デフォルト・モード・ネットワークとは

デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)とは、外部の課題や刺激への集中が相対的に低下しているときに活動がみられやすい脳内ネットワークです。内省・自己参照・過去の記憶の想起・将来の想像など、内的処理と関連すると考えられています。実はこの状態でも脳は活発に働いており、脳のエネルギー消費の多くは安静時にも続いている基礎的な活動に費やされます。DMNは、そのような安静時にみられる内的な情報処理と関連するネットワークの一つです。DMNは、記憶の整理や未来の予測、創造的な発想、自己認識などに関わる重要な働きを担っています。
そのため近年では、脳のパフォーマンス向上やメンタルヘルスの研究分野でも注目されており、ビジネスにおける発想力や意思決定との関係も関心を集めています。

監修医師:細江 隼
日本医師会認定産業医
医学博士(東京大学大学院)
総合内科専門医
糖尿病専門医、指導医
健康経営アドバイザー
株式会社中央総合産業医事務所 代表取締役

デフォルト・モード・ネットワークとは

デフォルトモードネットワーク(DMN)とは、「ぼんやりしているときに働く脳のネットワーク」といわれています。目の前の課題や外部からの刺激に集中していないときに活性化し、内省や自己認識、過去の記憶の整理、未来の想像、創造的な発想などに関わるとされています。
この概念は、2001年に神経科学者マーカス・レイクルらが発表した論文「A Default Mode of Brain Function」によって提唱されました。研究では、被験者が特定の課題に取り組んでいない安静時(resting state)に、内側前頭前野、後帯状皮質、下頭頂小葉などの脳領域が連携して高い活動を示すことが確認され、脳が何もしていないように見える時間にも重要な働きがあることが明らかになりました。

ぼんやり=無駄な時間ではない

集中していない「ぼんやりしている時間」は、一見すると無駄な時間のように思われがちですが、この時間は脳が情報を整理し、潜在的な問題解決や新しいアイデアを生み出すために重要な役割を果たしています。
なお「デフォルト」とは、特別な操作をしなくても自動的に選ばれる基本の状態を指します。スマートフォンの電源を入れたときに最初に表示される画面がデフォルト画面であるのと同じように、脳にも課題に集中していない時に自然に働く基本的な活動状態があります。

脳のアイドリング状態

デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)とは、いわば脳の「アイドリング状態」ともいえる働きです。自動車が停止しているときでもエンジンが動き続けているのと同じように、脳も休息しているときに完全に止まっているわけではなく、次の行動に備えて情報を処理し続けています。
この状態では、脳内に蓄積された情報の整理や、過去の出来事の回想、将来に向けたシミュレーションなどが無意識のうちに行われていると考えられていて、思考や判断の土台を整える重要な時間であり、近年ではビジネスにおける発想力や意思決定との関係も注目されています。

内省と自己関連の付けを行っている

デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)の中心となるのは、内側前頭前野(medial prefrontal cortex)、後帯状回や楔前部(posterior cingulate cortex/precuneus)、角回(angular gyri)などの領域とされています。これらの部位は、自分自身について考える自己認識、過去の経験を振り返る記憶の再構築、将来の出来事を思い描く未来思考など、内面的な認知活動に深く関わっています。
たとえば、自分に関する情報や記憶を整理する自己認識の働きや、過去の出来事を思い出して意味づけを行う内省などが挙げられます。また、将来の出来事を想像して可能性を考える思考や、他者の感情や意図を推測する社会的な認知にも関わっているとされています。

創造性の源泉となり得る

現代のビジネスでは、目に見える成果や即効性が重視されがちですが、新しい発想や戦略的な洞察を生み出すためには、内面的な思考の時間が欠かせません。仕事から少し離れてぼんやり考えている時、脳ではDMNが活性化し、過去の経験を整理したり、未来の可能性を思い描いたりする働きが進んでいると考えられています。

タスク・ポジティブ・ネットワーク(TPN)との関係

デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)とタスク・ポジティブ・ネットワーク(TPN)は、脳内で互いにバランスを取りながら働く関係にあります。DMNは、ぼんやりしている時や内省している時など、過去の記憶を振り返ったり将来を思い描いたりする場面で活性化します。一方、TPNは仕事や作業など、外部の課題に集中している時に働くネットワークです。一般的には、どちらかが活発になるともう一方は抑えられるシーソーのような関係にあるとされています。ただし、創造的な思考を行う際などには、両者が協調して働く例外ケースがあることも近年の研究で示唆されています。集中して取り組む時間と、思考を広げる時間をうまく切り替えることで、創造的な発想や新しい気づきが生まれやすくなると考えられています。

デフォルト・モード・ネットワークのメリット

デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)の発見は、「ぼんやりしている時間は無意味ではない」という認識を広げた点で大きな意味があります。休息中でも脳は活動を続けており、過去の経験を整理したり、将来の可能性を思い描いたりする内的な思考が進んでいると考えられています。
たとえば、仕事の合間に窓の外をぼんやり眺めている時や、通勤中に景色を何気なく見ている時に、ふと良いアイデアが浮かんだ経験はないでしょうか。こうした瞬間には、脳が特定の課題に集中していない「休息状態」にありながら、内部では情報の整理や発想の統合が進んでいると考えられています。これは、脳は何もしていないように見える時間にも活動を続けており、過去の経験や知識を結びつけながら新しい気づきを生み出しているからです。

創造的思考とアイデアの創出

シャワー中や散歩中にアイデアが浮かぶ体験は多くの人が経験する現象です。こうした「脳が外部課題から解放された状態」はDMNが活性化しやすい状況と概念的に重なる部分があり、創造的思考においてDMNが重要な役割を果たす可能性が研究で示唆されています。

長期ビジョンの策定(amazon)

アマゾン創業者のジェフ・ベゾスは、「Working Backwards(逆算思考)」と呼ばれる思考法を重視してきました。これは未来の顧客体験を具体的に想像し、そこから現在の行動や戦略を逆算して考える方法です。こうした顧客体験から逆算する深い洞察は、外部の作業に集中している時よりも、落ち着いて内省する時間(DMNが関与しやすい状態)と概念的な親和性があります。データ分析だけでなく、想像力や直感を活かして将来の市場を思い描くことが、新しい事業機会や長期的な投資判断につながる可能性があります 。

チームの生産性向上(Google)

Googleでは、かつて業務時間の20%を自由なプロジェクトに使える「20%ルール」を設けていました。これは日常業務から少し離れた時間を確保することで、新しい発想を生み出しやすい環境をつくる取り組みで、この制度からAdSenseやGoogle Newsなどの新しいサービスが生まれたといわれています。
業務だけに集中するのではなく、自由に考える時間を設けることは、組織全体のイノベーションを生み出す仕組みづくりにもつながる可能性があります。

デフォルト・モード・ネットワークが働きやすい時間・環境をつくるには ?

デフォルトモードネットワーク(DMN)は、脳が自由に情報を結びつける状態になるため、新しいアイデアが生まれやすくなります。
呼吸や身体感覚に注意を向ける瞑想や、考えを評価せずに観察する実践は、反すう思考から距離を取る助けになる場合があります。呼吸を整えながら、浮かんでくる感情や思考を無理に消そうとせず、ただ観察することで、脳が自由に働く状態をつくります。また、楽しい空想をする「ポジティブで建設的な空想(PCD)」も有効です。海辺を眺めている場面や自然の中を歩いている場面など、心地よい情景を思い浮かべることで、脳内の記憶や情報がゆるやかに結びつきます。
さらに、スマートフォンから離れる「デジタルデトックス」も重要です。強い光や大量の情報は脳を刺激し続けるため、休憩中まで画面を見ていると脳が十分に休まりません。散歩や掃除、皿洗いといった単純な作業やリズム運動も、自然とぼんやりした状態を生み、DMNを働かせやすくします。意識的に“考えない時間”をつくることが、創造力と脳のコンディションを整える鍵になります。

デフォルト・モード・ネットワークのデメリット

デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)は、思考を整理したり新しい発想を生み出したりする一方で、使い方によっては注意が必要な面もあります。脳がぼんやりした状態になると、思考が自由に広がる「マインドワンダリング(心のさまよい)」が起こりやすくなります。そのため、DMNの働きを理解しながら、思考を広げる時間と集中する時間をバランスよく使い分けることが大切です。

反すう思考(繰り返し考えてしまう)

デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)のデメリットとして起こりやすいのが「反すう思考」です。過去の出来事を何度も思い返し、「あの時こうすればよかった」「また失敗したらどうしよう」といったネガティブな考えが頭の中を巡り続ける状態を指します。このような思考が続くと、自分を否定的に捉えやすくなり、不安感が強まり、集中力が低下し仕事のパフォーマンスにも影響することがあります。

思考疲労(頭が休まらない)

過去の失敗や将来の不安など、本来の課題とは関係のないことを無意識に考え続けると、脳のエネルギーが消費され、休息中も脳が活動し続ける状態になります。その結果、眠っても疲れが取れない、頭がすっきりしないといった状態や、集中力・思考力の低下につながることもあります。
このような状況への対処の第一歩は「いま反芻している」と気づくことです。散歩や片付けなど体を動かす行動に切り替えたり考えを紙に書き出したりすると、思考のループを整理しやすくなります。

デフォルト・モード・ネットワークを抑制するには?

デフォルトモードネットワーク(DMN)は、記憶の整理や内省に役立つ一方で、活動が続きすぎると脳のエネルギーを消費し、過去の失敗や将来の不安を繰り返し考える「思考のループ」に入りやすくなることがあります。仕事や勉強に集中したい場面では、このDMNの働きを一時的に抑えることが重要です。
その方法として有効なのが「瞑想」です。姿勢を整え、ゆっくり呼吸をしながら、呼吸の感覚に意識を集中させます。雑念が浮かんでも無理に消そうとせず再び呼吸へ注意を戻すことで、思考の拡散を抑えやすくなります。
また「歩行瞑想」や「食事瞑想」のように、身体の動作に意識を向ける方法もあります。歩く時の足の感触や、食べ物をかむ動作に注意を向けることで、意識が「今この瞬間」に集中し、思考の暴走を防ぎやすくなります。
もし不安や雑念が止まらない場合は、思考を客観的に捉えることも大切です。頭の中で繰り返される考えを紙に書き出したり、別の視点から考え直したりすると、思考の整理につながります。DMNとうまく付き合い、状況に応じて思考を切り替えることが、安定した集中力を保つ鍵になります。

ストレスチェックで見える「思考疲労」のサイン

仕事のパフォーマンスが落ちている時、その原因は身体の疲れだけとは限りません。脳の働きが低下した状態である「思考疲労(脳疲労)」が積み重なっている可能性もあります。ストレスチェックでは、こうした心理面や精神面の状態を数値として可視化できるため、自分では気づきにくい心身の変化を客観的に確認するきっかけになります。慢性的なストレスが続くと、感情や判断を担う前頭前野の機能が低下し、脳内の神経同士の結びつきが弱くなるといわれています。その結果、集中力が続かない、ケアレスミスが増える、意欲が湧かないといった変化が現れやすくなります。さらに、イライラしやすくなる、将来を悲観的に考えてしまう、物忘れが増えるなどの心理面のサインが見られることもあります。身体面では、眠っても疲れが取れない、睡眠の質が下がる、動悸や胃腸の不調などが続く場合もあります。こうした変化に早く気づくことが、思考疲労の蓄積を防ぐ第一歩になります。

 

ストレスチェッカーとは

「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しているのはもちろん、2025年5月からは無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施が義務化されることとなりました。
ストレスチェックを活用することで自分の状態を客観的に把握でき、早めのセルフケアにつなげやすくなります。導入方法など、お気軽にご相談ください。


★ ストレスチェック導入のご相談はこちら

 

監修:医学博士・日本医師会認定産業医/細江 隼

医学博士・日本医師会認定産業医/細江 隼氏

【監修医師】細江 隼
日本医師会認定産業医
医学博士(東京大学大学院)
総合内科専門医
糖尿病専門医、指導医
健康経営アドバイザー
株式会社中央総合産業医事務所 代表取締役

都内の基幹病院・大学病院内科で専門医・指導医として診療に従事してきた経験から予防医学の重要性を実感し、現在は多様な業種の企業で産業医として活動。衛生委員会参加や職場巡視、健診の事後措置、長時間労働面談、ストレスチェック、休職・復職面談など幅広い産業保健業務を担当しています。メンタルヘルス対策やフィジカル面の健康管理、健康経営の推進を通じ、働く人と組織双方の支援を行っています。


> 細江 隼 | 株式会社中央総合産業医事務所

    まとめ

    ストレスチェックは、従業員のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした制度です。現在は従業員50人以上の事業場で義務化されていますが、今後は50人未満の企業にも対象が拡大される予定です。
    デフォルト・モード・ネットワークは、ぼんやりしている時に働く脳のネットワークで、記憶の整理や自己理解、アイデア創出に役立つというメリットがあります。一方で、過去の失敗や将来の不安を繰り返し考える反芻思考が続くと、思考疲労や集中力低下につながる場合があります。ストレスチェックを活用すると、心理的負担や思考疲労のサインを早期に把握でき、働き方や休息の見直しに役立てることができます。
    ストレスチェッカーは、官公庁・上場企業・医療機関などで採用されている国内最大級のストレスチェックツールです。自動リマインド、面接指導者管理、進捗確認機能を標準搭載し、2025年5月からは無料プランでも「プレゼンティーイズム(生産性低下)」の測定に対応しております。
    導入方法や実施方法など、お気軽にお問合せください。
     

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