テレワークのメンタルヘルス対策|6つのポイント

独立行政法人労働政策研究・研修機構による調査によると、テレワークでは「仕事と仕事以外の切り分けが難しい(38.3%)」「長時間労働になりやすい(21.1%)」などの悩みを抱える労働者がいることが分かっています。これらの課題は、メンタルヘルス不調につながる可能性があります。

そこで、この記事ではテレワークにおけるメンタルヘルス対策について知っておきたい7つのポイントについてご紹介します。

テレワークのメンタルヘルス対策

独立行政法人労働政策研究・研修機構の「情報通信機器を利用した多様な働き方の実態に関する調査結果」によれば、テレワークのデメリットとして多くあがったのが「仕事と仕事以外の切り分けが難しい」で38.3%、次いで「長時間労働になりやすい」が21.1%、「仕事の評価が難しい」で16.9%でした。(「デメリットは特にない」と回答したのは28.1%)

独立行政法人労働政策研究・研修機構「情報通信機器を利用した多様な働き方の実態に関する調査結果」

コミュニケーションや評価に不安を抱えているテレワーク勤務者は4割近くに
また、2020年に実施されたパーソル総合研究所による調査では、4割近くのテレワーク勤務者がコミュニケーションや評価に不安を抱えているという結果も出ています。

パーソル総合研究所「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」

社会的孤立は多くの場合、孤独感や不安、ときには抑うつ状態を引き起こす可能性がある
これらの状況は、メンタルヘルスに悪い影響を及ぼすリスクがあります。精神科医のズラティン・イワノフ(Zlatin Ivanov)博士は、「社会的孤立は多くの場合、孤独感や不安、ときには抑うつ状態などのマイナスの影響をもたらす」と警鐘を鳴らします。また「心だけでなく身体の健康にもマイナスの影響を与えるおそれがある」とも指摘しています。

Business Insider Japan「コロナ禍で深刻化する「社会的孤立」…その悪影響から身を守るには」

それでは、テレワーク下におけるメンタルヘルスケアは、どのような点に注意して対策を講じればよいのでしょうか。

(1)まず知っておきたい「安全配慮義務」

テレワーク下におけるメンタルヘルス対策について検討するうえで、まず知っておきたいのが「安全配慮義務」です。

安全配慮義務とは、職場環境が原因で労働者の生命や健康を害することがないよう事業者(会社など)が、適切に管理しなければならない義務をいいます。

安全配慮義務違反になるかどうかは、以下の2つの視点から検証します。

①予見可能性:会社が予見できた可能性があったか
②回避可能性:予見した事象に対し、会社が回避できる可能性はあったか

たとえば、長時間労働の問題でみてみると、長時間労働は体調不良の原因となり得ること(予見可能性)から、会社には、従業員が長時間労働や深夜労働にならないように適切な業務量を管理し体調不良を回避する義務があるということになります。

過去には、テレワークで業務災害が認定されたケースとして以下のような事例があります。

自宅で所定労働時間にパソコン業務を行っていたが、トイレに行くための作業場所を離席した後、作業場所に戻り椅子に座ろうとして転倒した。
これは、業務行為に付随する行為に起因して災害が発生していることから、私的行為と認められず、業務災害と認められる。

厚生労働省「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」

そこで、使用者としてはこのような労災に備え、日頃から安全配慮義務を尽くしていたと言えるような労務管理を行う必要があります。

オフィス勤務でも難しい安全配慮義務ですが、テレワークになった場合にはさらに従業員のヘルスリテラシー(健康な生活を送るために必要な情報を入手し、実施すること)が重要になってきます。

厚生労働省が推奨するテレワーク環境
厚生労働省によれば、テレワークにおいては以下のような情報を労働者に周知教育したり、会社側が環境面の整備をサポートしたりすることが、予防につながるとしています。

【部屋】
設備を除いて、10立方メートル以上の空間を推奨

【窓】
換気設備を設ける
ディスプレイに太陽光が入射する場合は、ブラインドやカーテンを設ける

【机上】
照度は300ルクス以上が目安

【椅子】
安定していて、簡単に移動できる
座面の高さを調整できる
傾きを調整できる背もたれがある
ひじ掛けがある

【室温・湿度】
室温17°C~28°C

【PC】
ディスプレイは、照度500ルクス以下で輝度やコントラストが調整できる
キーボードとディスプレイは分離して位置を調整できる
操作しやすいマウスを使う

【机】
必要なものが配置できる広さがある
作業中に足が窮屈でない空間がある
体型に合った高さがある、または高さの調整ができる

さらに、これらの環境整備について労働者任せにせず、上司や会社の人事担当者などが把握できるようにしておくことも大切です。

仕事に適した机や椅子が自宅に用意できない労働者については、そのままテレワークを許可してしまうと、腰痛やメンタルヘルス疾患などの労働災害が発生する可能性があります。その場合には、使用者が安全配慮義務を尽くしていなかったと判断されるリスクがあります。

テレワークに適した環境を用意できない労働者にはテレワークを許可しないというのも1つの方法ではありますが、コロナ禍ではそのような判断も難しいでしょう。
そこで、仕事に適した机や椅子を使用者が購入し労働者に貸与したり、テレワークに必要な費用を臨時手当として支給したりするアプロ―チを検討する必要があります。

また、労働者が健康面で違和感や問題に気づいた場合に備えて、相談窓口も設置しておくことも望ましいです。

(2)テレワークでのマネジメント

パーソル総合研究所よれば、テレワーカーのマネジメントに関する上司の不安として調査したところ、「業務の進捗状況が分かりにくく不安に思うことがある」と回答した人が最も多く46.3%、「非対面のやりとりは、相手の気持ちが察しにくく、不安だ」と回答した人は44.9%となっており、マネジメントに不安を感じていることが分かっています。

パーソル総合研究所「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」

テレワークが進むにつれて、マネジメントの役割も変わります。
管理監督者は、「部下には、主体的に動いてほしい」と考えるものです。実際、主体的に働けると、ワークエンゲージメントの「仕事に誇りややりがいをかんじている」(熱意)・「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)・「仕事から活力を得ていきいきしている」(活力)の3つが揃って高くなることが分かっています。

しかしテレワーク下では、部下の顔が直接見えない不安から、つい細かく監視してしまいがちで、部下の主体性を伸ばすマネジメントが難しくなる可能性があります。

しかし、「管理ではない監視」はマネジメントとはいえませんし、監視されれば部下のモチベーションは低下してしまいます。

顔を見られない状況だからこそ、監視するのではなく「先日の資料、素晴らしかったです」「データ分析の視点が見事でした」など、些細なことでも小まめに声を掛けるなどして、部下のモチベーションをアップさせるための工夫を行いましょう。

(3)テレワークでのメンタルヘルス不調の早期発見

使用者は、テレワークを行う労働者についても労働安全衛生法等の関係法令に基づき、過重労働対策やメンタルヘルス対策を含む健康確保のための措置を講じる義務を負っています。

なかでも特に重要なのが、ストレスチェック、法定の健康診断、長時間労働者に対する面接指導の実施とその結果を受けた措置です。使用者が安全配慮義務を尽くしたというためには、まず最低限使用者に義務づけられているストレスチェック、法定の健康診断、長時間労働者に対する面接指導は必ず実施し必要な記録を残しておくことが重要です。

テレワーク環境だからこそ活用したい「ストレスチェック」
メンタルヘルス対策という視点で特に活用したいのは、ストレスチェック制度となります。

ストレスチェック制度とは、2015年(平成27年)からスタートした制度で、50人以上の事業場に義務づけられています。

質問票に対して労働者が回答することで自身のストレスの程度を数値化することができます。
ストレスチェックを通じて労働者自身が、自らのストレスに気づきケアを行うことで、メンタルヘルス不調を未然に防止することが期待できます。さらにストレスチェックの結果を分析し、職場環境の改善に活かすことも可能です。

使用者はテレワーク勤務者についても、ストレスチェックや健康診断を実施しなければならず、ストレスチェックの結果で高ストレスと判定された労働者が希望した場合には、産業医等による面接指導を実施しなければなりません。

テレワークでは労働者の姿や行動の観察が難しいため、ストレスチェックの頻度を1年間に数回程度、増やすのもおすすめです。

ストレスチェッカーは、PC、スマホで実施できるストレスチェックツールで、自社スタッフで運用する場合には、無料で利用することもできます。また、無料で集団分析も行いますので、テレワーク下における課題を把握することもできます。

ストレスチェッカー

また、時間外労働時間が月80時間を超え疲労の蓄積が認められ、労働者本人が申し出た場合には、使用者はその労働者に対して医師による面接指導を実施する必要があります。

さらに事業者は、高ストレス者や長時間労働者に対する面接指導の結果、必要に応じて作業の転換や労働時間の短縮などの措置を講じなければなりません。

(4)テレワークで労働時間はどう管理する?

事業者は、労働者の労働時間を把握する責務がありますので、労働時間管理は必ず行わなければなりません。
テレワークを行う労働者の労働時間管理についても、始業・終業時刻の確認と記録が必要です。

労働時間管理の方法としては、厚生労働省のガイドラインで以下のように示しています。

・使用者が自ら現認することにより確認すること
・タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録などの客観的な記録を基礎として確認し、適性に記録する

厚生労働省「労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」

しかし、テレワークにおいては上記の方法で労務管理を行うのは難しいことが多いでしょう。
そこで、Eメールや勤怠管理ツール(始業・終業時刻を管理できるシステム)などの活用を検討しましょう。

テレワーク下で長時間労働を防ぐためには
残業や休日労働が常態化すると、長時間労働につながるリスクが高まるため、テレワークガイドラインでは出社同様に「時間外・休日労働の労働時間管理については、事前申告制あるいは事後に実績報告が必要である」としています。

厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」

残業等について事前許可・事後報告制とするなど適正に運用する場合には、会社はテレワークにおける残業時間について、割増賃金を支払わなければなりません。しかし、仮に労働者が事前申告をしたが許可されないのに残業をしたり事後報告もなかったりした場合、一定の要件を満たせばその残業は労働時間に該当せず、会社が割増賃金を支払う必要はありません。
この点も、労働者側にしっかり説明をして、長時間労働を原因としたメンタルヘルス不調を防止するようにしましょう。

(5)テレワークにおけるセルフケア

テレワークにおいては、オンとオフの切り替えが難しくなることから、こまめに休憩をとることを促すなど、長時間労働にならないよう指導しましょう。ルールとして休憩時間を明確に設定したり、時間を決めてzoomなどでコミュニケーションをとりながらメンバー全員でストレッチや呼吸法といったリフレッシュツールを積極的に提供したりするとよいでしょう。

その他、セルフケアの方法としては趣味を楽しんだり適度な運動を行ったりすることも有効です。

テレワークにおいては、仕事を抱え込んでしまう傾向があるので、普段以上に相談体制を強化し、労働者に向けてセルフケアの方法を積極的に発信することが必要です。

セルフケアの方法については、以下の記事で詳しくご紹介しておりますので、あわせてご覧ください。

セルフケア|はじめの一歩は「ストレスへの気づき」

(6)テレワークにおけるラインケア

ラインケアとは、管理監督者が労働者の心の健康に関して、職場環境等の改善や労働者に対する相談対応を行うことをいいます。

オフィスでは当たり前のように上司や同僚と顔を合わせ、愚痴を言い合ったり雑談をしたりすることでストレスを発散させていた労働者にとって、テレワークは孤独や孤立を感じやすくなることがあります。
その結果、パフォーマンスが下がり気分が落ち込むなど、メンタルヘルス不調を引き起こすきっかけになってしまうことがあります。

このような孤独感、孤立感を防ぐためには、メールやチャットだけに頼らず、オンライン会議を定期的に開催したりzoomなどを通じて直接話す機会を設けたりすることが有効です。
この時、雑談を取り入れると労働者にも安心感が生まれ、コミュニケーションがスムーズになっていいきます。

管理監督者は、自分の態度、言動が部下にとって明るく希望に満ちたものか、厳しいだけで冷たく感じられるようなものになっていないか、日頃から心がけていくことが大切です。
上司、同僚と離れている状況下では、管理監督者は普段以上に労働者のモチベーションを保つ工夫が望まれます。

ラインケアについては、以下の記事で詳しくご紹介しておりますので、あわせてご覧ください。

ラインケアの基本|(見る・聴く・対処)の7つのポイント

まとめ

目に見えないメンタルヘルスの問題を早い段階で把握し、対処することは簡単ではありません。テレワークにおいてはなおさらです。
しかし、メンタルヘルスの問題は早く気づき適切に対処することで、症状が改善しやすいことも分かっています。
ストレスチェック制度など、メンタルヘルス不調に早期に気づくためのツールを活用し、テレワーク下で出来得る限りの対策を積極的に行うようにしましょう。

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