人的資本経営とは?メンタルケアはなぜ重要?

人的資本経営とは、企業や組織に所属する人材も資本の一部と見なし、それらに対して投資を行うことで人材の持つ価値を最大限に引き出し、中長期的に企業価値を向上させる経営手法です。

人材に対する投資の一環として、従業員のメンタルケアも重要です。
この記事では、人的資本経営においてメンタルケアが重要である理由について解説します。

人的資本経営とは

普通の企業経営では、利益を追求するために設備に対して投資を行ったり、そのために資本をストックしたりします。
一方で、人的資本経営においては、人材を「資源」ではなく「資本」と捉えて経営を行います。
資源は消費してなくなってしまうものですが、資本は投資をして価値を高めるものです。
たとえば、採用や育成は人材に対する投資であると言えるでしょう。

人的資本経営の目的とは

人的資本経営の目的は、従業員が持つ知識やスキルを最大限に活用し、より効率的な作業プロセスを設計して生産性を高めることです。
つまり人的資本経営とは、企業活動において人的資本に積極的に投資をしてその人材を活用し、結果的に企業価値を向上させる経営をいいます。

人材は資本

営業能力の高い人が社内にいると仮定します。
その人の営業力のおかげで企業は利益を得られるので、その人も資産の一部であると考えるのが人的資本経営の考え方です。

万が一その人が競合他社に引き抜かれたり、怪我や病気等で働くことができなくなったりすれば、企業は大きな損失を被ります。
そのため、人的資本経営においては人材を守る仕組みがとても重要です。

近年、うつ病等の精神疾患による休職が社会問題となっています。そのような病気を未然に防ぐためにも、社員のメンタルケアはとても重要です。

採用や育成は「投資」

コストをかけて行う人材の採用や育成は、人的資本経営における投資であると言えるでしょう。
そして、人的資本経営における一番の失敗は、コストをかけて採用した人材が企業を辞めてしまうことです。また、せっかく採用した人材のメンタルケアを十分に行わず、退職や休職等に繋がればそれも損失に繋がります。
このように、人的資本経営において損失を産まないためにはメンタルケアがとても重要です。

人的資本経営におけるメンタルケアで行うべき3つのこと

人材を投資対象として捉えるため、効率を優先したオペレーションではなく、人へのアプローチを重視します。
人的資本経営におけるメンタルケアで特に注意すべきことは、以下の3点です。

新入社員のメンタルケア
既存社員の定量的評価
過労を防ぐシステム作り

新入社員のメンタルケア

人的資本経営では、人材に対する投資を行うことで短期的な企業利益を向上させることは見込んでいません。なぜなら、人材の育成には時間がかかるのが普通だからです。

新入社員は新しい環境で新しく仕事を始めるため、わからないことばかりです。
人間関係を築けていない間は、他の人に相談することも難しいでしょう。したがって、メンタルの不調に陥るリスクは他の社員よりも高いと考えられます。
そのため、他の社員以上に新入社員にはメンタルケアを十分に行いましょう。

既存社員の定量的評価

既存の社員が十分に評価されていないと感じれば、抑うつ感情を抱いたり、他企業への転職を考えたりするかもしれません。
それを防ぐために、社員の評価は定量的に行いましょう。評価基準を明確にし、それを元に定量的に評価すれば、多くの人は納得するはずです。

定量的な評価基準があればそれを目標として設定しやすいので、社員のモチベーション向上にも繋がるかもしれません。

過労を防ぐシステム作り

能力の高い特定の社員にオーバーワークを課すことで成功をおさめることもあるかもしれません。しかし、そのような状況が続けば、過労のリスクは段々高くなっていきます。

過労によってメンタルが落ち込み、働くことができなくなれば結果として企業の損失に繋がります。
人的資本経営の考えと相反するようですが、一人の社員に頼りすぎず、過労を防ぐシステムを作ることも重要です。
そのときに注意すべきことは以下の3点です。

早期発見
復帰しやすい環境作り
プライバシー保護

早期発見

社員のメンタルの不調に早く気づき、すぐに適切な治療を行うことができれば職場復帰を見込めます。
早期発見のためには、定期的なメンタルチェックを行ったり、相談窓口を設置したりすると良いでしょう。

復帰しやすい環境作り

治療を行いながら就業することが難しければ、離職につながるでしょう。
資本としての人材を失わないためにも、心療内科や精神科への通院が必要である場合は、そのための時間を確保するために早退を認める等の配慮が必要です。

また、復帰しやすい環境であることを事前に告知できれば、病状が悪化する前に相談できるケースも出てくるでしょう。
復帰しやすい環境を作ることは、早期発見・早期治療にも繋がり得ます。

プライバシー保護

メンタルの不調を同じ職場の人に知られたくない人は多いので、相談窓口等を設ける場合はプライバシーの保護が重要です。

相談窓口を設置するのであれば、人目につかない場所に設置すると良いでしょう。

人的資本経営においてメンタルケアはとても重要

人的資本経営において重要なのは、コストをかけて獲得した人材を組織や企業に定着させることです。
うつ病等による休職や離職は大きな損失に繋がり得ます。そのため、人的資本経営においてはメンタルケアを適切に行い、人材を守ることが重要です。
新入社員やオーバーワークの社員はメンタルの不調をきたしやすいので、特に注意しましょう。

監修:精神科医・日本医師会認定産業医/近澤 徹

【監修医師】
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役
近澤 徹

オンライン診療システム「Mente Clinic」を自社で開発し、うつ病・メンタル不調の回復に貢献。法人向けのサービスでは産業医として健康経営に携わる。医師・経営者として、主に「Z世代」のメンタルケア・人的資本セミナーや企業講演の依頼も多数実施。

> 近澤 徹| Medi Face 医師起業家