ストレッサーとは、ストレス反応を起こすきっかけとなるストレス要因のことです。職場での出来事(仕事上の失敗や人間関係など)のほか、職場以外での出来事(家庭不和、借金など)がストレッサーになる場合もあります。
この記事では、ストレッサーの意味や特徴、分類、ストレッサーを把握し改善する方法などをご紹介します。
目次
ストレッサーとは
ストレスを生じさせる外界からの刺激を、ストレッサーといいます。
もともとストレスという言葉は、「物体に外力が作用した時に生じるその物体のゆがみ」を指す工学の用語でした。それが医学や心理学でも用いられるようになり、ストレスを引き起こす要因を「ストレッサー」、ストレッサーによる心身の影響を「ストレス反応」と呼ぶようになりました。
ストレスには、「ストレッサー(ストレス要因)」「ストレス反応」「ストレス耐性」の3つが含まれます。
この3つの関係をイメージしやすいように、心をゴムボールにたとえてみましょう。
ストレッサーは、ボールを押さえつける力、ストレス反応は、ボールのゆがみ、ストレス耐性は、ボールの弾力性です。
ボールを軽く指で押さえつけると、その弾力性ですぐにゴムボールは元の状態に戻ります。しかし強い力で押し続けると、ボールはへこみ、ゆがんでしまいます。この時ゆがみを生じさせる指の力が「ストレッサー」であり、ゆがんだ状態が「ストレス反応」、すぐに戻れる状態を「ストレス耐性」があると表現します。
(1)ストレッサーの種類
ストレッサーには、さまざまな種類がありますが、大きく「物理・化学・生物学的要因」と「社会的要因」に分けられます。
・物理ストレッサー 騒音、高音など ・化学的ストレッサー ・生物的ストレッサー ・心理社会的ストレッサー |
このうち社会的要因は、不安や焦り、怒り、抑うつといった心の変化を起こす心理的なストレスにつながりやすいことから、ストレッサーの把握はメンタルヘルス対策において重要とされています。
(2)ストレッサーとストレス反応の関係
ストレッサーである外界からの刺激をうけると、人はその刺激に対抗して、身体面、心理面、行動面にいろいろな反応が生じます。この反応が「ストレス反応」です。ストレス反応には、主に「身体的反応」「心理的反応」「行動的反応」があります。
・身体的反応 胃痛、下痢、便秘、咳、腰痛、頭痛、肩こり、めまい、頭痛、貧血、不眠、息切れ など ・心理的反応 ・行動的反応 |
心理的ストレッサーによって引き起こされるストレス反応は、心理的な反応だけでなく、身体的反応や行動的反応を伴うことも少なくなりません。
もちろん、身体的反応の多くは、身体的なストレッサーが原因で起こるものですが、その一部に心理社会的ストレッサーが大きく影響する場合があります。
(3)ストレスと健康
カナダの生理学者であるハンス・セリエ博士は、「ストレスは人生のスパイスである」と表現しています。
この言葉のとおり、ストレッサーによる刺激を受けても、それをうまくコントロールすることができれば、むしろその人にとってプラス働く場合もあります。
しかし、ストレスがうまくコントロールできるか否かは、ストレスの程度や種類、個人の性格、その時の状態によっても大きく異なり、場合によっては、深刻な健康障害を引き起こすこともあります。
このようなストレスのしくみを体系化したものに、アメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の「職業性ストレスモデル」があります。
個人要因:性別、年齢、性格など 仕事外の要因:家庭の出来事、家族の要求など 緩衝要因:上司や同僚、友人の支援、快適な職場環境など |
このストレスモデルでは、ストレス反応が持続すると、健康障害(疾病)につながり、仕事のストレッサーが引き起こすストレス反応は、個人要因、仕事外の要因、緩衝要因などによって影響を受けるとしています。
(4)ストレッサーランキング1位は「人間関係」
厚生労働省が発表している職場のストレッサー(ストレス要因)調査によれば、現在の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は60.9%となっています。
また、強い不安、悩み、ストレスを感じる事柄(ストレッサー)については、「職場の人間関係の問題」(41.3%)が最も多く、次いで「仕事の質の問題」(33.1%)、「仕事の量の問題」(30.3%)となっています。
厚生労働省「平成24年 労働者健康状況調査」より抜粋して作成
ストレスを把握する方法
ゴムボールがストレスを受けているかは、その形を見れば分かるのですが、心や身体がストレスを受けているかは目に見えづらく、なかなか気づかないものです。
しかし、ストレッサーに対して策を講じることなくストレス反応が続くと、心身に深刻なダメージを与える可能性があります。
症状は、ストレッサーの強さや持続時間、ストレッサーにさらされる頻度や時期、受け止め方によって変化しますが、これらの変化も含め、早期に改善する必要があります。
そのためには、まずストレスについての現状を調査し、最も問題となっているストレスが何なのかを把握することが大切です。
ストレスチェックを活用したストレスの調査・評価では、労働者一人ひとりのストレスを評価する方法と、部署やチームなどの集団を単位としてストレスを評価する方法の2種類があります。
(1)個人のストレスの把握
個人のストレスについての調査・評価については、労働者が感じている仕事の負担、職場環境などのストレッサーや、抑うつ、活気のなさなどのストレス反応を調査し、評価します。
ストレスチェックによって、労働者自身が自分のストレス状態に気づいて早期に対処することが可能となります。
(2)集団のストレスの把握
集団レベルでのストレス評価では、事業場、部署、チームなどの集団ごとに、そこに所属する労働者が感じているストレッサーや、抑うつ等のストレス反応について、傾向を調査し集計します。これにより、対策の必要な集団を早期発見し、より具体的で有効な措置を講じるための情報を得ることができます。そして、ストレスが生じにくい快適な職場環境の構築に役立てることができます。
(3)ストレスチェック制度以外の一次予防
メンタルヘルスケアについては、メンタルヘルス不調を未然に防止する「一次予防」、メンタルヘルス不調を早期に発見する「二次予防」、メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援する「三次予防」に分けられます。
そして、ストレッサーを早期に発見し対処するためには、一次予防が大変重要であることは言うまでもありません。前述したストレスチェック制度も、この一次予防の強化を図るものです。
しかし、ストレスチェックだけでは、この一次予防を適切に行うには不十分かもしれません。なぜなら、ストレスチェック制度では、労働者に受検が義務づけられておらず、ストレスチェックの結果は本人の同意がなければ事業主は確認することができないからです。
そこで、ストレスチェック制度以外にも、労働者に対して一次予防を強化する対策を講じる必要があります。
この点について、厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、4つのメンタルヘルスケア推進の重要性を示しています。
①セルフケア 労働者自身がストレスや心の健康について理解し、自らのストレスの予防や軽減、対処をすること ・ストレッサーやストレス反応、心の健康に関する教育研修、情報提供 |
②ラインケア 労働者と日常的に接する管理監督者が、心の健康に関して職場環境等の改善や労働者に対する相談対応を行うこと ・管理監督者による職場環境等の把握と改善 |
③事業場内保健スタッフ等によるケア 産業医や衛生管理者などの事業場内保健スタッフが、事業場の心の健康づくり対策を提言し、その推進を担うことで労働者および管理監督者を支援すること ・業場内保健スタッフに対する教育研修、情報提供 |
④事業場外の機関および専門家を活用し、サポートを受けること
相談内容が会社に知られることを望まない労働者も多々います。そうしたケースが想定される場合には、事業場外の機関や専門家を活用して、必要な情報提供や助言を受けるのもひとつの手です。 ストレスチェッカーでは、ストレスチェック制度の導入から実施、ストレスチェック後の医師による面接指導、職場の課題抽出、教育研修など、すべてトータルでサポートをさせていただきます。 |
まとめ
以上、ストレッサーの意味や種類、ストレッサーが及ぼす影響などについてご紹介しました。
ストレッサーは、心身に悪影響をおよぼすストレス反応を引き起こす可能性があり、これを回避するためには、ストレス反応の発生を抑えたり、ストレッサーを取り除いたりするなどの対策が必要です。
ストレスチェック制度は、このストレッサーを把握し改善するための有効な手段とされています。不明点、疑問点等がある場合には、まずはお気軽にお問い合わせください。
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【監修】 公認心理師 山本 久美(株式会社HRデ―タラボ) 大手技術者派遣グループの人事部門でマネジメントに携わるなかで、職場のメンタルヘルス体制の構築をはじめ復職支援やセクハラ相談窓口としての実務を永年経験。 |