります。「なぜ、ああなったのか」「もし別の選択をしていたら」と、答えの出ない過去の因果関係を考え続けてしまいます。

実は優秀な人が多い

反芻思考が強い人は、決して仕事ができないタイプではありません。むしろ実際には、優秀と評価されてきた人に多い傾向があります。背景にあるのは、物事を深く考えられる脳の特性と、高い責任感です。分析力や洞察力が高く、細部まで理解しようとするため、過去の出来事や判断を何度も振り返ってしまうのです。また、失敗から学ぼうとする誠実さや完璧主義が、「もっと良いやり方があったのではないか」という思考を生み出します。
さらに、相手の気持ちに敏感な共感力が強い人ほど、自分の言動がどう受け取られたかを深く考え、不安を抱えやすくなります。こうした特性は、深い分析や問題解決、創造的な発想、慎重で質の高い成果につながることも多く、本来は仕事や学習において強力な武器となるはずのものです。

リスク回避能力が高い

反芻思考が強い人は、実はリスク回避能力が高いという側面を持っています。過去の失敗や将来起こり得る不安を繰り返し考えるため、物事の危険な兆候やリスクの芽に早く気づきやすいというわけです。一方で、その慎重さが行き過ぎると、リスクを考えすぎて行動に移せなくなり、新しい挑戦を避ける原因にもなります。

ただし心身の疲労につながる

考え続けても建設的な解決策に結びつかない状態が続くと、不安や緊張が慢性化し、精神的な消耗が蓄積していきます。結果として、気力の低下や睡眠の質の悪化を招き、メンタル不調のリスクを高めてしまうこともあります。
ただし、反芻思考そのものがすべて悪いわけではありません。同じ出来事を振り返る思考にも種類があります。過去を冷静に見直し、次に活かそうとする前向きな振り返りは、リスク回避や成長につながります。一方で、「なぜあんなことをしたのか」と自分を責め続ける後ろ向きの思考は、生産性がなく精神的な苦痛を増幅させるだけです。両者の違いを見極められないまま考え続けることが、反芻思考による消耗を深めていきます。

反芻思考が職場にもたらす“静かな損失”

反芻思考(ぐるぐる思考)は、職場において見えにくい損失を積み重ねていきます。嫌な出来事や失敗を繰り返し考え続けることで、脳は常に緊張状態となり、本来の業務に集中できなくなります。その結果、作業効率が落ち、判断が鈍り、ケアレスミスも増えやすくなります。さらに、ネガティブな思考が慢性化すると心身の疲労が蓄積し、メンタル不調や休職、離職につながるリスクも高まります。

判断が遅くなる

反芻思考が職場にもたらす損失の一つが、意思決定の遅れです。過去の失敗を何度も思い返すことで、「また同じことを繰り返すのではないか」という恐れが強まり、必要な判断を先延ばしにしやすくなります。リスクを慎重に検討しているようで、実際には決断そのものを避ける状態に近づいてしまいます。ネガティブな思考のループに入ると、選択肢を比較する力が弱まり、優柔不断になりやすいのも特徴です。考える時間は増えているのに、内容が建設的でないため、行動に結びつかず結論が出ないというわけです。さらに、頭の中で「ひとり反省会」が続くことで脳が疲弊し、正常な思考力や判断力そのものが低下していきます。

指示待ち・過剰確認が増える

反芻思考が強まると、職場では指示待ちや過剰な確認行動が増えていきます。過去の失敗を繰り返し思い出すことで、「また間違えたらどうしよう」という不安が膨らみ、自分で判断すること自体を避けるようになるためです。
その結果、責任を負わずに済む安全な選択として、指示が出るまで動かない姿勢が強まります。また、不安を打ち消そうとして確認行為がエスカレートし、メールや資料を何度も見直したり、些細な点まで再確認したりするようになります。一見すると慎重でていねいに見えますが、実際には作業の進行が遅れ、能動性が失われていきます。

報告が長くなる/結論が出ない

過去の失敗や不安な要素に意識が向き続けることで、「どこが問題だったのか」「何が悪かったのか」という説明に時間を費やしやすくなり、前向きな解決策に思考が向かいにくくなります。また、失敗を避けたい気持ちから細部まで説明しようとし、本質とは関係のない情報まで盛り込んだ長い報告になってしまうこともあります。聞き手にとっては要点が見えにくく、判断も先送りされてしまいます。

優秀な人ほど、内側で消耗していく

高い成果を求められる立場にある人ほど、不調を表に出さず最後まで完璧に業務をこなそうとするため、周囲が異変に気づいた時には燃え尽きた状態になっていることも少なくありません。過去の失敗に意識が縛られることで、新しい発想や解決策を生み出す思考が止まり、創造性は次第に失われていきます。また、完璧主義や強い自責の念から、些細なミスでも自分を責め続け、思考の負荷をさらに高めてしまうこともあります。本人はそれを真面目な反省や問題解決だと捉えがちですが、実際には悩みを回し続けているだけ…というケースが多いのです。

反芻思考からの抜け出し方

反芻思考(ぐるぐる思考)から抜け出すには、頭の中だけで解決しようとしないことが大切です。思考を止めようとするほど、かえって考えは強まります。そのため軽く身体を動かすなど、注意を思考の外に移す工夫が有効です。また、悩む時間をあらかじめ区切り、それ以外の時間は考えないと決める方法も役立ちます。
また、周囲が関わる際は、安易な助言や否定を避け、まず「つらい」と感じている気持ちを受け止めて話を聞くことが重要です。

個人ができる方法

物理的に思考を断ち切る
反芻思考(ぐるぐる思考)から抜け出すには、頭の中だけで解決しようとしないことが重要です。場所を変えて外に出る、散歩や軽い運動をするなど、身体を動かすことで思考のループは中断されやすくなります。音楽を聴く、温かい飲み物を味わうなど五感を使う行動も、「今ここ」に意識を戻す助けになります。

思考を可視化・整理する
頭の中で渋滞している考えは、紙に書き出すことで整理しやすくなります。不安や後悔を可視化し、「行動で変えられること」と「変えられないこと」に分けることで、考え続ける対象を絞ることができます。

ポジティブな記憶の引き出しを使う
反芻思考に陥ると、失敗や欠点ばかりが強調されがちです。意識的に、過去にうまくいった経験や評価された出来事を思い出すことで、自分への見方を修正できます。これは現実逃避ではなく、偏った自己評価を整える作業です。

思考の習慣を変える
呼吸に集中する短時間の瞑想や、「悩む時間は1日10分まで」と区切る方法も有効です。考えを消そうとせず、距離を取る意識が反芻思考から抜け出す第一歩になります。

上司・経営者ができる“関わり方”

反芻思考(ぐるぐる思考)は、部下のモチベーション低下や生産性の停滞、メンタル不調の引き金になります。上司や経営者に求められるのは、悩みを断ち切ることではなく、思考の向きを前に戻す関わり方です。

問題志向から行動志向へ導く
反芻思考は「なぜあの時…」と過去に留まります。「次に何ができる?」「今できる最初の一歩は?」と問い、行動に焦点を移しましょう。悩みは小さなタスクに分解し、スモールステップで提示すると動きやすくなります。

事実に立ち返らせる
想像上の最悪シナリオに囚われている場合は、「今、実際に起きている事実は何か?」を確認します。そのうえで憶測と事実を切り分け、客観視を促します。

物理的に思考を中断する
短い散歩ミーティングや席を立つ提案は、思考のループを止めるのに効果的です。環境の切り替えが、視点の切り替えにつながります。

心理的安全性をつくる
失敗を恐れさせない姿勢が重要です。話を遮らずに傾聴し、結果だけでなくプロセスを評価することで、安心して相談できる土台が生まれます。

“共反芻”を避ける
悩みに寄り添いつつも、沈み込まないことが大切です。解決の糸口が見えない会話に寄り添った後は、「で、どうしていこうか?」と前に進めましょう。

声かけ例
「今この瞬間にできる行動は何かな?」
「起きていない心配より、明日までにできることは?」
「少し席を立って、気分を変えよう」
「これは個人の責任じゃない。チームで考えよう」

「見えない消耗」を可視化する

反芻思考(ぐるぐる思考)は、ストレスや不安が高まるほど強くなりやすく、本人も周囲も気づかないうちに消耗が進みます。そこで役立つのが、ストレスチェックという「状態を測る物差し」です。感覚や根性論では捉えにくい心身の変化を、数値や傾向として可視化できます。
 

ストレスチェッカーとは

「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しているのはもちろん、2025年5月からは無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施が義務化されることとなりました。
導入や運用の相談は、ぜひお気軽にお問合せください。


★ ストレスチェック導入のご相談はこちら

 

自分の傾向を知る
ストレスチェックの結果、とくに「心理的なストレス反応」が高い場合、反芻思考が慢性化しているサインと捉えられます。眠りが浅い、集中が続かない、気分が落ち込みやすいといった変化を、客観的に把握するきっかけになります。

環境要因を特定する
ストレスチェックの個人結果だけでなく、集団分析を通じて職場の傾向を見ることも重要です。仕事量、人間関係、裁量の少なさなど、反芻思考を強めている環境要因が浮かび上がれば、配置や業務設計の見直しといった具体的な改善策につながります。

専門的な相談につなげる
高ストレスと判定された場合は、産業医面談などの専門的な相談を活用する選択肢があります。第三者の視点で、思考のループを断つための実践的な助言を得られることも少なくありません。

受診を検討すべきサイン
睡眠障害、食欲低下、仕事に集中できない状態が続く場合は、性格や考えすぎで片付けず、心療内科や精神科などの専門医への相談を検討してください。早めの対応が、消耗の連鎖を止めます。

監修:精神科医・日本医師会認定産業医/近澤 徹

精神科医 近澤徹氏

【監修医師】
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役・近澤 徹

オンライン診療システム「Mente Clinic」を自社で開発し、うつ病・メンタル不調の回復に貢献。法人向けのサービスでは産業医として健康経営に携わる。医師・経営者として、主に「Z世代」のメンタルケア・人的資本セミナーや企業講演の依頼も多数実施。


> 近澤 徹 | Medi Face 医師起業家(Twitter)

    まとめ

    ストレスチェックは、従業員のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした制度です。現在は従業員50人以上の事業場で義務化されていますが、今後は50人未満の企業にも対象が拡大される予定です。
    反芻思考(ぐるぐる思考)は、過去の失敗や将来の不安を繰り返し考えてしまう状態であり、ストレスチェックを活用することで、この慢性的なネガティブ思考を早期に発見し、メンタルヘルス不調を予防できます。
    ストレスチェックの結果で心理的ストレス反応が高い、睡眠や活力の項目が悪い場合は、反芻が慢性化しているサインとして受け止めましょう。
    ストレスチェッカーは、官公庁・上場企業・医療機関などで採用されている国内最大級のストレスチェックツールです。自動リマインド、面接指導者管理、進捗確認機能を標準搭載し、2025年5月からは無料プランでも「プレゼンティーイズム(生産性低下)」の測定に対応しております。
    導入方法や実施方法など、お気軽にお問合せください。

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