ストレスチェックの導入フロー|13個のポイント

1000人以上の従業員をかかえる大企業では、比較的メンタルヘルス対策を積極的に実施してきましたが、多くの中小企業では義務化されていなかったこともあり、大企業に比べ行われていませんでした。
しかし、ストレスチェックが50人以上の事業場で義務化されたことで、メンタルヘルス対策は大企業だけでなく中小企業も取り組まなければならない課題となりました。

この記事では、このストレスチェックを初めて導入する企業向けに導入フローについてご紹介します。

ストレスチェックの導入フロー

ストレスチェックを導入するためには、まず事業者の方針表明が必要です。そして、社内規程を整備し衛生委員会で調査審議を行わなければなりません。
さらに、ストレスチェックの受検率を向上させるためにも従業員への説明や情報提供は、適切に行われることが大切です。

(1)事業者の方針表明(初年度のみ)

ストレスチェックを導入する前に、まず事業者から従業員に対して「ストレスチェック導入」による方針表明を行います。
どのようにストレスチェックやメンタルヘルス対策を行っていくのか、またメンタルヘルス対策についてどのように考え取り組んでいくのかを、従業員に表明します。

制度の表明方法としては、社内イントラネットや社内掲示板等に掲載するなどがあります。

当社は、労働安全衛生法第6条の10で定める「心理的な負担の程度を把握するための検査等」(以下ストレスチェック制度という)の具体的推進方法を明確にし、かつ適切に実施します。
そして、このストレスチェック制度の実施を通じて、当社のメンタルヘルス不調発生の未然防止を図り、ストレスチェックの結果を活用して従業員の心の健康づくりに積極的に取り組みます。

(2)社内規程の整備(初年度のみ)

ストレスチェック実施に関する社内規程を作成します。また、内容に変更があれば、改訂が必要です。

(3)衛生委員会での調査審議

衛生委員会(または安全衛生委員会)では、ストレスチェックのツールや実施方法(どのストレスチェックツールを使うか、誰が中心となって実施するか、誰が実施者になるのか等)を協議します。
2年目以降は、ストレスチェック実施後のメンタルヘルス対策の効果について調査審議を行うとよいでしょう。

※衛生委員会とは、労働者の健康障害防止のための基本となるべき対策や、健康の保持増進、労働災害の原因調査および再発防止対策などについて事業者に対して意見を述べる労働者組織で、業種を問わず常時50人以上の労働者を使用する事業場では設置しなければなりません。
林業、鉱業、建設業、運送業といった特定の業種については衛生委員会のほかに「安全委員会」の設置も義務づけられていて「安全衛生委員会」とすることもできるとされています。

衛生委員会|目的・テーマ・運営・活用方法

(4)従業員への説明・情報の提供

初年度は、主に従業員に対してプライバシーが守られること、事後措置としてサポートを受けられることなどを説明します。

2年目以降については、実際に事業場や部署全体のストレスの傾向、会社としての対策などについても情報提供します。
ストレスチェックについて、受検率を高めるためにも、また「実施するだけではなく職場環境の改善など、従業員たちのために活用しようとしているのだ」と感じてもらうためにも、説明や情報提供はていねいに行なうことが大切です。

(5)ストレスチェックの実施

採用した調査票を用いて、ストレスチェックを実施します。
実施そのものは、ストレスチェッカーなどの外部のストレスチェックツールを利用するのが、効率も良いのでおすすめです。
ストレスチェックツールを選ぶ際には、実施工程や明確な料金設定、およびその期間におけるサポート内容を吟味する必要があります。

ストレスチェッカーは、社内の実施者が行う場合には無料で利用することができ、現在3700社以上の企業が導入している日本最大級のストレスチェックツールです。各事業場の状況に応じてコンサルタントが適切なプランをご提案し、期間中のサポートもしっかり行います。

ストレスチェッカー

(6)ストレスチェックの結果情報提供・同意の取得

ストレスチェックの個人結果を従業員個人に返却します。
本人が個人結果を事業主(会社など)に提供することに同意したうえでその結果を受け取った場合には、事業主はその結果を5年間保存しなければなりません。

結果の保存は、紙媒体でも電磁的媒体でもOKです。また、事業者への提供の同意に関する書面または電磁的記録についても、事業者が5年間保存することになります。

(7)医師等による面接指導の実施

ストレスチェックの結果「高ストレス者」と判定され、その者が面接指導の対象であると医師等が判断し、本人が希望する場合には、医師等による面接指導を実施しなければなりません。
この面接指導の費用は、事業主が負担します。

面接指導の勧奨は、書面や電子メールで行なうのが一般的です。面接指導がメンタルヘルス不調に進展することを防止するための目的で行われること、面接指導を受けることで不利益な取り扱いを行わないことを説明し、面接指導の対象者が安心して申し出ることができるよう配慮することが大切です。

(8)医師等からの意見聴取

上記の(7)で面接指導を実施した後、事業主は医師から就業上の措置の必要性の有無および講ずべき措置の内容等について意見聴取を行ないます。

医師からの意見聴取は、おおよそ1カ月以内に行います。
長時間労働者に対する医師等の面接指導と同時に実施することも可能です。

意見を聞く医師は、面接指導を実施した医師から聞くのが適当とされています。意見を聞くのが外部の精神科医等である場合には、労働者の勤務状況などを把握している産業医の意見もあわせて聞くのが望ましいでしょう。

(9)就業措置の実施

事業者は、上記(8)を受けて医師から就業措置(労働時間の短縮や時間外労働の制限など)の必要性があるとの意見があった場合、事業主は直ちに対処しなければなりません。

医師の意見は衛生委員会に報告し、その他の適切な措置をあわせて行います。就業上の措置を行った後、ストレス状態に改善が見られた場合には産業医等の意見をふまえ通常の勤務に戻すなど、適切な措置を講じます。

軽作業や定型業務への従事
残業・深夜業務の禁止
出張制限
交替勤務制限
高所作業、運転業務、危険作業
窓口業務・苦情処理業務などの制限
フレックスタイム制度の制限または適用
転勤についての配慮
など

(10)集団分析と評価

ストレスチェックについて、全社として集団分析を行い評価します。
集団分析とは、ストレスチェック結果を事業場内の一定規模の集団(部署・グループなど)ごとに集計し、組織のストレス状態および傾向を分析することをいいます。

全国平均や同業他社の傾向と比較し自社がどのような傾向にあるのかを知ることで、現在の職場環境を改善するべきか、さらに良くするためにはどのような対策が必要なのかを検討します。

ストレスチェックの集団分析|10個のポイント

(11)職場環境の改善

上記の(10)をふまえ、実際に職場の改善活動を行っていきます。
ストレスチェック制度は、単に実施すればよいというものではなく、メンタルヘルス対策を通じて、業務効率の向上や生産性の上がる組織づくりを目標として導入すべきです。

(12)実施事項の確認と改善

次年度以降に生かすために、改善点について調査審議を行います。その後はさらに衛生委員会で検討していくことになります。

(13)労働基準監督署への報告

ストレスチェックの実施について、労働基準監督署に報告します。
もし、年に複数回ストレスチェックを実施する場合には、1回分について報告すればよく、実施の都度複数回報告する必要はありません。ちなみに、実施しなかった場合でも報告の必要がありますので、ご注意ください。

まとめ

以上、ストレスチェックの導入フローについてご紹介しました。
ストレスチェックは、労働者自身のストレスへの気づきを促すことを目的としていますが、組織のストレスの程度を把握することで職場環境の改善につなげることもできます。
メンタルヘルス不調者が発生し休職してしまうと、他の労働者にも負担がかかり職場全体の環境が悪化するケースが考えられます。
ストレスチェックをきっかけとして、メンタルヘルス不調者に気づきをうながし、会社としてできる対策を早期に講じることで、職場環境を大きく改善できる可能性もあります。

文中でもご紹介したストレスチェッカーは、集団分析のカスタマイズやコンサルティング、電話カウンセリングなど、ストレスチェックを実施するうえで必要となるさまざまなオプションをご用意しております。リモートモーニングストレッチやお寺で相談の窓口など、メンタルヘルス不調を未然に防ぐためのオプションもご提供しております。有資格者が最適なプランをご提案いたしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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    【監修】
    公認心理師 山本 久美(株式会社HRデ―タラボ)

    大手技術者派遣グループの人事部門でマネジメントに携わるなかで、職場のメンタルヘルス体制の構築をはじめ復職支援やセクハラ相談窓口としての実務を永年経験。
    現在は公認心理師として、ストレスチェックのコンサルタントを中心に、働く人を対象とした対面・Webやメールなどによるカウンセリングを行っている。産業保健領域が専門。

    日本最大級5000社導入。ストレスチェック制度準拠「ストレスチェッカー」

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