ソーシャル・ジェットラグとは?

ソーシャル・ジェットラグとは、平日と休日で睡眠時間や起床時間がずれることで体内時計にズレが生じ、日中の強い眠気や疲労感、不眠などの不調につながる状態です。この概念はドイツ・ミュンヘン大学の時間生物学者Till Roenneberg教授らが2006年に発表した論文で提唱され、現代の生活習慣と深く関わる問題として注目されています。

監修医師:細江 隼
日本医師会認定産業医
医学博士(東京大学大学院)
総合内科専門医
糖尿病専門医、指導医
健康経営アドバイザー
株式会社中央総合産業医事務所 代表取締役

ソーシャル・ジェットラグとは

ソーシャル・ジェットラグとは、主に仕事や学校のある日と休日とで睡眠のタイミングがずれることで、体内時計と社会生活上の時刻が食い違う状態を指します。海外旅行後の時差ぼけに似た状態として説明されることがあります。体内時計と実際の生活時間のズレにより、慢性的な疲労や日中の眠気、集中力の低下を引き起こすほか、睡眠の質の低下や生活習慣病のリスクにも影響するとされています。
一方で、休日の寝だめは平日の睡眠不足、いわゆる「睡眠負債」を補うための自然な反応であるため、ソーシャル・ジェットラグそのものを悪とすることについては、慎重な議論があります。

海外旅行の時差ボケに似た状態

ソーシャル・ジェットラグは、直訳すると「社会的時差ボケ」です。
平日は決まった時間に起きて行動して、休日には平日の睡眠不足を補おうとして遅寝・遅起きをすると、徐々に体内時計が後ろへズレてしまいます。
このズレが、まさに毎週のように時差のある場所へ移動したかのような負担が心身にかかっている状態と同じような状態であるとされ、ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)と呼ばれます。

京都府立医科大学による調査結果

京都府立医科大学の研究では、京都府内の高校生3,552名を対象に調査が行われ、そのうち有効回答が得られた756名の解析で、ソーシャル・ジェットラグと睡眠の質、日中の眠気との関連が検討されました。
特徴的なのは、就寝・起床時刻だけでなく、睡眠の中央値(ミッドスリープタイム)のズレが重要な指標となる点です。分析の結果、ズレが2時間を超えると、睡眠の質の低下や強い眠気と有意な関連が確認されました。一方で、1時間超~2時間以内の群では睡眠の質や眠気との有意な関連は認められませんでした。さらにこの調査では、食事時間のズレとも関連があることが示されており生活リズム全体の乱れが影響していると考えられます。
参考:京都府立医科大学プレスリリース「休日の夜ふかし朝寝坊に注意!2 時間を超える「ソーシャル•ジェットラグ」で睡眠の質低下

株式会社ポケモンの調査による参考情報

株式会社ポケモンが運営する睡眠アプリ『Pokémon Sleep』のユーザーデータ(約1,700万人)に基づく参考調査によると、世界全体では4人に1人以上がソーシャル・ジェットラグに該当する可能性があることが示されました。
日本人は平均睡眠時間が世界で最も短いものの入眠時刻や起床時刻のズレは小さく、睡眠の規則正しさは世界1位という結果でした。ただし、日本でも特に若年層で睡眠リズムの乱れが目立つ傾向があります。
また、企業調査では、日本の回答者の多くがソーシャル・ジェットラグという言葉を知らないとされており、一般的な認知はまだ高くない可能性があります。
参考:『ポケモンスリープ』ユーザー調査結果

ソーシャル・ジェットラグによる体調への影響

ソーシャル・ジェットラグは、平日と休日の生活リズムのズレより、眠気、疲労感、集中力低下などの不調と関連することが報告されています。代表的なのは慢性的な疲労感やだるさ、月曜の朝の強い眠気です。加えて、集中力の低下や気分の落ち込みといったメンタル面への影響も懸念されています。さらに、体内リズムの乱れはホルモンバランスにも影響し、肥満や高血圧、血糖値の上昇などのリスクも指摘されています。

体内リズムの乱れによる慢性的な不調

本来、体は約24時間周期の体内時計でリズムを刻んでいますが、週末に遅寝・遅起きをすると朝の光を浴びるタイミングがずれると、リセットがうまくいきにくくなります。すると週明けまでズレが残り、常に軽い時差ぼけのような状態が続きます。その結果、月曜の朝に強い憂うつ感を感じたり、日中の眠気や集中力の低下が慢性化したりしやすくなります。

気分の落ち込みや集中力の低下

ソーシャル・ジェットラグは、気分の落ち込みや集中力の低下といったメンタル面にも影響を及ぼすリスクがあります。平日と休日で生活リズムが大きくずれると体内時計が乱れ、月曜の朝に気分が晴れない、いわゆる「ブルーマンデー」を感じやすくなります。
たとえば、週末に夜更かしをして昼近くまで寝る生活を送った場合、月曜は頭がぼんやりし、仕事に集中できないといった状態に陥りがちです。睡眠不足が続くと、脳の働きが鈍り、不安や抑うつ気分が高まりやすくなるほか、些細なことでイライラするなど感情も不安定になります。また、脳の疲労が抜けきらないことで注意力が続かず、判断ミスや作業効率の低下にもつながります。

体重増加など生活習慣への影響

ソーシャル・ジェットラグは、体重増加や生活習慣の乱れにも影響を及ぼすと言われています。
たとえば、平日は仕事で睡眠不足が続き、週末に寝だめと夜更かしを繰り返す生活では、夜遅くに食事や間食が増えやすくなります。さらに、休日に長く寝ることで活動時間が減り運動量も自然と低下します。こうした状態が続くと脂肪が蓄積しやすくなり、結果として体重増加につながります。

また、睡眠リズムの乱れは、食欲調節に関わるホルモン分泌や食行動に影響する可能性があり、結果として過食につながりやすくなることが示唆されています。ただし、ソーシャル・ジェットラグとレプチン・グレリンの変化については研究間で一致していません 。
また、体内時計の乱れは、インスリンが効きにくい状態につながる可能性があり、血糖変動や代謝の乱れに関与することが指摘されています。

ソーシャル・ジェットラグの解消・対策法

ソーシャル・ジェットラグを防ぐには、休日も平日とかけ離れた生活をしないことが大切です。特に寝だめのための朝寝坊は体内時計を乱しやすいため、起床時刻はできるだけ一定に保つのが基本です。どうしても眠いときは、昼に15~30分ほどの短い仮眠で調整するのがおすすめです。

休日もできるだけ同じ時間に起きる

ソーシャル・ジェットラグを防ぐうえで基本になるのは、休日も平日とできるだけ同じ時刻に起床することです。平日に不足した睡眠を補おうとして休日に大きく朝寝坊をすると、体内時計が後ろへずれ、概日リズムが乱れやすくなります。その結果、日曜の夜に寝つきにくくなったり、月曜の朝に強い眠気やだるさを感じたりしやすくなります。
いわゆる「寝だめ」は一時的な休息として役立つ場合もありますが、休日の起床時刻が大きく遅れると体内時計が乱れやすくなります。補眠が必要な場合でも、起床時刻のずれはできるだけ小さくすることが望まれます。ソーシャル・ジェットラグの対策では、起床時刻について休日も平日との差をできるだけ小さくすることが、睡眠の質の維持や日中のコンディション安定につながります。

「週末の朝寝坊」は1~2時間以内

どうしても週末に長く眠りたい場合でも、起床時刻のずれはできれば1~2時間以内を目安にとどめるのが望ましいと考えられます。
京都府立医科大学が京都府内の高校生を対象に行った大規模研究では、平日と休日の睡眠時間帯のズレが2時間を超えると、睡眠の質の顕著な低下や日中の強い眠気と有意に関連することが示されました。つまり、休日に長く寝て平日の睡眠不足を補おうとしても、かえって概日リズムが乱れ、週明けのコンディション低下につながる可能性があります。

朝日を浴びて昼寝を活用

ソーシャル・ジェットラグを整えるには、休日でも、できるだけ平日と変わらぬ時間に起きて、朝の光をしっかり浴びることが大切です。起床後にカーテンを開けて日光を取り入れると体内時計がリセットされ、概日リズムの乱れを抑えやすくなります。朝の光は覚醒を促すだけでなく、夜に自然な眠気を生み出すリズムづくりにも関わります。
一方、平日の睡眠不足が気になる場合は、休日に長く寝続けるよりも、日中に15~30分程度の短時間の昼寝を取り入れるほうが効果的です。短い仮眠であれば眠気や疲労感の軽減が期待でき、夜の睡眠にも影響しにくいとされています。

 

ストレスチェッカーとは

「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しているのはもちろん、2025年5月からは無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施が義務化されることとなりました。
ソーシャル・ジェットラグは眠気・集中力低下や不調を招く可能性があります。
ストレスチェックを活用することで自分の状態を客観的に把握でき、早めのセルフケアにつなげやすくなります。導入方法など、お気軽にご相談ください。


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監修:医学博士・日本医師会認定産業医/細江 隼

医学博士・日本医師会認定産業医/細江 隼氏

【監修医師】細江 隼
日本医師会認定産業医
医学博士(東京大学大学院)
総合内科専門医
糖尿病専門医、指導医
健康経営アドバイザー
株式会社中央総合産業医事務所 代表取締役

都内の基幹病院・大学病院内科で専門医・指導医として診療に従事してきた経験から予防医学の重要性を実感し、現在は多様な業種の企業で産業医として活動。衛生委員会参加や職場巡視、健診の事後措置、長時間労働面談、ストレスチェック、休職・復職面談など幅広い産業保健業務を担当しています。メンタルヘルス対策やフィジカル面の健康管理、健康経営の推進を通じ、働く人と組織双方の支援を行っています。


> 細江 隼 | 株式会社中央総合産業医事務所

 

     

    まとめ

    ストレスチェックは、従業員のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした制度です。現在は従業員50人以上の事業場で義務化されていますが、今後は50人未満の企業にも対象が拡大される予定です。
    ソーシャル・ジェットラグは平日と休日の睡眠リズムのズレにより体内時計が乱れ、日中の強い眠気や疲労感、集中力低下、気分の落ち込みを招きやすくなる状態です。ストレスチェックを活用すれば、心身の負担や不調の兆候を早めに可視化でき、睡眠習慣の見直しや働き方の調整など、具体的な改善策につなげることが可能となります。
    ストレスチェッカーは、官公庁・上場企業・医療機関などで採用されている国内最大級のストレスチェックツールです。自動リマインド、面接指導者管理、進捗確認機能を標準搭載し、2025年5月からは無料プランでも「プレゼンティーイズム(生産性低下)」の測定に対応しております。
    導入方法や実施方法など、お気軽にお問合せください。

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